北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『スコット・ピルグリム VS.邪悪な元カレ軍団』の感想


脇役が魅力的すぎて本編に入り込めない


 渋谷のシネマライズにて。話題の映画『スコット ピルグリム』。
 『ショーン オブ ザ デッド』『ホット ファズ』でお馴染みのエドガー ライト監督作。『ホット ファズ』の時同様、当初は日本公開が絶望的→署名運動によって日本公開決定。
 ちょっと、署名待ちみたいな気がして少し嫌。普通に公開しろよ。
 あと、邦題が恥ずかしい。まぁ、チケット交換の時は「『スコット ピルグリム』下さい」で済むからいいけど。

 ちなみに、エドガー ライト監督のハリウッド進出作ながら、アメリカでは大コケ。
 こないだの『エンジェル ウォーズ』同様作者の脳内妄想爆発映画なので、アメリカではこういうのはウケないのかな?とか思ってしまう。アメリカ人も大したことないですね。

 『エンジェル ウォーズ』は監督の完全オリジナル脚本なのに対し、本作は原作コミックが存在します。なので、原作者の脳内を、監督の妄想で描いたような作品、ということに。
 原作は知らないんだけど、話を聞く限り、主人公のキャラクターがかなり変更されてるとか。原作では結構熱血なのが、映画ではマイケル セラ。
 ・・・出ました! マイケル セラ。もやし力a.k.a.童貞力に定評のある役者。日本未公開でソフト化もされてない『ユース イン レボルト』が早く観たいです。



   あらすじ
無職のバンドマンのスコット ピルグリム
ある日夢に見た女の子ラモーナに恋をする
しかし、ラモーナと付き合うためには、ラモーナの元恋人7人と戦い、勝利しなければならないのであった



 まず、本作の一番の特徴として、その世界観。予告を観りゃ一発でわかる本作の歪さ。
 実写映画なのに、効果線がある、集中線がある、オノマトペが文字として飛び出す、キスをするとハートが飛び出す、バトルが始まると格ゲー風の構図になり「READY? GO!!!」って出る、敵を倒すとコインになる。

 とにかく、ゲームとマンガが大好きなんですね。
 ゲームへのオマージュが炸裂した原作コミックを実写化する際にマンガ的な描き方を取り入れたので、マンガとゲーム風の映像が満載の実写映画になりました。

 んで、元ネタ探しをするだけでもお腹いっぱいになるくらいに大量の元ネタが存在する本作なんですが。ここで、元ネタを紹介するには知識が足りないのでやめます。
 元ネタに関しては、発売中の映画秘宝での特集が素晴らしい出来です。そして、意外なほどに馴染みのある元ネタが多くて、日本の偉大さを実感します。

 そんなゲーム的な描き方なんだけど、これが笑えると同時にカッコイイんだよね。やり過ぎな威力と音にハマってしまった。
 ゲームの実写化というよりは、ゲームの世界に実写の人間が入り込んでしまった、という感じ。
 実写人間が『ストリート ファイター』してるのとか、すげぇカッコイイ。

 劇中、1機アップネタというのも登場する。
 本作では、敵を倒すと、敵はコインになって消滅する。そしてそのコインを大量に集めると1機アップアイテムが現れるんですね。当然、主人公の顔したアイテムが。
 このアイテムはただのギャグじゃなくて、ラストの重要なシーンへの伏線となってる。

 まぁ、1機アップが伏線って言った時点でネタバレですが。
 ・・・・死ぬんですよね。スコットは。ボス戦で。そんで、生き返るんだけど、ステージの最初からやり直し。ここで、スコットはボスにたどり着くまでの過程をもの凄く雑にこなす。ザコは瞬殺し、イベントはAボタン連打でスルー、っていう。もう身に覚えがありすぎて戦慄した。ある意味で、テレビゲームの映画化においてもっとも成功してるシーン。

 主人公のスコット ピルグリムを演じるマイケル セラについてなんですが。
 本作でも相変わらずなモテなさそうな雰囲気が魅力的。デートでゲーセン行って本気でプレイしてるシーンは笑える。しかもそのゲームが「ニンジャニンジャレボリューション」っていうね。もちろん『ダンスダンスレボリューション』が元ネタ。
 恋人とゲーセンで『ダンスダンスレボリューション』やる、ってそれ『ベストキッド』でウィル スミスの子供がやってたデートと同じだよ!!

 他にも、女のコに対する口説き文句ってのが「『パックマン』って知ってるだろ? 名前の由来は日本語なんだぜ」っていう。カナダ人です。

 そんな安定感のあるモテなさのマイケル セラなんだけど。
 本作の主人公スコット ピルグリムってのは実はモテてるんだよね。女子高生の恋人がいて、そのくせ違う女に一目惚れして二股をかける、っていう。
 しかも、同じバンドのドラマーのコとも昔付き合っていて、その他にも有名バンドのボーカルが元カノだったり、その上美人の妹までいる、という。

 リア充すぎて眩しい!!!!
 目がああぁぁぁぁぁぁーーーっっ!!!!!!!

