北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『ステキな金縛り』の感想

 公開が始まってからかなり時間が経ちますが、観ましたよ。『50/50』と同日鑑賞です。昼飯を挟んでのハシゴ。どちらも「死」を扱ったコメディーなんですが・・・・・・思うことは特になにもなかったです。
 てか、本作ダメでした。「ダメでした」だとワタクシに非があるみたいだけど、まぁ、三谷幸喜のせいですよね。つまんなかったです。駄作。
 一応「ダメでした」という要素として、深津絵里のことがあんまり好きじゃない、という私的な要因もあります。「いい年こいてなにピュアな役やってんだおめぇ」感が終始付きまといました。

 あらすじ
勝ち目のない裁判を受け持ちます
被告は金縛りにあっていたというアリバイがあるので、幽霊を証人にします

 終始深津絵里オンステージが続くので、彼女に魅力を見いだせなかったワタクシは2時間半の地獄を味わうはめに。
 まず、裁判長が深津絵里のこと贔屓してんのが気にいらねぇな。裁判長が味方してくれたら、なんとでもいけそうじゃね?
 幽霊を証人にすると決めた後に策をなにも考えないところも気持ち悪いですね。「話になりませんな」って中井貴一に言われてうろたえてたけど、「そんくらい考えとけよ!!」って感じですよ。挙げ句、中井貴一に対して「ヤなヤツ」とか言っちゃって。中井貴一は正論しか言ってねぇよバカ!

 そんな中井貴一。本作唯一の良心です。彼のトコだけはよかったと思います。
 裁判の証人に幽霊を呼ぶってアイディアはおもしろいと思うんですよ。考えうる中で最も厳格な舞台である裁判所に幽霊、っていうのは。ただ、それをやるならば裁判所の描写は丁寧にしないといけないと思うんですよ。マジメで堅苦しくて味気ないような空間にして、それと幽霊とのギャップが笑いを生むんじゃないでしょうか。『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』なんて映画はまさにそういう笑いを作ってましたよ。
 なのに裁判所という空間が「なんとなく」な作られ方しかしてない。「裁判員」って言葉だけ出して映像上、物語上にはほぼまったく出てこないのとかも超寒いですね。
 マジメな、厳格な裁判所という雰囲気を1人で担当してるのが検事の中井貴一。1人だけクソマジメだからなんかかわいそうだったよ。裁判長も例の如く深津絵里贔屓ですからね。気持ちわりっ。
 実は中井貴一も幽霊が見える、って展開はおもしろかったです。中井貴一がただのライバル的存在じゃなくなって。そんな中井貴一に幽霊が見えることを認めさせるシーンもよかったですね。クソマジメで感情がないんじゃないかと思われた中井貴一の優しい感情が爆発し、それと同時に認めさせたという快感、そしてそれを俯瞰で見ると・・・・・・・ってギャグにもなってて見事でした。その後に新たな敵として小日向文代が出てきた時に、「お前を倒すのはこの俺だ」って言って助けてくれるシーンとか超燃えましたよ。
 なんだけど、小日向文代が出てきてからラストに向かうまで、中井貴一は物語に全然絡まなくなっちゃうんですね。最後の最後にトドメだけ刺してたけど、別にアレも中井貴一だからこそって理屈がないから全然燃えないし。中井貴一以外マジメな人がいないから、中井貴一がいなくなるとなんでもアリの世界になって、もうすべてがどうでもよくなってしまいました。

 裁判員制度が定着したのか知らないんですけど、本作での裁判はかなりショー化してるんですね。傍聴席に訴えかけちゃったりして。またさ、傍聴人が裁判の展開にあわせて「あっ!!」とか「えぇ〜!!」とかわざわざ仰々しくリアクション取るのもクソ寒くてね・・・・・・。ジャンプで連載中の某バスケみたいに観客描写がヘタクソですよ。劇中の傍聴人に言わせるんじゃなくて、実際に映画を観てる我々がリアクションを取ってしまうような展開を見せるだけでいいんですよ。そこで劇中の傍聴人のリアクションを映されると、「はい ココで驚いて下さ〜い」って言われてるみたいで冷める。

 まぁ、よかったトコを探してみると、ラストの西田敏行との別れのトコですかねぇ。幽霊が消えてしまう最後の時間を裁判のためでなく、西田敏行への恩返しのために棒に振るってのは感動的でしたよ。『アラジン』でジーニーとの約束を守るために最後の願いを取っといてあげた、みたい感じかな。
 というワケで、本作で感動できるのは深津絵里西田敏行の関係性なんですよ。2人が気づいた絆(←2011年の一字!)。2人の絆に感動するはずなんだけど、ラストもラスト、初登場のツヨポンが出てきちゃって。全然泣けないよ。深津絵里が幽霊見えなくなる、ってだけで相当琴線には触れてるんですよ。すげぇ寂しい気持ちになるじゃないですか。なのに、いきなりツヨポンが出てきちゃって・・・・・。「お前誰だよ!!!」って感じでした。写真を前から出しときゃいいって問題じゃないですよ。深津絵里の中でどれだけ父親の存在が大きくて、尊敬するあまりコンプレックスになってる、みたいなフリを丁寧に前もって描いてないとまったく感動できないです。
 あそこはむしろ、小日向文代が出てきて、「会えるのはツヨポンか西田敏行、どちらか一方だけ」って言われ、西田敏行に会いに行くって方が感動できたんじゃね? これはちょっと極端だけど。

 最後に、超どーでもいい話。阿部寛について。
 本作の阿部寛って幽霊の存在認めるの超アッサリでしたね。連ドラの『トリック』の大ファンとしてはそれだけでちょっとおかしくって。「仲間由紀恵は!? 誰か山田連れてこい!」って思いました。
 まぁ、本編としては、そんな阿部寛の死に方が酷かったんですけどね。あそこはもっと悲しまないといけないんじゃないかなぁ。死に際の人にあんな乱暴に命令するとか、まともな神経してる人間とはちょっと思えませんでした。


 つまんなかったというのもあるんだけど、やはり何よりも深津絵里ですね。キツかった。見てらんなかったです。あとは、もちろん三谷幸喜ですね。個人的な戦犯。こんなシンプルな設定のコメディーを142分という長尺にしてしまうとかちょっとどうかと思う。ちゃんとした人に脚本見直してもらった方がよかったんじゃないですか? 学校の国語の授業でよく言われたじゃないですか、文章がうまい人は短くまとめられるんですよ。ヘタクソに限って無駄に長くなるんですよ。当ブログみたいに。
 30点。