北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

劇場版『名探偵コナン』でtier作った

 一気見したのは2020年で、そのときに総括記事みたいなものを書きたかったのですが、ひたすら面倒なので先送り……そして今。ネットフリックスなどでも配信されるようになり、再びいろいろ観たので(一部)、再び『コナン』熱が高まりました。ので、2020年の一気見も含めて総括記事みたいなものを。
 今年観た分の感想はSNSに書いたのでそれを埋め込んでおきます。2020年に一気見したときの感想はツイート検索とかツイログで探すと出てきます。

 Sが最高、C以上が面白い、って感じです。同じ階層の中では公開順。
 言い訳的な前置きになりますが、原作漫画とテレビシリーズは初期だけ数年間ファンでした、という感じ。映画も初期の何本かは当時観てました。2020年に突然一気見するようになったのは、話が長くなるので割愛。

S

『迷宮の十字路』

名探偵コナン 迷宮の十字路』観たぞい。やはり良い。実在の地を巡る観光ツアー的でもあり、その地理がそのままメインの謎解きと繋がり、その謎解きがラブコメ的な着地にもなる。そして平次がメインということでバイクアクション、真剣での犯人との直接対決とコナンではできないアクションてんこ盛り コナン映画としての完成形みたいな作品だったと思う。妖刀村正のくだりとか、和葉が初恋の人と確定すると同時に謎解きのヒントをもらい、そこから直接バトル開始となるので熱い。『瞳』の噴水と並ぶコナンエンタメの最高到達点みたいな場面だと思う。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-07T12:22:10.569Z
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そもそもコナンってそういう作品ってのと、20年前なので時代的にも疑いがないのがあるんだろうけど、事件と関係ない場面では恋愛のことしか考えてないのが結構きつい。『黒鉄』では女性キャラの恋愛ではない協力があるので20年の違いを感じる。 最後の倉木麻衣が懐かし&良い曲なのでグリフィンドールに10点(優勝)

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-07T12:23:26.953Z
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 7作目。監督:こだま兼嗣、副監督:西森章、脚本:古内一成
 こだま監督最後の作品ということで(勝手に)集大成みたなものも感じてしまう。それくらい面白い。京都はとりあえず面白い、みたいな法則も感じてしまいますね。あとはやっぱり映画シリーズにおける平次の存在はかなりデカいと思います。コナンと違うアクションができる。その魅力は一定間隔で描かれてきたけど、やっぱ初期の『十字路』が最高なのではないかと。
 あとは倉木麻衣の主題歌が超良いので観終わったときに全体の印象が上方修正されるような感覚あります。歴代の主題歌でも一番好きかも。

純黒の悪夢

名探偵コナン 純黒の悪夢』観たぞい。やはり良い。マイベスト。ガンギマリ状態の静野アクション、組織が多すぎる&ハードすぎるがストーリーの中心に子供を添えて地に足ついた感情を乗せる櫻井脚本、クライマックスでいくらでも派手になるアクションだが、ちゃんと各キャラのエモが同居する。 『天国』『漆黒』での反省点である「殺人事件と黒の組織が関係ない」の解決策として『純黒』は「殺人事件をやめる」という剛腕を発揮したわけだが、同じ櫻井脚本の『魚影』は「組織が殺人事件を起こす」。シリーズが試行錯誤を重ねて成長してる。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-20T13:00:21.013Z
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観覧車の上での赤井安室のファイトシーン。めちゃくちゃ楽しいが正直「何やってんの?」感もある。どうやらブルーマウンテン先生の要望で差し込まれたらしい。やっぱ私はあの人と相性が良くない可能性が……(『弾丸』も赤井一家の話にしようと変更したらしいのだが失敗だと思う) 脚本の色モチーフが良いのだが、病院で子供たちのオセロにキュラソーが参加する場面が中でも秀逸。彼女は元太の白側につき当然優勢になるが、黒が白に染まりきらずに盤面が崩れてご破産…を彼女が持ち前の記憶力で復元。今後こそ白に…というところで邪魔が入って中断、終了。これをさり気なく描く。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-20T13:00:47.712Z
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冒頭のチェイスシーンが静野アクション極まってて最高。『異次元』冒頭のチェイスを過剰さを更新してくる。キュラソーの車にぶつけられて吹き飛ぶモブ車両の吹き飛び方、飛距離が物理法則忘れてて最高なんだよな。前提、常識、感覚がおかしい。好き。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-20T13:00:57.914Z
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 20作目。監督:静野孔文、脚本:櫻井武晴
 公開順で並べてるからややこしいけど、マイベストは『純黒』です。静野監督のトンデモアクションと、子供たちを中心にした櫻井脚本の妙が奇跡的に噛み合った作品。ベストが静野監督作なのか……と我ながら思ったりもしますが、本作は圧倒的に脚本が良い。てか、静野コナンも全然好きだよ!!

