北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『マダガスカル3』の感想


2012年ベスト決定!(多分)

 ドリームワークスアニメーション(以下DWA)待望の新作。アメリカとの公開ラグがこんなに短いのは久々かな?
 ユナイテッドシネマ豊洲にて3D字幕版を観ました。3D字幕をやってくれるのはありがたいんですけど、3D映画にサービスデー料金が適応されないのが困ったもんです。

 過去シリーズに関して少しだけ。
 『1』は個人的にはそこまでハマってないんですよね。DWAのくせにかわいい動物アニメなんて!みたいな思いが強いのかもしれません。DWAらしい毒っ気は充分にあって、その部分はおもしろいんですけどね。「肉食動物と草食動物の友情」というテーマは動物アニメ的にスゴイ領域に足を突っ込んでます。
 んで、『2』。これが大ハマリ。世間の評判はあまり知らないんですが、DWA史上屈指の傑作だとワタクシは思います。1位が『シュレック』だとして2位かな。舞台をアフリカに移したことによる続編らしいアップグレード感もさることながら、動物アニメの根幹を揺るがす物語が素晴らしいです。DWA作品の特徴として、アイデンティティークライシスを扱った物語が多いと思うんですが、その危機のレベルが『マダガスカル2』のマーティーは段違いだと思います。「えっ 俺と他のシマウマの区別つかねぇの?」っていう。単純でギャグにも見えながら絶望的な問題。それに対してこの上ない解答を用意しているから『2』はスゴイんですよ。しかも、その友情賛歌を「ズルしちゃったぜ」的なギャグのように描いてしまうのがDWAらしさなんじゃないでしょうか。
 そんなワケで、前作が好きすぎるため少し新作に不安も抱いておりました。・・・・まぁ、取り越し苦労だったワケで。

 あらすじ
今度の舞台はモンテカルロ、ローマ、ロンドン、そしてニューヨーク

 まず、本シリーズの吹替について。字幕版を観た分際で言っても説得力ないんですが、本シリーズの吹替はかなりの高水準でして。タレント吹替として1つの理想系と言っても過言ではないと思います。主要4匹を担当する俳優の4人も問題ないんですが、個人的には脇を固める(人力舎)芸人勢。キングジュリアンとモーリスをおぎやはぎが、ペンギンズの隊長と新人をアンタッチャブルが担当してるんですが、これが信じられないハマリっぷり。
 おぎはやぎに至っては役と自身のキャラクターが一致しすぎていて演技の上手い下手を超越した魅力を発揮してます。正直言って、映画の途中からキングジュリアンは小木に、モーリスは矢作にしか見えなくなってきます。アンタッチャブル柴田は後輩キャラが見事にハマってるし、ザキヤマはこの中で一番演技していて、それが異様に程様になってるから驚きです。
 ただ、そんなアンタッチャブルは『3』には起用されてないんですよね。まぁ、現在コンビでの仕事はしてないんで、コンビの仕事再開が吹替ってワケにはいかなかったんでしょう。双方のファンなだけに残念です。

 本作の吹替が好きなくせに今回字幕版を観たのは、歌が理由でして。初見は原語の歌が聴きたいなぁっていう理由。
 まぁ、本作の吹替は歌もちゃんと吹き替えてて好感が持てるんですけどね。「I like to move it,move it」を「踊るの好き好き」と訳したのは見事だと思います。最近のアニメの吹替曲としてここまで知名度を得た曲はないんじゃないでしょうかね。まぁ、『2』に多用される挿入歌に関しては原語版をそのまま使ってるんですが。
 そんな歌。エンドクレジット時に「踊るの好き好き」が毎回使われるんですが、吹替では小木博明が歌っております。小木ラップが聴けるのはファンにはたまらんですね。ファン以外は知らないです。
 『1』はオリジナルバージョン。『2』は特殊でカバ役で起用されたブラックアイドピーズのwill.i.am(吹替=山寺宏一)がハンス ジマーと共に音楽を担当してるんですよね。そのため、挿入歌もwill.i.amは歌ってます。そして、エンドクレジット。原語版ではお馴染みの「踊るの好き好き」をwill.i.amが歌っているんですね。will.i.amがアレンジした新バージョンが流れるんですが、吹替では再び小木博明オンステージ。本作の吹替のMVPは間違いなく小木ですよ。

 んでもって本作。ネタバレになりますが、本作のエンドクレジットで「踊るの好き好き」はマッシュアップされます。劇中マーティーが歌う「♪タッタッタララララッタサーカス」って曲があるんですがそれと「踊るの好き好き」がマッシュアップされる。つまり、過去作でお馴染みの曲と新作で披露される新曲の融合というワケで。マッシュアップという手法を映画の最後に使って物語的な意味を付与させるのはお見事ですね。膝を打ちました。そのマッシュアップ曲が素晴らしい出来なんですよ。映画館で座りながら思わず体が揺れてしまいました。近くの席の子供は歌ってましたね。字幕版観てるんだから英語版を歌ってほしかったです。
 ワタクシは吹替版を観てないんでわからないんですが。吹替版ってラストどうなってたんですかね? 柳沢慎吾小木博明マッシュアップだったんですか?? 本シリーズの吹替の充実ぶりを考えるとちゃんと日本語版でマッシュアップしてると思うんですが、『2』みたいな変更もあるので、いまいち自信が持てないんですよね。・・・・まぁ、「とっとと吹替版観て来いよ」って話なんですけど。

