北区の帰宅部の意訳

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映画『思い出のマーニー』の感想

めんまではありません

 ブログに書くべきネタが山積みすぎて火の車なので、そういうから目をそらしてこないだ観た映画の話を。2014年は映画館で観たのは全部書きたいとは思っているんですが、いつの間にか7本くらい溜まってしまっていて‥‥。

 ともかく、『思い出のマーニー』ですよ。『借りぐらしのアリエッティ』の監督ですね。別に嫌いってワケではないけど、あまりハマったワケでもなかった記憶が。テレビ放送も観る気起きなかったですし。
 感想をmixiに書いた記憶があるけど、それを見返すのも億劫なくらい、mixiが縁遠いです。

 途中で、突然『コクリコ坂から』のネタバレします。

  • あらすじ
    • 喘息の療養に行ったら人生変わったww

 タイトルは『思い出のマーニー』なんですけど、英題が「When Marnie was there」なんですよね。多分原作小説のタイトルなんでしょうけど。この英題が、本作を観終わった後だと「なるほど‥‥!」というヒザを打つようなものでして。
 観る前は「あの時あそこにマーニーがいたのよ‥‥」と主人公が回想するノリだと思ってたんですが、実際のトコはもっと単純に「マーニーは過去の人でした」という。ちょっとネタバレっぽいけど、自分はまったく気づかなかったので問題ないですわな。

 ということで、本作はちょっとミステリー要素があるんですね。マーニーの正体について。マーニーは初登場時からずっと「これ現実じゃねぇだろ」という感じで描かれてるので、観ながら常に「?」が脳裏に浮かんでしまう。
 主人公がマーニーの住む屋敷を発見するシーン、人目を逃げてきた主人公が階段か何かを転げ落ちて、起きあがると目の前に美しい屋敷が‥‥という具合なんですが。本作のちょっと前に『渇き。』を観たからってのもあるけど、『不思議の国のアリス』におけるラビットホールだと思うんですよ。この階段コロコロ。だから最初から「不思議の国行きましたよー」という印象があるワケで。
 疑問をも持ちながら観るっつっても、すぐに「どうせイマジナリーフレンドでしょ?」って考えに至るんですよ。多分同じこと考えた人多いんじゃないですかね。なんだけど、本作の中盤で主人公が「想像上の人物だと思ってた」って言うシーンがありまして。主人公も自覚してたのかよ!! こっから一気におもしろくなりました。グイグイ引き込まれる。
 次に考えたのが「お化けなんじゃね?」説。作品の中でお化けの存在は匂わされてたので伏線なのかとも思ったんですが、今になればお化けだと疑わせること自体が計算だった気もします。マーニーはお化けではないけど、まったくのハズレというワケでもないんですよね。当たらずとも遠からず。
 そんなこんなで、作品のミスリードにことごとくハマってしまったのです。だから最後の謎解きが心地いいったらなかったですねw 「そういうことか!! 主人公の目の色こそが伏線だったんや!!!」って心の中でで叫んでました。

 マーニーの正体を知ることで主人公は精神的な成長を遂げるのですよ。友達(リアル)も出来るし、母親との問題も解消。謎解きは楽しいけど、ドラマ的に感動的なのはこちらなんですよね。謎を解くための物語ではなく、物語のための謎解きという感じ。
 ‥‥なんですが、主人公の成長が描かれた後に再び謎解きについての説明が入ってきて、ちょっとクドかったです。「もうマーニーの正体はわかったから!! それよりも色鉛筆が使われてることの方が大事だよ!!!」というのが正直な気持ちで、せっかく感動してたのが少し削がれました。
 ジブリ繋がりだと『コクリコ坂から』でも、「血が繋がってても関係ない!! 好きなのー!!!」って部分が感動的だったのに、その再三にわたって、「本当は血は繋がってないんだよ」「ちょっと念のため別の人にも裏取ってきますね」「繋がってないよ」「これでようやく喜べるぜ‥‥(劇終)」ってなるので、ウンザリしたんですが、ちょっとそれに近い。いや、あれより全然マシですけどね。てか、本作のことは好きですよ。

