北区の帰宅部

映画の感想を書きます(嘘&希望)

映画『ロボジー』の感想


まさかのヒーロー映画


 なんかメジャーすぎずマイナーすぎず、意外とどの映画ファンからも無視されてる印象のある『ロボジー』観てきました。矢口史靖監督作はどれも好きですよ。『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』『ハッピーフライト』しか知りませんが。どれもオリジナル脚本作ながら、フジテレビが大々的に公開してるというのはかなりめずらしいんじゃないでしょうか。

 あらすじ
ジーさんの動きってロボットっぽくね?

 まず、コメディー作品としてクオリティーが高かったと思います。ギャグはおもしろいし、途中でだれるシーンもなかったです。
 設定の説明、各キャラの説明がスマートなのもよかったです。説明的でないシーンはないながら、いつの間にか主要人物のキャラクターがわかるようになってました。特に主人公の3人は、みんな地味で違いがわかりにくいよと思っていたんですが、いつの間にか各人の違いが見えてきてそれぞれのキャラが愛おしく思えましたね。チャン カワイが笑いを取って調子に乗るシーンは、芸人というキャスティングがハマってましたし。
 とはいえ、やはり濱田岳がスゴイ。なんて表現したらいいのかわからないんだけど、「絶対善人じゃん!!」って感じ。守ってあげたい小市民と言いますか。まぁ、濱田岳の車のCMと同じ感じなんだけど。
 この主人公×3が仕掛ける「ジーさんinロボ」という計画は、ハッキリ言えば悪なんですよ。予期せぬ形で大事になったとは言え、責任は彼らにありますからね。代償を支払うべき行為なのにも関わらず、本作では特に代償の部分が描かれない。真実を追求する人、追求しようとすることを悪っぽく描くトコなんかは嫌悪感すら湧きました。
 しかし、ここで濱田岳が顔を出すと、「いや お前は悪くない!」という根拠のない力が働いちゃうんですねぇ。少なくともワタクシの中では。この「濱田岳」力のおかげで、本作最大の欠陥がカバーされてたと思います。
 まぁ、ここは好き嫌いの分岐点かもしれませんね。

 もう1人の主人公であるジーさん。このジーさん周辺のエピソードが滅法おもしろかった。簡単に言うと、マスクドヒーロー映画なんですよ。覆面ヒーローね。マスク「ト」ヒーロー? マスク「ド」ヒーロー? どっちでもいいや。
 ワタクシは知識がないのでアメコミ映画を真っ先に連想したんですが、『スパイダーマン』と滅茶苦茶似てました。
 冴えない男がひょんなことから特殊な力を見つける(見出される)、そしてマスクを被り活躍、たちまち街の人気者に、っていう。これが冴えない高校生かジーさんかって違いだけです。マスクを脱いではいけない、正体がバレてはいけない、ってサスペンスが働くんだけど、本作ではそれをギャグに昇華しちゃってるからスゴイ。
 『スパイダーマン』と違うのは、最初の変身前のパートが結構えげつないんですよ。特にジーさんの独り暮らしが描かれるトコではちょっと心が挫けそうなくらいに落ち込みました。「心がどうかなっちゃうよ!」って感じ。刺激がなさすぎる生活の恐ろしさね。ここでの落ち込みがロボジーへ変身してからの高揚感に繋がるんですね。

 おもしろかったのがジーさんがロボジーの真実を老人会の知り合いに告白しちゃうシーン。「この中に私が入ってるんですよ!」って言った瞬間、保健師に「おじいちゃん 今日の日付言える? 自分のお名前わかる?」って認知症扱いされちゃう。爆笑シーンなんだけど、ものすごく残酷なシーンですよ。誰も信じてもらえない、ロボジーになってチヤホヤされたが、ロボでない状態では今までとまったく変わってない。夢を見てたのに冷酷な現実を見せつけられちゃう。ここで、ジーさんはロボジーになるという麻薬的魅力に引き付けられるんですよね。現実から目を逸らすしかない。マスクを被るしか生きてる意味を見出せなくなっちゃう。

