北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『ブリッジ・オブ・スパイ』の感想

ロッキー最強のライバル

 2016年の映画初めです。おもしろい映画から始まってよかったです。
 スピルバーグは漠然と好きだけど、全部観てるワケでも「私とスピルバーグ」が語れるほどでもなく、微妙ですね。新作来たら「とりあえず観よう」とはなりますけどね。

 2015年の作品で大好きなヤツとかは感想書こうとは思ってるんですけど、とりあえず2016年の作品の方を優先したい気はあります。今年は劇場鑑賞作のすべてを書ければいいんですけどねぇw

  • あらすじ
    • 「怖くないの?」
    • 「それが役に立つか?」

 本作で一番ドンバマリしたのはソ連のスパイ、アベルを演じたマーク ライランスでして、もう魅了されたのなんの。ものすごーく地味に見えるけど、要所要所で見えるプロ感ですよね。そんなアベルと主人公の弁護士との間に芽生える友情に大感動ですよ。
 そんなワケで本作を観た帰り道で「今年のオスカー助演男優はマーク ライランス! はい決まり!!」とか思ったんですよ。スピルバーグの次回作にも出るらしいですけど、ブレイク間違いなしですよね。なんですけど、よくよく考えたら今年の助演男優賞ってシルベスター スタローンがいるんですよね。『クリード』のロッキー超よかったんですよねぇ……マジか、オスカーのノミネートが発表された時は『クリード』後『ブリッジオブスパイ』前、という感じだったんですけど、その時はちょっとしたロッキー祭りみたいなテンションになってたんですよ。てか、そういう人多かったと思うんですけど、まさか被るとはなぁ……。どっちにも取ってほしいんですけど、どちらかしか取れないんですよねぇ……(当たり前)。
 マジ悩ましいです。

 本作でマーク ライランスにガツーン!とやられてしまったのはオープニングシーンでして。絵を描いてるトコから捕まるトコまでの一連の流れ。最初にテロップで「冷戦はスパイ戦争だったんやで」みたいなことを説明されて、劇が実際に始まると冴えないオッサンが出てくるじゃないですか。鏡と絵と絵を描いてるオッサン、というので複数の顔を持つ男、って表現なのかもしれないけど、地味じゃないですか。正直「スパイなんだろうけどこの人スゴイの?」とかボンヤリ思ってました。そしたら、河原で絵を描いてたと思ったら、ベンチからコインを受け取って。ここで、「おおっ スパイっぽいやんけ!!」と結構テンション上がりました。その後のコインから情報を引き出す部分もよかったんですけど、何といっても捕まるシーンですよ。風呂場からブリーフ一丁で出てくる間抜けさも素晴らしいんですが、そこから証拠を隠滅するのがスゴイんですよ。事情を飲み込めてない小市民を演じてるかと思ったら趣味の絵画を巧みに利用して暗号を塗り潰す。
 もうここで完全にノックアウトされてしまいましたよ。心酔してしまったというか。2015年はやたらとスパイ映画が公開された年だったと思うんですけど、いわゆる007的なスパイですからね。『ブリッジオブスパイ』のスパイってすぐに捕まっちゃうからスパイ活動ってココしか描かれないんですけど、たったワンシーンで「本物ってこういうのか……」と衝撃でした。オープニングでかまされると映画全体が好きになっちゃいますよねぇ。最初って大事ですよね。

 序盤の話ばっかで申し訳ないんですけど、主人公トム ハンクス演じる弁護士のドノヴァンの食事シーンも好きだったんですよ。彼がどんな人物で、どんな家庭を持っていて、部下との関係はどうか、仕事に対する姿勢、その仕事に対する家族からの風当たりの強さ、というのがもう一発で分かるじゃないですか。娘に「今日はデートじゃなかったのか?」「忙しいって断られた」「バカなヤツだな」とか言われてた彼氏が主人公の部下で、仕事の話で食卓が険悪になった最悪のタイミングで入ってくるとか、超おもしろいじゃないですか。
 そんな食事シーンで家族がバラバラなことが語られるんだけど、ラストには家族に認められる、という感動もよかったですね。マーマレイドのくだりとかもクスッとしますし。


 ということで終わり。序盤の話しかしてないけど、全体的におもしろかったですよ。むしろドイツ行ってからの方がおもしろいですし。一見地味な話なんですけど、結構エンタメ要素もあったりして、全然飽きたりしませんね。ソ連の偽家族みたいな爆笑ポイントもありますし。『リンカーン』はぶっちゃけ「オレには教養が足りない!」という感じだったんですけど、本作はハマりました。
 とにかくマーク ライランスにオスカー助演男優賞とってほしいですねぇ。あっ、けどスタローンも……。

 思えば『リンカーン』でも主演よりも助演男優派だった気がします。トミーリージョーンズには泣かされました。