レベッカ・ホール
映画としては、ついにコングがドラマ面の主役も担当するようになった感があるんですが、個人的にはレベッカ・ホールの名演がとにかく印象的。もちろんこれで次作が彼女だけの作品になったら困りますが、コングのドラマがIQ低めなので(バカ映画みたいな意味ではなく実際にコング族の知能指数が人間に比べると低い)、間に挟まるレベッカ・ホールの娘とのドラマがとにかく染みた。あの母娘が出る度に映画がググッと締まったような印象。娘に手話で話しかける際、口から少しだけ言葉が出ちゃってるのが、心から直接気持ちが漏れてる感じで超良かったんだよなぁ。前から良い役者だとは思ってましたが、まさか今までで一番「レベッカ・ホールすげぇ」となったのが怪獣映画とは……。
モンスターバースの主要キャラは大事な人を亡くしがちで、安易な設定にも思えるけど、あんだけ世界中に怪獣いたら仕方ないよね……という世紀末感。今までのシリーズで何度も描かれてきた、家族の喪失、故郷の喪失というドラマが、今回のジアの結論「あなたが私の故郷」で一つの終着点を迎えたような感じもあり、ものすごく感動してしまった。正直泣いた。聾者の当事者キャスティングとか、chosen familyとか、意外とめちゃくちゃ今時な題材がドストレートでしたね。コングは故郷を見つけるというか、獲得するような主体性があって、コングとジア、それぞれの物語が一旦の終わりを見せてしまったようで、キレイなのはいいが「もっと続いてくれないと困るよ?」みたいな複雑な気持ちw
ジア
「大きくなってる~!」と登場シーンでちょっと泣きそうになった。前作からのスパンは短めだと思いますが、子役を継続して使うことのマジックを感じた。母親と手話によって醸される感情などのニュアンスが、生粋の手話話者とそうでない者で微妙に違いがあって、そこを丁寧に拾い上げてるのも良かったな。
そして、物語的には「まさか小美人ポジですか?」という昇格ぶり。髑髏島の設定とかは普通に面白かったし、概ね大好きなんですが、心の片隅では「小美人はチャン・ツィイーだよ?」という気持ちもあって複雑。後続の監督が以前の作品の内容を安易に上書きするような展開は全面肯定しづらい。まぁこれで次作でジアがラドンの怪獣語を翻訳するようになったら全面降伏するしかないんですが。
コング
シリーズ通じてコング(族)の強みとして描かれてきた「道具を使う」路線が本作でめちゃくちゃ拡張されてたのも良かった。まさかの罠で始まるのも驚いたんですが、差し歯や拳の補強など、人間の技術を借りて強化されていく設定も好き。ゴジラは未だに神感なんですが、逆にコングは人間との距離が近づいていくのですね。
スカーキング
コング族が使う道具として良かったのがスカーキングのムチ。まさかの奴隷労働を強いてるのには驚いたんですが、その凶悪さとバトル時の特徴を掛け合わせた象徴としてのムチ。しかも、そのムチを使ってコング族にはない光線を放つシーモを操る、と理屈が連結していくのも最高。
道具は道具なので、DXコングアックスをミニコングが使うこともできるし、スカーキングのムチも破壊すればシーモへの支配が終わる、と道具ならではのバトル展開が繰り広げられるのも良い。
スカーキングはチンパンジー骨格だと思うので、手が長いシルエットが魅力的。王座に鎮座するあの歪んだシルエットとか不気味で超かっこよかったし、「地底のまま終わるのはつまんないよね?」というサービス精神も感じる地上への移動展開で、リオデジャネイロのビル群をスカーキングが長い手を使って高速移動するのもやはりかっこいい。前作でコングがゴジラの熱戦を避けるために香港の街を三次元的に移動しまくってましたが、スカーキングはその能力がコングより上って感じでしたね。地底世界の偽りの王だけど、地上に出てからのが圧倒的に強そうというのがバトル展開的に都合良くて好き。
シーモ
「シーモってまさか元シーモネーターか!?」と誰もが思ったと思うんですが、スペルはshimoなので違った。どうやら日本語の霜が由来っぽいですね。氷関係の日本語をリサーチしてくれたのなら嬉しいが、霜にそんな最強氷属性みたいなイメージはないぞ。
そんなシーモ塾長。前作での「敵との和解」に続いて、「敵の救済」となったのも良かった。最後にコングに懐いてるシーモちゃん可愛い。私も首もとさわさわしたい。四足歩行というのもあって、動物感強めでそれ故の味わいがあって良かったです。
ゴジラ
出番は前作より少なめだし、物語的な要素は「決戦に向けて準備していざ本番」なだけで淡泊ではあるんですが、その分怪獣プロレスは多めにこなしてくれるので嬉しい。決戦に向けた準備が「強くなるために適切な怪獣を倒す」というのが良いよね。DXコングアックスもそうだけど、発想が『モンハン』。
地上の守護神として粛々と仕事をこなし続けるのも「ゴジラがいるのが日常となった世界」って感じで良かった。ハッキリとした目的意識は感じられるし、その恩恵は人類も間違いなく得てるのだが、ゴジラは目の前の人間のことをまったく気にしてない、というバランス。神感あって絶妙。たまに動物感も出て可愛いんだけど、基本的には目的に向かって最短距離で動き続ける。守護神というか地球の暴力装置。
その性質を利用してスカーキングとの対決にゴジラを連れてこようとするんだけど、予想以上にコングに敵意剥き出しで失敗。完全に「聞けって!」と話しかけてる風にしか見えないコングの人間臭さも可愛いんですが、それがまったく通じないゴジラの非人間感。ただしモスラが出てきたら話は別、という露骨すぎる態度の変化も良い。やはり2人は「いい仲」……。
てか、喧嘩してる怪獣をモスラを通じて仲裁し、大いなる敵に立ち向かわせる、というのは「ラドンもそうだそうだと言っています」一歩手前ですね。救難信号もそうか。
ランニング
予告の段階でミーム化してる感のある例の「走るゴジラ」ですが、本編で観たら案外普通じゃない? 普通というか、「ついに決戦!」という普通に熱い場面だった。地面に手をかけて登ってくる描写は、前作の空母の場面でもあったし、あんなに騒いで本当にごめんなさい……。おそらくコングと戦うために、前作から腕が大きくなって、腕の表現が豊かになった感ありますよね。前作からなのよ。
ランニングからの2対2の正面激突の決め画も素晴らしかったです。そっからまさかの無重力になるけど、水中戦の延長みたいな「怪獣映画で新しいことやってやる」感あって好き。無重力になることで、モスラがバトル的に活躍しやすくなる、というメリットもあったと思います。
終わり。ここまで純度100のエンタメ大作は久しぶりで、しかも『アクアマン2』とかと違って「こんなに面白いのに商業的には……」みたいな余計な心配もいらないのも嬉しい。何なら今世界で一番成功してるシネマティックユニバースかもしれない……ので次作も楽しみ!!
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