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発売から随分と経ちましたが、ジャンプVS買ったんですよ。普段少年ジャンプ本誌以外にはまったく手を出さなかったんですが、心境の変化がありまして。
目的は、『アイアンナイト』。少年ジャンプに掲載された『ゴブリンナイト』に魅了されたクチです。
ということで、『アイアンナイト』だけ重点的に感想書きます。んで、せっかくなんで、他の作品も軽く書きます。なので、最初に『アイアンナイト』。
『アイアンナイト』屋宜知宏
身体が鉄と聞いて「カッケェ」と感じる主人公は『キックアス』っぽいです。んで、スーパーパワーが病気とか新人類みたいな扱いを受けるのは『X-MEN』を連想してしまいます。本作はバトルモノというよりはヒーローモノという方がより正しいのかな。それもアメコミヒーローちっくというのが大変楽しい。てか、ありそうでなかった路線の王道(矛盾)で新鮮です。
突如として差し込まれるツノが生えて泣いている主人公とヒロインのツーショット。直前のシーンとは服が違うので、イメージショット、もしくは今後の場面というのがわかります。要するに、イヤな予感しかしねぇ。
とはいえ、本編が始まると不良とのケンカ。少し萎えますが、そんな予定調和展開を崩すゴブリン病の人。急にハードコアな世界観が見えますね。んで、主人公とヒロインが手を繋ぐというのも先ほどのシーンと重なってうまい。
そして、平和シーンが短い!! すぐに主人公のゴブリン病が発症するし、学校にゴブリンが襲撃するし、展開はえぇっす。殺されたゴブリンの顔のアップをちゃんと入れることで、「元は人間だけど無慈悲に殺す」という厳しさを伝えてるのがイイですね。んで、主人公がゴブリンになっちゃう、というサスペンス。
やべぇ、翼ちゃん良い子すぎて泣く。ゴブリン化を悩む主人公に対してマグネットくっつけて空気を和ませるとか‥‥えぇ子やのぅ。主人公が変な気起こすのを期待してるのもかわいいです。そして、異常な睡魔、そしてセリフの表記の変化がとても不穏。
んで、イメージ映像が挟まれて。まぁ、イメージ映像とか心象風景ってのは個人的にあまり好きではないんですが、今回のヤツはよかった。何がよかったって、泣きぼくろですよ。ヒロインの泣きぼくろ、序盤は単なる属性とか見た目の特徴かと思ってたんですが、イメージ映像に出てくる鳥を見て戦慄。泣きぼくろあるじゃねぇかよ‥‥。そしてその鳥に対してゴブリンが、「オレの一番好きな匂いがする」「オレはずっと君のことが好きだったんだッ」と言うのもうまいですね。さらに、「オレは君を食べたい」というセリフは、エロ的なニュアンスも感じますが、それは直前のヒロインのセリフ「変な気起こさないでよね」に呼応してるワケで。すべてが悲劇に繋がっている。話を理解すればするほどに「やめてぇぇぇぇ!!」ってなります。そして、ゴブリンが鳥に噛みついたコマ、鳥の頭部がヒロインと重なって、ってのも小技が利いてますな。てか、悲劇の度合いがすごすぎるよ‥‥。
んで、まさかのヒロイン串刺しですよ。以前に、『ゴブリンナイト』の感想で、「この世界観じゃヒロインも死ぬかもしれない」って書いたんですが、ついに死んじゃったよ。てか、どんどんハードコアになってるじゃねぇかよ。うわぁ‥‥えぐい。んで、そんなヒロインが今際の際にヒーローとして戦うよう主人公を導く。「何かを守るために戦う鉄兵にかなうやつなんかいない…」という理屈ですが、ヒロインはもう死んじゃうんですよね。だから、その代わりにみんなを守ってあげて、と。個人を守るための私的なヒーローから、街全体を守る公的なヒーロー活動にシフトするキッカケになってます。いや、マジでこういうのもヒーローモノとして超うまいと思います。
んで、主人公が体育館で人々を守り始めると、銃を持ってた人、悲鳴をあげていた人たちが主人公の戦いを静観し始めるって描写も決まってるなぁ。どちらも謎のゴブリンに対して信頼を抱き始めていることを示しているワケで、特定の街を守るヒーローとしては必須な要素なんですよ。
