北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『塔の上のラプンツェル』の感想


「フライパン=最強の武器」というのは『マリオRPG』と同じ発想ですね


 ワタクシ、2010年の映画では『プリンセスと魔法のキス』が一番好きなんですが、となれば当然楽しみな『塔の上のラプンツェル』。
 しかもタランティーノが年間ベスト10だか20に選んだっていうんで、期待値は天井知らず。

 TOHOシネマズ有楽座で観ましたよ。3D字幕。
 中川翔子自体は好きなんだけど、日本語ミュージカルは苦手なんで字幕で観れてよかったです。

 今回は脱線も多い、長くなった挙げ句支離滅裂になると思いますが、勘弁して下さい。

 アメリカでのタイトルは『Tangled』。
 意味としては「こんがらがった」とか「からまった」とか。髪長姫であるラプンツェルの髪の毛のことなんですが。
 元々考えられていたタイトルはそのまま「ラプンツェル」なんですよね。それが「Tangled」に変更させられた。
 ディズニーの前作『プリンセスと魔法のキス』が「女子人気しか取れなくて期待したほど集客できなかった」っていうディズニーのお偉方の判断らしいです。そのため、ラプンツェルの髪の毛に絡まれる男目線の意味合いもある「Tangled」になったと。
 「男が絡まれる」というのは、日本人としては考えられない発想ですね。まぁ、ディズニーアニメが触手モノだったら爆笑ですが。
 そもそもプリンセスと魔法のキス』に関しては女子人気というより黒人が主人公ってこととかのが関係ある気もするんですけどね。

 正直本作は少し不安だったんですよ。
 前作『プリンセスと魔法のキス』が大好きな理由の1つが、手書きアニメという点なんだけど、今回はCGアニメ。
 さらに前作の大きな魅力であるディズニー否定として、黒人のヒロイン、王族のいないアメリカが舞台、そして「星になんか願わねぇ!」「金のためならカエルとだってキスしてやるわよ!」というぶっ飛んだキャラクターがあったんですが。
 本作では、どこぞの王国が舞台で、白人金髪ナチュラルボーンプリンセスのヒロインですからね。そら不安にもなります。しかも冒頭、しっかりと窓から星を眺めるシーンがある。動物の友達も出てくる。ディズニーのプリンセス物語としてド真ん中すぎる内容なんですね。「急にディズニー要素が濃縮されてるけど、大丈夫か?」とか思ってました。不安でした。が・・・・・・・・・・・とんでもない傑作だったと。

 近年のディズニーのヒット作といったら、ディズニーアニメの定番を自虐ネタにした『魔法にかけられて』、ディズニーというかピクサーみたいな『ボルト』、ディズニー批判から始まる『プリンセスと魔法のキス』。もうディズニーアニメというものをメタ視点で描くしかなかったんですね。
 そんな中、本作では直球ド真ん中のディズニープリンセスを描く。本作はディズニー長編アニメ50作目であり、本作でプリンセスアニメは一旦終了とディズニーは発表してるワケですよ。これはディズニーさんの意地ですね。「散々ネタにしやがってバカヤロー!!」ってことですね。
 音楽がアラン メンケンが担当してるのもそんなところでしょう。

 ちなみに髪長姫についてですが。元の物語はなかなかのトンデモでおもしろそうですね。
 が、ワタクシは髪長姫なんてまったく知らなかったです。『シュレック3』に出てきたのを見て初めてその存在を知りました。
 ちなみに、『シュレック3』での髪長姫は、悪役でして。白雪姫、シンデレラ、眠れる森の美女たちを裏切ってチャーミング王子と共におとぎの国を乗っ取ろうとする役です。これは、おそらく『シュレック3』製作時に、髪長姫だけがディズニーでアニメ化されてない、という事実を元にしてると思うんですが。しかも、この髪長姫はヅラっていうね。



   あらすじ
魔法の髪の毛を持って生まれたラプンツェル
魔法の力で不老不死を得ようとしたババアが赤子のラプ子を誘拐
とある孤塔で我が子として育てる
18歳になったラプ子は自分の誕生日に空に浮かぶ不思議な灯りを近くで見るためババアに内緒で旅に出る
盗人のフリンに案内を頼む



 本作の一番の特徴といえばラプ子の髪の毛。なんといっても髪長姫ですから。
 本作を作るために「ラプ子の超ロングヘアー計算ソフト」が開発されたそうです。本作におけるラプ子の髪の毛ってのはラプ子の意志で髪の毛の端々まで操れるといったものではないんですね。『ワンピース』のCP9とはちょっと違います。
 髪の毛は基本的に、ラプ子が投げる、結ぶ、といった風に扱うだけ。しかし、このラプ子の操る様、そして操られる髪の毛の動きがスゴイんですね。絵が動くだけで楽しいんだからアニメとしては大満足ですよ。

