北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』の感想

アルセーヌもドイルもいない

 2014年の元日に観てきました。今年の映画初めです。なので当然2013年の映画になってしまうんですがー。

 人気作品のクロスオーバーものなんですが、ワタクシとしては両作品共に漠然としたファンです。全作品観てるor読んでるぜ!ほど詳しくはないんですが、そこそこは知ってるよ、というレベル。
 『ルパン三世』の方は子供の頃にやってたテレビの再放送(多分第二シリーズ)が一番馴染みがあるでしょうか。テレビスペシャルの放送があったら間違いなく観るくらいには追っかけてます。
 『名探偵コナン』に関しては、数年前までは原作全部読んでました。最近ちょっと飽きたんですけど。アニメは、昔は毎週観てたし、劇場版も頭から5、6本は観てます。
 なので、どちらかと言えば後者の方が詳しいですかね。

 それと、前回のテレビスペシャルは観てます。今回の映画はそれの続編、という感じなんですね。観てない人は映画の前に観た方がいいですよ。

 前回のテレビスペシャルは『ルパン三世』の世界に『名探偵コナン』のキャラがお邪魔する、という感じだったと思います。そのため、膨大な数を誇る『コナン』キャラの中で出てくるのは数人でした。
 一方、今回の映画は逆。『名探偵コナン』の世界、米花町に『ルパン三世』のキャラがお邪魔する、という形。そのため、『コナン』の世界の警察キャラ、果てはFBI組まで大量に出てきます。なので、『ルパン三世』しか知らないって人は結構面食らうかもしれませんね。映画版『コナン』の定番、なぞなぞまで出てくる始末なので、「なんじゃこれ‥‥」となった人もいるのかしら、と想像すると楽しくなります。
 まぁ、そもそもテレビスペシャルで作品を続けてる『ルパン三世』と、毎年公開する劇場版の売上が年間トップテン入りの常連になってる『名探偵コナン』では作品としての集客力が違うんだと思います。知名度は『ルパン』のが強いかもしれませんが、こと映画となると『コナン』が強すぎます。なので、テレビスペシャルでは『ルパン』の世界、映画では『コナン』の世界、というのは当然の選択のように思えます。
 ただ、物語内においてのパワーバランスが『ルパン』>『コナン』なのは前作から引き続いてます。『コナン』キャラがルパン一味のファン、というのが出てきたりするのはおもしろいアイディアでした。舞台は『コナン』だけど、『ルパン』へのリスペクトはたっぷりありますよ、ってバランス。
 てか、『コナン』の世界に出てくる怪盗キッドの専門捜査官である中森警部のキャラクターってもろに銭形をモデルにしてるとしか思えませんね。本作でもキッドが実銃を撃ったと勘違いして寝込んじゃってましたが、とても銭形警部っぽいと思いました。機会があったら中森と銭形の共演も見てみたいです。

 全体的におもしろくて大満足な作品だったんですが、まず心を掴まれたのは映画のオープニングですね。クロスオーバーものとしてよく出来ていて、ファンな程楽しめる作りになってたと思います。
 まず、映画の最初に出てくるのは怪盗キッドとそれを追う中森警部なんですね。キッドは一応『コナン』キャラなんですけど、元を辿れば『コナン』作者の別作品『まじっく快斗』の主人公なんですよ。なので、この段階では、まだ『ルパン』でも『コナン』でもないのです。
 そして、キッドを見つめる群衆の中にいる黒羽快斗が映る。怪盗キッドの正体です。コナンの正体、工藤新一とソックリですけど別人ですw つまり、黒羽快斗が映った時点でファンならば、「あの怪盗キッドは偽物→ルパン三世か!」と察しがつくのです。
 その後、逃走する怪盗キッド(中身はルパン)を追いかけるコナンが登場そして、逃走&追跡劇の最中にルパンが正体を現す、という流れ。クロスオーバーものってどちらのキャラが先に登場するかが重要だと思うんですよ。印象として優劣がついてしまいますからね。
 本作の場合、最初に登場したのはルパンの方なんだけど、まだ変装中。次に顔出しコナンが登場して、最後にルパンの顔がドン。どちらに偏りすぎない絶妙のバランスだったと思います。
 ‥‥というオープニングの親指おっ立ってたんですが、サイコーなのはその直後。ルパンの一味の紹介をコナンがし、コナンのキャラ紹介をルパンがする、とかファンサービスの極みですよ。テレビスペシャルで一度共演した時に互いに一目置いたので、互いのことを調べてある、という前提があるからこそのアイディアでしたね。
 個人的にはやっぱり『コナン』の方が馴染み深いので、劇場版定番のあの映像に「彼の名前は工藤新一」というルパンのナレーションが入った瞬間、声が出るほどに興奮しました。

