北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』の感想

 公開日が4/12なのでキッドの「1412」と引っかけたいのは分かりますが、頭の「1」が苦しい。

 ネタバレだから未見なら読んじゃダメだし、ネタバレ目的に読むにしては無駄に長すぎるのでオススメしません。

は~るばるきたぜ函館へ~♪

 大倉脚本回の特徴は実在の地を活かしたクライマックスだと思う。最初の『から紅』が例外なのですが、次の『紺青』以降はずっとそう。舞台となった地理を活かす。今回は永岡監督で『紺青』コンビ再び、かつキッド回なのでより『紺青』との一致が多い。キッドが出ると空中の移動が容易になるので、よりその土地を立体的に活かした話になりますね。『ハロウィン』では安室が頑張って空中に飛び出してましたがw
 とにかく本作は完全に『紺青』シフト。実在の観光地に、戦闘力強めのキャラが集まり、ラブコメも強めで、地理を活かしたクライマックスを持ってくる。『紺青』のシンガポールと違うのはやはり国内ということで、函館の歴史的背景を踏まえ、歴史ミステリーの要素まで盛り込んだ点。うまくハマっていたし、それでいてシリーズの中ではかなり珍しい魅力が生まれてる。

観光ツアー映画

 事件を捜査するコナンたちが観光地を巡るのはもちろんなんですが、本筋とはほとんど関係ない観光スポットにヘリで移動する紅葉&伊織の存在に笑った。本筋の方は聖地巡礼を誘発する雰囲気があったと思うんですが、紅葉たちに関してはもはや「関係ないじゃん!」というのが前提になってるというか、観光地を巡ることを極端に強調したメタ的な存在になってたと思う。とにかくフィクションライン、もしくは世界線が違うんですよね。あの2人だけ。ほとんど上位存在みたいな雰囲気(つまりは作り手であり我々客)。
 ただ、巡るだけでなく、その地で、その地ならではのアクションや見せ場を用意してくれるのが楽しい。クライマックスの「五稜郭函館山」のくだりは正直「実際にやらなくても函館山って分かったんじゃない?」とか思ったりもしましたが、派手な見せ場としては魅力的だったし、やはり函館という地を立体的に俯瞰した上での大移動(てか駆けっこ)となったのが楽しい。
 ご当地アクションとして白眉だったのは坂、海、そして路面電車が出揃ったチェイスシーン。パッと見がほとんどサンフランシスコという感じで本当に素晴らしかったです。良いロケーションで、その独自性を踏まえた良いアクションを用意しましたね。

『紺青』にあって『ハロウィン』『100万ドル』にないもの

 ずばり大破壊である。日本が舞台になると途端にテロが未遂に終わってしまうジレンマ。もちろんコナン(たち)的には勝利なので良いことなんでしょうが、一度『紺青』の派手さを知ってしまうと物足りなくなってしまうというか「また未遂か……」となってしまうのも事実。やはりシンガポールという、今後コナンが二度と訪れることのない、いくら破壊しても今後の物語に1ミリも関わってこない地、というのが重要だったんでしょう。渋谷は無理でも函館なら……とかなり失礼なことを考えながら本作には期待してたんですが、残念ながら。
 大倉脚本回は骨組みとしては『紺青』路線が続くんですが、破壊の派手さでは最初の『紺青』がベスト。歴史的に振り返ると『紺青』の意味、価値がより深まってくるというか、再現性のない奇跡の一作だったんだなぁとありがたい気持ちになってきます。『コナン』の映画で特殊な舞台や施設の説明が入る度に「ここが壊されるんだなぁ」となると思うんですが、『紺青』だけは例外で、そこが本当に素晴らしい。

永岡にあって静野にないもの

 キャラ愛だと思う。ここはかなり印象によるところが大きいので話半分で聞いてほしいんですが、大味アクションを志向する2人の作品の大きな違いはキャラ、特に原作レギュラーキャラの魅力の立て方だと思う。静野監督の匂いを察知したアンチ静野なファンも多い印象なんですが、対照的に永岡監督作にしかない魅力を感じてる永岡ファンも多く、その理由の多くははここでしょう。
 ツイート検索して永岡ファンの声を探してるときに知ったんですが、永岡監督作はファッションが良いらしいです。「あっ そうなの?」と完全に盲点だったので今後はもうちょっとそこにも注目して観てみます。自分がいかにそっち方面に興味ないのか痛感しますね……。

