北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の感想

 コロナによる公開延期の象徴みたいな存在の『007』最新作にして、ダニクレボンド最終作、観てきたわよ。過去4作復習したんですが、4作全部好き、ダニクレボンド大好き、という安直な結論に至りました。ベストは『カジノロワイヤル』だけど、『慰めの報酬』も面白いだろナメんな!! というスタンス(いつか再評価されてくれ)。

 『ノータイムトゥダイ』、まず思ったのが、アクションめっちゃ良かった。これに関してはダニクレボンド最高レベルだと思う。過去イチ戦闘能力が高い、と言ってもいい。
 予告で同じのバイクで大ジャンプとか、ボンドカーくるくるあるじゃないですか。あれがアバンでいきなり飛び出るのでワクワクしました。これが序の口だって言うのかよ……!!
 森の中のシーンとかボンドの殺人マシンらしさがよく出てて好きです。黙々と殺す感じが。
 それと、終盤における階段のワンカット(たぶんワンカット風)の長回しも最高。『アトミックブロンド』とか『イップマン3』とか階段ってオモシロアクション構築したくなる魔力でもあるんですかね。

 アクションは超良かったんだけど、悪役に関してはかなり微妙。シリーズで最もどうでもいい悪役だったと思う。何ならブロフェルドの方が魅力的だった気すらする。レクター博士ポジションになって魅力増したのでは。
 オープニング。いきなり女性キャラの回想から始まるのが面白かったし、「女性キャラもっと大事にします!」というのがダニクレボンドの大きなテーマだったのだと思う。それはいいんだけど、ラミマレックが幼女に返り討ちにあうのでビックリでしたよね。仮面してるから実は別人で、この件の復讐としてラミマレックが襲ってくる話になるのかと思ったら中身もしっかりラミマレックでして。あれ、撃たれ所が悪かったら上映開始数分でシリーズ大団円になってましたね。

 女性陣。女性スパイたちがが素晴らしかったのは間違いないですが、個人的にはやはりヴェスパーネタが出てきたのが嬉しい。やっぱダニクレボンドといったらヴェスパーよ。そんな全世界のヴェスパリストへの目配せでもあるんでしょうが、それ以上に「ボンドが引退して身を固めるんだったらヴェスパーの件は避けられねぇよな」という話でもあったのだと思う。前作でブロフェルドに「ボンドが本気で愛した女性知ってる?」と煽られたのもありますし。まぁ、墓爆破は唐突&大味でちょっと笑いました。ビックリもしたけど。
 キューバの女性スパイ。すごい魅力的でしたけど、正直あそこで退場するなら必要だったのかな……とか思っちゃう。女性との共闘だったら新007がいますし。いやすごい良かったし、魅了されたんですけど。
 新007。「次のボンドはイドリスエルバか!?」みたいな噂されてると思ったら本編で黒人女性007出してきたという。初期の報道の際、オールドファンが誤解を元にいきり立ってたのが懐かしい思い出です。リテラシーというものを感じました。
 逆に言うと、意地悪に言うと、「黒人も女性も今回やったら今度のボンドは白人男性でね? いいよね?」という牽制だったのかもしれない。まぁ、そこまで長期的なこと考えてないのでナンセンスだろうけど。個人的には次のボンド、若い人がいい。ダニクレが3作目でおじいちゃん扱いされたのには衝撃を受けたもんですよ。オリジンである1作目の直後から始まる2作目、からの3作目でいきなり「もう引退したら?」という扱いなので「全盛期いつなの……」ってなる。
 そんな新007。個人的には「女性だから」「黒人だから」みたいな要素がそこまで前面に出てないのが魅力的だったので、最後の最後で黒人ネタを持ってきたのは少し違和感だったかな。まぁ、やりたいことも、やりたい気持ちも分かるんですが。

