北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『サイボーグ009 太平洋の亡霊』初回の感想

 お久しブリーフ。また『サイボーグ009』の新作やるんですか? と思ったら最初のテレビシリーズの有名エピソードのコミカライズだそうです。チャンピオンREDは相変わらず時空の歪みを感じる雑誌である。
 記事とは関係ないですが、『サイボーグ009』舞台化されるのですね。誌面で初めて知りました……(情報弱者)。0010の2人に新しい名前が付いてるのが気になります。

 最初に。元のアニメを観てなくてですね。おそらくdアニメストアに入れば観れたのでしょうが、サブスクに入るのがめちゃくちゃ腰が重く……発売当日を迎えてしまいました。
 そんなところに、オリジナル脚本の復刻版が付録。ありがたすぎる。最低限ではありますが元がどんなもんかチェックできる。ありがてぇ……。脚本形式で知らない物語を読む、というのも一介のファンとしては珍しい体験で面白かったです。

ACT.1

 コスチュームは白ですね。色で年代を特定できたりするから複雑なシリーズである。『ルパン三世』より多いと思う。

 舞台はハワイ。「1941年12月8日」が「30年以上ムカシ」の話。それを2024年にリメイクしてるんだからややこしい。ややこしいが、ちゃんと自然なセリフの中で説明してるのが良いですね。オリジナル脚本にもあるセリフなんですが、まさか「2024年の読者に優しい」という効果が生まれるとは驚き。
 ちなみに、元のアニメが放送されたのは1968年なので、当時よりも少しだけ未来が舞台になってるということになる。ややこしさマックスですが、現在ではない、という一線によるフィクション感が大事だったのでしょうか。謎。
 そんな30年(弱)前という距離感。数字なので当たり前の話なんですが、結構衝撃でした。戦争(自国でかつ敗戦)がその距離感にある感じがイメージできないというのもあるし、30年前の出来事をこういうエンタメとして昇華する感じがやっぱすごいですね。今から30年弱というと、阪神淡路大震災とか地下鉄サリン事件あたりの距離感だと思うんですが、それにアニメのヒーローが関わるエピソードが出てくるってことですよね。ここらへんに当時の文化(エンタメ界)の強さを感じます。56年後にリメイクされるのも納得ではある……てか56年も経ってるのが改めてスゲェな。いろいろとスケールが信じがたい。

 元はアニメの1話で完結するエピソードなので、それを漫画の連載にするとなると当然ゆったりと、細かいやりとりが増えることになる。それはすべて早瀬先生によるものだと思うんですが、今回そこがとても良かった。
 ハワイで出会った老紳士が真珠湾攻撃の思い出を語るのですが、その中で009の顔を見て “もしや日本人かな?” と詰め寄る。とても不穏で、それでいてゼロゼロナンバーの多国籍性が出た良いシーンでした。何なら本作の核心にも触れる場面に思えたので、絶対元のアニメでも出てくると思ったんですが、付録の脚本によるとナシ。意外……。逆に言うと、今後も翻案の部分に期待が膨らむ。
 それと、その直前、ギルモア博士が献花として持ってきた花束を見て恋の予感を感じ取る003も良かったですね。平和ボケ感が前フリとして適切すぎる。と同時に003のキャラ萌えみたいなものも発生してて好きな場面。

 その後は復活した日本軍の映像的(絵的な)見せ場。これ見るとやっぱ元のアニメが見たくなりますね……。
 009がアクションしようとするが、戦闘員の存在を視認して躊躇うのも良い場面。そして、例の老紳士が被弾。可哀想ではあるが、撃たれた後は前よりも冷静な感じで、結構好きなバランス。もっと「日本憎し
」的なことを喚きそうな感じもあったんですが、いざとなったら肝が据わってる感じ。
 「月光」に撃墜される米国空軍のエピソードも複数人のキャラクターがしっかり血の通った存在として描かれた後に無慈悲に撃墜されるので悲壮感がすごい。そこでの回転しながら落下する各キャラのバストアップだけを描いたコマも良いっすね。セリフはないが絶望的な状況というのが伝わってくる。話に出てきた指揮官がB29の隊長という情報が足されてるのも厚みが増すというか、日本の読者(視聴者)との距離が一気に近づく感じで好き。
 その後、日本軍の特攻兵器(特攻兵)が物言わずに迫ってくるのも不気味。当然「特攻って何だよ……」と改めて暗澹たる思いになるんですが、それを襲われる米軍(現代(でもないが))の視点で描いてるのが味わい深い。

 ということで、ギルモア博士がゼロゼロナンバーサイボーグの招集を決意してエンド。たぶん本作の方では全員出てくるんだと思います。オリジナル脚本では004と005がいなかったですが。
 そして、ちょっと意外だったんですが、来月も掲載。シリーズ連載みたいなやつではないらしい。だとすると、毎月やって終戦の8月発売号で完結、みたいな可能性が怪しいかな。まぁ次回以降が今回と同じボリュームで掲載されるかは分からないのですが……。また、オリジナル要素盛り盛りになる線も個人的には捨てがたいです。アクションとか増えたらやっぱ嬉しいですし。