んで、ヒーローとして確立された様子がラスト。「もうここは『アイツ』の縄張りだ!!」ってセリフが『バットマン』っぽいですな。さながらゴッサムシティであります。最後の最後に、ヒーローのことを紹介するセリフで締めるというのは『ダークナイト』ですよ。そういえば、『ゴブリンナイト』で出てきた悪役はトゥーフェイスっぽいキャラデザでしたね。「日本のヒーロー漫画見せてやるよ」的な気概を感じます。
世界観は超ハードで目を引くし、話は常に展開し続けだれるこもなく、主人公がヒーローとして立ち上がるまでのドラマは充分、ヒロインに魅力があってそれがドラマとして機能していて、さらには細かい描写も抜群。要するに、おもしろすぎるじゃないか‥‥。なんだこれ。
もちろん、ワタクシが前から超期待してた、という色眼鏡はあるんですが、例えば主人公がヒロインを食べちゃうシーンの無駄のなさ、話を理解させ、悲劇を際だたせる見せ方なんて素晴らしいじゃないですか。これはもう、ジャンプVSで圧倒的な優勝でしょう(そんなレースではない)。
まぁ、ということで、『アイアンナイト』の感想書けたので満足なんですが、一応他の作品の感想も書こうかな。もったいないし。
不慣れですが、短めに書きます。
- 『ステルス交境曲』成田良悟 天野洋一
- 主人公の名前「トロマ」ってB級映画でお馴染みの製作会社の名前ですね。作者好き者なのかしら。
- 透明人間が着用するのがマスクだけ、というのは新鮮でした。基本は包帯ですが、、着脱が大変ですからね。とはいえ、全裸ってのはどうなんだ。変態か。‥‥と思ったら都合のいいルール出てきた。どっちでもいいけど、どうなんですかね。仮面外すという行為が意味ないし。
- いろいろと設定があって、めんどくさかったです。短編なのにルールを把握するのに一苦労してしまった。服は透明化できるってルールもケータイで隠し撮りってしょぼいし。
- 銀が弱点なのって吸血鬼じゃなくて狼男じゃなかったっけ? 詳しくないんでアレですが、それこそ事前に説明してくれよ。
- ていうか、感想長いな。これじゃ、いつもと同じくらいじゃないか。もうちょっと短めにします。
- 『改造人間ロギイ』三木有
- 以前少年ジャンプ掲載時にワタクシはいまいちでした。が、友人がハマったらしく意見が対立したのを覚えてます。ということで、面倒なイメージですね(八つ当たり)。
- 「14歳以下の子供を女の子とは定義しないんだよ」わろた。本来の意味では子供こそ、女の子と呼ぶべきじゃないか。
- あ、また設定が複雑なヤツだ。読み切り連続で読むの大変だな。
- うわっ、透明人間ネタ続いた!! 掲載位置ずらせよ。透明化のルールが微妙に違くてマジ厄介。
- 悪役の変身カッコイイね。
- 話が行き当たりばったりで敵に襲われるだけなので、「これがラスボス?」って混乱というか、盛り上がり切れなかったです。
- まだ、感想長いな。これじゃ、時間がかかりすぎる。もうちょい淡泊にします。
- 『除霊戦士 北枕さん』幾田文章
- 延髄斬りわろた。霊に延髄なんてあるんか。
- 本作に限った話じゃないですが、ツッコミ役の女の子って好きです。
- そんな清芽ちゃん、三角頭巾どうなってんだ。一部だけ白髪なの?
- 説明のないナンセンス展開は掲載位置的によかった。前の2つは設定が大変。
- 『ここだけの秘密』岩本直輝
- 『パラサイトB』石山諒
- バッタ男とか、それなんて仮面ライダー? やっぱバトルモノ、ヒーローモノをやろうとすると石ノ森章太郎にぶつかる可能性は高いのかしら。
- 過去のトラウマにドラマがないね。兄が死んだ、って事実しかないからなんか微妙。
- 読み切りがこんだけ続くと、「こいつが実は悪役!?」って展開に免疫つくね。正直なんの驚きもない。これは本作に罪はないんだけどね。うーん、どうしたもんか。
- アゴヒゲが能力とリンクしてる、ってのはよかった。あのアゴ割れたら『ブレイド2』みたいでサイコーでしたが。
- ヘーラークーレースー!!! どうせ甲虫だろうとは思ってましたが、まさかヘラクレスとは。
- って、ラストに過去描写を再び挟むのはイイね。気が利いてる。ようやく過去描写に意味が出たし。とはいえ、前半部は退屈だったな。
- バトルシーンで、両者が理屈を垂れるのは好きなんだけど、バトル描写が微妙でしたね。けど、ヘラクレスだからいいよ(バカ)。
- 『疾風のなかよし』すがぬまたつや
- 不自然な名前にツッコむってアリだったのかよ。そこは目を瞑るもんだとばかり思ってたぜー。