 みたいなね。とてもじゃないけど、マイケル セラとは思えない充実ぶり。
 モテないギャグみたいなのがあって、爆笑してたけど、実は笑えないよ。これは映画として欠点。『らんま1/2』みたいなラブコメバトルをやりたいのはわかるけど、ラブコメバトルは好きだけど、マイケル セラのモテない力とは食い合わせ悪いでしょ。
 マイケル セラだけならいいんだけど、明らかにモテない男ギャグみたいなのもやってるし。思い返すと全然笑えなくなっちゃう。モテてるからね。

 その代わり、ヒロイン勢はみんな魅力的でしたよ。『らんま1/2』的なラブコメバトルとしては魅力的なヒロイン勢は不可欠ですね。「やっぱシャンプーだよなぁ」 「いやいや、うっちゃんだろ!」みたいな口論が生まれる余地がある。
 メイン以外のヒロイン勢が役は少ないながらも魅力的、というのは大変素晴らしいです。ドラマーのコとか、レズビアンのコとかすげぇよかったです。

 妹もいるんだけど、妹役のアナ ケンドリックは『マイレージマイライフ』のカラオケシーンがあまりにかわいかったので、それと比べると少し魅力が足りなかったような気がします。

 ヒロインというと、メインのラモーナ。メアリー エリザベス ウィンステッドが演じております。
 この人はアレだね。『デスプルーフ』のチアリーダー役役だった人。ワタクシ、『デスプルーフ』での彼女はかなりタイプだったんで、本作も期待しておりました。
 本作だと、ムチムチ系になったような印象だけど、コロコロ変わる奇抜な髪の色も似合っておりました。巨大ハンマー(元ネタは『ドンキーコング』のマリオ)を使ったバトルもよかったです。

 が、しかし!!
 ラモーナなんてどうだってよかった。本作の真のヒロインは別にいた。
 それがアジア系のヒロイン、ナイブス。映画の冒頭でスコットと付き合っていた女子高生。(多分)箱入り娘で無職のバンドマンのスコットにホレ、感化されまくる。スコットはスゴイ人、との思い込み故に、スコットのオタクな趣味にのめり込む。
 最初はね、なにも知らないからスコットに騙された残念なコ、みたいな印象なんですよ。けど、オタクな趣味に本心で付き合ってくれる女子高生の恋人って都合よすぎるでしょ。そんな彼女をスコットは振るですよ。ラモーナにホレたとかいう理由で。その後、ナイブスはスコットへの思いが忘れられず、ストーカー化。半ばヤンデレのような感じに。
 この、恋は盲目というか猪突猛進型の行動がかわいらしいんですね。ラモーナが髪を染めてると知れば自分も髪を染め、ラモーナが短髪と知れば髪を切る。この染めた髪、切った髪型ってのがまぁー似合ってない。全然似合ってないのが、逆にかわいらしかったりして。
 そして、物語の終盤、スコットが最後の元カレとの戦いの最中、日本刀を持ったナイブスが乱入(格ゲー的な意味で)。そして、スコットとナイブスが力を合わせてラスボスに戦いを挑む。ここでのバトルが、例の「ニンジャニンジャレボリューション」の動きとシンクロするんですね。2人の愛の連携技が決まるワケです。ラモーナには決してマネのできない連携が。

 まぁ、そんなこんなでいつの間にかワタクシの中でのヒロイン比重が「ナイブス>ラモーナ」になっておりまして。そして、さらにしばらくするとナイブスの魅力にどっぷりとハマってしまいした。
 最終的には、ナイブスがかわいすぎて生きるのがツライ・・・・・・。

 それだけ、魅力的なヒロインがいることは素晴らしいんですよ。正直、ナイブスがいるだけで本作はお腹いっぱいです。
 ただ、ナイブスが魅力的であればあるほど、物語への没入度は減退するんですよね。あんなにかわいらしいナイブスを無視してラモーナに恋するスコットがまったく理解できない。そもそもスコットがラモーナに恋をするキッカケというのも理屈を超越した描かれ方をしてるんで、そもそも弱いんですよ。ラモーナがスコットのことをどう思ってるのかも弱い。
 そこに魅力的なナイブスですよ。もう、ナイブスを選ばないとかワケわかんない。ナイブス一択です。
 ・・・・・・・・まぁ、つまり本編を楽しむのに支障をきたす程にナイブスの魅力にやられてしまったというワケで。


 まぁ、ナイブスの件はほっておいても、オススメですよ。
 笑えますし、ゲームの元ネタ探すのも楽しいし、ヒロインはみんなかわいいし。それに、この手のコメディーで下ネタがないってのもめずらしい気がする。
 すげぇ、マニアックで変化球極まりない感じがあるけど、実は万人向けな気がする。特に日本においては。ゲームっつってもファミコンの時代のネタとかも多いし。日本のゲームのネタも多い。
 まぁ、予告観て、クスリとでもしたらなら観に行くといいと思いますよ。
 85点。