オープニング

 本格時代劇風の縦書きテロップで時代背景を説明してくる。劇場で密かに笑いました。血しぶきも景気よく舞い、ツダケンボイスで作品の渋さがさらに上昇。そしてツダケンが背後の敵を一突き。そして残った血の星形、そこを覗くと……現代へ。最高。そしてこのシーン、ここで印象づけられた血の星形がクライマックスで大きな意味を持ち、それがまさにタイトルの『100万ドルの五稜星』へと繋がっていく。ここ最近、具体的には『緋色の弾丸』以降ですが、毎回タイトルが凝ってて良いですね。本編を観たらタイトルの意味が深まって理解できるという仕掛け。逆に『紺青の拳』の拳は「根性ってこと?」という感じで止まってます。

ブコメ

 『コナン』は好きだけど『コナン』のラブコメはあまり好きじゃないなぁ、というファン失格の私ですが、本作はかなり良かった。大きく理由は2つある。
 1つ。メインのラブコメである平次のラブコメが常に彼の行動原理になってた点。そしてそのライバルであるゲストキャラ聖の存在。ゲストキャラが和葉に対してラブコメを発生させるのが『から紅』のアレンジっぽくて良かったんですが、この恋のライバルがまさか最後にテロの主犯として平次と直接対決することになる。激アツである。「アニメだからどんな危険なとこでも戦えます」というのは本シリーズの魅力で、平次は昔は屋根の上でチャンバラし、そのときは十分「すげぇ~」と感心してたんですが、本作ではまさかのセスナの上。森谷帝二風に言うなら「××の×」で大喜利してるとしか思えないようなアイディアの発展、インフレぶりに笑いました。笑ったけど、本作の持つ魅力であるご当地感、そしてタイムリミットを目的地への距離で示して良いシチュエーションですね。
 そんなライバルである聖。彼は親から引き継いだ使命に囚われてるのですが、そんな彼が彼自身の人生、選択として得た輝きが和葉へのラブコメ。聖というキャラクターの本質を描く上でラブコメが見事に機能してたと思います。ラブコメがあるから彼が根っからの悪人とは思えないバランスになってるんですよね。
 2つ(忘れてた)。メインの三角関係以外は、マジでラブコメだけを考えてる存在として切り離されてる。具体的には蘭であり、紅葉(と伊織)。本編からある程度分離した存在であるから「今それどころじゃねぇだろ」的なノイズが発生しづらかったんだと思います。特に蘭は他人の恋を応援する立場がハマってて、かなり新鮮な魅力を放ってたと思います。ラストの首トンも笑いましたし、函館山固執するくだりも良かった。「蘭のいるところに爆弾が落ちる」というのばシリーズの定番ですが、今回は蘭がその場所に執着してる。

紅葉と伊織

 『から紅』のときも好きでしたが、本作の2人はマジで良かった。間違いなく本作で一番好き。一点(俳句のヒント)を除けば、マジで本筋とまったく関係ないのが良い。中途半端にラブコメ脳のキャラを事件に絡めると失敗すると思うので、逆に開き直ればギャグとしてこんなに輝くのかと目から鱗。ヘリの内装で「あり得ない世界観」というが一発で伝わるし、そこから飛び出るスタングレネードも「殺傷力はないが見た目は完全に爆弾」というものですごく都合の良いアイテム。今後の劇場版すべてに出てきてほしいレベルだし、何なら過去作にもヘリで関係ない場所を移動しまくる2人の様子を編集で無理矢理入れてほしいレベル。
 俳句ヒント以外では、最後にようやく本来の目的である告白阻止に絡むんですが、あんだけやろうとしてた告白阻止が彼らにとっては「事故」だったのが絶妙ですよね。あそこで故意でスタングレネード落としてたらさすがにやりすぎ。あくまでもドタバタギャグとして邪魔し、テヘペロ的に終わる。「まぁ映画だから告白成功するわけないんだけどね」とこっちも素直に飲み込みやすいバランスだったと思います。

親父、親父たちの友情、親父の継承者

 殺人事件の真犯人、そして本作最大のサプライズであるあの人と、本作には「父親」が多い。サプライズ要素はさておき、その親父たちが魅力的だったし、ラブコメではなく友情によって動いてるのも良かった。真犯人が(ほぼ)善人だった、というのが面白い仕掛けですが、その善人性を示すのが友情。その息子の場合はラブコメですね。
 その犯人親子と対になるのがサプライズ親父とその息子。親父の使命を引き継ぎ、それに囚われた息子、としてキッドを描いたのが本作の白眉だったし、サプライズ親父が出てきたことで「そんなに囚われなくてもいいのかもしれない」と少しだけ抜けが生まれる。ビックリ要員ではあるけど、それ抜きに見ても収まりの良いキャラ配置だったと思います。

顔が似てる

 『難破船』のときにもあった「顔が似てる」ギャグですが、まさか顔が似てる理由が明かされるとは思わなかった。仕掛けとして面白いのは分かりますし、そのくらいノリが雑なのが(雑なノリもあるのが)本作の魅力だと思います。
 思いますが、正直あの2人以外にも沖田とか青子とか顔が似てる人はいるわけで、「じゃあ全員親族なの!?」という違和感はかなり強いと思う。全然説明できてないよ!

