生きろ(違)
TOHOシネマズでヘビロテだった4分予告でお馴染みの本作。観ました。
事前の評判に関しては、賛否両論というのはさておいて宮崎駿論が盛んになっているのが少し不安でした。特別詳しくもないからそういう見方が出来ないんですよねぇ。作品すっ飛ばして監督論が白熱する、というのは『エヴァ』と似てるかもしれませんねぇ(無理矢理)。
鑑賞後によろ、ということで「ネタバレ解説きたー!!」と勝手に舞い上がってしまいました。こういうのはありがたいですねー。 ↑と思ったらこの仕打ち。鑑賞後に開かせる必要がない‥‥。
あらすじ
「来て」
「だけどお前‥‥」
「来て」
全体的にピンと来なかったです。平たく言うとつまんなかった。
前提としましては、ワタクシ心象風景を多用する映画が嫌いなんですね。なんか話をはぐらかされてる気分になって、「で、なんなの?」って思ってしまいます。
そこで本作。心象風景、イメージショット、非現実シーンが滅茶苦茶多いんですよ。開幕と閉幕がどちらも現実でない、というレベル。
オープニングは夢なのですが、あのいかにもジブリちっくな飛行機に乗るシーンというのは最初に公開された予告の映像だったので、「予告映像が夢とか詐欺だろ‥‥」とドン引きしました。ずるい。
本作はかなりヘンテコな作品でして、現実から非現実の境がとても曖昧なのですね。日常から夢の世界がシームレスに移行してしまう。この移行映像で描いてるシーンに関してはそこそこワクワクしました。ただ、同時に「話がそれるのか‥‥」と思ってしまう性分でして、「本編進めれくれよ」と思わずにはいられないんですね。
現実と非現実がー、ってのもそうなんですが、困ったことに現実だけの部分でもかなりヘンテコでした。話や時間が不規則に飛んだりするんですよね。相当ヘンテコです。本作は「ジブリ映画だけど子供向けじゃない」とか言われてますけど、物語が大人向けだからではなく、作りがヘンテコだからだと思いますよ。
逆によかった部分としては、主人公が飛行機の設計図を見ただけでその飛行機の飛行シーンが見える、想像できるというシーン。ここは主人公の天才性が窺える良いシーンだったと思います。なによりわかりやすいですし。
非現実のシーンの中で何度も出てくるのが夢のシーン。なぜか主人公は、イタリアの有名設計士と夢を共有してるのです。「『インセプション』かよ!」って思ってました。まぁ、これは主人公が勝手に思ってるだけで、イマジナリーフレンド的なものという認識でいいんですかね。『レミーのおいしいレストラン』のグストーっぽい。
例の4分予告で最も衝撃的だったのは声優でしょうか。あんの。
まぁ、ひどかったですね。「2時間以上も観てれば慣れるんじゃね?」とか思ったワタクシがバカでした。終盤になればシリアスだったり感動的なセリフが増えるので、違和感が大きくなるばかりでした。
演技がヘタ、発声がヘタ、というのはもちろんあるんでしょうが、それ以前にセリフが不自然だったようにも思いました。話しかけてきた相手のセリフをただオウム返ししたり、「会話が成立してなくね?」と感じることがしばしば。そんなセリフをあのセリフ回しで聞かされると、「こいつはヤバイ人だな‥‥」という印象が強くなるばかりでして。つらい。
例の予告で2番目に衝撃的だったのは震災ネタでしょうか。「震災の時は本当にありがとうございました」みたいなセリフが超強調されてましたね。
『ポニョ』で津波シーンを描いた後に、現実世界で東日本大震災が起き、その後に作られた初の宮崎駿監督作、ということで、「震災を真っ正面から描くんだな」と思ってました。身構えていましたよ。
そしたら‥‥大したことなくね? 物語的にあんま意味なくね?
