北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『探偵はBARにいる』の感想


旅行先で観る映画のワクワクは異常(@梅田ブルグ7)


 2011年はまともな邦画を観ていない気がする。
 『ブッダ』。酷い。ブッダパパはラジー賞モノ。
 『プリンセス トヨトミ』。綾瀬はるかの胸がよく揺れていたことしか記憶がない。
 『さや侍』。特別嫌いでもなく、特別好きでもない。記憶から消えるスピードが早いです。今、感想が思い出せない。
 『コクリコ坂から』。好きなキャラも好きなシーンもあるんだけど、ラストにすべてを台無しにされた。
 まぁ、『SP』の後編の方は好きだけどね。とはいえ、あれはドラマの延長だしなぁ。

 そんな中、但し書きナシで好きな邦画に出会えました。それが、『探偵はBARにいる』。

 あらすじ
ススキノのとあるBARを活動拠点にした私立探偵
謎の女から電話がかかってくる
依頼を受けたばっかりに突然ヤクザさんに生き埋めにされる

 ハードボイルドですね。ススキノを舞台にした探偵モノ。その主演が大泉洋、というのが素晴らしい。
 前半は、カッコ付けながらもコミカルな顔がチラついてしまう。だけど、後半、とある事件をキッカケに笑いが消える。この後半部分は、フツーにカッコイイんでね。元々スタイルがいいから、マジメモード入ったらとことんカッコイイんですよ。格好、仕草、たたずまい、すべてが決まってる。
 男同士の多くを語らぬ友情、事件に向かうストイックさ、そしてラストには悲恋まで用意されていて、映画が観終わる頃にはすっかり探偵の虜になってしまいました。「大泉洋の代表作」とかのホメ言葉がありますけど、ワタクシとしては、大泉洋よりもこのキャラのが好きですからね。探偵が好きすぎて大泉洋と同一視は出来なくなってしまった。この探偵のキャラクターや魅力は、大泉洋のキャラクターを基盤に作られてるんだけどね。不思議なもんです。

 『探偵物語』の松田優作の息子である松田龍平が探偵の相棒を演じている、というも実に味わい深い。大泉洋松田龍平で、モジャモジャ、探偵、松田が揃いましたよ。
 相棒である高田は、基本寝てる。行動中も隙を見つけては寝てる。そんな高田だけど、空手の師範代で、ケンカは滅法強く、探偵の頼みの綱。大泉洋(前半)はコミカルに感情を全開にしてる横で寝ぼけ眼で受け流す、という構図でバンバン笑いを生み出していく。
 すべてに興味なさげな高田なんだけど、ラスト手前、事件がヤバイ方向に進むと知ると、探偵に「今回は手引けよ。唯一の友達なくしたくないし」 と。もうね、号泣。名コンビすぎます。

 小雪演じるのは、事件に関わる未亡人。
 爆笑問題 田中曰く「般若みたいな顔してる」(超同意!)、そんな小雪がどうも好きではなかったんですね。「えっ、美人?」って感じで。魅力が全然わからなかったんですが、ごめんなさい。サイコーでした。
 なにを考えてるかわからない女、というのが実にハマっておりました。イイヤツ?ヤなヤツ?運命の女?悪女?とイメージが二転三転する物語なんだけど、見事に毎回騙されてましたよ。人は見た目じゃわからないね。
 また、小雪の亡き夫を演じているのが西田敏行なんだけど。西田敏行小雪が夫婦、って時点で胡散臭いことこの上ない。その後、「あれっイイ人かも?」と思わせて、「あのビッチが!」と思わせて・・・・・と印象がコロコロ変わる。小雪の顔、表情は特別変わってないんだけど、全然違って見える。モンタージュ効果怖い。

