北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『ドラえもん のび太と雲の王国』の感想

 SNSに映画の感想書くくらいならブログに書けばいいのに……という反省を抱えたまま、またしてもSNSに感想書いてしまった。ので、それをブログに貼っ付けようという実験運用。ぶっちゃけ二度手間でめんどいので今後続くかは不明。こういう文章をわざわざ書き足すから余計めんどくさくなるのは明白。

ドラえもん 雲の王国』観たぞい。環境問題を筆頭に地球の生物としての責任全般をテーマにした意欲作。若干やりすぎとも思うが、それでいてそれなりにエンタメとしても成立してるのでお見事。同じことやろうとして失敗した作品もあるからね。『緑の巨人伝』とか。 「雲もどしガス」とかいう疑いの余地のない核兵器メタファーが大きな見どころ。劇中でドラえもんは反省するし、周囲から責められるのだが、本作を思い出して「武力がなければ交渉もできないと教わった」とかおっしゃられるファンもいるので頭を抱えるばかり。ドラえもんも地上人代表に過ぎないので地上人と同じ過ちを犯す、という意味では面白かった。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-12-05T12:23:19.952Z
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 知識としては知ってたけど、昔観た時点では核兵器のこと考えてなかったので今観て「そのまんまやないか!」と驚いた。劇中で反省が描かれたとはいえ、ドラえもん北朝鮮みたいなことをするのは普通にイヤだな……。
 最終的に解決(先延ばしだが)に導いたのは兵器ではなくのび太の過去の善行(キー坊など)、というのは良いオチだと思うし、宇宙人としてのキー坊を出すことで「外交の勝利」としたのは良い話だったと思う。正直「全然解決してねぇぇぇ」とは思うが、『緑の巨人伝』は「映画完成してねぇぇぇ」なので全然マシ。それ言い出したらすべてマシ。

タイトルの通り「王国」が切り札として機能し、クライマックスでアクションではなく交渉を目指すのも面白いところ(まともな方法は思いつかないが)。序盤のワクワク王国作りのくだりは『月面探査記』なんかも思い出すところだが、あちらの切り札は「国民」になってるがナイス発展。『南極カチコチ大冒険』だと「王国作り」そのものが切り札になっててこれまた面白い。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-12-05T12:25:06.955Z
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 「この人隙あらば『月面探査記』の話してる……」と我ながら思ったので無理矢理『南極カチコチ』の話も入れた。あれは国ではない。

劇中の天上人の神話映画。激ヤバプロパガンダという印象しかないのだが(わざわざバイキング、古代中国軍、古代ローマ軍を敵国として描く)、天上人の激ヤバ性については特に掘り下げることなく終わるので、普通に本作の落ち度だと思う。ノアの箱舟は分かるが、環境問題と旧約聖書的世界観(進化論の否定)は相性が悪い。 地上人が諸悪の根源なので「洗い流す」、というのが天上人の計画なのだが、あいつらは旧約聖書に生きてるので、おそらく天動説のように地上からどこかへ洗い出されるイメージなんだろうなぁ(宇宙人と外交してるはずだが)。そもそも人類を一度保護し、荒れ地に戻す、という謎行程が『ドラえもん』の限界って感じだ。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-12-05T12:30:00.354Z
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 今回観て一番驚いたのがこの劇中映画(ミュージカルって言ってたっけ?)。宗教色があまりに強いのでぶったまげた。日本アニメで、「何も考えてないのに白人的に描いてしまう」という問題は時々話題になるけど、本作のこれは超意図的に、しっかり計算して、解像度高く民族描写してくる。しずかちゃんのシャワーシーンより「今だと避けるだろうな……」と思った。まぁ、最近だと『空の理想郷』で悪役の出自が暗にロシア(ソ連)だと示されてるので、そのくらいならやるか。「手頃な悪役の背景」としてのソ連ニュアンス、という意味ではハリウッドの感覚を直輸入ってことかもしれないが。

どう考えても『緑の巨人伝』の元ネタでもあり、キー坊ネタで連結しようとしたアイディア自体は面白い。人類滅亡を画として見せるのも同じく良かった。が、『雲の王国』(1992)の「人類も環境問題に気づき始めたのでこれから頑張る(だからもうちょい待って)」という結論がそっくりそのまま『緑の巨人伝』(2008)でも使われるので絶望する。わざわざドラえもんが画面に向かって「約束だよ」と声をかける場面があるのだが、16年経っても何も変わってない(そもそも『緑の巨人伝』の問題はそういう次元の話ではないのだが)。そして『緑の巨人伝』から16年後が今……(奇跡的着地)

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-12-05T12:32:10.252Z
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 『月面探査記』と真逆の意味で「『緑の巨人伝』の話好きすぎだろ」って話なんですが、今『雲の王国』を観て『緑の巨人伝』に派生しないのは無理がある。16年後からの16年後が今年、というのは調べて我ながらびっくりしました。来年リバイバル上映されるけど、今観る価値があった。

 終わり。さすがに埋め込んで終わりは引け目があったので、補足的な感想書いちゃったけど、「感想の感想」まで書き始めたらもはやキリがないですね。何にせよ、面白いのでオススメです。