北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『セッション』の感想

 まだまだ春の映画ですね。『イミテーションゲーム』に続きオスカー関連作。今回のオスカー……前回の方が正しいか。前回のオスカーは『バードマン』も好きなんですが、一番好きなのは『セッション』ですね。ホントおもしろかったです。

  • あらすじ
    • 「JKリフレか……行ってみよ」
    • 「ファッキンテンポ!!」

 話としては少年(青年?)が鬼教師と出会っていろいろあって成長する、という感じでしょうか。一種の師弟モノといえるかもしれません。まぁ、師匠がクズなんですがw
 その師匠がね、初レッスンの前に主人公に対して壁ドンするんですよ。もう最近はブームも冷めたっぽいですが、公開当時は割とチヤホヤされてました。壁ドン。その壁ドンがね、怖いんですよ。「はーい捕まえた」みたいな意味にしか思えなくて。オリに入れられたような感覚なんですよね。まぁ、恋愛モノにおける壁ドンも「彼に支配されたい!」的な需要なのかもしれませんので意味するものは同じかもしれないんですが、よく考えたら怖い。本当は怖い壁ドン童話。
 師匠がクズなんですけど、影響力は絶大でして、主人公は次第に感化されていくんですね。それで一定の所までは一応成長もする。セリフの中に「ファッキン」とかが増えてきたりして、影響はモロです。そして最終的には師匠のクズさに気づき、打倒する。今コレ書きながら思い出したんですけど『ウォール街』みたいな話ですね。まぁ、『ウォール街』と違うのは話題になったラストシーンでして。師弟でのガチンコの殴り合い、殺し合いがあるんですよね。比喩ですが。これがよかった。とにかくよかった。『ウォール街』では主人公がチクって勝利しましたが、『セッション』ではそのチクリ後、ゴードンゲッコーが「チクりやがったな」と復讐に来る感じ。いや、『ウォール街』にちゃんとした続編はあるんですけど。
 そんなラストシーン。人によってはスパルタ賛美に見えたのかもしれません。そんな意見も少し目にしました。個人的には全然そうは思いませんでしたけどね。むしろワタクシとしては、世にはびこるスパルタ賛美の物語へのアンチのようにすら見えたんですよ。それが気持ちよかった。
 まず、主人公がチクって師匠が職を失う。師弟ともに地に落ちた状態で再会し「あの頃はよかったよなーもっかいやらない?(意訳)」となるんですが、ここがスパルタ賛美にあたるパートだと思います。よくある「あの頃キツイ思いをしたから今の自分がある」的なあまい話。そっから『セッション』では師匠が陰湿な策を仕掛けてきまして、それが例の「チクったのお前だろ」から始まるラストシーン。この瞬間ですね、ワタクシはすんごい気持ちよかったんですよ。いや、胸糞悪いですよ。すげぇムカツクんですけど、それと同時に「あーよかったやっぱりコイツはクソだ」という安心感を得られたというか。昔嫌いだった人のことを冷静になってから振り返ったらいい人だった、みたいな話は聞きたくないんですよ。更生した不良を見て気分悪くなるあの感じ。クソはクソ、クソのままでいてくれてありがとう。「やっぱりあの時のオレの判断は正しかった!!」というちょっとしたカタルシス。まぁ、それであの頃と同じような思いをさせられたままなら昔を思い出して不快なんですけど、本作では主人公が「やってやるよ!!」とカウンターを繰り出すので本当に気持ちがいい。しかも、お誂え向きに慰めに来た父から離れてステージに向かうんですよね。親の元から旅立つという通過儀礼にもなってると思います。アイツを殺して大人に生まれ変わる、的な。いやぁ、燃えますねぇ。思い出すだけでイイですねぇ。んで、師匠が支配していた楽団をいちドラマーでしかない主人公が支配し返すことで下克上を果たす、という。スカッとしますわw このラストの攻防がセリフを介さず行われるのも素晴らしかったですね。2人とも腕をブンブン振るんでマジで殴り合いのように錯覚しかけますし。いや、むしろよくあの状況でリアルに殴らなかったですよねw まぁ、以前に殴ってるので、殴らなくなるという成長もあるのかな。

 あとね、割とどうでもいい話かもしれないんですが、ヒロインがめっちゃ可愛かったです。なにあの子、好きになるに決まってるやん。あんな子が映画館でポップコーン売ってるんですよ。世の映画好きを殺しに来てますやん。見事死にましたw
 まぁ、そんなヒロインに魅了されればされるほど、ヒロインのことを蔑ろにする主人公のクズ性に気づかされるというか。師匠はクズだけど、だからといって主人公が良いヤツというワケでは全然ないんですよねw
 もちろん、ヒロインは映画に花を添えるだけの存在ではなくて、しっかり物語の一要素になっています。ろくにナンパも出来なかった主人公が自信を得た途端ナンパするようになり、師匠の鬼教育にハマり闇に堕ちて行くに従って彼女への扱いも悪くなる。まぁ、最後によくなったとは言えないかw あれは怪物を倒そうとすると自身も怪物になっちゃうよ、みたいなニーチェ的な何かでどうかひとつ……(逃走)


 ということで終わり。とにかく面白かったです。大好き。観るのに体力使う系の映画かもしれませんが、また観たいなぁ。映画の出来に直接関係ないかもしれませんが「ファッキンテンポ」みたいな流行語があるとイイですよねぇ。他にも「1,2,3,4……1,2,3,4……」のシーンも脳裏にこびりつきますし。いやーよかったっすわ。当時近い時期に『ワイルドスピードSKY MISSION』観たせいもあり、「世界はハゲで回ってる……」みたいな錯覚に陥りますわ。ヒマがあったら、このハゲがすごい!2015とか作りたいっすわw(やるとは言ってない)

 このハゲがすごい!2015の筆頭映画。ハゲにハゲが加わってきたシリーズにハゲで有名なあのハゲが!!という素晴らしい作品。まぁ、マジメっぽく語るならばハゲは男性性、マッチョ性の象徴的なことですかね。象徴も何もここのハゲみんなマッチョじゃねぇか!!って話なんですがw