『ハロウィンの花嫁』

名探偵コナン ハロウィンの花嫁』観たぞい。史上初めて音楽が代わり(菅野祐悟)全体的にゴージャスになったというかプチリニューアル感。新監督も人選が見事にハマり、シリーズは順調そのものだと思うが『ハイキュー』が完結するまで満仲監督はやめてね。来年は立川か永岡…… 今年に観ると満仲節みたいなものも感じるというか、終盤でついに(現在の)安室が躍動し出すと展開的な気持ちよさも相まって最高。安室はバレーボールやってくれ。回転しながら落下するヘリにカメラが近づき、そのまま入っていく場面では「カメラどうなっての!?」ってなる(アニメだよ)

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-18T14:45:16.513Z
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『弾丸』のクエンチ、『ハロウィン』の液体爆弾(爆発前)、『100万ドル』のアレなど、見た目はド派手で、都市を蹂躙するような映像にはなるが実際にはそれほど破壊してないところに苦慮を感じる。無責任に好き勝手できた『紺青』はやはり特別な作品。ポスト『紺青』の苦労。 物語的に最も感動的なのは、復讐に取り憑かれたエレニカをコナンが癒やし、救済するくだり。新一にはできないメンタルケアというのがかなりの発明。しかし、エレニカはプラーミャを恨んでたけど、おそらく夫は粛清対象になったのであり、プラーミャはそれを依頼されただけだと思う。おそろしあ。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-18T14:45:33.014Z
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プラーミャはシリーズ屈指の強キャラで歴代の犯人強さランキングでも大健闘しそうな勢いだが、それよりも人の恋心を弄んだのが『コナン』的価値観ではより大罪なんだよな。ナイス憎まれ役。しかし、タイトルがネタバレなのは何度観ても笑う。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-18T14:45:46.413Z
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 25作目。監督:満仲勧、脚本:大倉崇裕
 この人また『ハイキュー』の話してる……って感じではあるが仕方ない。静野以降「あり得ないアクション」がシリーズの定番となりましたが、本作では「アクションの見せ方があり得ない」にシフトしてるのが良い。満仲監督も立川監督も「サービスのためなら物理法則無視もやむなし」というのが少ない印象なんですが、逆に言うと永岡監督は(3人の中では)静野監督の継承者って位置づけになってしまう。というか、監督以外のコナンチームが長年の作品で感覚麻痺っちゃってて、そこに一番近いのが永岡監督って感じなんじゃないかな。

『黒鉄の魚影』

名探偵コナン 黒鉄の魚影』観たぞい。前年『ハロウィン』と並んで確変感が強いというか、抜きん出た高級感があると思う。露骨に『純黒』路線の作品で、「ラムの腹心が警察組織から情報を盗み出すが見つかる」始まりが同じだが、本作はキールの葛藤にフォーカスしてて知的レベルが高い…… 『純黒』同様ラブコメは極小……と思ったら最後が急にお花畑なので面食らうが、好きな人は緩急でたまらんかったのだろう。ラブコメじゃない女性キャラが多く、女性同士の連帯(一部一方通行)になってるのとかシリーズ的にすごいレベルに到達してたと思う。キールウォッカ転がしは私的ベストシーン

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-21T12:52:45.422Z
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本作のベストキャラはキールで間違いないと思うが、ウォッカも好き。底抜けに怖いがどこか忠犬感もあって可愛い。組織キャラがみんな魅力的で、組織内にも覇権争いやギスギスがあるのがまた良いのだが、それがコナンたちに都合良かった面もあるなw(仲良くしてたらコナン正体バレbadend) ピンガの声日向翔陽じゃん、満仲監督と1年のすれ違いかよ、と今回初めて気付いた(『ハイキュー』中心史観)。てか、変装(女性)時に声優変えてないのすごいな。声の技術だけならリアルに組織入れる。逆にガチ勢ファンには怪しまれたらしいので笑う。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-21T12:53:02.114Z
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 26作目。監督:立川譲、脚本:櫻井武晴
 『純黒』を経てコナンエンタメと黒の組織の扱い方のコツを掴んだ感のある櫻井脚本と、2度目の起用ながら初めて企画段階から関わった立川監督の本領発揮という作品。結果、大傑作でしたね……。満仲、立川はよそから引っ張ってこられた言ってしまえば外様監督なんですが、その2人がどちらとも超優秀であり、『コナン』に恐ろしくフィットしてくる。『コナン』制作チームの人選眼が凄まじいと思うんですが、逆に言うと二十何年の積み重ねがあっさり負けたみたいな風にも考えられますね。いや、永岡監督も全然好きだし、やっぱ静野監督も大好きなんですが。山本こだまも当然好き。

