北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』の感想

 観てきたでござる。『すずめの戸締まり』と同日公開ということで、でかいスクリーンを奪い合い(そして負ける)、その先で字幕と吹替、さらには3Dに振り分けられる。自分の目当てのものを調べて「これしかないの!?」となった人も多いと思います。私もです。
 んで、2D字幕となりました。吹替はももクロが突然主演になってて大変そうですね。レティーシャ・ライトも同様。アクションシーンで事故あったらしいけど、そりゃなぁ……と少し納得してしまうのが悲しい。

 ネタバレだよ。

葬儀に始まり喪が明けて終わる

 チャドウィック・ボーズマンの死をそのまま反映した作品になったので、異例尽くしの作品になったのは間違いない。無茶すぎる企画であることを考えれば十二分の出来だったと思うし、作品全体で弔意を示すという意味においてはマジで100点の映画だったとも思う。その点に関しては『ワイルドスピード SKY MISSION』以来のすごい作品だったと言える。
 ただ、その点を無視して考えると、やはり変な映画であった、もしくはややイビツな点もある作品になったとも思う。そもそも本作のストーリー的なメインテーマであるシュリのダークサイド堕ちという点、ぶっちゃけ『シビルウォー』でティ・チャラが乗り越えてた話ですよね。初登場かつサブキャラなのにしれっと乗り越えてたあの人がマジどうかしてたと思うんですが。
 ティ・チャラが乗り越えた問題を乗り越えられないシュリ、というドラマをやりたかったのは分かる……にしても今回ラモンダを殺したのはちょっとやりすぎだった気もする。これは個人的な考えも大きいが、こと本作に関してはティ・チャラ以外(主要キャラ)の死は見たくなかった。シュリのドラマの都合で死んだ、という印象が少し強い。冷蔵庫の女王。
 あと、仇であるヴィランを殺していいのか問題ってのも『ノーウェイホーム』でやったばかりなので、それ自体が新鮮さに欠ける話だったと思う。ティ・チャラの仇だったら本作独自の良さになったとも思うが、ティ・チャラも現実と同様の死因というのが本作が示す誠意なのでまぁ難しいですね……。
 ただ、我ながらチョロいとは思いつつも、キルモンガーのサプライズ出演にはマジでブチ上がってしまった。あれはずるいよー。思えば、平原ではなく親が死んだ現場に行き着いた時点でおかしな話でしたね。まぁ、あれも冷静に考えれば、キルモンガーって前作ラストで改心もしくは和解したと思うので、ダークサイドの権化でござい、みたいな登場には違和感あるとも思う(現実のキルモンガーではなくシュリの中のキルモンガー像の反映、つまり幻影と考えるなら筋は通る)。

アクションは前作に劣る……が

 そもそも前作の釜山シークエンスがあり得ないほどに良かったという話。カジノでの長回しアクションも最高だし、車を使った陛下ならではかつワカンダの科学力をこれでもかと見せつけるアイディアが素晴らしかった。と前作を復習して改めて感じた。まぁ、クライマックスのキルモンガーとのタイマンは正直イマイチでしたね。その点では本作も勝ってたと言えそう。少なくともアクションシーンでドラマを語る意味において、感動は勝ってたと思う。
 単純にアクションを比較したら正直かなり劣る。劣るが、ああいうアクションを目指してないという話なんでしょうね。そもそもシュリがいきなり兄貴みたいなアクションしたら違和感あるし、「ハーブがありゃいいのかよ!」となってしまう。そもそもシュリは挑戦の儀式をクリアできない疑惑もありますね。まぁ、エムバクは優しいおじさん(メンター)ポジになったので挑戦せずに見守ってくれそうではある。後方腕組みゴリラ。

