北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『スノーホワイト』の感想

白雪「鏡よ鏡・・・・・」 鏡「チェンジ」

 「ネタ切れが叫ばれるハリウッドがついに童話という著作権フリーの有名原作に手を出した!」なんて言われてる本作。まぁ、1年に『白雪姫』映画が2本も公開されるのは異常事態とは思います。アメリカでの売上的にはもう1つの『白雪姫と鏡の女王』はコケて、本作はヒットし続編も決定しております。
 他に童話モノでいうと、『眠れる森の美女』を魔女マレフィセント目線で描くって映画が楽しみですね。
 童話の実写化映画の共通点は悪役にオスカー女優を当てるという点でして。『スノーホワイト』はシャーリーズ セロン、『白雪姫と鏡の女王』はジュリア ロバーツ、『マレフィセント』はアンジェリーナ ジョリー。後で触れますが、本作は超ハマリ役でした。

 あらすじ
悪い女王が国を支配
世界一の美女になりたいけど、白雪姫のが美人
リンゴで殺す

 話の流れは同じなんですけど、違うのは白雪姫がアクティブな点。いわゆるシンデレラコンプレックス的な「王子様待ち」とは真逆の存在。自分で逃げ出すし、国を救うため女王を殺しに行く。
 象徴的なのが、白雪姫が白馬に単身乗り込むところ。「王子なんて待ってらんねぇ!」って感じが伝わってきてサイコーでした。別に「白馬に乗った王子様」ってのは白雪姫だけのものじゃないんですが、既存のイメージとして確立されてるからこそ出来るシーンですね。
 既存のイメージというか、観客のほぼ100%が知っているであろう「白雪姫は毒リンゴで死ぬが王子様のキスで甦る」という展開。まぁ、ハードコアなグリム童話的にはキスは関係ないらしいですけども、やっぱりキスなイメージですよね。ディズニーは偉大であります。このシーンが、まぁ当然のように本作にもあるんですよ。リンゴというアイテムを出す前に布石となるシーンもあって丁寧な印象でした。まぁ、「はいはい喰ったら死ぬのね」ってのはわかりきってるんですが。そして、悲観した王子(正確には王子じゃないけど)がキスをする。ここで、劇中のキャラたちは当然「キスで魔法が解ける」なんて知らない。なのでキスをしても白雪姫が目を覚まさないことに誰も疑問を抱かない。けど、観てる観客としては「キス利かねぇの!?」ってなるんですよね。そして、満を持して登場するのが本作の本当のヒーローであるクリス ヘムズワース。白雪姫の死体に向かって別れの言葉を投げかけるんですが、観てるこっちとしては「待ってました!!」 「はよキスしてまえ!!」って興奮するんですよね。こういう観客が勝手に物語とは別次元の視点を持っていて、作り手もそれを理解した上で語っているというのはかなりめずらしい体験で楽しかったです。

 まぁ、そんなクリス ヘムズワース。まぁ、マイティー ソーですよね。本作の狩人はムジョルニアを持ってないソーさんって言った風のキャラクターで、ソーファンとしては大満足でした。
 ていうか、原題は『Snow White & the Huntsman』でして、狩人は白雪姫と並ぶタイトルロールなワケです。邦題はなんで狩人を黙殺したんですかね? ちなみに、ディズニー版の原題は「白雪姫と七人の小人」なのに邦題は『白雪姫』ですからね。謎であります。本作の場合は「小人じゃなくて狩人にフィーチャーしますよ」っていう所信表明のようなタイトルなので、消す意味がますますわからないです。
 んで、ソー・・・じゃなくて狩人。すごい魅力的なキャラクターなんですけど、その説明としては「ソーさんだった」で終わってしまうんですよね。本作での武器はオノなんだけど、ガテン系な武器なのが実にソーのイメージの沿われていると思います。
 まぁ、本作の狩人は白雪姫との間にロマンスもあるんですが、父娘のような関係性も築いていたのがおもしろかったですね。
 ただ、問題としては、狩人が魅力的だったもんで、もう1つのルートである王子様(ポジション)のフィリップがすげぇ影薄い、っていうか完全に噛ませ犬にしか見えなかった点。オノ持った狩人と弓の王子ってのは対比が利いてておもしろかったですが・・・・それ以外には特別キャラ立ってなかったです。