A

『時計じかけの摩天楼』

 1作目。監督:こだま兼嗣、脚本:古内一成
 記念すべき1作目なんですが、ここで爆弾テロを持ってきたのが慧眼というか、運命の分かれ道。『コナン』映画が日本映画界の興行収入的な中心になった今考えると、ここでドハデ路線を選択したのが日本映画界の歴史を動かす出来事だったのかもしれない。
 よく「最近はハデなアクションばっかで」と言われがちですが、そもそも1作目の段階で殺人ミステリーの要素は捨ててドハデ路線なんですよね。一応フーダニット的な謎解きはあるものの、基本的にコナンくんが奮闘するのは犯人から出題されるクイズのようなもの。とはいえ、「左右対称」という見れば分かるものをフーダニットのキーに持ってきたのは見事ですね。コナンが見過ごしてきた映像(=我々が観てる映像)の中にヒントが隠されてる。
 ちなみに、本作は珍しくコナンが証拠を用意できずに犯人を当てることになる。犯人にカマかけて何とか証拠を引き出すのでかなりギリギリだが、それだけ強敵だったということですね。おそらく歴代でも唯一。さすがモリアーティ。

『絶海の探偵』

名探偵コナン 絶海の探偵』観たぞい。急にあの国のスパイとか言い出す異色作、が故に偏愛対象。監督が山本→静野へ完全移行し、脚本が初の櫻井。終盤のスパイ、スパイの協力者、事件の真犯人、そして蘭の捜索と探偵としての活躍がアホみたいに詰め込まれてるのが最高。 娘の危機に寝てた小五郎が最悪(可哀想)だが、蘭の救出を実現した探偵(タイトルロール)はコナン、イージス艦、そして小五郎とオチがつくので痛快。さすがに『水平線上』とまでは言わんが、何気におっちゃんの貢献度がデカい。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-10T12:26:16.515Z
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対象年齢が上がったというか、別ジャンルに片足突っ込んでるので「誰か脚本の手綱握ってやれよ」って感じだが、同方向(警察組織同士の縄張り争い)をさらに加速させた『ゼロ』の直系の祖先と言えそう。『魚影』感もあり櫻井コナンの原点という感じ。 情報保全隊とか言われても正直ちんぷんかんぷんなんですが、まさかそれ以上にややこしい組織のゴタゴタを『ゼロ』で観ることになるとは思わなかったぜ……。『絶海』以上に異色作だと思うんだけど、なぜあんなにウケたのか、コナン的にアリになったのか謎だ……(どう考えてもあの人)

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-10T12:26:57.715Z
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イージス艦が主要な舞台ということもありNO爆破という意味でも異色作だが、本作以降で本格的に長期政権となる静野時代のことを考えると嵐の前の静けさ。てか次作が静野コナンの極北とも言えそうな『異次元』なので振り幅がしゅごい……

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-10T12:27:26.116Z
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 17作目。監督:静野孔文、脚本:櫻井武晴
 公開順で一気見してるときに最も衝撃的だったのがココ。明らかに対象年齢が上がったような印象で、それが個人的にとても嬉しかった……。コナンの知力を活躍させるために「対スパイ」という設定を持ってきたのも見事。
 何と言っても櫻井武晴の登場ですよね。今ではすっかり古株なのでこれも一つの『コナン』像になってると思いますが、明らかにめちゃくちゃ個性の強い人が突然ぶっ込まれた作品。それが『絶海』。櫻井脚本というか櫻井コナンの特徴は「組織の話」と一言で済ませて概ね問題ないと思います。どの作品でも組織同士で、もしくは同じ組織の中でギスギスの管轄争い、覇権争いをしてる。その作風がやたらキャラクターの多い『コナン』という作品に徐々にフィットしていく変遷を楽しむのも一興。どんな舞台の話でも、警察サイドでも揉めてるし、黒の組織の中でも揉めてる。その複雑さが魅力。それはデビュー作の時点でしっかりとあったよ、ということで偏愛。
 『業火』は例外というか、新境地開拓を目指した意欲作だと思うんですが、大人の事情で失敗してしまいましたね……。あそこで櫻井脚本を捨てなかった『コナン』チームには感謝しかない(おそらくですが脚本家が悪いって話じゃないと思うので当然ですが)。

から紅の恋歌

名探偵コナン から紅の恋歌』観たぞい。静野監督が歴代最多監督の仲間入りと同時に本作で卒業。そしてそれ以上に長い歴史を持つ古内一成亡き後の初『コナン』にして大倉崇裕脚本デビュー作……と歴史の転換点感がすごい。前年の『純黒』と本作で今へ続く絶好調の流れが決定づけられたと言えそう。 座組は全然違うが『迷宮の十字路』とあわせ鏡になるように出てきた新キャラ紅葉が秀逸。『十字路』は平次の初恋(過去)の人で、『から紅』は平次が未来の旦那さん。ただの憎まれ役の恋敵にしなかったのがナイス。っよめにとったるさかい。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-09T12:24:47.912Z
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大倉脚本。初劇場版とは思えないほどにフィットしてて驚く。櫻井脚本デビュー作『絶海』はかなり異色でしたし(大好き)。事件の真相に近づくにつれどんどん恋愛要素がマシマシになっていき、最終的に「ここも三角関係かよ!!」とずっこける感じが最高である。名頃先生が不遇すぎて泣ける…… ラストで突然『天獄へのカウントダウン』オマージュジャンプ(たぶん)するんだけど、よく考えたら大倉脚本の次作『紺青』は犯人の動機が『摩天楼』森谷帝二オマージュ(たぶん)。『ハロウィン』では特になかったと思うが、今度は『魚影』(櫻井脚本)で『14番目』オマージュキス……

