北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の感想

 観てきました。去年は正直微妙だったんですが、今年は良いぞ。すげぇ好き。櫻井脚本回のファンとしては複雑な気持ちもありますが……。

『紺青の拳』路線

 今年は大倉脚本回。「大倉コナン」は3作目ですね。『から紅』はシリーズの中でも屈指の名作だと思いますが、今回は『紺青』路線に位置する作品だったと思います。リアル地名を多用して、国際的なテロリストが出てきて、原作のキャラクターを特集するような形でストーリーを組み立てていく。そして最後には観光名所の特徴を生かした大破壊(未遂)。『紺青』メソッドが流用されたというか、うまいことアップデートしてきたという印象。オーソドックスなものを好むファンからしたら「米花町じゃないとか論外なんだよなぁ……」かもしれないんですが、個人的には「大倉コナン」の個性が確立されたように思えて好ましいです。渋谷のスクランブル交差点は海外ウケもいいだろうし、「渋谷とは谷だ」というアイディアも面白かったです。次回以降どうなるのかも気になってきますね。再来年かな。
 「今回は渋谷でっせ!」ととにかく強調したオープニングも面白かった。いつもの映像が渋谷の町に映し出される、というのはマンネリ回避という意味でも効果的だったと思う。あのアニメーション自体は変えない、ってのが面白いよね。

シリーズ初の「音楽」交代

 大野克夫から菅野祐悟へと交代。まさかのシリーズ初という大事件。こだま監督、古内脚本が終わったときのような衝撃はないんですが、それでも交代劇の副産物と思われるものはあった。個人的なベストシーンがそれ。
 「キミがいれば」ですよ。まさかの「キミがいれば」大復活!! 10作目『鎮魂歌』以来の復活ということでマジで大事件。おそらくこれは「コナンとはいえばコレだよねぇ」と菅野がご挨拶代わりに入れたのではないかと思います。このままシリーズの定番として再び定着してもええんやで。来年への興味が高まる。マジで頼む。
 コナン映画は基本どれも面白いと思ってるんですが、明確に2つ、『鎮魂歌』『棺』だけは失敗作だと思います。そんな『鎮魂歌』が最後の「キミがいれば」だったのが個人的に解せないというか、納得できてなかったんですが、今回復活。ありがとう、本当にありがとう……。
(追記2022-04-21:監督も新しい人なので、ひょっとしたら監督のアイディアという可能性も大きいかもしれない。どこかに「私が決めました」みたいなインタビューあったら教えてください)

『金ロー』総集編

 先日放送された『ハロウィンの花嫁』予習用の総集編。劇場版以外詳しくないので助かったんですが、高木佐藤より警察学校組の方をやってほしかった気もする。ぶっちゃけ高木佐藤は添え物だった印象なんですが、私だけなのだろうか。高木佐藤の結婚式に期待して映画館に向かったファンは肩透かしだったのではないかと少し心配です。まぁ、さすがに本当に結婚すると思ってた人は少ないでしょうが。
 総集編のおかげで楽しめた点としては、「松田がスマホ使ってる!!」です。あと、「米花町=犯罪都市」ネタがメタ的に出てきたのも笑った。

警察学校組

 これが良かった。ここが本作の白眉だと思う。全然知らないし、正直不安要素だったんですが、超楽しめたし、何ならこのチームのことが好きになってしまった。半分くらい知らない人だったんだけど、気づけば「夢のリユニオン最高だったな……」とか思ってしまったレベル。チョロいもんだぜ。
 原作の特定キャラに光を当てながら、物語(事件)全体の主軸としてそのキャラクターが常に存在する。このバランスが本作(そして大倉脚本)、最大の魅力なのではないでしょうか。『から紅』『紺青』とどちらも良かったのですが、おかげで「なるほど大倉脚本回はラブコメ重視か」などと誤解してました。ラブコメに限らず単純に既存キャラを組み込むのがめちゃくちゃうまい。
 個人的な好みでいうと、ゲストキャラに物語を引っ張ってもらいたい気持ちもあるんですが(そういう意味で『純黒』は至高)、悔しいかな、ここまでのクオリティを見せられると「次の大倉回も同じ感じでお願いします」という気持ちになってしまう。
 去年の『緋色』は赤井ファミリー集結というコンセプトが失敗してたと思うのですが、だとすると櫻井回には是非ゲストシステムで頑張ってほしい……とか思ってたんですが。

来年

 海中をコポコポしてると思ったらジンボイスでシェリー求愛。灰原フィーチャー来るぅぅぅぅ!!!!