 本作を作るに当たって真っ先にキャスティングされたのがラヴェンナ女王役のシャーリーズ セロンだったらしいんですが、それも納得の大ハマリ役でした。
 女王といえば、世界で最も美しいとされていた(過去形)絶世の美女じゃないですか。セロン姐さんは文句のつけようがない絶世の美女でしたよ。
 女王であり魔女であるということで魔女を使う怖い役なんですが、怖い顔も似合うから困りますね。ハイな状態で目ぇひんむいて恫喝する姿がカッコよかったです。
 また、シャーリーズ セロンというと、『モンスター』でブスメイクを施してオスカーを手に取った人なワケで。本作では、魔法の代償として老化が進み醜くなってしまうという役でして、事あるごとに老けメイクがなされてました。ブスになれる超美人ということでシャーリーズ セロンは完全にハマってました。そんなワケで、セロン姐さんの百面相が本作最大の魅力でした。とにかく画面に出てくる度に目を奪われる。ドラキュラがコウモリに化けるみたいに、本作の女王は無数のカラスに化けることが出来るんですが、カラスから戻るシーンがサイコーでした。魔力の使いすぎでコンディション最悪&長距離飛行で疲労困憊っていうカラスから人間の姿に戻るんだけど、カラスが完全に死にかけ・・・っていう死んでるのもいる。そんなカラスの中からセロン姐さんがゼェハァしながら現れるシーンは迫力ありすぎました。観てて「やめたげてよぉ!」って肩入れしたくなる感じ。
 また、本作は悪役描写ってのも丁寧でして。あの女王が魔女化する前の姿が描かれたのに驚きました。男に弄ばれて恨みを募らせた母親が無理矢理娘を魔女(魔法少女ですね)化させるワケですが、望まずして生まれてしまった悪であって、「ラヴェンナちゃんかわいそう・・・」って胸を打つ名シーンとなっていました。

 問題は、女王がすげぇ魅力的であり、スーパー美しいんだけど、クリステン スチュワートにそこまで魅力なかったかなぁ・・・・っていう。別にクリステン スチュワートが嫌いなワケではないんですが、積極的な美女って感じではないじゃないですか。まぁ、もちろん美しさってのは見た目だけじゃないって意味もあったのとは思うんですが。
 それと、物語の前半には女王の魔力が及ばない「黒い森」という不気味ワールドが出てくるんですが、これは「美と醜」の対決の構図になってておもしろかったですね。仲間として出てくる小人たちも小汚くて「美に立ち向かう醜」という構図に燃えていたんですが、その後出てくる妖精の森みたいなトコがすげぇノイズでして。あれいらなくね? 「美と醜」の対立構図がブレますし、「黒い森」ほどの映像的魅力もなかったです。なんかシシ神様(『もののけ姫』)が出てきたのは笑いましたが。案の定敵に撃たれちゃってて、丁寧なオマージュでしたね。


 本作を観る前は白雪ちゃんのバトルヒロイン性に期待していたんですが、観終わってみると女王と狩人に熱狂し、「白雪なんて最初からいらなかったんや!」といった次第。まぁ、ここまでハマれるキャラが2人も出てきたら映画って満足ですよね。
 本作のヒットで早くも続編の製作が決定したそうですが、「魔法の鏡」「毒リンゴ」「蘇生キス」を本作で済ましているのに大丈夫なんでしょうかね。狩人は健在ですが、女王はもういないですし・・・・謎の企画です。
 70点。

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映画『マイティ・ソー』の感想 - 北区の帰宅部

Snow White & the Huntsman (Original Soundtrack)

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