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-09T12:25:04.517Z
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 静野が「最多監督」と書いてしまいましたが、総監督も含めるなら山本が最多です。雑でした。反省。
 21作目。監督:静野孔文、脚本:大倉崇裕
 こちらも初脚本作品ですが『絶海』とは対照的に『コナン』らしさ、つまりは殺人ラブコメを書くのが最初から異様にうまかった。そんな印象。いや、正直うますぎたというか、事件の真相がラブコメにまみれてたのとかシリーズの中でもかなり珍しいので、何ならいきなり出てきて一番うまいのかもしれない……(古内脚本が一番という気持ちもあるが)。
 監督もそうですが、脚本家もよそから引っ張ってくる人選が見事なんですよね。シリーズがここまで右肩上がりの成功を遂げてる最大の要因はここだと思う。

『ゼロの執行人』

 22作目。監督:立川譲、脚本:櫻井武晴
 立川監督デビュー作にして、安室フィーバーになった作品。社会現象レベルの安室人気が目立つせいですぐ「女性人気が~」とか言われがちだと思いますが、櫻井脚本の極北みたいな内容で、『絶海』で十分驚いてたのに、より濃厚な警察組織の話が飛び出たのが本作。初見時「いや何言ってんのか分かんねぇよ!」ってなりませんでした? 私はなった。それでも面白かったけど。話の内容はかなり年齢高めの人向け、言い方悪くするとオジサン向けだと思うんですよね。まぁ、キャラモノとして女性人気、ストーリーで男性人気みたいなことなんだと思います。あんま男性女性で単純化するのも良くないと思いますが、ものすごく変なバランスなのになぜか成立し、結果的に大人気(興行収入爆上げ)となった作品はあまりに特殊なケースなのであれこれ考えたくなっちゃう。てか、逆に「女性向け」臭くないから女性にウケやすかった(逆も然り)、というのはありそう。
 しかし、この特濃櫻井印みたいな作品が大成功を収めたのも歴史的に重要な出来事だったと言えるでしょうね。本作で最も個性が光ってて、光りすぎて「ちょっとビカビカなんですけど」ってなってたのは安室じゃなくて櫻井。
 本作で人気出すぎたせいで某ベテラン声優の理性がバカになってしまったのは本当に悲劇。

『紺青の拳』

名探偵コナン 紺青の拳』観たぞい。永岡監督はデビュー作にしてシリーズ最大の破壊をもたらす大偉業。静野時代継承を感じさせる大味アクションだが、どんなテロリストよりも京極が怖い、というキャラ描写でバランスを取ってるのが見事だと思う(取れてるかは知らん)。 静野時代の『異次元』で国際化を目指したと思われ、それはおそらくハリウッド大作への対抗心だが、『紺青』では初の海外進出を果たし『異次元』での到達点をさらに更新した感。シリーズ最大の破壊が行われるが、その発端が都市の再開発という森谷帝二オマージュなのがニクい。てか文句つけづらいw

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-13T12:12:53.415Z
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殺人やテロよりも重きを置かれるのが園子のラブコメだが、それがアクションとセットなのが良い。作品を通じて「京極を縛る」が描かれるが、キッドによる開放でバトル開始、今度は京極自身が縛る(園子で)ことで逆に縛りを強さにし、勝利後にそれを外してラブコメで着地。嘘を嫌う園子も良かった。 『紺碧』は失敗作だと思いますが、蘭と園子の友情をテーマにしたこと自体は良いと思ってて、同テーマでリベンジしてほしい気持ちもある。と常々思ってたが『紺青』に園子リベンジという裏テーマがあったような気もしてきた。クライマックスの「園子が背中で繋がる」とか『紺碧』で良かったやつ。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-13T12:13:06.914Z
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 22作目。監督:永岡智佳、脚本:大倉崇裕
 永岡監督デビュー作にして、舞台が海外という異色中の異色。静野以降の監督で、永岡監督は唯一生え抜きなので3人の中で最も静野イズムを継いだ存在だと思ってるんですが、ドハデ路線としては1作目にしていきなり静野全盛期を越えてしまったような作品。破壊の規模という意味ではシリーズ屈指で、怪獣映画としての『コナン』の最高到達点。
 そんな静野のDNAを感じ取った人たちから永岡監督は嫌われることもあると思うんですが(言ってること自体は正しいと思う)、キャラクターの魅力を描くことに関しては静野、どころか満仲、立川にも負けない実力があると思ってて、そこに引かれてる永岡コナンファンも間違いなくいると思います。象徴的なのは『紺青』での「髪を下ろした園子」で、あれ永岡監督のアイディアらしいですよ。「静野っぽくて嫌いな作品だが園子は可愛い」って人はかなり多いんじゃないでしょうか。ただビジュアルが可愛いってだけでなく、「縛りからの解放」を散々繰り返した果てにあの場面を用意してるのが本当に素晴らしかったと思います。

