北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『ゴーン・ガール』の感想

キス時の演出は使い回し厳禁

 デヴィッド フィンチャー監督最新作。『ゾディアック』くらいからか、「確かにおもしろいけど世間でホメられてる程はハマらないなぁ」というのが続いてたんですが、今回は違った。超おもしれー。

 ネタバレはいつもあるけど、本作は特に注意が必要ですよ。

  • あらすじ
    • 「お前のアゴ嘘くせぇんだよ」

 予告で「失踪事件の容疑が夫にかかる」って内容をやってて、「オイオイそれはネタバレじゃないのかい?」と不安になってたんですが、全然ネタバレじゃなかったです。全然序盤。
 失踪は嫁の自演、というのが発覚してからが面白すぎて目が離せなかったんですが、それが発覚するのもまだまだ中盤ですからね。その先ずっと山場。

 自演計画が明らかになってからは嫁の怪物性に恐れおののきながらそれを楽しむエンタメになるんですね。とにかく頭が切れる、何かを演じて印象操作をする怪物なんですが、すべての面において完璧というワケではないんですよね。そもそも完璧な人だったらクズ夫に捕まりませんから。逃避行中に全財産奪われちゃうし、金を目当てに頼った男が想像以上のキチガイでドン引きしたり。計画が完璧に進行するワケではないから、一瞬は「クソ嫁ザマァァァwww」とか思うんですけど、この嫁があまりにたくましいので再び恐れおののくハメに。てか、この逃避行の間に嫁の怪物性が確実にレベルアップしてますよね。
 一方、夫。次々にクズな事実が発覚していくんですが、自演の事実を知ってからは真っ向勝負することを決意するんですよ。ここで敏腕弁護士を雇ってからが、またおもしろい。印象操作の天才である嫁に対抗すべく弁護士が立てた計画ってのが、印象操作。怪物に対抗するには怪物になるしかないんですな。ここで、テレビ出演に向けて弁護士と修行するんですけど、このグミでの修行シーンが熱いんですよね。なんつうか少年マンガっぽいというか、カンフー映画的にも感じました。修行の成果をブチ壊すトラブル(不倫相手)が起きて師匠がすっかり諦めモードになるんですが、そこでの夫の「やらせてください! やってみせます!!」ってのがマジで熱い。
 そして、印象操作という武器を手にした夫の姿を見た嫁は戦慄‥‥するかと思ったら、なんですかね、ちょっとウットリしてた? ホレ直したってのは言い過ぎかもしれないけど、「やるじゃないの‥‥」と再び彼女の中に火がともったというか。そっからの嫁の新たな計画ってのが恐ろしすぎてヤバイ。殺人という一線を越えてもなお悲劇のヒロインの座を守り続ける印象操作っぷりを発揮。これには夫の師匠も尻尾を巻いて逃げ出すレベル。こうなると、嫁のことは誰にも止められないですね。「あぁーあ‥‥」となったところで劇終。夫婦は経済的、社会的な成功を収めましたとさ‥‥という世間的にはハッピーエンドに見えてるトコが怖いですね。

 基本的にクズvs怪物という構図で、理解の入る込む隙が一切ないようにも見えるんですが、意外と両者に対して感情移入できたのが驚きです。いや、感情移入と言えるほど深くはないかもしれないけど、「わからなくもない」という程度には。
 まず、夫に対しては「嫁こえぇぇ‥‥」という気持ちは誰でも痛いほどわかるでしょう。それに、「自演計画とか絶対許せねぇ」と一念発起する感じもわかる。そして最終的には勝てなくて「もぅマヂ無理‥‥」となるのもそうですよね。夫のクズ性は序盤に釣瓶打ちされるだけなので、映画の観てるうちにそのクス性が別の要素に埋もれていく、という感じですかね。映画に印象操作されてるわw
 嫁。嫁が怪物になったキッカケはやはり夫のクズ性ですので、この気持ちは理解できるでしょう。そして、怪物たる素養を育てたのは親の異常性ですので、それもわかる。子供の頃に「完璧なエイミー」という別人格を被せられたことで、演じることで人々の印象を操作する術を学んでしまったんですよね。

 そんな夫婦を演じたベン アフレックとロザムンド パイクが完璧すぎるハマリ役でした。
 ベンアフの何が素晴らしいって真っ二つに割れたケツアゴでしょう。まさかあのケツアゴが映画の中でもいじられるとはなぁ‥‥劇場で笑いそうになってしまった。
 そして、ハンサムで、人の良さそうなんだけど、なんかバカっぽい、という見た目ですよね。あの写真を取る時のスマイルがもう最高としか言えないでしょう。ついでに、クイズの答えたひらめいた時の「わかった!」もサイコー。笑ったわ。
 写真を快諾して痛い目にあったり、メイクさんに感謝の言葉をかけたら師匠と妹から「あの愛想はいらない」と小言を言われたりする感じもサイコーでした。いい人なんだけどバカ、いい人なんだけど損するタイプってのがこの上なく出てましたよね。

 一方、嫁役のロザムンド パイク。美人なんだけど、どこか地味というか、完璧な美人では決してない感じ。このルックスがこの役にはかなり重要だったのではないでしょうか。
 よく役作りのために太ったり痩せたりすると賞賛されますけど、今回の役は劇中に太りますからね。逃避行中にジャンクフード喰い漁ってぶくぶく太っていく様は圧巻でした。そこから、「夫の元に戻る」という新たな計画を立ててからのダイエットして再び美貌を取り戻していく感じ。そもそもここでダイエットさせられること自体が、ストーカーを利用した計画であるんですよね。スポットライトに当たる準備を整えてるようでした。この変身っぷりが彼女の怪物性を視覚的に伝えてたと思います。
 そして、その取り戻した美貌を血で塗りたくるのが恐ろしいんですよw 最初はワインを股間に塗るくらいで大人しかったんですけど、最終的に抱かれながら人殺してその返り血を自ら浴びる、というか塗りますからね。あのセックスシーンは今年屈指のトラウマシーンですよ。セックスするのになんであんなに不協和音が流れてるんですかww
 ちなみに、今度のアカデミー賞の司会って本作のストーカーなんですよね。ロザムンド パイクが主演女優賞取ったら、スピーチで司会に向かって、「あの時は騙してごめんね」とか言うと思うんだよなぁ。絶対ウケるっしょ。


 ということで、終わり。物語にここまで引き込まれたのは久しぶりかもしれません。それでいて、エイミーという怪物的なキャラクターに魅了されますし、夫の修行にも燃えますし、ベンアフのアゴネタもあるし、とにかく全方位的におもしろかったっすわ。
 90点。

『300<スリーハンドレッド>〜帝国の進撃〜』 - 北区の帰宅部
 今年最強のヒロインはエイミーとアルテミシア様の二強。
 アルテミシア様もセックスシーンが自身の怪物性を象徴するものでしたね。

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映画『タイタンの逆襲』の感想 - 北区の帰宅部
 そういや、この映画でバトルヒロインやってたんですね、ロザムンド パイク。
 おもしろのベクトルが別方向ですけど、こっちも大好きな映画ですよ。

 「逆さまキスは2人だけのものなのにー!」というキス時の演出使い回しブチギレ映画。