 一気観したときから「灰原不遇じゃね?」というのは気になってたんですよね(あと蘭)。
 てか、去年の『緋色』感想の最後、コナン映画の現状と今後みたいなところにも、「そろそろ灰原を頼む」とか書いてたわけで。まだプロット以前の段階だけど、制作側の意図が私と完全に解釈一致。これは嬉しい。
 しかも来年は櫻井脚本になる可能性が高いじゃないですか。櫻井脚本で灰原回。今までサイドキックに甘んじていた灰原がついに櫻井脚本で主役に躍り出る。これは楽しみだろ。絶対面白くなっちゃう奴だろ……。
 こうなると蘭の不遇が気になってくるんですが、蘭は映画30本目のアニバーサリーで何か大ネタをやるんじゃないかなぁ。そこまで『コナン』が続いてるかも分からないんですが。作品が終わることを考えるならば、映画最終作が蘭の話になるのは必至ですね。となると脚本は櫻井でも大倉でもなく、青山が出てくるかもしれない……(連載完結後と想定)。
 なんて妄想をするのも楽しいですね。これこそがプログラムピクチャーの魅力。

犯人が武闘派

 話を『ハロウィン』に戻すと、犯人の戦闘能力の高さも魅力の一つだったと思います。警察学校組リユニオンという幻の1日のエピソード、正直ちょっと長すぎとは思いましたが、あそこがめちゃくちゃ面白いのも事実。その面白さの一因となってるのが犯人の強さだったと思います。
 終盤でも、安室と閉所での殴り合いをしてて新鮮でした。最近の作品だと格闘アクションは必須事項になってると思うんですが(その路線でも『純黒』は至高)、いつもと違うことをやろうとしてる姿勢が素晴らしい。思ってたよりもヘリ内でのバトルが長いので驚いたよね。
 そんなつよつよ犯人。タイトルがネタバレになってて、この仕掛けも面白かったです。せっかくならドレス着たままマシンガンぶっぱしてほしかったかな。まぁ、肩の傷見せる必要があるので無理なんだけど。
 さすがに高笑いしながら乱射してるのはどうなの……とか思いましたが、まぁそういう大味なアクションがあるのも本シリーズの魅力なんだとは思います。

コロナ対策ポスター

 小ネタだけど、背景に感染症対策ポスターが当たり前に描かれてるのが気になった。この世界もコロナ禍なの!? コロナ明けなの!?

大倉脚本とリアル観光地破壊(追記:2022/04/30)

 渋谷が舞台となったことが本作の魅力になったのは間違いないと思うのですが、同時に少し寂しいのが「最後の爆弾は不発かよー」という点。『紺青』のときはマリーナベイサンズをぶち壊してくれたのに。
 ある日ふと気づいたんですが(なので追記)、マリーナベイサンズを破壊できたのは海外だからなのではないか。もう二度とコナンが関わることがないであろう地だからこそ好き勝手に破壊できたのではないか。本作のように東京の都心で爆破テロがあり、もしもそれが完遂されるようなことがあったら、さすがに今後何食わぬ顔で米花町での日常を過ごせなくなる。「東京で爆破テロがあった世界線」というのはさすがに無視できない。ただ、シンガポールだったら無視できる、という判断。大倉脚本における線引きなのではないか。
 もちろん米花町とかでは散々すごいことが起きてもそれらは無視した日常が繰り返されてるし、そもそも劇場版はほとんどパラレルだから……という考えも分かるんですが、リアル渋谷を破壊することにビビったのではないか、という邪推です。
 リアル観光地を舞台にするのは大倉脚本回の個性として確立されたと思うので、今後も(たぶん再来年以降も)続けてほしいのですが、上記のような理由で尻込みしてしまい、結局どの事件も、どのテロも未遂で終わってしまうのではないか。だとしたら、そうだと分かってしまった上で今後の映画を観るのはあまりに寂しい……。
 ということで、コナンは再来年以降も海外に行ってほしい……んだけどコナンはめちゃくちゃ海外旅行がめんどくさいキャラなんだよなぁ……。じゃあせめて都心から離れた観光地、あまり警察関係者に顔見知りがいないような地方の観光地だったら……と期待したい。
 もちろん強引すぎる「リアルのアレとは別物ですよ?」みたいなネーミングもコナン映画の定番であり、歴史だと思うので、そういうのは櫻井脚本回にお願いするとして、大倉脚本の年は地方の観光地を破壊してほしいなぁ。毎回未遂で終わるのは何だかなぁ……という追記でした。


 終わり。一番テンション上がったのは最後のジンボイスだったりするんですが、本編も非常に楽しめた。マジで「『純黒』以来の傑作」と言って差し支えないレベルだったと思います。まぁ、私の過去の評価なんて知ったこっちゃないだろうけど、『純黒』がベストだと思ってます。

gohomeclub.hatenablog.com

 ちなみに、シンガポールと違って渋谷の破壊が阻止されちゃって残念だった人には実写映画の『サイレントトーキョー』をおすすめします。正直面白くないんだけど、渋谷で爆破テロが起きる中盤は文句ナシに素晴らしい。ちょっと露悪的な感じなので好みは分かれるかも。