B

 上位が最近の作品に偏りすぎなのは自分でも承知してますが、絶対近年の方が面白いと思うんですよね。仕方ないよね。猿ブラやね……。

『世紀末の魔術師』

 3作目。監督:こだま兼嗣、脚本:古内一成
 キッド初登場にして、宝探し型の作品。今年の『100万ドル』もそうですね。最後に光でブワーッとなってお宝の真実がドン! というのが同じ。とりあえず光っとけばかっこいい。
 初期は模索してたのもあるでしょうが、作品ごとに方向性が全然違ってて良いですね。「こだま時代が1番面白いからに決まってんだろ!」というタイプのファンも多いと思いますが、気持ちは分かる……。個人的に『ベイカー街』の異色さは苦手だけど、それも含め毎回いろんなことに挑戦してるのが楽しいし、基本的にどれも面白いです。
 シリーズにおける「とりあえず声に出して言いたい」セリフ選手権の優勝は、本作の「バルシェ肉買ったべか」でいいんじゃないでしょうか。マジで人気投票しても勝てると思う。個人的には「強めにとったるさかい」、「園子姉ちゃんパンツ丸見え!」が次点。
 真面目にホメると、宝探しのワクワク感と、最後の宝の正体の高揚感が素晴らしいです。あとメガネ好きとしては「メガネだから勝つ」となるのも好き。あとは最後の最後、コナンの正体がバレる(初期はこういうサスペンスが多いw)という危機をキッドがキッドらしい方法で救ってくれるのが、その方法が、その理由が最高でしたね。個人的にキッドのかっこよさにはあまり惹かれないんですが、この場面は未だにデビュー作の本作がシリーズベストだと思います。

『瞳の中の暗殺者』

名探偵コナン 瞳の中の暗殺者』観たぞい。ぶっちゃけラストで噴水と一緒に脳汁が出る以外は地味……と思うが、作品全体がそこに向けて作られてるとも取れる。謎解きと記憶喪失の話で暗いが、最終決戦の遊園地で急に派手になり、しつこいほどの鬼ごっこからの噴水。やべ~勢いですげー盛り上がる 噴水。デートの思い出、トリック、犯人の顔と記憶が戻ると同時に2人を救う盾となり、その後コナンと犯人の早撃ち対決、トドメは「記憶が戻ったということは~?」とお約束の暴力で決着。熱い。まぁ実際は水圧強すぎるとかコナンが蹴り上げた缶が垂直に落ちてきたり気になるところもある。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-16T14:39:24.811Z
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警察内部、それも上層部の犯行!? とぶち上げるくせに犯人の正体が全然関係ないのでずっこける。もうちょっと突っ込んでほしかった。今の体制だったら櫻井脚本回。関係ないが遊園地で記憶取り戻すのはモロ『純黒』ですね。 蘭のラブコメが人気の要因だと思うが、個人的には園子との友情、園子の「ズッ友だょ……!!」が感動的で好き(文章は違うが意味は驚くほどそのまま)。蘭と園子をテーマで映画やってほしくなるのだが、実際に出来上がるのは『紺碧』。無情。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-16T14:39:46.757Z
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 4作目。監督:こだま兼嗣、脚本:古内一成
 本作はもうとにかくクライマックスの噴水。一に噴水、二にトロピカルランド、三四が噴水、五に噴水という作品。ベストシーンを選べとなったら間違いなく真っ先に候補に挙がる。個人的には『十字路』の村正も候補かなぁ。あとは『ハロウィン』『魚影』の「キミがいれば」。

天国へのカウントダウン

名探偵コナン 天国へのカウントダウン』観たぞい。2001年にツインタワー爆破というちょっと笑えない題材(4月公開)ではあるものの、『ワイスピSKY MISSION』より14年も早く高層ビル間を車で飛び渡るという偉業。園子姉ちゃんパンツ丸見え!(関係ないけど言いたい) ツインタワーを結んだ両延長線上に富士山、例の丘があるという位置関係がキーになり、それを全編を通じてさり気なく描き続け客の頭に刷り込ませる。オチを知ってると「コナン後ろ~!」と楽しめるし、視覚的なヒントという意味では『時計じかけ』と通じる作りでかなり好き。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-27T11:55:05.464Z
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黒の組織の劇場版デビューが売りではあったが、今見ると事件と関係ないし、爆破テロを無視したまま事件解決の雰囲気出したり違和感は残る(全体的に子供たち中心で進むので余計に)。が、この後『漆黒』『純黒』『黒鉄』と劇場版における組織の扱いがうまくなっていく変遷が味わえてエモい。 こないだ『ゴジラvsコング』でも観たばっかだな……となる蘭とコナンの『ダイハード』ジャンプですが、逆に言うとあれをラブコメ的な見せ場に昇華した『コナン』の徹底的なまでのラブコメ主義がすげぇぜ。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-27T11:55:43.110Z
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 5作目。監督:こだま兼嗣、脚本:古内一成
 富士山のトリック(物語上の仕掛け)がめっちゃ好きなんですよねぇ。犯行内容、動機、コナンが気づくヒントがすべて富士山で統一されてるのが良い。犯人が諦めてコナンの推理を認めた際に、モップに墨をぶっかけて自分の画の富士山を一刀両断するのも事件の決着として本当に気持ちいい。たまに『コナン』のトンデモ動機の代表例として本作の富士山が挙げられることありますけど、個人的には「正気か?」という感じ。何ならシリーズで最も感情と犯行が一直線に結びついてるキレイな作品だと思う。むしろ黒の組織と事件の結びつきが甘い方が気になる。富士山より「GINって何だよそれ……」ってなる。