 そんなジーさんがラスト、ロボジー引退を決意する。衆人環視の下、ロボジーを殺す。そしてたった独りで帰路に付く。不審に思った警備員に対して「私はね あのロボットに入っていたんですよ」と弱々しく応える。そして、ポケットから腰痛用に使っていたネオジウム磁石を取り出す。すると磁石がグシャとくっつく。
 まず、帰路というのはロボジーの正体を見抜かれたポイントでして、その帰路という問題をジーさんは認知症と思わせることで切り抜ける。そして、腰痛というのはジーさんがロボットを演じるキッカケでして、腰痛の完治はロボジーを演じられなくなることを意味する。さらに磁石は3人との友情、思い出の象徴でして、それらと決別する。ネオジウム磁石がくっついちゃったらジーさんの力じゃ絶対に戻せないのがわかってるから、観てて本当にツライんですよ。主役を演じることにこだわっていたジーさんが、その後は脇役として生きていくんですよね。マジで泣きそうでした。

 マスクドヒーロー映画の変化球として『アイアンマン』という作品がありまして。この映画のラストで、トニー スタークは記者会見で「I am IRONMAN」と言っちゃう。「隠すのめんどくさくね?」というトニー スタークらしい言動なんだけど。ここはジーさんの「私はね あのロボットに入ってたんですよ」とまったく同じことを言っておきながら、まったく逆の意味を持ってるんですね。マスクドヒーローとしての対極に位置してる。

 ジーさんのロボジー引退があまりに見事に描かれてたので、最後の最後に「もっかいロボジーやってくんない?」というオチが来たのには結構ガッカリしました。まぁ、コメディーとしては収まりがいいんだけどね。
 とはいえ、その誘いに来るのが濱田岳なのですべて許せましたよ。

 ・・・と、マスクドヒーロー映画としての物語が感動必至だったんですが、本作にはもう1つ突出した魅力がありまして。ヒロイン役の吉高由里子ですね。簡単に言うと、滅茶苦茶かわいい。
 本作での吉高由里子はロボットオタクでロボジーに本気で恋しちゃうという、かなりヤバイ人。大学の友人に「そんなにロボットがすきなら結婚しちゃいなよ(笑)」と冗談で言われたら、「うん するよー」と本気のテンションで応えちゃうトコとか狂気でしたね。
 失恋した後に目にくま作って復讐(a.k.a.八つ当たり)するトコとか気持ち悪いと感じる半分「か かわえぇぇ・・・・・・」と腰砕けになる魅力がありまして。吉高由里子、恐ろしい人でっせ。
 こないだの『ヒミズ』での二階堂ふみがストーキングしてるトコもそうなんだけど、明らかに危ない言動をしてるヒロインってすげぇかわいいですね。まぁ、いわゆる「※ただしイケメンに限る」の女版に過ぎないんですが。
 とはいえ、感情を剥き出しにしてる様ってのは魅力的に見えますよね。

 ちなみに、そんな吉高由里子はロボジー、そしてジーさんに1回ずつ身を助けられるんですが。ロボスーツのありとなしでまったく同じ助けられ方をする。ここでの吉高由里子がキュンとするシーン。『スパイダーマン』のラストでMJが「このキスは・・・・・」って思うシーンと完全に一致でしたね。ジーさんなんだけど、マスクドヒーローとしてスパイダーマンと同じヒロインとの接し方してるってのがおもしろいです。


 ロボジー計画をする代償が描かれなかったのと、ラストにもっかいロボジーに誘うのが結構な難点なんですが、それもこれも濱田岳が解消してくれました。
 他にも、細かいギャグもいちいち決まってましたよ。コスプレ会場での「自作ですか?」ってギャグは緊張と緩和が利いてて素晴らしかったです。コスプレ会場にダンボーとか初音ミクがいたのも小ネタとして楽しかったです。チョイスが秀逸。
 物語本編はマスクドヒーロー映画として非常におもしろく、それをコメディーに昇華し、コメディーとしての完成度も高い、さらにヒロインが麻薬的にかわいい。難点があろうとこれは傑作と呼ばざると得ないんじゃないでしょうかね。
 85点。