北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』の感想


座右の銘 All for ore


 ウェス アンダーソンでもポール トマス アンダーソンでもなく、ポール W S アンダーソン監督作品。偉大なアンダーソンたちのおかげで「ダメな方」という愛称でお馴染みの。
 最近はミラ ジョヴォヴィッチ(嫁)を3Dで撮影することに躍起になってますね。
 何気にこれだけ3D作品を連作してるのはハリウッドにおいてもめずらしいことだと思う。

 そんな「ダメな方」だけど、個人的には『エイリアンVSプレデター』が大好きなんですよね。あと『バイオハザード』の1作目もそれなりに。

 ちなみにワタクシ、『三銃士』自体に関してはほぼ無知であります。『ドラえもん のび太と夢幻三剣士』の元ネタだというのも当時は知りませんでした。ノビタニアンだっけね。懐かしい。

 それと、『三銃士』といえば思い出すのが『スラムドッグ ミリオネア』。主人公、クソ兄貴、ヒロインの3人は『三銃士』に自身を重ね合わせるんだよね。そして、クイズ ミリオネアの最終問題。
 「『三銃士』はアトス、ポルトス、もう1人は?」
 そして、テレフォンを使った先には・・・・・・というラストが好きすぎます。細かい理屈をすべて「It was written」で済ませてしまう乱暴さも含めて大好きな映画です。
 本作を観れば、最終問題がわかります。運命に頼る必要がないよ!!

 あらすじ
凄腕の三銃士がリーゼントとミラジョヴォに騙される
そんな3人の元におのぼりさんが現れる
その頃、なんか王宮では3悪人が悪巧みしていましたとさ

 ・・・・・ちなみに、「銃士」ってなに? 当たり前のように出てくる「銃士」に戸惑いました。侍とかガンマンとかそんな感じでいいんですかね?
 ・・・・・まぁ、侍とかガンマンが厳密にどういう人かと聞かれると困るのですが・・・。

 観る前は「全米興収しょっぱかったねww」みたいな感じでしたよ。予告を死ぬほど見せられたのもあり、少しげんなり気味でした。なんせ、古典の『三銃士』に思い入れがありませんから。
 なんですが、観てみたら意外。おもしろいですよ。ハリウッドのバカアクション映画として素晴らしかったと思います。

 簡単に言うと、『パイレーツオブカリビアン4』になかったすべてが詰まってます。ワタクシ、『パイレーツオブカリビアン』初期3作は大好きなんですよ。ゴア ヴァービンスキー監督の3作は。
 ところが、『4』がいけなかった。敵は弱いし、バケモノがショボくなってる。ガッカリだらけでした。特に、オーランド ブルームの不在が痛いんですよ。ジャック スパロウに振り回される愛に生きるマジメくんがいないと、話が締まらないんですね。

 そんなオーランド ブルームが『三銃士』にはいるんですねー。なんと悪役で。リーゼントがステキなキャラが濃すぎる脇役として魅力が爆発しております。
 なんでも役作りのためにデヴィッド ボウイを参考にしたんだとか。ジャック スパロウの役作りのためキース リチャーズを参考にしたジョニー デップと同じですね。
 要するに、オーランド ブルームがジャック スパロウしてるんですよ。なんかフラフラしてるし。これが超魅力的。オーリー、好きだぁぁぁっっ!!!
 そんなオーリーも今年で三十四!!

 ちなみに、オーリーだけでなく海賊船まで出てきたのには驚きましたね。完全に『パイレーツオブカリビアン4』にケンカ売ってる。応援したくなりますね。
 次回作があるならば、是非キーラ ナイトレイをお願いします!

 本作に登場する3悪人。2人目がクリストフ ヴァルツ。『イングロリアス バスターズ』でオスカー取った悪役ですね。『イングロ』『グリーン ホーネット』そして『三銃士』と、完全に悪役専門っぽくなってますね。悪役じゃないのも出てるんだけど、日本公開が全然されない。まぁ、当面はタランティーノの次回作『ジャンゴ アンチェインド』に期待という感じですかね。
 そんなランダ大佐。本作でも持ち前の顔面からほとばしる「悪党臭」がステキです。中盤、剣を持って戦うシーン(特訓)があるから、三銃士+1と直接対決があるのかと思ったら、ないでやんの。拍子抜け。ただのファンサービスだったのね。

