北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『ミッション:8ミニッツ』の感想


↑サイテーの詐欺キャッチコピー


 デヴィッド ボウイの息子、ダンカン ジョーンズの監督2作目。前作『月に囚われた男』は観てないですよ。
 原題は『Source Code』。本作に出てくる不思議装置の名前です。字幕では「プログラム」となってました。邦題はダサイね。なんかツタヤの端っこに置いてあるビデオスルー作品みたい。

 本作の話をすると、どう転んでもネタバレになるんで、気をつけて下さいね。観てない人は早く観た方がいいと思うよ。絶対おもしろいよ。
 ・・・・・と思うんだけど、おもしろくないって人も見かけるんだよなぁ・・・・・・・不思議。

 あらすじ
人間は死の直前8分間の記憶が脳に記録されている
それを利用して、列車爆破テロ発生8分前の世界を作り出すのが「ソースコード
主人公はテロの被害者の1人の意識に同化して、8分間の世界へ
予告されてる第二のテロ防止のために犯人を探すのが、「ミッション 8ミニッツ」

 と、あらすじを書いたんだけど、実にわかりにくい。設定が明確には説明されないからね。それを文章にするのが難しい・・・とういか文章がヘタ。だから、みんな観ればいいんだよ。

 無限ループモノってある程度存在していて、映画に限らず誰だって何かしら作品で触れたことあるんじゃないですかね。(個人的に真っ先に連想したのは『ドラクエ7』のリートルードなんですが・・・・・)。

 そこにSF的な装置を添え、理由もわからず課せられたミッションにし、最後に爆発。
 装置の設定上、タイムスリップではないのがミソです。なにをやってもテロの被害者は救えない。現実は変えられない、という絶望感。
 ワケもわからず、ワケのわからないミッションに課せられてるおかげで、情報を読みとろうと努力する主人公に観客は没入してしまう。ループなんだけど、ループする度に新たな発見があるという楽しみがある。
 んで、最後の爆破。8分後に爆破することで、8分の時間経過に緊張感が生まれる。「えーっと、たしか電車とすれ違った直後に爆破があったから・・・・・」っていうハラハラですね。これまた主人公の思考とシンクロしてしまう。このハラハラって『バンテージ ポイント』とよく似てますね、物語は全然違うけど。どちらも爆発をいろんな視点で見るっていうね。
 また、爆破することで、毎回主人公は死ぬんですよね。そして電車の乗客も全員死ぬ。目の前で。これが本作最大の絶望。8分を何度もループすることで主人公は電車内の人に感情移入し、挙げ句1人の女性に恋をしてしまう。そんな他人とは思えなくなった人が8分後に毎回死ぬ。ミッションを成功させても、救えない。この地獄体験。

 んで、主人公には「父親と連絡を取る」というもう1つの目的があって、ミッションを強制させられるから電話できない。
 この「救えないとわかっている人たちを救いたい」というのと「父に電話」という2つの目的がミッションの他に存在する。物語の主軸であるミッションに関しては、主人公は全然乗り気じゃない、ってのがおもしろいトコで。終盤、主人公は犯人を見つけるんだけど、爆破は阻止できなかった。その時の主人公は絶望の顔をしてるんだよね。ここが象徴的でおもしろかったです。ミッションがどうでもよくなっちゃってる。

 そして、最後、主人公は「泣きのもう1回」に向かう。ソースコード内で乗客を救ったとしても、それは再現世界でしかないのでまったくの無意味、だとしても主人公は「でもやるんだよ」の精神でミッションに向かう。この姿がサイコーに燃える。涙なしでは見れなかったですよ。

 ここに、現実での主人公の立ち位置が重なる。ソースコード内で主人公は死者に思いを寄せるけど、「実は主人公も死んでた!(正確には死にかけ)」というね。死んだ主人公は組織に利用され、死ぬことを許されず延々と8分を繰り返してた。乗客たちと似た死者という立場だったんですね。それでも無理矢理生き返らせられていた、と。
 例の「泣きのもう1回」は主人公の死に場所を探すミッションでもあったワケで。

 んで、大オチ。賛否が分かれてるトコですかね。最後の8分の終了と同時に映画も終わるべきだったんじゃないのか、っていう。

 主人公は「泣きのもう1回」で列車テロを未然に防ぎ、「8分」の終了時、乗客のみんなを笑顔で包み込み、主人公はキスをする。そこで、現実の死にかけの主人公の生命維持装置が切られる。
 ところが映画は「8分後」の世界に突入する。観てて「HA?」ってなりました。
 ただ、これはよく考えたら、主人公の作り出した「天国」なんですよ。死に場所を探していた主人公は、究極に幸せな空間を自ら作り出し、そこで死ぬ。だからあの「8分後」はパラレルワールドというか、主人公の世界、主人公の魂の行き先って感じですかね。
 あそこが「天国」だとすると、ミッションで何度も死を繰り返してきたことが「地獄」のメタファーだったと合点がいくし。

 ・・・・って思ったんですよ。そう考えると、本作のラストは究極的なハッピーエンドで、号泣せざるを得ない。「本当によかったねぇ〜・・・・」ってなる。
 なんだけど、いろんなトコでレビューやらを見てみると、一概に「天国と地獄」と言えるワケでもないのかな・・・・って気がしてきた。観終わった時は「天国と地獄以外のなにものでもない!!」って感じだったんですけどね・・・・・。まぁ、それだけ映画に没入し、本作を「俺の映画」にしてしまった、ということですかね。


 ・・・・・という大変タチの悪いネタバレ感想ですよ。ネタバレしておいて、「いや、これは間違ってるかも・・・・」というエクスキューズを用意する感じ、こーゆーの書く人、オレ嫌い!! けどこの映画は好き!
 90点。


ミッション:8ミニッツ ブルーレイ+DVDセット

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