北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『サイボーグ009 太平洋の亡霊』2話の感想

 次回からwebへ移籍らしいのですが、本編の最後に一言載ってるだけで続報がない。たぶん。
 とりあえず初回が無料公開されてるのは確認しました。
championcross.jp
gohomeclub.hatenablog.com

ACT.2

 ハワイで襲撃を受けてから、一旦帰って、召集。アニメ未見で脚本だけ読んだ知識なのですが、アニメではゼロゼロナンバーが全員出てこないけど本作には全員出てくる。あくまでもリメイクということなのですね。おそらくすべて早瀬先生がコントロールしてる……のかな? 辻先生が改めて本書いてる可能性もなくはないけど。

 とにかくリメイク。最も象徴的な変更は007のキャラデザですね。元のアニメでは有名な大人の事情で子供になってた007が本作ではいつも通りおじさん。元のアニメ通りを望むファンもいるっちゃいるのでしょうが、ここらへんは(たぶん)早瀬先生の美意識なのでしょう。わざわざまた子供にする理由はない、みたいな。

 002は現地アメリカで調査中ですが、それを除けば全員集合した本話。やっぱ『009』を読んでる実感が強いというか、個人的な好みかもしれませんが、こういう集まっての会議シーン、軽く言い争ってるシーンが『009』の大きな魅力だと思います。立場も国籍も考えも違う一同がぶつかり合って最終的に一つの目標に向かって協力していく、という。
 そんな会議、及び言い争いで見せ場が多かったのが004。004とは何かとぶつかりますね。ここらへん「そうそうこれこれ」という感じでワクワクしてしまった。本作は軍隊がキーになり、しかも日本軍なので、そこに突っかかる004が意地悪で素敵。そして、日本とドイツということで第二次大戦の敗戦国同士ということも意味合いを重くする。集合する前に2人だけで事前に話す、というのが他のメンバーとの間にちょっとした区切りというか心理的な壁のようなものが感じられて面白かったです。そして、その009が抱える葛藤、壁を004がたたき壊す形。いや、葛藤自体を壊すことはせず、葛藤そのものを肯定するニュアンス。この004の言い分は素晴らしかったです。この手の009と004の対談シーンは原作シリーズにも多いですが、それと似た感じもありつつしっかり新しい魅力も感じられる。

 集合してからも004が絶好調。004が半ば自慢げに体内の爆弾を語るのも、もはやお馴染みの場面ですが、おそらく本作は004以外がそれを初めて聞いた、という時系列なのかな。009がギルモア博士に爆弾を外すように頼むくだりとか、意外とありそうでなかった展開でハッとしました。言われてみればそうだよね。外そうとするのが普通だよね。しかし、外さない。なぜなら……という004の言い分が面白くもあり、若干の不安も誘う。ここらへんも「かなり初期の話」という印象に繋がるかな。
 ちなみに、回想としてヒルダ……だけでなくライオンまで出てきたのが嬉しかったですw ライオンコスはしてない世界線なのかな。

 謎のゼロ戦。初めて謎の敵が喋る。 “…ではキサマはまだ戦争でメシを食っているんだな” という結論が重い。マジで2024年になっても切れ味鋭いテーマですね。先日、5/3は憲法記念日で、例年と同じように「改憲するべきか」の話題が出たわけですが、そこで大きなテーマとなるのが自衛隊なわけでして。 “…ではキサマはまだ戦争でメシを食っているんだな” の問いかけは未だに耳が痛い。

 謎の敵は日本軍(じゃないよ自衛隊だよ)をも攻撃するのでなおさら目的が不明。大戦の負の遺産が具現化して日本を襲う、という話は『ゴジラ -1.0』も連想しますね。マジで今なおタイムリーなテーマ。被害者の怨念がゴジラとなって甦る、というのは『ゴジラモスラキングギドラ大怪獣総攻撃』がより近いかもしれない。そして、あの作品では自衛隊じゃなくて「防衛軍」なのが笑えない。両作ともに当てはまりますが、ちょっとミリタリー趣味みたいなのをサービスと出してる節があって「大丈夫か?」とか少しなります。
 そして、ビキニ環礁で核爆発で沈んだ長門。クロスロード作戦ですが、これまた完全にゴジラでお馴染みですね。ちなみに、現行のハリウッドのゴジラシリーズでは、クロスロード作戦は米軍がゴジラを倒そうと核を使ったという設定です。

 そんな長門の悲劇。敵と戦わずに戦争が終わり、敵の手に渡って実験材料にされ、核爆発に沈む。たしかに惨い。擬人化して考えると、どことなくサイボーグ戦士の悲劇とも重なるところがありそうですね。
 同時に長門放射能まみれの戦艦であって……と立ち向かえるのはサイボーグ戦士たちのみ、と話が自然とまとまっていくのが見事。クロスロード作戦によって負った放射能を、甦った化け物がまき散らすという話は『ゴジラ -1.0』そのものですね。改めてタイムリーだ……というか今月ゴジラの話が多すぎでは。


 終わり。ゴジラゴジラ言い過ぎな気もしますが、2024年に『太平洋の亡霊』を読んだ際の連想、感想としては自然というか不可避なんじゃないかと思います。『太平洋の亡霊』(と初代『ゴジラ』)がどんだけ先んじていたか、先人の偉大さを痛感する話。
 ……みたいな気持ちでゴジラ最新作である『新たなる帝国』を観るのは絶対にやめてくださいw(大好きだけど目指すものが違いすぎる)