ただ単に主人公を「白馬の王子様」にするだけの装置にしか感じませんでした。震災による被害も全然なかったように思いましたし、場面が移ったらもう復興済みですしおすし。肩すかし。
これは不謹慎な楽しみ方なんですが、震災シーンは結構楽しかったんですよ。ディザスター映画として。避難中に遠くから轟音が聞こえるシーンがあるんですが、その音が何だか怪獣の咆哮みたいでカッコよかったです。『宇宙戦争』のトライポッドみたいな魅力がありました。
そんなワケで、災害シーンは楽しかったんですが、いかんせん短かった。予告で大体の見せ場は見ちゃってましたね。残念すぎます。もっとやってくれよ。ワタクシは『巨神兵東京に現わる』みたいな映像が見たいんですよ。‥‥そういえば、『巨神兵』における巨神兵役は宮崎駿でしたね(だから何だ)。
本作に乗れなかったもう1つの要素、ってかこれが一番デカイかもしれないんですが、恋愛描写、夫婦愛の部分。サッパリでした。
数年前の出来事を忘れずにいてくれたヒロインと再会してすぐに婚約を決意するとか、見ながら「あーはいはいそーですかー(鼻ほじ)」という感じ。
嫁さんが山を下ってくるシーンも謎でして。気持ちがわからなすぎて混乱しました。最初は「えっ もう治ったの?」って割とマジで勘違いしてたくらいです。だって、「一緒に生きたいから」って理由で孤独な山での療養を決意したんでしょ? それでも下山するってことはどっかで治らないという確信を得てしまったの? そんなシーンあったっけ?
んで、山下りてきて疲れた疲れた言いながら何するかってセックスでしょ(結婚です)。初夜ですよ、初夜。ジブリで初夜が描かれるんだから驚きです。
↑鑑賞中の脳内はこんな感じ。物珍しさにテンション上がりつつも、「この劇場に子供いるんですけど‥‥」という焦りね。ていうか、コミックボンボンで初夜ネタを描く『サイボーグクロちゃん』も相当にクレイジーですね。
そんな初夜シーン(どんなだ)。
ダサかったです。苦笑いしてしまいそうなレベルでした。「来て」「だけどお前‥‥」「来て」って恥ずかしくなりましたよ。初夜だからじゃないですよ、ダサイから。
もう1つ、床回りのシーンがありまして。夜な夜な帰ってきた主人公が寝てる嫁さんを起こしてイチャイチャするシーン。横になった手繋いだまま仕事するんですが、「タバコ吸いたい」って言い出すんですね。「タバコ吸うから離れていい?」って聞いて、「ダメ」と言われる。これ自体は大変かわいらしいやり取りなんですが、結局のところタバコは吸うんですよ。結核患者の横で。死ねばいいのになと思いました。
さっきのダサイ初夜シーンと通じるんですけど、どちらも最初は我慢しようとしておいて、すぐに折れるんですよ。だから、「ただのポーズだったんじゃね?」と思えて、主人公がただのクズにしか見えなかったのです。
さらに、このシーンの前に主人公は妹(医者)に、嫁が自分のために無理してる、ということを聞かされてるのですよ。そんな事実を知らされながら、布団の横で仕事。寝かさないし、電気も付ける。「治す気ねぇだろ‥‥」と絶望しました。
そんな幸せいっぱいな夫婦生活の部分がまったく乗れなかったので、この夫婦に対する興味がドンドン薄れてしまいました。
最終的に嫁はひっそりと山に帰っていくんだけど、これも意味わからなくてねぇ。「キレイな姿だけ見てもらいたい」って部分は理解できますよ。美談だとは思います。
だけど、この女はそもそも「生きたい」って言って山に行ったはずなんですよ。それを勝手に下りてきて、勝手に山に戻っていく。キレイな姿を見てほしいなら山籠もりする前に好きなだけセックスしとけばいいんじゃねぇの?(鼻ほじぱく) 1回山を経由するから、その日の気分で動いてるだけに見えてしまいました。
夫も嫁も理解できない、こんな夫婦がイチャイチャするとこを見せられても何の感動もないですね。「零戦まだー?」という気持ちでした。
ということで、全然でした。いろんな要素がことごとく好みじゃないです。『かぐや姫の物語』のが楽しみになってきましたよ。予告でメッチャ走ってたじゃないですか。『アポカリプト』みたいでよかったですよね。
30点。
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*1:横内なおき『サイボーグクロちゃん』(講談社)11巻202ページ