『水平線上の陰謀』

 9作目。監督:山本泰一郎、脚本:古内一成
 とにかく小五郎ですね。小五郎の何かのアニバーサリーで作られた作品なんじゃないかと勝手に疑ってしまうレベル。小五郎(ファン)へのご褒美みたいな作品。シリーズを長いこと続けてきたからこそできる変わり種という感じでとても好きです。映画1作目がこれじゃつまらんのよ。
 あと、ここらへんから犯人が二段構えという話が増えていった印象。フーダニットで楽しむ場面を増やしたい、という目的が大きいと思いますが、本作の場合は「コナンじゃなくて小五郎が!!」というサプライズにも繋がってるのが最高。

戦慄の楽譜

 12作目。監督:山本泰一郎、脚本:古内一成
 後続の静野が個性的すぎて、「こだま or 静野」みたいな見方に偏ってしまいがちで、間の山本期はちょっと損な気もするんですが、ここらへんの安定した面白さも好きです。安定しつつ変化や挑戦もしてる。
 個人的にゲストキャラとの交流が好きなので、本作みたいなコナンがゲストキャラと即席バディとなって事件解決に向かう話が非常にありがたい。
 シリーズでは超珍しく、コナンのダメなところ(音痴)をメインに持ってきたのもかなり異色で面白いですね。今の時代だとアレだけど、「声でダイヤル」は真似したくなった人も多いんだろうなぁ。

天空の難破船

 14作目。監督:山本泰一郎、脚本:古内一成
 キッドが主役という意味では一番印象的な作品かもしれない。「キッドが出てくる作品」でもっと好きなのは多いけど、キッドの主役感が一番好きなのは本作。
 たまたま居合わせた場所で強盗事件、広い密室内でどうするのか……という完全な『ダイハード』型の話なんですが、はっきり言えば「そんなの面白いに決まってんじゃん」。エンタメ作品の常套手段なのに、意外となかったんだよなぁ……。いや、意外というか、コナンが遭遇するのは基本「殺人事件」だからそりゃ無理な話ですね。

『異次元の狙撃手』

名探偵コナン 異次元の狙撃手』観たぞい。静野監督が到達した、日本でハリウッド映画を撮る方法。静野コナンの集大成にしておそらく映画シリーズにおける最大の分岐点(花火ボール、最後の古内脚本、映画で情報解禁など)。この映画がシリーズのあり方を変えた。その世界に私たちは今も生きている。 終盤。暗闇の中犯人が暗視ゴーグルでジョディ先生に迫るシーンで、「『羊たちの沈黙』みたいでかっこいいな」とか思ったのだが、そもそもジョディ先生の名前が「ジョディ・スターリング=ジョディ・フォスタークラリススターリング」なので名前の由来を踏まえたパロディだった。オシャレじゃ~ん

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-15T13:02:42.747Z
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花火ボールが象徴的だが、コナンのアクションが本作によって拡張された、というのもデカい。キック力増強シューズでスーパージャンプするのとか、誰もが思いつく使い方だけど実際にやっちゃダメだろw とはいえ、アクションがほぼすべて犯人の狙撃を阻止するために行ってる(最初だけ追跡)のが良い。忘れそうになるけど連続殺人という点は至ってオーソドックス。スカイツリー(違)を中心にした地理が魅力になってて、これは近年の大倉脚本回っぽい味わいでもあるね。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-15T13:02:53.738Z
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 18作目。監督:静野孔文、脚本:櫻井武晴
 ハリウッド映画を撮りたかった静野監督(マジでそう語ってるインタビューがある)による「日本で撮ったハリウッド映画」。単独監督のデビュー作が『絶海』というシチュエーションの限られた作品だったこともあり、静野監督が「成った」という印象がどうしても強い。興行収入も本作で初めて40億の大台(今の感覚だとショボいですが)に乗ったこともあり、いろんな面で「成功」の評価が得られたことも歴史的にかなり大きいと思います。コナン映画に変化をもたらしたという意味では歴史上最大レベルだと思うので、嫌う人が多いのも分かるし、仕方ないと思うんですが、個人的には『コナン』の中でいろんなジャンルに挑戦するのはシリーズとして魅力的なことだと思ってます……が、私はファン度が全然高くないので説得力はない。
 あと、コナンファン、原作ファンの多くが本作の話になると途端に「了解」とだけつぶやきだして話にならない傾向。一方で、最後の古内脚本作品でもあるので別のオールドファンからの思い入れが強い作品になってもおかしくない。いろんな意味で歴史の分岐点。