ネイモアはめっちゃ好き

 ネイモアのキャラクターもタロカンの設定も最高だった。若干説明で済ませすぎな気もするが、ワカンダと鏡像関係になる存在として秀逸だった。ワカンダは「白人に搾取されなかったアフリカのとある国」という感じだけど、タロカンはその反対。侵略により住む土地を追われ、挙げ句その土地で奴隷制が繰り広げられるという地獄。アフリカから海を挟んだ南米で対照的なドラマが……というのがマジで見事でした。ひょっとしたらこの部分はチャドウィック・ボーズマン主演で作ろうとしてた当初の段階から練られてたのかもしれない。そのくらいの練度を感じる。スペイン人の侵略によって戦争と天然痘が持ち込まれた、というのにはウクライナ侵攻とコロナ禍という2022年のリアルを反映した結果なんですかね。
 あと単純にネイモアのアクションが最高。宙を泳ぐ、という圧倒的なビジュアルの説得力。飛行能力ってもはやMCUでは陳腐だけど、それこそスパイダーマンが初めて実写化されたときにも匹敵するワクワクがあったと思う。
 シュリとネイモアのドラマも素晴らしい。キャストの魅力もあるが、これはシュリを主役にしたことによる新たなマジックだとも言えそう。最終的に「降伏させる/する」という決着に至ったのも本当に素晴らしかった。2人のリーダーのドラマとして感動的。ライアン・クーグラーは脚本に関わってないけど『クリード 炎の宿敵』ラストにおけるタオル投げも連想しました。

K.E.V.I.N.との相性がすこぶる悪い

 ネイモアの降伏は本当に感動的だった。だったんだけど、その後の「タロカン諦めへんでー!」というエピローグがマジで余計というか、かなり台無しに近かったんじゃないかとも思う。
 あと、シュリが兄の死をようやく乗り越えたことを示す海辺のシーンが素晴らしかっただけに、「実は子供がいまーす!」に結構ガックリきたというか、あれもどうかと思う。まぁ、シュリが乗り越えたからこそこの事実を知ることができた、と考えれば納得できるのかもしれない。ただ、ラストに「実は子供が」という次作以降の布石を打ってくるの、完全に『シーハルク』がラストでネタにしてた奴なんですよね。あれは「何その強引すぎる展開」とある種のギャグになってたけど、ギャグと同じ唐突さを本作でやられるとちょっとね……。まぁ、すべてはあのキャップ野郎がすべて悪い、ということなんだと思う。
 同じ海辺と子供ということで、やっぱ『ワイルドスピード SKY MISSION』は奇跡だったな……とか考えたりも。まぁ、あれも『ICE BREAK』のラストで若干の失敗をしたわけですが。そこからの『JET BREAK』ラストは本当に素晴らしかったです。やはりジャスティン・リンが一番やで。次作が怖いなw
 話を戻すと、リリ・ウィリアムズ(アイアンハート)も正直K.E.V.I.N.N.の要請で入れた感が強く、そこまで機能してなかったと思う。一応、対ネイモア会議は良かったけど、リリのサブカルネタとかはピーターの再生産感もあったかな。

今度のオスカー

 前回は作品賞ノミネートが歴史的快挙だったわけですが、今回はアンジェラ・バセットの助演女優がマジでありそう。少なくともノミネートは普通に有力と見ていいんじゃないかしら。
 衣装デザインと美術に関しては安定して強そうですね。まぁ、ここは「良くて当たり前」みたいな部分もありますが(贅沢)、今回はタロカンも良かったからなぁ。やっぱタロカン好き。

おま環

 上映の明るさが足りなかったのが、劇場の暗さが足りなかったのか、特に前半における画面が暗い。結構しんどいものがあった。これは失敗したなぁ。予告観た感じだと明るい場面が多いと思ったんだがなぁ。

ジモのダサダンス

 ちょっと期待してたんですが、登場すらなかったです。残念だね!


 終わり。マイナスな感想も多くなったけど、そもそも本作は企画自体が超特殊なので普通の尺度ではかっても意味がないとも言える。作品が示す弔意に関しては文句ありません。
 まぁ、K.E.V.I.N.要素はちょっとアレか。『シーハルク』がMCU作品の見方を不可逆的に変えてしまったという罪w

 本作と『スペースプレイヤーズ』の共通点はなーんだ、というおまけクイズ。