北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『僕の大切な人と、そのクソガキ』の感想

今回はほとんどチ○コの話です


 レンタル映画。劇場未公開のコメディー映画。『マネーボール』のブロマンス相手であるジョナ ヒルが評判になった作品です。

 コメディー映画ということで、定番のトンデモ邦題問題。原題は『Cyrus』。サイラスというのは、邦題だと「クソガキ」の名前。人名タイトルはよくありますが、主役の名前ではないというのが味噌ですかね。
 「とにかく説明的」というのがトンデモ邦題の特徴ですが、本作もまさにそれ。・・・・・が、本作の邦題は結構イイんじゃないでしょうか。わかりやすいですし、「、そのクソガキ」という蛇足感が物語を表してますし。
 字幕で観たんですが、主人公の一人称は「おれ」ですけどね。

 あらすじ
離婚して7年間ひたすらモテない主人公
ついに運命の女性に出会う
すべてがうまくいくのだが、彼女にはサイラスという息子がいて・・・・・・

 本作をジャンル分けするとコメディーになるんでしょうね。もしくはラブコメか。以前に予告を観た時も、母親の知らぬところで恋人と息子がバトルを繰り広げるようなコメディー色が強かったイメージ。バカで下品なコメディーを期待してたんですが、そんなイメージとはかけ離れてました。上質な恋愛映画と言っても間違いじゃない。
 とはいえ、もちろん笑えるシーンはありまして。なにせ、イントロで主人公はオナニーを目撃されちゃいます(←主人公曰く「インキンがかゆくてかいてただけ」)。

 そんなチンコイントロで始まる本作。素晴らしいのが、このチンコシーン。ただのギャグじゃなくて伏線だったんですよ。チンコに二重三重の意味を持たせている。
 イントロでのチンコシーンでは、主人公の別れた女房が「インキンがかゆくてかいてる」トコを目撃する。当然「キャーー」と拒絶。当たり前ですね。
 次のチンコシーン。とあるパーティーで、主人公恋人を捜そうと奮闘するも振るわなかった。落ち込みながら庭で立ちションしてると、ヒロインであるマリサ トメイが登場。放尿中のチンコを見てしまう。そこで一言、「ナイス ペニス」。今度のチンコは受け入れられる。まぁ、酔ってるからでしょうが。後に明らかになるんだけど、彼女は人を見た目では判断せず「正直である」ことを重視する。つまり、初登場時に見たチンコは主人公のありのままの姿という意味なんですね。その結果、主人公とヒロインは意気投合。主人公にとって、彼女にとって互いは理想の相手となる。
 そして、もう1コ。チンコシーン。ヒロインのクソ息子。主人公との対立が明らかになり、2人の冷戦が始まった後、主人公の元嫁の結婚式に3人で出席する。主人公はここで失態をさらすワケにはいかないので、それを知っているクソ息子に悪さをしないよう釘を刺す。大人しくしていたクソ息子なのだが、結婚式の雰囲気に飲まれイチャコラし始める主人公と母親の姿を見てブチギレ。主人公に対してケンカを売りに行く。それが、主人公がトイレで立ちションしているトコなんですね。もちろんクソ息子としては、母親に見つからないための男子トイレなんですが。これが「ナイス ペニス」との対比になってる。
 ここで、注目すべきはチンコが見られたか否か。この3つのシーンで、主人公のチンコを見たのはヒロインただ1人。他2人は背後から近づくのでチンコが見れない。この映画でのチンコは主人公のありのままの姿のメタファーであり、主人公の心の奥底を意味するので、それを見ることが出来るのはヒロインだけという意味なんでしょうね。深い・・・・・・このチンコ深いぞ。

 チンコシーンで印象的な映画ということで、コメディー映画の『寝取られ男のラブ♂バカンス』を連想しました。あの映画ではモロ出しなんですが。クリスティン ベルとミラ クニスの2人が主人公のチンコを見るんですね。前者はチンコを見た後に別れ話を切り出し、後者は裸のまま抱きしめる。これが映画の最初と最後に描かれるんですね。すなわち主人公の成長をチンコシーンで描いてるワケで、あのチンコには泣かされましたよ。
 モザイクなしでチンコを映していることによって、前者のドン引きっぷりも、後者の「主人公のありのままの姿を受け入れる」という感動も大きくなるんでしょうね。ノーモア モザイク!
 そういや、『寝取られ男のラブバカンス』も原題は『フォーゲッティング サラ マーシャル』で、人名タイトルなんですね。しかも主人公(メインヒロイン)の名前ではない、っていう。これもなにかの縁ですかね(←絶対に違う)。


 ということで、バカ笑い系のコメディーではないものの、非常に丁寧に作られた傑作であることは間違いないと思います。本作のクソ息子は極端だとしても知り合いの家族と会うのってどこか不気味だもんね。その感覚をデフォルメしてあるから他人事とは思えない緊張感が生まれる。手持ちカメラ(だと思う)による不安定なカメラワークによって妙な緊張感が強調されてました。
 ・・・・今回はチンコの話しかしてないけど、チンコ以外も素晴らしい作品でしたよ(っていうかチンコは大したシーンじゃない)。
 80点。