北区の帰宅部

映画の感想を書きます(嘘&希望)

映画『コンテイジョン』の感想

 スティーヴン ソダーバーグ監督最新作。オールスターキャストながら『オーシャンズ11』とは違い、エンタメ作というワケではない。大変見たくないものを見せられます(ホメ言葉)。

 本作は感染病映画で世界の破滅を描くんだけど、とある映画を連想してしまう。『猿の惑星 ジェネシス』。あれはラスト、人間だけを殺す凶悪ウイルスがニューヨークから世界へ広まってしまう、というものでした(←ネタバレすいません)。そして、その肝心の世界がウイルスで破滅へ進む課程はまったく描かず、エンドクレジットでウイルスが蔓延する様を世界地図で見せられるだけ。
 なので・・・・・・・・・・・・『コンテイジョン』って『猿の惑星 ジェネシス』の続編なんじゃね? とか思ってしまいました。それくらいに「こら、人類終わったな・・・・・・」という絶望感に満ちてましたよ。
 ちなみに劇中、ワクチンが完成するシーンで猿が出てくるんだけど、あの猿の名前は当然「シーザー」なんですよね(嘘)。「Noooooooo!!!!」

 あらすじ
最悪のウイルス発生
触ると移ります
人類オワタ

 映画が始まると同時に「ゴホッ」という咳の音が会場を包むイヤぁ〜なイントロ。咳の音が観客の不安感、恐怖を煽るよう刷り込まれます。劇中のあらゆる「ゴホッ」にハラハラさせられます。
 映画を観ながら観客がせき込むと周りの客から煙たがれること請け合いです。観に行く際は喉のコンディションを整えましょう。

 本作のウイルスは潜伏期間がとても短く感染から数日で死にます。そのウイルスの恐ろしさを示すかのように、グウィネス パルトローが映画が始まって数分で死ぬ。開幕の「ゴホッ」から家に帰り、翌日家で倒れ、病院に運ばれ、「お亡くなりになりました。原因不明です」。あまりの展開の早さにマット デイモン(旦那役)も、「えっ、死んだって誰のことですか?」 と理解できない。そして家に帰ると息子が死んでる。早すぎる・・・・・・・・・パルトローさんの無駄遣い!!(ホントはいろいろと重要な役です)
 もっさりしたマット デイモンはヒーロー役と違った魅力がありますな。観客と同じ視点となる小市民役が見事でした。デイモンさんも当然感染してるんだけど、運良く死に至らず克服。地獄絵図となった街中を無防備なデイモンさんがブラブラするシーンは俯瞰視点としてうまく機能してましたね。

 ただ、俯瞰視点といっても所詮デイモンさん。個人なので、描かれるのはデイモンさんの住んでる街だけ。
 本作で描かれるウイルスパニックって基本アメリカ内だけなんですよね。前半はウイルスの爆心地を探すために香港に行ったりするんだけど、後半ドラマが描かれるのはほとんどアメリカ。アメリカ以外が描かれても、各キャラクターの行動に終始するので、世界全体はよくわからない。話は地球全土に渡る地獄体験なんだけど、劇中の視点はことごとくミニマム。これは個人的にツボでしたね。あらゆる立場の人のパニックが淡々と映し出されるので、グイグイ没入してしまいました。
 まぁ、「『猿の惑星 ジェネシス』続編説」として観るんだと、もうちょっと全体的な視点があった方がいいと思うんですけどね。残念ながら続編ではないので問題ないです。

 オールスターキャストについて。
 上記の通り非ヒーロー役のマット デイモンはとってもステキでした。二枚目、三枚目、そして本作みたいな小市民、なんでも来いなデイモンさん最強説。
 他にもたくさん出てるんだけど、個人的ハマったのがジュード ロウとローレンス フィッシュバーン。

 ジュード ロウって男性ホルモンの過剰分泌でハゲてるイメージなんだけど、本作だと違う。
 混乱時に乗じてテキトーな記事書いて市民の混乱を煽り、カリスマを演じ、金を集めるスーパー下衆な「フリージャーナリスト」。
 あれれぇ〜、どっかで聞いたことある〜。3.11以後にこんな人いっぱい見たよ。本作のジュード ロウはブログを活動拠点にしてるんだけど、日本だとツイッター上でもよく見ましたね。まぁ、凶悪ウイルスと同じような状況になってしまった日本を嘆くことも可能なんですが、ここらへんのリアリティーは素晴らしいですよね。なによりジュード ロウの憎まれ演技がすごすぎて、ぶっ殺したくなりました(ホメ言葉)。画面ににジュード ロウが出てくる度に、「感染しろ!!」「感染しろ!!」と心の中で叫んでましたよ。困ったことに感染しないんだよねぇ。感染したらアイツのデマへの決着が気持ちよくつくと思ったんだけど。

 そしてローレンス フィッシュバーン。ご存じ『マトリックス』のモーフィアス。何かにつけて上司を演じてるイメージですね。頼れる上司、怪しい上司、強い上司。上司役なら何でもござれ。全米視聴率No.1ドラマ『CSI』でも上司役を引き継ぎ、上司俳優界を極めたと言っても過言ではないと思います(『CSI』は正確には上司ではない)。『モンスター上司』の続編があったら是非やってほしいですね。とにかく、やたらと貫禄がある人。
 本作でも当然上司。オールスター映画である本作の中で数々のオスカー俳優orスター俳優は自分の色を殺し、過度に目立ちすぎない抑えた演技を見せてるんですが、ローレンス フィッシュバーンは別。信頼と実績の上司演技。これが、素晴らしいんですねぇ。本作には明確なヒーローってのは出てこないんですが、ローレンス フィッシュバーンが一番それに近い。ただのヒーローってつまらないし、本作みたいな雰囲気には合わないんですが、人道的に、上司として正しすぎるがために仕事から外れたことをしてしまう、という人間味も見せ、マジ魅力的な上司でした。一生ついてけますね。

 そんなジュード ロウとローレンス フィッシュバーンがとあるテレビ番組内で対決するシーンがあって、これは本作のハイライトの1つ。ローレンス フィッシュバーンの落ち着き、ジュード ロウの清々しいクズっぷりが堪能できます。

 本作は、ひたすらウイルスの恐怖が描かれ、勝ち目が見えないんですよ。ウイルスの蔓延が凄まじすぎて、希望が見えない。映画観てると、「どうやって映画を締めるの?」 って不安になるくらいです。
 そこで、本作のアウトロ。素晴らしすぎるんですよねー。デイモン一家のエピソードを描き、ハッピーエンドの装いを作る。絶望しかなかった世界にほんのちっぽけな幸せを描くんですね。泣きそうになりました。さらにその後、イントロと呼応する仕掛けを用意し、円環構造になって閉幕。すげぇキレイに終わったよ。おみそれしました〜。


 そんなこんなでスゴイ映画でした。大満足です。オールスターキャストなことで逆に引いちゃってる人がいるとしたらもったいないですよ。オールスターがみんなスター性を排除してるのが本作の魅力ですから。まぁ、ローレンス フィッシュバーンは違うけど。
 また、3月の震災、震災後のいろいろを(間接的に)経験した人にとっては見てて他人事とは思えないリアリティー、説得力、迫力がありましたよ。買い占めとかフツーにあったからね。
 感染症映画が好きな人、『猿の惑星 ジェネシス』が好きな人、ローレンス フィッシュバーンが好きな人、超オススメ。
 85点。

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