青山ユニバース

 本作の隠れた目玉はココですね。今後のシリーズ的にも超重要な設定が明かされた意味でもそうですし、ほとんどファンサービスの域だと思いますが『YAIBA』組が出てきたのも良かった。いや、本音としては原作シリーズを全然知らないので、「コナンの世界に沖田いんの!?」と最初はぶったまげました。服部とか瞬殺レベルで強いし、何なら京極さんにも勝てる気もしてくるんですが、そこらへんのバランスが取れてるのかは分かりませんw
 沖田でぶったまげてたのに、鬼丸まで出てくるので驚くよりももはや困惑(『YAIBA』は全部読んでます)。今あいつらが高校生ってことは約3年前が『YAIBA』の世界で、この世界の日本列島は巨大な龍なのか……。
 鬼丸で困惑したのは声がツダケンだったせいでもある。土方の子孫って設定が足されたの? てか、調べてみたら鬼丸も原作漫画やテレビシリーズには既出の存在で、ややこしいことに過去のアニメではツダケンじゃないらしい。なんでだよ。元の声優さん可哀想だろ。
 『まじっく快斗』陣営としてはあのサプライズ親父以外はまぁ順当って感じ。青子は劇場版デビューですがそれほど意外性はなかったと思います。ただ、眠る中森警部を見守る青子……を見守る後ろにいる快斗(変装)という場面は素晴らしかった。映像のみでエモが発生してる。
 本作は全編を通じて「こいつ変装したキッドかも」という緊張感があって楽しかったんですが、最終的にはキッドとは別に……となる構成が見事でした。雑にビックリ設定をねじ込むだけでは終わらない魅力がありました。さすが大倉脚本。
 本音を言うと、大泉洋の正体、「ルパン三世じゃね?」と疑ってました。続編待ってる……。

ネクストイヤーズヒント

 知らねぇんだよ~! 勘弁してくれ。さすがにギブアップで調べたんですが、長野県警らしい。孔明モチーフらしく好物ではあるが、なんで孔明が安室の同期と兄弟で、ってなるんだよ。複雑すぎる。これが100巻越えの情報量か……。

今の『コナン』で一番面白いのは「人事」

 来年の内容は当然何も想像できないんですが、脚本は櫻井のターンでほぼ確定でしょう。硬派な警察モノみたいな感じになるのかしら。警察組織の矛盾とか縄張り争いみたいな話と、黒の組織ネタが交互に来てるので。まぁ、新規開拓という意味では唯一の例外である『向日葵』のときのようなパターンもあり得る。
 てか、本作ってキッドが出てきて、アートを巡る歴史ミステリーでもあるので『向日葵』の上位互換みたいな作品でしたね。『向日葵』は櫻井脚本唯一の失敗作だと思うので。『ハロウィン』では櫻井脚本の専売だと思ってた安室を奪われたし、櫻井ファンとしては大倉脚本への妬みというか、NTR感情みたいなものが少し……。
 とにかく、脚本は櫻井。これはほぼ間違いない。問題は監督。静野以降は「立川→永岡→永岡→満仲→立川→永岡」でイマココ。となると次は永岡が有力。ただ、2年連続はイレギュラーっぽい気もするので、そうすると満仲……は絶対にやめてくれ!! 満仲監督は『ハイキュー』に専念してください!!!
 ということで、永岡監督か立川監督なんじゃないでしょうか。もしくは新規の監督を引っ張ってくる、または『コナン』シリーズの中から昇格させる。山本監督がカムバックするのも可能性としてはあるでしょうが、ここ数本の映画が絶好調なのであまり想像できないかな。
 とにかく、満仲はダメだよ。満仲に頼むのはギルティ。いいね? 『ハイキュー』は満仲監督にとって大事なシリーズだって分かるよね? 『ゴミ捨て場の決戦』は『ハロウィン』と同レベルの大ヒットをしてるわけだから、コナンくんに札束でビンタされても折れないでくれよ。俺たちの春高はまだ終わってない。満仲監督が抜けた『ハイキュー』のテレビシリーズ4期は明らかにレベルが落ちちゃったんだから、お願いだから……


 失礼しました。感想終わります。結論として、大倉脚本はいつも最高、聖が最高、紅葉が最高、来年満仲だったら泣く、です。あっけど「櫻井脚本×満仲監督」も面白そうかも……そういうのは『ハイキュー』が完結してから!!
gohomeclub.hatenablog.com
gohomeclub.hatenablog.com