 ミステリー要素以外で好きだったのは、主人公のコミュ障っぷり。コミュ障描写がリアルっつーか、身につまされました。
 主人公の好きなことは絵を描くことなんですけど、それを人に見られたくないんですよね。映画の冒頭、先生が「ちょっと見せて」って手を伸ばしてくるシーンはちょっとホラーっぽい。この段階では主人公が男性不信なのかと勘違いしたレベル。なんだけど、絵を見られるのは嫌なんだけど、心のどこかで見られたがってる部分もあるんですよね。その後先生が去っていって、「見ねぇのかよ‥‥」って少しガッカリする感じとかすごくイイ。めんどくせぇ‥‥けどちょっとわかるw
 んで、それは療養先に行っても同じで。居場所がないから主人公は絵を描くんですけど、それを見られたくない。てか、その道中に人とすれ違うのも嫌、というレベル。これもね、わかるんですよ。学校の帰り道とか、独りで歩いてる時は気楽でいいんですけど、クラスメイトとか「知ってるけど別に話すことはない」って人とすれ違ったりするのがツラくて‥‥。まぁ、本作の主人公の場合は新天地における人嫌いってのだから例としてはあまり適切じゃないんだけど、あの人目を避ける感じ、他人とは思えないw

 他にコミュ障描写でフレッシュだったのが、陰口。心の中ですけどね。
 誰かとコミュニケーションを取る時に、なるべく波風立たないように済ませるんだけど、その後に心の中で(自分にだけ聞こえるように)言う陰口ってのが結構辛辣なんですよねw ジブリ映画だからどこか優等生的なものを予想してたら全然違ったのでたまげました。
 んで、その陰口が思わず面と向かって言ってしまうのが本作の転換点。デブに言うアレですね。あそこでデブは結構大人な対応取るじゃないですか。アレが余計腹立つんですよねw 「やべっ 本音が出ちゃった‥‥と思ったらなんだこのデブ 優等生な態度取りやがって!!」みたいなw あの時のドンドンこじれてく感じはツボでした。
 
 コミュ障の主人公に初めて(断定)友達が出来る。それがマーニー。
 そんな友達との交流が百合っぽいんですよ。やけにボディタッチ多いし、マーニーの男友達に対する嫉妬とか、超百合っぽい。
 これって多分だけど、今まで友達がいなかったから距離の取り方、友達との付き合い方がよくわかってない、って感じなんじゃないですかね。自分の中でそう考えると腑に落ちまして。主人公がマーニーに依存するのも納得だし、マーニーを客観視するような人物と真の友達になるってのも感動的で、うまい着地です。
 これはコジツケですけど、同性間における常軌を逸した友情、そこに異性が介入することで2人の関係性が崩れ、2人は別れることで成長を遂げる、ってのはブロマンス映画っぽい流れですよね。本作にハマったのはブロマンス映画好きという理由もあったのかな、とか後から思ったり。

 概ね大ハマリした作品なんですけど、1つどうしても飲み込みづらい部分がありまして。主人公が母親を嫌う理由。補助金のくだり。
 アレがまったく理解できなくてですね。「お金もらえるんだったらよくね? お得じゃん」とかのんきに(割とマジで)思ってしまったので、あそこで一気に引いちゃいました。なんかドラマ作るために無理矢理差し込まれたような印象すら受けてしまって。
 まぁ、自分は補助金もらうような境遇ではなかったので、「よくわんねぇw」っつっても無意味だし、そもそもすごく失礼な話なんですけどね。
 冷静に考えると、非現実的な世界(マーニーのいる屋敷)にいた主人公にとって、現実的な補助金というのは対比的だったのかな、とも思います。補助金が嫌いだから、現実離れな存在であるマーニーにハマった、と考えるとうまかった気もしないでもない。けど‥‥むむむ。


 ということで、一部を除けば大変楽しい作品でありました。監督の次回作は「ジブリだから」じゃなくて「『マーニー』の監督だから」という理由で観たくなるレベル。
 80点。

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