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『八乙女×2』31話の感想

八乙女×2 - 氏家ト全 / 【第31話】こたつで溶けたい季節 | マガポケ

 ちょうどヒーター解禁したばかりなので、めちゃくちゃタイムリーでした。同じ季節を過ごしてる感がすごい。
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第31話「こたつで溶けたい季節」

 前半が4コマで6ページ、後半がショートで6ページ。先月はかなり変則的な仕掛けがありましたが、今月はオーソドックス。4コマで日常を描き、後半でワンテーマ(今回はフユリ)を掘り下げるようにじっくり描く。

 前半。サブタイにもあるこたつは最初のネタ以外に特になし。いや、こたつが出てくるネタは他にもありますが、話に関わるのは最初だけ。後半の内容でタイトル付けてもいい気がしますが、まぁ季節の変わり目を端的に示すという意味では大事なタイトルだった気もします。本話単独で見るよりも、前後のタイトルを通しで見たときに活きてくるというか。

 文芸部で8コマ。いつもの文芸部の日常が始まる直前、先輩たちが先に部室に集まっていて……という時制を描いてて面白かった。仲良し3年コンビの日常。芦田ホシノが翻弄するのはいつものことですが、武隈アキナとのサシというのが少し珍しく、細かくはあるが明確にカイたちにボケるときとは違った魅力がある。
 入室前、ドアの向こうから聞こえた音によって話が始まるんですが、オチもまったく同じ状況になってて、しかも今度はすべて正確に聞き取ってるのが面白い。

 アユムで2本。学校でのハルルと、自宅での姉と。全然違うアプローチだが、どちらも胸の話になってるのが良い。
 前者は、勝手にハルルが胸が大きいことの苦悩を勝手に語り出すのですが、いかにも耳年増って感じの聞きかじり情報で良いですね。大きくなることの負の情報も得ることでリアリティを上げる。
 後者、虫食いセーター。特にアユムがだが、2人とも「捨てる」という発想がない。育ちの良さを感じるというか。また、この姉妹ではお下がりが頻繁に発生するという背景を踏まえるとまた味わい深い。

 見開きで8コマが2本。八乙女(カイ)家のこたつから始まり、母親の仕事部屋へと続く。18禁イラストレーターなんですが、2人ともエロを期待して忍び込むわけではないのが良い。ハルルの性格的にそうなってもおかしくないと思うんですが、そうじゃないのが本作独自のバランスだと思います。基本良い子で、今回は読者が勝手に期待する形。
 メインとなるのはデッサン人形。痴態がイメージとして簡略化されて描かれることが多い本作ですが、それを現実に具現化したのがデッサン人形と言えそう。
 そんなデッサン人形。人形にどのようなポーズを取らせるか、も一種の絵のうまさというか、センスが現れる部分だと思う。私がやってもリアリティのあるポーズにならないはず。簡素なはずなのに妙に生々しい雰囲気が感じられる、今回出てきた人形の2コマはめちゃくちゃ良かったです。ハルルもすごい。
 てか、デッサン人形の絵を描くために現実でデッサン人形を使ったのかな……とか考え出すとまたおかしい。

 ハルアユルイの3人で、4コマを2本。ほぼ8コマという感じで、話はルイのフワーリから始まる心理的攻防(?)。それぞれ最初の2コマがぶち抜きになってて右にルイのアクション、左にリアクションとなってるのが良い。特に最初の方は2コマの一番下に話のメインであるフワーリが配置されてるのとか視点の動きがはっきりとあって4コマらしからぬダイナミズム(ぶち抜いてるから4コマではないのかもしれないが)。
 それぞれの3コマ目でルイが振り、4コマ目でハルルがリアクションして落ちる。要するにハルルはマジで何もしてないので、ルイの独り相撲感、勝手な自爆感があって微笑ましい。そこに居合わせていちいち驚きのリアクションを見せるアユムの平和さも含め、やはりこの3人の日常は良い。

 後半。フユリ視点。事前に部室に入り、ドアの陰からカイを驚かす。小さなドッキリですが、小さいが故に、人を選んで何もせずに終わらせることも可能。そして、小さい仕掛けだからこそふとしたきっかけでドッキリが再現されてしまう。
 フユリが自業自得的な仕返しに遭う話なんですが、それもあくまでも偶然で、カイに何の意図もないから逆にリアクションに困り、シンプルにドキドキしてしまう。ラブコメの定番とも言える壁ドンなんですが、フユリ視点を強調して「顔が近い」にフォーカスしてるのも良い。壁ドンだと全身を映しそうなもんですが、カイの真顔が近いという場面、たしかに珍しいので良いですね。フユリファンが喜ぶのはもちろんですが、たぶんカイファンも喜んでることだと思います。
 ドアの陰にいるだけなのですぐにバレてしまう……というサスペンスを煽る1ページ、何気にめちゃくちゃ良かった。シンプルな描写で、特別なセリフなどがあるわけではないんだけど、的確なコマが連発するので普通にハラハラ感を誘う。からのラストページで2人の意外な行動、という機転に繋がるのも良かった。正直めちゃくちゃ面白い。アイディア自体見事で感心しちゃいましたし、2人の “みんなビックリした?” “大成功ですね カイ先輩!!” というどちらも無理してるのが少し伝わってくる白々しさが最高。
 てか、あの機転を利かせたってことは、カイも「今壁ドンしちゃってるじゃん」という自覚があったということですよね。カイもちゃんと意識してたってことなのか。おいしいですね……。


 終わり。「部室への入室」が前半と後半に共通して出てきたので、こたつよりそっちの方がメインテーマと言えそうなんですが、まぁサブタイにはしにくい内容ですね。
 次回は忘年会だそうです。いつもの3人(とカイ)か、文芸部か気になる。本木家でやるならラン姉ちゃんの登場にも期待できそう。