北区の帰宅部

映画の感想を書きます(嘘&希望)

『ビッグ・アイズ』の感想

ありがとう有楽座

 有楽座が閉館になるそうで。寂しくなりますね。
 映画とまったく関係なくなるんだけど、有楽座の思い出といったら、東日本大震災の直後に『塔の上のラプンツェル』を観に行ったのが一番印象的です。あの頃「映画館は危ない」みたいな話もあったんですよね(崩壊的な意味で)。気にせず観に行ってよかったです。震災直後のドンヨリとして何も手につかないような気持ちが救われた気がしました。3D字幕をやってる場所が少ないのもあって有楽座に行ったんですが、そういう意味でもありがたかったです。

  • あらすじ
    • 嫁「私が描きました」
    • 夫「私が描きました」

 嫁の描いた絵を夫が自分が描いたものとして売り出していた、というトンデモ実話の映画化。その監督がティム バートンってのが味わい深いですね。思うところがあった、というか怒りが人一番だったんですかねぇ‥‥とか勝手に考えてしまいます。
 まぁ、そこにティム バートンの離婚がどうこう‥‥と結びつけると邪推になりますね。陰謀論的な話としては好きなんですけどw

 アカデミー賞ではノミネートせれなかったのが驚きなのが主演の夫婦役2人。個人的には特にクリストフ ヴァルツが好きでしたねぇ。最初から芝居がかった仕草が特徴的だったキャラなんですが、物語の進行と共にそれが増大していって‥‥ラストの裁判シーンは完全にクリストフ ヴァルツの独演会。彼の大仰な身振り手振りに裁判官が、「HA?」ってなってるのが超笑えました。あの裁判官の人好きっすねぇ。
 そもそも現在のクリストフ ヴァルツの役者としての位置は『イングロリアス バスターズ』でタランティーノにフックアップされたことに起因すると思います。そんなタランティーノ作品で2作連続のオスカー受賞という偉業を遂げてるワケですが、『イングロリアス バスターズ』『ジャンゴ』の両方とも彼の役は「喋り」が印象的なんですよ。まぁ、タランティーノ作品はいつだって「喋り」が重要なんですが、各作品において最も口が達者なキャラを演じてるのがクリストフ ヴァルツだと思います。悪玉善玉の違いはありますが、「喋り」の人、という印象が強いです。
 そんなクリストフ ヴァルツが『ビッグアイズ』では大嘘吐きの役ですからね。そりゃハマるわけだわw 前半では好感の持てる調子のいい男だったのが、終盤にある恐怖のマッチおじさん、そして裁判所での独演会まで、演じ分けてるからスゴかったですね。まぁ、これは見てるこっちが勝手に違った印象を受けてるだけ、という可能性もありますが。
 タランティーノはヴァルツのことを「俺のミューズだ」と言ってますので、この2人を夫婦に見立てると、本作のウォルター&マーガレット キーン夫婦とは対照的でおもしろい‥‥ってのは少しこじつけ臭いですねw

 クリストフ ヴァルツが好きだから、という理由かもしれませんが、結構このキャラには肩入れしたくなるような部分もありまして。女性の地位が著しく低かった時代というのもあり、「口が達者な夫が描いたことにするのも悪くないんじゃないか?」とか思っちゃったんですよね。情けない話ですが。嫁への感情移入というのもあるんですかね。
 なにせ、懺悔室に駆け込んでも「夫が正しい」とか言われちゃう時代ですからね。あのシーンは心底驚きました。ブッ殺してやろうか!!!(こないだ観た『シンシティ』の影響)
 個人的に美術界に対して胡散臭く思ってるのも大きいんですが、もしも夫に騙されなかったら彼女の絵は本当に売れたのだろうか、とか思ってしまうのですよ。もちろん、遅かれ少なからずの評価は得られたと思います。劇中、アンディー ウォーホルの評価が引用されてた通り彼女の絵には魅力があって、その魅力がヒットの最大の要因だったんでしょう。とはいえ、ここまでの一大ブーム、それこそ万博に起用されるようなレベルにまでなったのだろうか、と。『イグジットスルーザギフトショップ』とかを思い出して、「美術界ってバカだな」って考えが傾いてるせいかもしれませんがw
 夫婦が出会う序盤のフリマ(?)のシーンで、彼女は自分の絵を安売りしてましたけど、あんな感じで絵の持つ魅力にふさわしい評価までは得られなかったんじゃないかなぁ‥‥とかとか。

 同じくクリストフ ヴァルツ大好きという話と少し繋がるんですが、エンドクレジットで語られた映画外の実話の部分が個人的には少しノイズでした。エイミー アダムスが実際のマーガレット キーンとにっこり記念撮影してるのは好きなんですけどね。「おおっ タイムスリップした!!」みたいな不思議な感じ。
 気になったのは、夫の方。意訳すると、「あのクソヤローは無一文のまま死にやがった!! ザマァwwww」って出てくるんですよね。ちょっとコレを見て、「亡くなった人に対してちょっと言い過ぎなんじゃあ‥‥」みたいな気がしてしまったんですよ。そもそも映画と実在の話は完全にイコールではないので、「そもそも実在のウォルター キーンがどういうクズなのかは知らないし‥‥」という感じです。もちろん、嫁の絵を自分のものだと言い張ったのは事実だろうし、それは許し難い話だとは思うんですけど、けど映画の夫婦と現実の夫婦は別物だからなぁ‥‥。
 少し話がそれますが、絵本体ではなく絵のコピーで儲ける、というビジネスモデルは美術界的に革命的だったワケじゃないですか。その部分は評価されていいんじゃないかな‥‥とか同情的なことを思わないこともないです。まぁ、それだけクリストフ ヴァルツが好きだったということで。


 ということで、終わり。とにもかくにもヴァルツヴァルツヴァルツ!!という楽しい映画でした。「戦災孤児のくだりとか現在の日本でも通用しそうだよなぁ」とか思ったりもして、爆笑しつつも不安な気持ちになりましたw
 80点。

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 この作品の懺悔室のシーンに出てくるのは原作者であり監督のフランク ミラーなんですよね。つまり、作品世界おける神のような人。それを教会で殺すww