北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』の感想

 去年の『新日本誕生』が好きすぎるのです。豊作と言われた2016年のアニメ映画、どころか日本映画の中で一番好き。……もちろん見逃しも多いんですが。
 観る前は「南極だからまた温暖化がどうこうとか説教臭いんじゃないの?」と不安だった部分もあったんですが、観てよかったです。そんなことはなかった。どうやら最近はリメイク、オリジナル問わず調子が良いらしい。

  • あらすじ
    • 「パオパオ可愛い」
    • 「いやいやゲストヒロインのが可愛い」
    • 「探し物ステッキちゃんが至高……」
    • 「「たしかに」」

 観る前の段階ではどれもピンと来てなかったんですが、ゲストキャラとパオパオ、そしてサプライズ枠のステッキがとても可愛かったです。ゲストキャラ、特にヒロインは動くと魅力が増すようなタイプだったと思います。アクティブに動く際のちょっとしたポーズが良かったと思います。博士の方も魅力的でした。
 パオパオはキャラデザ的には既出なので、ビジュアル的な新鮮味はないんですが、こちらも動き、そして声が加わると愛らしさ倍増だったと思います。見た目自体は知ってるはずなのに「めっちゃ良いやん……」とウットリしたのには驚きです。
 そしてステッキ。まさかの萌えキャラ化。個人的な好みも大きいんでしょうが、ああいう無機物萌えって良いですよねぇ。声も表情もないんだけど、動きだけで感情が伝わってくるというアニメーションの底力を感じました。あのちょっとした忠犬感、最高すぎる……

 個人的に一番好きかもしれないシーンはオープニングです。定番の曲が流れながらドラえもんのび太が氷ゴテで遊園地を作る。ここの多幸感には病みつきでしたね。楽しさしかない。氷ゴテという本作のキーアイテムの説明になっていながら、映像がめっちゃ魅力的。
 去年の予告の段階では「アナ雪かな?」とか思ってたんですが、強いて言うならこの場面がそれっぽかったかもしれませんね。氷建設の美しさ、という一点のみですがw
 難癖を付けるならば、ラスボス戦で氷ゴテを使うのはのび太ドラえもんが良かったかな、とは少し思います。遊園地を作った2人だからこそ出来た何か、が見たかったかも。ラスボスの氷が死、破壊の象徴だとしたら、それを倒すのがのび太の創造性溢れる氷、という対決を少し期待してしまいました。

 物語的な部分における本作の魅力は「10万年」をキーにしたトリックの部分だと思います。10万年を行き来したために発生すると伏線や、10万年を越えたドラえもんからのび太への伝達、そしてラストの10万光年ですね。終盤にかけてグググッと加速していくので尻上がりに楽しかったです。
 そもそもタイムスリップというのは『ドラえもん』という作品の根幹みたいなもんなんですよね。そもそもドラえもんはタイムマシンでやって来たワケで。その証拠か分かりませんけど、黄色いパオパオが耳を欠損し、青くなる、というのは完全にドラえもんを意識したものですよね。そう考えると、タイムスリップでキャラが増えるというのは「ドラえもんだらけ」的な要素でもあるかもしれません。

 また本作の特徴としては、ドラえもんとの分断が何度か描かれてた点にあると思います。それも結構ガチな分断。ドラえもんと別行動になるだけで緊迫感がグッと増し、なんならホラー的な恐ろしさにも繋がってたと思います。
 ていうか、本作でドラえもん、1回死んでるんですよね。すぐに時間が改変されますけど、10万年後ののび太たちに替えの電池を届ける時にドラえもんは死んでる。もちろん直接的な描写はないんですけど、あのドラえもんが死を認識し、なんなら死を受け入れてるような感じが物凄く怖かったです。子供の時に見てたら割とトラウマだと思う。……子供だったらドラえもんの死に気付かなかったかもしれませんがw
 ドラえもんがいなくなる場面では必ず子供たちの真価が問われるんですよね。焦りが増してるのもあるんでしょうが、ジャイアンスネ夫なんかは極端に攻撃的になってました。ビジュアル的な類似も込みで『ロードオブザリング』っぽくもあったのかな、と思います。
 そんなドラえもん不在の場面で輝くのがのび太の優しさであり、ドラえもんへの信頼なんですよね。ドラえもんがいなくなることで、逆にのび太ドラえもんの心の繋がりが強調されてました。ニセドラのくだりもそうだし、10万年の時を越えたドラえもんからのび太へのバトンパスなんかは2人の友情、信頼がなせる技ですよね。

 他に特徴としては、悪役、ボスキャラですね。完全にモンスターといった感じで、知性のある人物ではありませんでした。結構珍しいですよね。倒すべき悪人というのが分かりやすく置かれる印象が強かったので驚きました。知性が感じられないこその恐ろしさがあって良かったのですが、わずかながら登場人物の少なさが気になりました。話のスケールは大きいんですが、受ける印象が少し小さくなったかな、と。場所が限定され、人物が少ないので。限定された空間で星の運命がかかった冒険が繰り広げられる、という良さも当然あるんですけどね。
 あと、モンスターのビジュアル。あれ良かったですねぇ。めっちゃカッコよかったです。それでいて恐ろしい。ワタシは詳しくないんですが、本作はどうやらクトゥルフ神話の要素が多く盛り込まれてるそうなので、そういう魅力が刺さったのかもしれません。

 最後にちょっとした難点なんですが、本作は少し「○○忘れた!」で話を動かしすぎてるように感じました。どこでもドアとか例の電池バッグとか。
 まぁ、どこでもドアはぶっちゃけチートアイテムなので何とかして制限かけないといけない、という問題はあるんだと思います。本作に限らず映画シリーズ全体に通じる問題なのでしょう。「タケコプターの電池切れがち」とかも完全にそう。
 なのである程度しょうがないとは思うし、割り切るべきなんでしょうけど、違和感はありました。電池バッグ置き忘れで「伏線でござい!」とかさせても……みたいな。


 ということで終わり。個人的に「全シーン最高!」なレベルだった『新日本誕生』に比べればそりゃ劣る部分も目立ちますけど、このレベルの作品が毎年ポンポン出てくるんだったら全然楽しみですよ。多分来年も観ると思います。
 なんか「来年は『南海大冒険』?」みたいな噂を聞くんですけど、エンディング後に追加されたのかしら。ワタシは初日に観たんですが、そんなのなかったんですよね。一応公開○日の興収を踏まえて「好評につき来年も決定!」みたいなノリなのかしら。『ドラえもん』なんて毎年やって当たり前じゃん、とか少し思ってしまいますw

『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』の感想 - 北区の帰宅部
 『新日本誕生』は最高。

 個人的にはイマイチだったわさドラ映画のオリジナル作。南極がテーマと聞いた時はこの作品のことを連想してたんですよね。エコ的な説教がうるさいのかな、と。