- やだー、モグやんかわいいー。
- ギャグは「顔見知り」が一番好きかなぁ。あと、モグやんかわいい。
- 『EGG KNOCKER』古橋秀之 ミヨカワ将
- 『ST&RS』結構好きでしたー。
- いわゆる壁ドンの話。EGGが心の殻で、それを壁ドン。意外と単純なタイトルだったー。
- 武闘家、中国からの客、天道、結婚。『らんま1/2』じゃないか。ワタクシはうっちゃん派でした。
- 引きこもりの元にやってきた都合よく求愛してくる美少女。都合いいなぁ。
- そもそも、年単位で引きこもってたヤツがあんな清潔感ある見た目にすぐなれるワケないでしょうが。いろいろ準備ってもんが必要でっせ。
- おおっ、修行パートがある。そういや、初めてじゃない? ジャンプVS的に。特殊な修行方法が主人公のバトルスタイルと関係している、っての超イイ。これは高ポイントですな。『らんま1/2』は目を瞑‥‥れるのかなぁ。
- 決め技はカッコイイけど、髪の色変わったから別人が飛んできたのかと思っちゃったよ。
- まぁ、最終的な結論としては、『らんま1/2』だよね。ひりゅーしょーてんはー。‥‥マジレスすると、修行パートがよかったよ。それだけで嫌いになれないレベル。
- 『怪物監獄』大須賀玄
- 主人公、ヘンな名前。やりすぎじゃないかなぁ。
- オタク描写、極端だなぁ。学校でこれはちょっと‥‥。
- 主人公が怪物を救おうと最後の一線まで粘るってのは超イイ。それだけに「結局倒すんかい」というガッカリ感もひとしお。説得である程度の成果は出てほしかったでし。
- バトルモノ限定という縛りの雑誌の中で、召喚技というのが初だったのはかなりポイント高いんじゃないですかね。まぁ、鍵の能力がよくわからないまま、決め技にもつれ込んだので「最初からそれやれよ」って思っちゃいましたけどー。
- 『ヨアケモノ』芝田優作
- 『かちぐみ!』三浦悟
- ひらがな4文字+エクスクラメーションマーク、という放課後に紅茶飲み出しそうなタイトル(観たことないならネタにするな)。
- 乳袋仕様の制服。前にも言ったことあるんですが、乳袋にはわりかし否定的でしてねぇ。
- 大して複雑な話じゃないのに、話がわかりにくいですね。設定の説明をオチに持って行くのは悪手だと思いますよ。
- 集英社買収わろた。
- これは個人的な好みもあるのかもしれないんですが、チンピラが主人公に絡んでくるっていう展開、大嫌いなんですよ。日常生活にバトルを持ち込む方法がそれしかないんか、と呆れるというか。まぁ、本作はチンピラに絡まれる理由を一応は説明してるので他の作品よりはマシなのかもしれないけど、「チンピラに絡まれてそっからドラマが展開」ってのを見ると脊髄反射的に感情が死にます。うへぇ、ってなります。
- おおっ、修行してる。これはアリ。好きですよ。走り方が超ブス、ってのもかなりグッときました。ただ、走り込みだと、逃げるくらいしか使い道なさそう。
- 「俺は体温が40度をこえると」って自分でベラベラ設定を説明する‥‥ださいよ。これはあかん。
- 1コマ1コマの決め絵はカッコイイと思うんですけど、その前後の動きというのがわかりにくかったです。どういう殺陣なのか把握できないというか。
- 『DAME GAME』堀江隆
- 扉絵おっぱいわろた。エロ要素のある格ゲーか、バトル漫画のテーマとしてそこに目を付けるとは‥‥。設定勝ちというか、バトル漫画をテーマにした雑誌に掲載することで魅力が何割か増してる気がします。
- がしかし、クラスの不良に絡まれる展開である。一気に萎えた。ハマりそうだったんですけどねー。
- 愛用のゲームキャラを召喚、ってのもかなりイイですよね。召喚系だと、『怪物監獄』もそうだけど、それと違って事前に関係性を説明してますし。主人公の負の象徴が力の源、ってのもおもしろいです。
- ダメ主人公モノって多いですけど、そいつが美少女に好かれる理屈って大体どれも無理があるんですよ。が、本作はこの上ない理屈がありましたね。自他共に認める主人公のダメさの結晶=プレイ時間は、この世界で唯一ヒロインにとってだけは、すべてに勝るかけがいのないものなんですよ。うまいなぁ。
- ただ、ゲームキャラが「メタルスライムですかあなた方は!」って言うのは完全にアウト。なんで別ゲームのこと知ってるの?
