北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『リアル・スティール』の感想


↑こんなシーンあったっけ?


 映画館に足を運ぶと高確率で予告がかかってた映画『リアル スティール』。
 個人的に、主演のヒュー ジャックマンは腐女子的(ブロマンス的)視点を抜きにしてもウットリする数少ない俳優です。ただ、ウルヴァリン時はそんなでもない。

 監督はショーン レヴィ。『ナイト ミュージアム』とその続編で有名な人ですね。「はいはいファミリー向けコメディーね」・・・・と思ってたら本作は違った。ファミリー向け、全年齢向けなのは変わらないけど、まったくコメディーではないです。『ナイト ミュージアム』からコメディー要素を引いたら父子の物語が残ると思うんですが、本作はまさにそれ。父子のテーマが監督は好きなんですかね。

 あらすじ
元ボクサーのダメ親父
離婚した嫁が死ぬ
息子を預かる
息子と一緒にロボットボクシングをがんばる

 舞台は2020年なんだけど、ロボボクシング以外はほぼ2011年と同じ。SF的世界観は全然ないです。まぁ、なぜかケータイだけは近未来っぽいんですが。ちょっと中途半端ですね。

 そんな唯一のSF、ロボボクシング。設定としては日本が発祥らしいですよ。無駄に「ゲームって言ったら日本っしょ」っていうセリフあったし。実際のところ、ゲーム業界を日本がリードしてるとは思えないんですけどね。まぁ、2020年だから。
 劇中「ATOM」(なぜかローマ字表記)ってロボが出てくるんですけど、監督曰く『鉄腕アトム』は関係ないらしいですよ。「原子の最小単位」がどうたらかんたら(←よく覚えてない)。
 ロボボクシングが生まれたのは、観客がより暴力を求めたからだと説明されてます。現に試合シーンはディズニー配給のファミリー向け映画だと思ってるとドキッとするほど暴力的。平気で片腕もいだり、アッパーカットで頭吹っ飛ばしたりする。試合が盛り上がると観客が「Kill Kill Kill Kill」って大合唱しますし。劇中、息子と共に挑戦するんですが、「子供に試合見せても大丈夫?」とか思いました。そのくらい「痛い」描写でよかったです。そんな迫力ある試合シーンが惜しげもなく繰り返されるのがイイ。
 グロいと言ってもアレですよ。『トランスフォーマー』シリーズほどグロくはないです。顔面剥いだり、脊髄引っこ抜いたりはしないです。
 そういうね、マイケル ベイ的な「ロボならどんなグロもアリじゃね?」という人間の野蛮な部分を否定するのかな、と思ったりもしたんですが、思い過ごしでした。最後の最後までロボボクシングの是非については言及しない。まぁ、そういうテーマをつまみ食いしたら退屈になってしまうと判断したんでしょう。

 物語は父子の2人に終始するんですが、この父親がかなりのクズ。「借金まみれ」って設定はよくあるじゃないですか? 主人公も借金まみれなんだけど、100%コイツのせい。同情の余地がない。元ボクサーでロボボクシングのため引退させられたという過去はあるんだけど、全然同情できない。
 観客の同情も買えないレベルのクズが息子と出会い、ロボを通じて再生していくワケですね。よくあそこまで上がれたと思いますよ。ちゃんと感情移入しちゃうようなキャラになりましたからね。ここらへんは見事。
 逆に子供。「かわいそうな子供」かと思ったら意外とそうでもない。憎まれ口を叩くんだけど、同情するには憎々しすぎるんですよね。ワガママで頑固だし。そんな息子のダメな要素っていうのが父親とそっくりなんですよ。2人の間に遺伝的繋がりを感じました。
 前半子供が言ってたワガママを終盤父親が言う、って展開もあって「結局は親子なんだな(ヤレヤレ)」的な微笑ましい気持ちになりました。

 そんな2人を繋ぐのがロボットのATOM。ゴミ捨て場から息子が拾ってきたロボ。捨てられたロボを見て息子は、自分の分身と思ってしまうんですね。
 とはいえ、所詮は元ゴミ。旧式でロボボクシングに耐えられるとは思えない。そんなゴミ同然のロボがどうやって勝利するのか、って理屈が見事でしたね。
 このATOMには「シャドー機能」という人間の動きをマネする機能が付いてるんですね。この「初期のロボに付いてそうだけど、ぶっちゃけ使い道なくね?」って感じがイイ。そして、過去に捨てられたロボの音声認識機能を付ける。捨てられたロボの力を借りる、というのが燃える。
 息子がATOMにステップを教える際にダンスをする。それを見た父親が、「それ・・・ウケるで!(目がドルマーク)」と。息子はダンスを通じてATOMとシンクロ。ATOMは素早い身のこなしを覚える。旧式で体が小さいからステップで翻弄する戦術と相性がイイんですね。
 そして父親。元ボクサーの父親ATOMにパンチを教える。ゴミとして廃棄された人間のパンチをゴミだったATOMが継承するんですね。燃えるわぁ。

 ラスト、最強のチャンピオンと戦うことになる。ちなみにこのロボ作ったのは日本人という設定(まったく日本人には見えないし、名前もヘン)。
 相手の強烈なパンチの前に音声認識機能が破損。ATOMを操れなくなる。そこで出てくるのが、シャドー機能。リングサイドでシャドーボクシングをし、それをATOMがマネする。まさに父親ATOMに憑依するんですね。ゴミとして捨てられたボクサーがATOMに憑依して最強のロボと戦う。あぁ・・・・琴線が擦られまくり。
 と、このアイディアは超イイんですよ。このシーンが見れただけで満足なんですが・・・・・・・・・・・・このシーン予告で使われてるんだよね。主人公がATOMに「俺を見てろ」って言ってリングサイドでシャドーボクシングしてるシーン、予告で見たことあります。たしかにね、予告見てる時も感動したんですよ。おかげで「この映画絶対おもしろいだろ!」と思ったんですが、本編を観た時の感動が削がれました。
 ステキな予告をありがとうございます(棒)


 というワケでした。イイ映画なんですよ。泣いてもおかしくないレベルなんだけど、感動の最高地点は予告で見覚えが・・・・・・という残念な感じ。勘弁してほしいですね。
 本編はおもしろいです。オススメです。数々のロボたちの強烈な個性も楽しいですし。逆にATOMの地味さも物語とハマってるし。なによりも「超悪男子」と日本語が書かれたノイジーボーイのビジュアルの迫力がヤバイです。漢字を映し出すためだけに搭載されたディスプレイの無意味さとかもうツボです。

 とにかく予告の問題を無視すれば素晴らしい作品だと思います。
 80点。