『100万ドルの五稜星』

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 27作目。監督:永岡智佳、脚本:大倉崇裕
 今年の。全然好きなのでもうちょっと上に配置したかった気持ちもあるんですが、個人的に『紺青』の方が好きなので、その下となると結局ココ。永岡監督&大倉脚本はマジで相性が良いと思いますし、歴代の大倉脚本作品の中でも「旅情」が最も感じられる作品なのでかなり好きです。最も聖地巡礼したくなる作品と言えるのではないでしょうか。普通に今後も楽しみです。
 本作も『異次元』と同じで熱心なファンの感想が最後のサプライズに偏りがち、というのは間違いない。顔似てる人はもっといるから個人的にはあまり楽しめなかったのですが……。

C

 ここは「強いて言えばちょっと難あり」みたいなエリア。

14番目の標的

 2作目。監督:こだま兼嗣、脚本:古内一成
 1作目の『時計じかけ』がいきなりイレギュラーと言える内容だったのに対し、本作はスケールの大きい「連続殺人」で王道感がある。が、『時計じかけ』路線を期待すると……って感じ。あとは、さすがに殺人(フェイク含む)計画がいくら何でも大きすぎるし、フェイクとしていきなり警察関係者を狙うのが無理があるというか、リスクありすぎると思う。
 ただ、最後の最後に新「一」が来るのは見事だし、「一→エース→A→キス」とラブコメ的に連想ゲームしていくのも結構好きです。今はちょっと死語かもしれないw
 そんなキス。『魚影』で再現されてたのも記憶に新しいですね。「映画でも人工呼吸ならキスしていいって過去の判例に書いてあったぞ!!」って感じだと思います。

『ベイカー街の亡霊』

 6作目。監督:こだま兼嗣、脚本:野沢尚
 こだま監督時代で唯一の非古内脚本。シリーズ全体でも初の非古内脚本ということもあり、意識的に異色作を作ろうとしたんだと思います。ゲーム設定も面白いし、「父子」のテーマも好きです。ただ、ゲーム終盤でホームズが出てきて「客は消しておいたからあとは頑張って」となる展開が個人的にどうしても許せないというか、飲み込めない。あそこで一気に冷めてしまった。「客を守りながらどう戦うのか」を楽しみにしてたので。プログラムがルールを無視した介入してきたらもうゲーム(映画)としては崩壊だと思う。
 あと、子供たちに「ここは俺に任せてお前は先に行け」をやらせるのも好きじゃない。死なすなよ。ゲームの中で子供たちにコレをやらせる、という意味でちょっと『ドラえもん 夢幻三剣士』と似てるかもしれない。来年のドラ映画が『夢幻』という説が一部でかなり有力視されてるんですが、どうなのだろうか……(監督は超楽しみな人でほぼ確)。

『銀翼の奇術師』

 8作目。監督:山本泰一郎、脚本:古内一成
 『100万ドル』の舞台が函館と明らかになった際(もしくは匂わされた際)、「おじいちゃんキッドと函館はもう行ったでしょ?」と多くの人が思ったと思います。それがこれ。航空パニックモノとしてはちょっとびっくりするくらい本格的で、迫力があるんですが、殺人事件との連結が甘すぎるというか、「別に連結とかそもそも目指してないんで」という感じ。それが個人的な好みとしてはイマイチ。映画だから別ジャンルの何かを無理矢理ドッキングするのは分かるし、大好きですが、もっとうまくできるんだから諦めんなよ。

『漆黒の追跡者』

 13作目。監督:山本泰一郎、脚本:古内一成
 シリーズで2度目の黒の組織。『天国』のときよりはかなりマシになってるし、アイリッシュのキャラクターもかなり魅力的なんですが、殺人事件との連結が緩いんですよね……。この問題は櫻井脚本に引き継がれ、『純黒』で導き出した答えは「殺人事件やめていいっすか?」。ずるいぞ。その後『魚影』では「殺人事件の犯人が黒の組織」という答えを出してて、これが最適解なんだと思います。
 あとは本作で有名なのはDAIGOの名演ですが、個人的には某サッカー選手が強すぎるので「まぁ勘弁してやってよ」という気持ちもある。あとは『ゼロ』の博多大吉もありますね……(みんなシリアスな場面で出すのがいけない)。