 各作品ファン向けの小ネタというのも用意してあって、個人的に一番おもしろかったのはコナンの不殺のポリシー。コナンには謎を解くことで犯人を追いつめて自殺させたら人殺しと同じ、ってポリシーがあるんですよね。事件が解決するとよく犯人が死ぬ『金田一少年の事件簿』と比較してよく語られるネタなんですが、この不殺ネタがルパンとの絡みの最中に出てきたのがサイコーでしたね。敵組織のモブが死にそうになるのをコナンが自らの危険を省みず助けようとすると、ルパンが止める。これがあいつの運命だ、的なことを言うんですよね。両作品における死に対する価値観の違いがよく出ていておもしろかったです。‥‥まぁ、『コナン』の世界でも人はよく死ぬし、下手すりゃ『ルパン』の世界よりも死が身近な世界観なんですけどw
 詳しくないですけど、『ルパン』の小ネタもちゃんとありましたね。狙っていたお宝が海に沈んでいくのを見たルパンが「嫌いなパターン」って言うのとか笑っちゃいましたよ。メタい。ルパンだったらメタ的な発言も気にならないってのもイイですね。

 これは良い面であり悪い面なんですが、前作との繋がりが非常に強いです。
 良い面としては、前作との対比的なシーンがあったのがよかった。前作では、コナンが出発済みの飛行機に飛び込むシーンがありましたが、本作ではルパンが飛行機に飛び込んでましたね。
 悪い面としては、いくらなんでも前作とがっぷり四つすぎる‥‥という。しかも、物語の根幹部分、ラストの謎解き部分が前作ありきになっちゃってますからね。前作を観てない人はもちろん、「よく覚えてないけど初放送時に1回観たから大丈夫っしょ」って人でも間違いなく混乱すると思います。

 そんな謎解きパートについてなんですが。本作には『コナン』的な殺人事件は起きません。舞台が『コナン』なだけで『ルパン』がメインな話なんですね。その証拠に本作オリジナルの主要キャラは『ルパン』の世界の住人(デザイン)です。これも前作との対比だと思います。前作は『ルパン』的な国で『コナン』的な殺人事件が起き、その人たちは『コナン』の世界の住人(デザイン)ですからね。
 けど、コナンくんが出てくる以上、クライマックスに謎解きは不可欠じゃないですか。そこで何を推理するかというと、ルパン一味がなぜ米花町にやってきたか。犯罪組織の取引の阻止とかもあるんですが、最終的にはそれに繋がります。ココが前作ありきの話になるので面食らってしまう、という。
 ルパン一味がなぜ米花町に来たか、というのはルパンたちの行動原理そのものですよね。それをコナンが推理する構成ということは、クライマックスにコナンくんが推理ショーを行うまでルパンたちの行動原理がわからないんですよ。何がしたいのか、何のために頑張っているのかもわからない。ちなみに、そんなルパンたちを追いつめるために奮闘するコナンの行動もよくわからなくなります。なんか頑張ってスケボー飛ばしてるけどどこ向かってるの?ってなります。
 ということで、クライマックスに向けて‥‥というトコですげぇだれるんですよ。何を頑張ってるのかわからないから気持ちが入らない。「ふーん‥‥それで?(鼻ほじ)」ってなりました。‥‥と思ったら、それまで大人しかった隣の席のガキがもぞもぞと動きだし、落ち着きを失ってました。子供を飽きさせるのはよくないですね。

 あと、気になった点としては、コナンが正体を隠す気がなさすぎるトコでしょうかね。蘭姉ちゃんを助けるためにスパイダーマンやってるけど、そんな超人的な活躍を見られても何にも不思議がられませんw てか、今回『コナン』では不可欠なアイテムの蝶ネクタイ型変声器を使わなかったですね。
 まぁ、これも『コナン』の世界で『ルパン』的な物語を行う、という作品の趣旨を考えると納得できる気もするんですが、さすがにコナンくん目立ちすぎでした。


 と、概ね大満足です。てか、オープニングで心鷲掴みにされたので、多少の問題があっても嫌いになれない、っつーか大好き。
 異なる世界観を持ち、優劣の付けがたい人気作品同士のクロスオーバーとしてはかなりの出来だと思います。前作より優れているのも明らかです。本作の大ヒットがキッカケで「この手のクロスオーバーものが増えたりして‥‥」と思うとワクワクしますが、それと同時に「粗雑な組み合わせが多いんだろうな‥‥」と期待してない部分もどこかにあります。それくらいに本作が素晴らしかったです。
 どちらかの作品のファンならばオススメです。ワタクシは『コナン』寄りですので、『コナン』ファンならば間違いない、とすら思います。まぁ、観るなら前作のテレビスペシャルはマストなのでハードル高いんですがw
 90点。

まじっく快斗 (1) (少年サンデーコミックス)

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