北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『ゲット・アウト』の感想

 ホラー苦手なんだけど評判いいから観たいなーと思い観てきたのですが、めちゃくちゃ面白かったです。それと同時に「やっぱホラー苦手……」ともなりましたw

 ホラーが苦手な件。これは簡単。本作でワタシが感じた「嫌いな怖さ」は明確。
 びっくり箱演出です。こういう名前があるかは知りませんが、急に大きな音出して脅かしてくるヤツ。別にじりじりとこみ上げるような怖さはいいんですよ。そういう感情が揺さぶられる感じは映画の魅力だと思います。が、急に「ワッ!!」とやられても……と思っちゃう派。そりゃ怖いけどさぁ。そんなドーピングみたいな、即物的な怖さやられても面白くないし、心臓に悪いだけだし……とかブツブツ言いたくなっちゃいます。
 いや、多分ですけど、あのびっくり箱演出にも技術はあるんだと思います。上手い下手の差は生まれるんだと思います。そんで、本作は上手かったんでしょう。「ワッ!!」をどこに設置するか、そこまでの助走をどう付けるか、いろいろ腕の見せ所なんだと思います。ただ、ワタシは嫌い。やっぱホラー苦手だなぁ。
 ただ、本作、びっくり箱演出があるのは序盤だけなんですよね。序盤もしくは中盤。終盤に入って、謎が明らかになり始めると、途端になくなります。こっからが本当に面白かった。もうとにかく最高。観てよかった……また観たい……んだけど、また観たらびっくり箱あるのかぁw

 脚本のトリックが面白いんですよね。いわゆるどんでん返し系の作品。ネタバレ厳禁ですね。
 とにかく終盤、謎が解け始めると「ああっ! あの時のアレはそういうことか!!」の連続です。気持ちがいい。物語に集中してて忘れてたけど、最後の最後に画面にバーンと「GET OUT」とタイトルが出たら、タイトルの本当の意味に気づきました。き、気持ちいい……

 序盤に警官とのいざこざがあるじゃないですか。黒人差別という社会の現状を見せると同時に、キャラクターの紹介も出来てスマートだったと思います。
 これって『ドリーム』でもありましたよね。あの映画では黒人差別が色濃く感じさせると同時に、ひょんなことから「ソ連をブッ倒してくれよな」と警官に応援される展開を見せてあの作品の概要を教えてくれるようでした。
 一方本作『ゲットアウト』。まだ黒人差別あるのかよ……『ドリーム』の時代から変わってねぇ……という絶望感はあるんですが、それは作品外の話ですねw
 とにかく『ゲットアウト』。警官が黒人に対して過剰に疑いの目を向けてくる。これが伏線です。最後の最後、あるキャラクターがこの社会情勢を利用してある作戦に出ます。まぁ、いわゆるフリーザが命乞いをしてから裏切るヤツ。これによって「よかったよかった結局コイツはクソ野郎だから死んでよし」と溜飲が下がるスンポーですね。気持ちがいい。
 さらに、警官が黒人差別する時に守ってくれた彼女。「いい彼女を持ったな……」みたいな印象だったんですが、オチを知ってから思い返すと「守ったのは自分たちだったんかい!!」と膝を打ちます。要するに、あそこで警官に記録を取られると非常に困るワケですよね。一本道ですので場所を控えられると非常に困る。同行者も顔を見られてるので完全にアウト。

 本作のうまさとは関係ない部分で面白かったトコ。ケイレブくん。ケイレブ ランドリー ジョーンズ。不思議な存在感があるので一目で「あっ コイツは!!」ってなりますね。いい役者の条件だと思います。
 そんなケイレブくん。初登場からとにかく不穏さマックス、それでいてイノセントさも感じさせるいい役をやってたんですよ。それがドハマリしてました。なんですが、この感じ、『バリー シール』の時とめちゃくちゃ似てますよね。「彼女(嫁)の弟」ってポジションも完全に一致ですし。
 こんな偶然もあるんだなぁ……公開時期も日本だと近いのに……とか思ったんですが、要はこれ「こういう役は是非ケイレブくんに任せたい!」という映画の作り手が多かったってことなんでしょうね。職人芸だ。

 そんなケイレブくんとのバトルシーン。最後にありましたね。アクション映画ではないので特に見せ場という感じではないんですが、これがめちゃくちゃ良かった。
 というのも、勝つ理由がしっかりあったんですよ。主人公がなぜ勝てたか。ただのケンカに見えるけど、その中にちゃんと流れ、ドラマがあって、それによって勝利の説得力が感じられる。
 このケンカの場面で何度も繰り返されるのが、主人公が玄関のドアノブに手をかけ、ドアを開けようとすると、ケイレブくんがドアを蹴って閉める、というアクション。支配から逃れようとする主人公とそこに閉じこめようとするケイレブくん、2人の関係性を象徴的に示す良いアクションだと思うんですけど、それだけじゃない。
 明確な記憶じゃないですけど、それが2度繰り返される。2度ともドアは閉められる。主人公に打つ手なし。このまま負けてしまうのか……という時に主人公がドアノブにトライアゲイン。3度目の正直。当然ケイレブキックでドアを閉められるんですが、それこそが主人公の狙い。その脚にナイフをブスーッで勝負アリですよ。ここが見事でしたね。アクションがただのサービスではなく、アクションの中に展開がある。なんなら伏線とその回収がある、とすら言えちゃうかも。


 まぁ、こんな感じで。久し振りの映画感想記事なんですが、とりあえず「思ったこと全部書かなくていい」をコンセプトに今後も定期的に書いていければいいな、と思ってます。『ゲットアウト』の面白かった部分、全然拾えてない。こんなもんじゃないよ。マジですげぇ良かった。

キアヌ(字幕版)

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