 ディズニーアニメといったら動物の友達ですが。
 本作にもちゃんと出てくる。カメレオンと馬。特にカメレオン。どう考えてもアニメ映えする動物だけど、ディズニーアニメとなるとさらに映える。まーかわいい。メチャクチャ魅力的。
 逆にいうと、超魅力的だっただけにもう少し活躍してほしかったような気もしないではない。
 カメレオン、CGアニメといえば『ランゴ』も楽しみですね。ディズニー関係ないけど。あれはどこだったか。ILMだっけか。

 気になったことといえば、ババアとラプ子の疑似親子関係。
 ババアは私欲のためにラプ子を育ててるとはいえ、前半の2人のやり取りを見る限り、愛情があるような気がするんだよね。
 塔を離れたラプ子がしばらくの間「外の世界サイコー!」→「心配するんじゃないかしら・・・」→「外の世界サイコー!」・・・・・・・っていうループを繰り返すのもラプ子がババアのことを恨んではいない、って証拠だし。
 塔を離れたものの、ラプ子に危険が迫ってると感じて急いで塔に戻るババアの焦りぶりは本物の母親のそれと思いました。
 ところが、そこらへんは全然描かれないんだよね。ラプ子も真実を知るとすぐにババアを敵対視するし。あそこでババア泣いてもおかしくないよ。まぁ、実際は悲しむ素振りもなく極悪老婆ぶりを発揮するだけなんだけどね。
 この極悪老婆となった姿はまさに「ディズニーアニメの悪役」といった風の見た目で。『白雪姫』のババアとそっくり。ババアの死に様もディズニーの伝統通り。勝手に落ちて死ぬ、っていうね。


レッドクリフ後編』でもお馴染みの孔明

 ディズニーアニメのミュージカルといえば、毎度ある名シーン。前作『プリンセスと魔法のキス』ではホタルのライトアップ&歌唱の中2人が踊る、という『美女と野獣』っぽい感じだったけど。
 本作では、城と城下町全体から放たれる孔明灯をボートの上から眺める2人がデュエットする、というもの。絶景の中デュエットっていうのは『アラジン』っぽいかな。相思相愛でデュエット成立、というディズニーの鉄板コース。
 このシーンがまーーキレイなんですね。映像的にもこの上ないし。ラプ子の夢が叶い、男のラプ子への思いが確固たるものになる瞬間。「君が僕の新しい夢なんだ」っていう口説き文句は最強だと思いますよ。また「夢」というのは物語全体で何度も出てくるキーワードでねぇ、フリも利いてる。あのシチュエーションであんなこと言われたら男でもホレる。
 もうね、このシーンがロマンチックすぎて。「はよキスしてまえ!!」となりました。
 ・・・・・けど、しないんだよねぇ。デュズニーさんじらすわぁ!

 本作のタイトルが「Tangled」で男目線がフィーチャーされてるって話はしたけど。それは本当で。
 本作の開始と終了時にはナレーションがあるんだけど。このナレーションはどちらもフリンの声なんだよね。本作はフリンの物語と印象づけられる。
 普通、ディズニーのプリンセス映画って、不遇の状況にいた女の子がなんだかんだあって王子様と恋に落ちる話じゃないですか。んで、最終的にプリンセスになるって感じでしょ。
 ところがラプ子は生まれながらにプリンセスなんですよ。そういう意味では、本作は、夢も持たずに生きてきたただの男がとある王女と恋に落ち、最終的に王子様になる物語なんですよ。しかも、フリンというのは偽名でラプ子と出会い、初めて本名を明かす。それまでの男は本当の姿じゃなかったんですよ。ラプ子と出会うことで本当の自分になれる。そこでラプ子が「私はそっちが好きだわ」って言ってくれるんですよね。ラプ子はもはや天使ですね。
 そして、本当の自分になることのできた男は最終的に文字通り「白馬の王子様」になり、ラプ子のピンチを救いに行く。王子様誕生物語としてこのシーンは究極のカタルシス



 とにかく、サイコーです。文句ないです。
 今のところ、2011年の名ヒロインというのを思い返してみると、『グリーン ホーネット』のカトー、『イップマン1&2』の池内博之とサモハン、と野郎ばっかりなんですね。しかもみんなカンフーやら空手やらで強くて。まぁ、もちろんどれも魅力的なヒロインとして間違いないんですが。やはり女がいい。
 そんなところに舞い降りたラプンツェル。塔の外の世界を無知ということで「俺色に染めてやるぜ」という光源氏的願望も満たす安心設計の究極ヒロイン。しかも女性としての花嫁修業は積まれてる18歳の無知の少女、という都合のよすぎるヒロイン。
 という男向けのヒロイン像に見えつつも、「うちに引きこもってても王子様は現れない。自ら外に出て、王子様は作るもの」という女性向けのメッセージも込められていて素晴らしい。隙がなさすぎますね。
 ディズニーサイコー!!!
 90点。