 ラストについて。シリーズにおける禁じ手をやってきたという感じでしょうか。「最終作だから好きにやらせてもらうよ!」という突き抜けだったかもしれません。そもそもダニクレボンドは最初から積極的にお約束を破る試みが連続してたので、そういう意味では良い結論だったと思います。二度名乗るくだりがラストシーンで、マドレーヌの口から行われたときは座布団1枚運びたくなりました。
 ボンドが死ぬのはいいし、子供できた件についても「ダニクレボンドといったら金髪碧眼!!」という点を踏まえた展開にしたのはうまかったと思う。今ではすっかりダニクレでお馴染みだけど、最初のときは大変でしたね。その要素を今改めておさらいすることでダニクレボンドシリーズを総括する、という試みが良い。
 そもそも子供できる件も、今まで好き勝手にセックスしてた人なので、子供は必然の展開だよね、という感じもある。そういう意味では『バッドボーイズ フォーライフ』とも通じる狙いがあったと思う。ただ、本人の知らんうちに子供が生まれてて、都合の良いタイミングで父としてのカッコツケをして悦に浸る、みたいなイヤな感じも少ししたかも。これは『ワイルドスピード ジェットブレイク』もそう。「あなたの子よ」展開にはある種のずるさを感じる。いろいろ便利なのも分かるけど。

 ヘラクレス計画。本作はコロナ延期の象徴的な作品だったけど、まさか中身が人工ウイルスの話なので驚きました(機械だけど)。人工ウイルスとかめちゃくちゃ陰謀論者が好みそうな話だ。公開延期の理由って案外こっちだったりして……。
 そんなコロナも連想したんだけど、それ以上に連想したのは『キャプテンアメリカ ウィンターソルジャー』におけるインサイト計画。味方組織の発明を敵に奪われて……という展開も含めて。何より「そんな計画そもそもダメだろ!」的な感じですね。インサイト計画は元からヒドラが絡んでたけど、ヘラクレスの方はMの「よかれと思って……」だからタチが悪いw

 シリーズが完結したということで、シリーズ全体を振り返って思ったこと。意外と『スカイフォール』が余計だったというか、1人だけ余所者感がすごい。ヴェスパー、フェリックス、ホワイトが登場しない、言及されない唯一の作品ですよね。ヴェスパーちゃんとか1作目に死んだのに未だにボンド引きずってたんだぞ。それなら全作でヴェスパーの話題を出して「ダニクレイリーズは実質ヴェスパー五部作」みたいな感じにまとめてほしかった。
 要するにシリーズ全体のコントロールがあまい。行き当たりばったり感が強いのは否めないと思う。逆に言うと『スカイフォール』がシリーズ最大の成功になって、ダニクレボンドの色を決定づけたのが困った話だったのかもしれない。まぁ、シリーズ頓挫してもおかしくないので成功したのは喜ばしいことですが。あと、もちろん私も『スカイフォール』大好きですよ。大好きだけど、シリーズ展開を考えたら、という話。
 そもそも『ノータイムトゥダイ』がシリーズを総括って言うけど、そもそもシリーズの総括は『スペクター』でやりませんでした? という話でもある。結構グダグタというか、ユルユルな感じありますよね。
 シリーズ展開の雑さという意味で、本作『ノータイムトゥダイ』で最もガッカリだったのは、あまりにもあっけないスペクター壊滅。あれはちょっと引くでしょ。ボンドが何も知らないうちに、というのがまた悲しい。ボンドはあのまま殺されてもおかしくなかったけど、勝手にスペクターが死んだ、という状況が情けない。獄中のブロフェルドが義眼を通じて……というのは面白かったんだけどなぁ。MI6、ボンド(CIA)、スペクター、サフィンという四つ巴の構図とかかなり魅力的だったんですが、正直それほど生きてなかったと思う。「最終作だし せっかくだからフェリックスも殺しちゃおう!」みたいな雑さを感じたよ。久々に出てすぐ死ぬので、死ぬために登場した感が否めない。肝心のサムメンデスの時代に登場してないからね。私はウォッチャー……


 終わり。変なところもあったけど、とはいえダニクレボンドシリーズとしての魅力はあったし、アクションすごかったんで大好きです。ベストは『カジノロワイヤル』で不動だけどな! ヴェスパーちゃん大好き! 暗証番号もカクテルもみんなヴェスパー!!
 次のボンド、イドリスエルバが良いと本気で思ってたけど、年齢を考えたら無理そうね。さっきも書いたけど若い人がいい。コンスタントに作品を重ねてほしい。
 書き忘れた感想。ボンド映画がユニバーサルとか新鮮だなぁ、と思ったら例の地球がガンバレルになったので笑いました。ロゴでめっちゃ遊ぶやん。