- またおもしろいのがさ、自分好みの究極美少女ちゃんを自由に操れるのにその内容は戦闘だけ、ってトコでして。エロいことは出来ないんかい、とおいうジレンマが想像するだけで楽しいっす。
- 戦闘美少女に属性というかアイテムがごろごろ付属している、というのはすなわちゲームをやり込んでる、強い、というロジックもあるんでしょうね。やっぱ設定の勝利だなぁ、この作品。
- コンビニで立ち読みしてたら隣のオッサンがドン引きって描写もよかったね。今までの主人公は現実でつらいことがあったらゲームに逃げてたんだけど、今回は現実にゲームがやってきたワケで、ゲームに逃げることが出来ない、って苦悩が感じられますよ。あの読みたくもないマンガ読んでる感じがすごくつらい。
- 悪役なんだけど、ツッコミ役に転じる屍花ちゃんもかわいいな。ギャグも心地よくてサイコーじゃないか、この作品。不良がなければなぁ‥‥。
- いや、マジでおもしろかったですよ。単純な設定ながら話が進むに連れて、その設定の深み、おもしろみというのがジワジワと出てきてどんどん作品にハマってしまいました。
- ド頭に一番のエロを用意して、設定もいくらでもエロに出来るのに、劇中では大したエロは出てこない、っていうバランスも適切だったと思いますし。ホントならば、ラスト、敗北した敵キャラは全裸になって然るべきなんですが、それをギャグで済ませるというあたり、エロが目的じゃないってのが伝わってきます。
- いくら真剣なバトルがあっても「ゲームだから」っていう気楽さがあるのもツボです。マジとギャグのバランスが超ワタクシの好みです。
- 正直『アイアンナイト』以外どれもピンとこなくて「やっぱ『アイアンナイト』のおまけだな‥‥」と辟易してたんですが、最後にコレですよ(ホントは最後じゃないけど)。いやぁ、ジャンプVSも捨てたもんじゃないですなぁ。マジで超よかったです。ごちそうさまです。
- 『森ガール久美子ちゃん』大石浩二
- 少年ジャンプじゃ絶対に掲載できないような位置に載ってますね。かつての『ジャガー』枠よりもさらに後ろ。『ジャガー』枠もそうですが、こういうのって映画のエンドクレジット後のおまけシーンでひと笑い、みたいなお得感がありますよね。
- 「略して森久美子」で開幕早々笑った。
- 本作最大の特徴は、ツッコミ役の動物たちが常にデフォルメ0なところですかね。表情とかが常に普段のまま、ってのが独特のグルーヴを生み出してるんじゃないでしょうか。
- んで、『いぬまるだしっ』連載時にもあったんですが、オチのところに付く煽りが素晴らしいんですよ。煽り自体が一種のツッコミになっていて。今回の「☆youtubeで」もボケを補強してますね。
総括です。
『アイアンナイト』が期待通りのおもしろさだったので満足っちゃ満足なんですが、その他の読み切りがいまいち乗り切れず、って感じでした。バトル漫画そんな好きじゃないのかもしれん。‥‥とか思ってたら最後の『DAME GAME』ですよ(最後じゃないけど)。クッソおもしろいじゃないですか。バトル漫画の連続した最後に変わり種、設定勝負の作品っていうの掲載順も効いたのかもしれません。とにもかくにも、超おもしろかったですよ。
『森ガール』は今更ホメるのもアレな感じですしねぇ。特別枠ってことだろうし。
さて、アンケートハガキには3作品挙げないといけないんですが、どうしよう。最後の1本が決まらない。まぁ、修行という要素を最も重要視した『EGG KNOCKER』を推したい気持ちもするんですが、『らんま1/2』すぎる部分があって少し抵抗が。
『らんま1/2』は他社だからまだしも、同社、しかもジャンプの超看板作品である『ワンピース』をなぞった『ヨアケモノ』は読んでてハラハラしましたよ。怒られないのかね。同社だから逆に許されるのかね。
ということで、やっぱりおもしろい『アイアンナイト』と、「エロがやりたいだけかよ‥‥」と思わせて意外と深みのあった『DAME GAME』、この2強ですね。
最後に、1つ言っておきたいんですが、ワタクシの好み、評価というのはアテにならないということです。現在ワタクシが少年ジャンプで愛してやまない、というかここ数年の中で一番おもしろいと思ってる作品『新米婦警キルコさん』は現在打ち切りに向かってますし。
そもそも『アイアンナイト』の前身『ゴブリンナイト』が金未来杯で少年ジャンプに掲載された時に死ぬほどハマったんですが、金未来杯はどこぞのラブコメに負けちゃいましたからねぇ。
ということで、『アイアンナイト』『DAME GAME』の2作(両作者)には大成してほしいんですが、ワタクシの感性に引っかかるようじゃ、ジャンプじゃ当たらないのかもしれませんね‥‥(『キルコ』が打ち切られそうでクソほどネガティブになってる)。