北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『ゴジラ-1.0』の感想

 仮に続編が作られたら「-2.0」になるうのだろうか。個人的には今後はモンスターバースに連結でも全然いいんですが。

間の悪い編集、安っぽい暗転の多用

 ドラマパートの退屈さがやはり気になったのだが、話のつまらなさとか、演技のダメさよりもあの謎に間延び、もしくはぶつ切り感のある編集のテンポがきつかったなぁ。それなりにサクサク進んでるはずなんだけど、いちいち緊張感が途切れるというか覚めるんだよな。あれはマジ何とかならなかったのだろうか……。

逃げろよ

 東京にゴジラ来ちゃったけど、政府がクソなので避難勧告は出さない。ぐぬぬ、許せねぇ……となるのは分かるんだけど、その直後に主人公がのうのうと自宅で過ごし、浜辺美波をのんきに銀座に働きに行かせてるのが謎すぎる。心に傷を抱えたキャラクターなので本人が無気力になり、何もしたくなくなるのはまだ分かるんだけど、それはそうと身近な人には疎開させようよ。「銀座ってまさか……!」とか驚いてたけど、アホかと思った。
 ここと、浜辺美波が一緒に飛び込まずに1人で死ぬ(嘘)場面が本作の二大「そうはならんやろ」。

負い目と負債

 ドラマパートにはげんなりすることが多かったんですが、ゴジラ自体は良かった。特にゴジラとの戦い方が良かった。軍や官僚(もしくは政府)ではなく市井の人々がゴジラに挑む、というのが本作の根幹だと思うのですが、兵器を使うのではなく兵器を捨てることでゴジラにダメージを与える。機雷の除去、そして特攻用の戦闘機の乗り捨て。戦争の負の遺産を捨て去ることでゴジラに勝利する。泡作戦もそうだけど、戦争の道具には頼らない。そして、戦争に参加できなかったという歪んだ負い目を抱える主人公が浄化されていく。テーマと対ゴジラの戦闘が完全に一致させたのが本当に素晴らしい。
 が、兵器を捨てる話にしてる割にはミリオタホイホイの要素も強烈に存在していた気がして、そこは少し気になるw まぁ、ここらへんの反戦のメッセージを掲げながらミリオタとしてのキャッキャ感が隠せてない人や作品は本作に限らない話なんですが。

突然の『ダンケルク

 国も軍も頼りにならねぇ、民間で頑張るんだよ! という話のクライマックスとして『ダンケルク』を引っ張ってくるの、めっちゃ良いね。『スカイウォーカーの夜明け』もほとんど同じ気がするんですが、まぁ民間の頑張りというテーマ的にはやはり『ダンケルク』でしょうね。
 観てるとき、「クッソシンプルな綱引き熱いぜ!!」という気持ちと、「あんな小さい船がいくら集まっても馬力と重さ足りなくない?」がせめぎ合ったのですが、細かい数値や計算は分からないので無視するとする。

突然の橋爪功

 あれマジで何だったのだろうか。気の利いたカメオ出演とは別の「どういうこと!?」という困惑に陥ってしまった。まぁ、ノンクレジットのカメオってことなんだろうけど。知らぬ間に寝落ちしてて、その間に出てきた重要なキャラかと不安になってしまった。

銀座の屋上中継

 一番好きな場面あそこかもしれない。「ゴジラと目が合う」が恐ろしい作品でしたが、その魅力が強烈に出てたし、初代『ゴジラ』の中継シーンの最新アップデート版、という映像的な迫力も素晴らしかった。

前フリが丁寧すぎるとオチが読める

 零戦には最低限の脱出機構も用意されてなかった、けしからん! という話からの秘密工作を依頼される青木崇高で「つまりそういうことだってばよ……」と丸分かりではあった。主人公が青木崇高を巻き込むことで、青木崇高の方も戦争の呪縛から解放されるというドラマになっててこの話自体はめっちゃ良かったんだけどね。のんきに特攻賛美してる場合じゃねぇのよ。さすがに分かるから無理して引っ張るほどのネタじゃないとも思ったんだけど、分かってたとはいえ、最後に明かされる方がアガるのは確かだったと思う。一応改造自体が現場の人たちには秘密だったわけで、そういう意味でも収まりは良い。

セカイ系一歩手前

 個人のドラマに徹したのは良かったんだけど、主人公のエモに寄り添いすぎた結果、ちょっとセカイ系みたいな話に感じられたのは個人的に難点(セカイ系苦手なので)。ゴジラが主人公の抱える負い目の象徴として見ることができること自体は素晴らしいんですが、象徴性以外にゴジラに対する説明が一切ないので、主人公の心の闇がセカイ(日本)を焼き尽くす話みたいになってたような。よりによって主演が碇シンジですし。

生物学的考証は欲しかった

 たまたまこないだ平成ガメラ三部作を観たせいなんですが、「怪獣映画といったら生物学的考証こそ華だよな!」みたいな気持ちになってたので、そこがまったくないことが少し残念だった。まぁ、これは『シンゴジラ』との差別化、もしくは同じ土俵に立たない戦略だったのかな。マジで象徴性に丸投げなんですよね、本作のゴジラ。戦争の亡霊とかそういう。そんな映画もありましたね。

シンゴジラ』より好き

 『シンゴジラ』も十分好きなんですが、あまりに変化球な作品なので、「アメリカではモンスターバースが大成功してるのに日本の最新作がこれかぁ……」みたいな気持ちも強かった。本作の方が王道感、横綱相撲感あって好きです。戦後設定とかは変化球的なんですが、日本がゴジラ映画を作る意味(国際的な強み)みたいなものも感じてむしろ王道感に繋がってたと思います。

放射能

 除染とか汚染の話はうっすら出てきたのに、あくまでも背景で終わったのは謎だった。それこそ日本がゴジラ映画を作る意味、みたいなものが感じられなかったというか。「死者数ゼロを誇りとしたい」とか言ってたけど、被爆者はかなりいそうで怖い……。

作戦開始

 でかっこよくテーマ曲どん!! は『シンゴジラ』すぎて笑った。せっかくなら山崎監督の持ち曲を使ってもよかったのよ。『ALLWAYS』しか思い浮かばんがw まぁ、「そこでその曲を!?」という驚きはあって良かったです。


 終わり。個人的には「あのゴジラが最後の一匹とは思えない」ネタが来ると勝手に身構えてたので、海中スピーカー作戦のくだりで「別個体いる前提なの!?」ってなりました。それなら最後の復活の兆しはいらなかったよな。疑いの余地なく殺すと東宝からクレームとか来るのだろうか。