 3Dについて。本作において一番の肝ですね。DWAというのは3Dというものに力を注いでるワケで、3D映画というジャンルに関しては完全に世界トップ、他の作品を周回遅れにするほどのクオリティーだと思っております。『アバター』より前から3D一筋ですからね。現在のハリウッドで3D映画がこんなに繁栄してるのはDWAのおかげと言っても過言ではないです(過言)。
 ピクサーが脚本至上主義なため「3D映像は二の次」というスタンスというのと対照的にDWA作品はとにかく3D演出がスゴイ。3Dの使い方のバリエーションが異常。ジェームズ キャメロンみたいな奥行き演出だけにならず、バンバン飛び出してくるから超楽しいです。
 DWAの前作『長ぐつをはいたネコ』も3Dがすごかったんですが、本作はそれを軽々と越える3D映像でした。ちょっと3D演出が過剰です。とにかく飛び出す、そして奥行きも見せる。3D演出の手数が凄まじく、「そんな見せ方があったのか!」というのが次々に出てきます。3カットに1回くらいは「おおっ!」と唸らされる3D演出があった気がします(体感)。
 物やキャラクターが手前や奥に配置されてるだけでなく、物がこちらに飛び出してきたり、粉塵が手前に舞ったり、『ヒックとドラゴン』もビックリの飛翔シーンまでありますからね。
 とにかく現状の最高水準の3D映画は間違いなく本作ですので。3D映画が好きな人、逆に偏見持ってる人は観るといいですよ。

 そんな3D映像が爆発するのが終盤のサーカスシーン。トラのトラウマ(駄洒落)克服から始まることで、物語的な集約もあり感動的なんだけど、とにかく映像がブッ飛びすぎていてひたすらに驚きます。
 このサーカスのシーン。作品内のフィクション性がピークを迎えるシーンでもあります。「サーカスが行われている舞台はどんだけ大きいんだよ!」とか思ってしまいます。ただ、そういう目配せは無視して完全にステージを異世界として描くことの潔さですよ。観客席とステージとか同じ空間とは思えない程にステージがあり得ないことになってます。
 かつてのディズニーアニメ第二次黄金時代のミュージカルシーンもそうなんですが、舞台装置が無限に存在する舞台を観ているような感じなんですよね。ちなみに、第二次黄金時代を牽引したのはDWAの創始者のジェフリー カッツェンバーグなんですけども。ともかく、その無限の舞台装置という表現が今回のサーカスシーンはとてもしっくりきました。
 ステージが完全に異世界、と言いましたが、本作のスゴイところはこの後もう一度行われるサーカスシーン。最後の最後に行われるサーカスの場所は、ニューヨーク動物園の上空。つまり、ニューヨークという本作の中でも現実味の多い場所に異世界感バリバリのサーカスがやってくるんですよ。この食い合わせの悪さをとてつもないテンションと映像的迫力で消化していく。ニューヨークということで、主人公アレックスのファンであるニューヨーク市民が見守っている中行われる、というのが物語的な感動もありますね。そして、ショーを行い、見る者(アシカとかヒョウ)を魅了することが同時に彼らへの謝罪として機能しているのが素晴らしいですね。ここらへんはDWAの脚本力なワケで、伏線回収の嵐が心地よいです。

 伏線回収という点で、個人的に一番感動したのはヘアコンディショナーの件ですかね。デュボアのギャグシーンとしてさりげなく出た単語が、実はトラのトラウマ克服の鍵を担っていた、ってのは膝ポンです。膝強打しすぎてアザができるレベル。
 また、主人公たちは『1』と『2』で成長しきっているということで、成長する要員としてサーカスの動物たちを出したのもお見事ですね。トラの火の輪くぐりシーンは映像的なハッタリの度合いがすごすぎて、もはやくぐるトコは描かないんですが、成功と失敗の違いの理屈を用意して、さらにヘアコンディショナーという伏線を持ってくることで、あんな強引なシーンでも感動できるようになってますね。

 主人公たちは成長してしまったので本作では成長しない、と言ったんですが、彼らにドラマがないワケでは決してなくて。本シリーズ最大の事件「動物園への帰還」が用意されてるんですよ。
 そこで、主人公たちは動物園の檻の小ささに愕然とする。あんなに夢見ていた世界の陳腐さに絶望する。まぁ、思い出が美化されるのはよくあることですが、それ以上に彼らが精神的に成長してしまったのが大きいですわな。マダガスカルやアフリカの広大や自然を見て、さらに4匹間の友情(愛情)をより強固なものにした状態では動物園が退屈なものに見える。「動物園に依存する動物アニメ」というDWAらしい皮肉が根幹にある本シリーズでは結構危うい展開なんですが、ワタクシは感動してしまいましたね。グロリアがメルマンに言った「私たちの間に壁があるの・・・?」ってセリフで涙腺搾られましたよ。

 まぁ、無理矢理難点を探すならば、シリーズ全体として『2』が少し浮いてしまったトコですかねぇ。オープニングのアフリカへの別れのシーンが簡素すぎる気はしましたね。まぁ、悪夢を描くことで映像的な説得力はあったんですが。
 それと、エンドクレジットの曲の件や、デュボアのマダガスカル送りの件など、『1』との連結が多いんですよねぇ。バランスとして、『1』>『2』 というのが極端だったかなぁ、という印象です。前述の通り、ワタクシは『2』がとにかく大好きなんでね、少し寂しく思った次第。
 あとは、予告で『不思議の国のガーディアン』をやらなかった! やらないとはわかってたけど、少し期待しちゃったよチクショー。


 まぁ、最後の難点というのは些細なことですよ。個人的な事情も関係してますしね。
 なによりも、脚本の緻密さ、そして思考の妨げになるレベルにド迫力の3D映像ですよ。もう3Dがすごすぎて、映画が終わった後は呆然となってしまいました。映画観て腰が抜けるような感覚になったのは久しぶりです。
 95点。

Madagascar 3: Europes Most Wanted

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DWAの前作。
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