 そして、3悪人のもう1人。
 「俺の嫁」(監督談)ことミラジョヴォ。まぁ、悪役というか、峰不二子的な。1人だけフィクションラインが別次元なアクションかましてました。理由は・・・・・・あぁ、アレだ・・・・・・Tウイルス打たれてんだよ、きっと。
 そんなミラジョヴォが好き勝手やるんですが、これが意外と魅力的。『バイオハザード』の2作目以降は超人になっちゃってつまらなくなったんですが、本作でも超人やってるはずなのにおもしろい。多分、脇役だからだと思いますよ。マジメ&真っ当な主人公たちをエキセントリックな脇役がかき乱すって構図、おもしろいじゃないですか。
 『インディ ジョーンズ』ばりの吹き矢の罠を、『エントラップメント』ばりのピアノ線の罠を掻い潜るシーンの強引さ加減とか、アレが主人公だったら噴飯モノですよ。脇役だからなんとかアリ。
 監督には悪いけど、『バイオハザード』の1作目を除くとミラジョヴォって全然好きじゃないんですよ。美人として。押し付けがましいってヤツですかね・・・。ところが、本作のミラジョヴォ、超かわいかった!! 特に馬車に乗ったまま釣り上げられちゃうトコで、プンプンした顔。かわいかったよ監督! ちょっとうらやましかったよ!!

 こんな3悪人が強烈すぎるキャラを発揮する一方で、三銃士のお三方。こちらはエキセントリックな感じではないものの、控えめで悪役陣と対比的でよかったです。
 3人それぞれに、得意分野が分かれてて、それが各人のキャラクターとリンクしてるのとかイイですね。
 そんな三銃士の魅力が爆発するのがイントロの大活躍シーン。ダヴィンチの飛行船の設計図を盗み出すシーンなんだけど、ここでのワクワクは異常でした。素晴らしいイントロだったと思います。一気に没入してしまいました。

 三銃士、3悪人に負けず劣らずの魅力を振りまいていたのが、ルイ13世
 このルイ13世、バカなのよ。説明不要なバカ。ただ、悪意の感じられないバカで、見てるうちにいつの間にか魅了されてしまった。悪意を知らないバカは最強ですね。『イグジットスルーザギフトショップ』のティエリー グエッタを連想しちゃいました。

 と、言った具合に超魅力的な脇役陣なんですよ。ところがねー。肝心の主人公が超フツーなんですよ。没個性すぎるというか。特徴がないんですよ。正義感が強くて向こう見ずな若者、って感じですかね。うん、フツー。
 また、その主人公と恋に落ちるヒロインも全然でしたねー。最初は主人公のことを利用していたのにいつの間にかホレてて、「えっ いつホレたの!?」って感じでしたよ。

 ある意味、主人公以上に問題なのがメインの悪役。本作におけるラスボス。これがね、例の3悪人じゃないんですよ。ガッカリでしょ!! どう考えてもオーリーがラスボスでしょうよ!
 このラスボスがねぇ、主人公が泥を引っかけたっていう因縁の相手で・・・・因縁も弱いよ!
 このラスボスを演じているマッツ ミケルセンって人、ボンド映画『カジノロワイヤル』では超魅力的な悪役だったんですよ。陰湿で超イヤなヤツなんだけど、ケンカになると超情けないっていうすげぇイイ悪役だった。それなのにねぇ。
 そら、たしかにさ、オーリー、クリストフ ヴァルツ、ミラジョヴォの3人が輝きすぎてるってハードルはあるんですよ。だったら、その3人のうちの誰かをラスボスにすればよかったじゃないですか・・・・・・・。

 肝心のラスボス戦でも「馬」のくだりとか、「空想上の敵」ってくだりを活かした伏線回収があったらおもしろかったと思うんだけどねぇ。なかったねぇ。
 ただ、このラスボス戦。おもしろいトコもあって。このラスボス戦の直前に飛行船での3Dを駆使した見せ場があるんですよ。そんな3D戦の直後、2人が戦う舞台っての一直線上で完全2D的なんだよね。この対比はおもしろかったですねぇ。大勢が入り乱れる戦いの直後にたった2人のミニマムな見せ場、というね。ここらへんはホントよかったです。ただ、いかんせんキャラが弱くてね・・・・・・。

 あっ、そうだ。3Dについて。今回は3D字幕で観たんですが。3Dよかったですね。
 なんと言っても飛行船でのバトル! 雲の中から現れる飛行船にはしびれましたよ。凡庸な表現だけど、スクリーンから飛び出すんじゃないかと思いました。3D映像によるセンスオブワンダーを感じました。
 他にも主人公と三銃士が初めて共闘する広場での戦闘シーンとかもよかったですね。


 ・・・と、イイところはたくさんあるんですよ。それだけに、惜しむらくは主人公、ヒロイン、ラスボスの3人のキャラが弱い・・・・・。結局は物語の主軸はこの3人ですからね。それがどれも好きになれないという始末。周りのキャラが魅力的なだけに余計によそ見してしまった印象ですかね。
 ただ、エンタメ作品としては、十二分に満足でして。書いた通り『パイレーツオブカリビアン』の初期3作が好きで、4作目にはガッカリ・・・・・という人にオススメですね。満足するのは間違いないと思います。・・・・なんて断言してみたくなるくらいよかったです。
 75点。