 本作は、キャストがすべてハマってて、全キャラが魅力的なんだけど、それは観ているうちに魅力に気づいていく、って感じなんだけど、1人違う人がいる。初登場時から異彩放ちまくりな人。
 それが高嶋政伸。ヤクザの実行部隊のナンバーワンみたいな人。殺し屋みたいな感じかな。
 コレが、ドハマリしてるんですねー。初登場の瞬間から「キモイ!キモすぎる!!」って感じ。ていうか、一瞬、高嶋政伸ってわからなかったですよ。ヘンテコな髪型で、無表情、ガムくっちゃくちゃ噛んでて、「ンゲエェ」とゲップしまくり。気持ち悪い、汚い、そして怖い!
 また、コイツの死に様ってのがサイコーでしたね。「くちゃくちゃ、ンゲエェ」 で、撃たれてましたからね。死に様まで超汚い。サイテーですね、サイコーです。
 ・・・・・・もうね、ヤマダ電機のCMはまともに見れないです。

 と、メインキャラ全員が超魅力的でサイコーなんですが、さらに本作では、ススキノという舞台が1人のキャラクターの如く個性を放っている。
 雪祭りなどをやっている大通りから1本入るだけで、昭和のような街並みが並んでいて、暖かみが感じられたかと思えば、一方では底知れぬ闇を抱えている。つつけば何が出てくるかわからない感じが、事件に首突っ込んだらヤクザさんが出てくる物語とハマってました。
 ホームズとベイカー街のように探偵と街っていうのは相性がイイんでしょうね。その点、大泉洋とススキノですから、相性は抜群ですよ。事件が進展し、大泉洋が街の中を走るシーンがあるんですが、メチャクチャ映えるんですよ。映画の中でキャラクターが走るシーンってのはそれだけで充分魅力的なんですが、そこに街の魅力がプラスされて、特別なものになっていました。

 あと他に、好きなシーンと嫌いなシーン。

  • あの人の死に様がカッコよすぎてホレる。復讐の花嫁ってイイですよね。ウエディングドレスと武器ってなんであんなに相性がイイんでしょうかね? またあの殺す時の表情がたまらんですな。
  • ケータイは持たない主義の探偵が依頼人のためにケータイを買うんだけど、初めての通話が別れの電話っていうのが泣けますね。固定電話ではなくケータイ、という距離感がまた意味を持っているのがうまいです。
  • 本作最大の興味ポイントが「謎の女からの電話」なんだけど。しゃべり方で大体見当がついてしまった。んで、それが正解だった、ってのはちと残念ですね。
  • 物語が進むと、吉高由里子が出てくるんですよ。この出番ってのがスゴイ。写真だけ。ビックリしましたよ。有名人を顔だけ出すことによって「謎の女」に関してミスリードを誘う、というのはおもしろいアイディアだと思います。まぁ、上の通り、しゃべり方で見当はついてる状態なので、あまりミスリードとして機能しませんでしたが。それと、吉高由里子のメガネ姿が想像以上の破壊力だったので、あれだけの役は惜しかったっす。もっと見たかった・・・・・。
  • 最後に、依頼人からの置き手紙を読むシーンがあるんだけど。すべての謎が解けるイイシーンなんだけど、その後にもう1回置き手紙があるんだよね。2度はくどいっす。1度目の感動が削がれる。
  • 「私、実はあなたと会ったことがあったんですよ」ってトコ。ここのキッカケが超雑。悪漢に絡まれていたところを助けてもらった、ってジャンプの読み切りマンガでお馴染みのパターンですね。んで、この話の後に2度目の置き手紙だから、最後の最後にとてもテンションが下がる。もったいないですね。
  • 本作はハードボイルドだからモノローグが多用されてるんだけど。事件の状況をモノローグで説明する、ってのはあまり好きじゃないです。言葉でぶらぶらと説明されると、途端に眠くなる。やっぱバカな身としては言葉で説明されると授業みたいで、理解が追いつかないんですね。もうちょっと工夫が欲しかった気がします。


 まぁ、どんなダメポイントがあろうと全然気にならないんですよ。本作のキャラクターたちのことが大好きになってしまいましたから。アイツらが見れれば満足、って感じ。
 続編が決まったらしいですけど、当然観ますよね。大泉洋の姿をしたあの探偵の活躍はもっと見たいです。
 80点。