沈黙の15分

 15作目。監督:静野孔文、総監督:山本泰一郎、脚本:古内一成
 静野監督デビュー作。オープニングのアクションもしくは大破壊がクライマックスより印象に残りがち、というのは静野作品あるあるだと思いますが、本作の「地下鉄引っこ抜く」は本当にすごかったです。『緋色の弾丸』で「思ったより地味だな……」となった感覚麻痺ファンは多いと思うんですが、その原因はおそらく『沈黙』にある。静野監督は偉大。ただ、この頃はまだ山本監督もいるので少しややこしいですね。
 個人的にクライマックスでコナンに危機が襲うのが面白かったし、それを救ったのが携帯電話だったのがすごく良いと思います。携帯世代の申し子みたいな作品なので。ただ、犯人の動機と犯行内容が釣り合ってないというか、「たったそれだけのために地下鉄テロを!?」ってなる。回りくどすぎるというか、リスクがでかすぎる。ここらへんは古内脚本の特徴かもしれない。一般人が犯人のまま、映画に求められる派手さがどんどん大きくなってきたことの弊害ですかね。後に犯人がガチのテロリストになったりするので「さすがにこのままじゃまずい」となったのが窺えます。古内脚本でも最後の『異次元』は元シールズですし。

11人目のストライカー

 16作目。監督:静野孔文、総監督:山本泰一郎、脚本:古内一成
 某ヤットさんの名演が記憶に残る、というか正直それしか覚えてない……はさすがに嘘だけど。ただ、演技が下手なのは正直当たり前なので、それを大事な場面に使った方に問題があると思うんですよね。とはいえ、某キングが謎に演技がうますぎるので某ヤットさんが悪目立ちしたのもある。あの人『ルパン三世vs名探偵コナン』でも出てて、やっぱりうまかったからな。謎すぎる……。そして一応同一ユニバースだろうに、なんでまたやらせたんだろうか。
 と、ネタ方向に感想が向かいがちですが、本作の特徴はコナン(新一)にとって思い入れのあるサッカーが題材な点にあると思います。サッカーが好きだからこそ事件の真相にたどり着いたコナンが本気で怒る、というのが普通に感動的。
 思えば、静野監督が就任してからの3作は、『沈黙』でコナンの危機、『ストライカー』でコナンの怒り、『絶海』でコナンの絶望と今までになかったコナンの一面を探求していたように思います。個人的には良いことだと思うんですが、保守王道を求めるファンからは嫌われやすいのかもしれない……。何度も書きますが、私は好きですよ。シリーズの寿命を延ばすためにも必要だと思う。

『緋色の弾丸』

名探偵コナン 緋色の弾丸』観たぞい。連続した事件ながら不殺が続き、過去の2つの事件、警察制度の欺瞞と複雑ではあるが事件パートは面白い。何よりリニアとそれに付随する、クエンチ!(言いたい) 問題はオリンピックや赤井一家とうまく連結できてない点だよなぁ…… 本作の中で面白く、独創的で、おそらく最もオリンピックを感じさせるのが冒頭の「ウィリアム・テル序曲」。運動会イメージかつ、リンゴ狙撃で赤(緋色)、目隠しかつ不殺。ゴールテープ乗車もかっこいい。『100万ドル』の冒頭も「こんなことやるの!?」だったし、永岡監督やっぱ嫌いになれない。

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-17T12:29:48.784Z
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今までにないまったく新しい爆発としてクエンチを持ってきたのが本作の慧眼。ド派手だが爆発自体に危険性はない(ガス吸うと危険)というのもあまりに都合の良い爆発なので最高。一切炎上はせず白煙を撒き散らしながら暴走する車体、という絵面が新鮮で好き。 スポンサーを降りたくらいでアメリカに住んでいられなくなる、というSNSなどによるネットリンチの問題も描きたかったのだと思うが、正直掘り下げ不足。最後のコナンたちの活躍が見守られるのも、モニターを通じて何でも「消費」されることの暗示かもしれないけど、我ながら「考えすぎでは?」ってなる

北区の帰宅部 (@gohomeclub.bsky.social) 2024-04-17T12:30:08.024Z
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 24作目。監督:永岡智佳、脚本:櫻井武晴
 現段階では唯一の永岡監督&櫻井脚本タッグ。サンプルが少ないのでたまたまかもしれませんが、大倉脚本との方が相性良いんじゃないかな……。永岡監督はキャラ萌え的な方向でキャラクターを魅力的に描くのが抜群にうまいと思うので、そういう魅力は櫻井脚本より大倉脚本の方があるんじゃないかと。ただ、本作の哀ちゃん、めっちゃ好きです。たぶん歴代で一番好き。超偏見になりますが、櫻井武晴は哀ちゃん好きだと思う。そこに永岡監督の手腕が加わることで、輝く。一部「蘭を差し置いて哀ちゃんとイチャイチャしてない?」みたいなところもあって、個人的には魅力的ですが、嫌いな人もいそう……。
 あとは公開当時から疑ってるのですが、青山剛昌が途中から指令を出した「やっぱり赤井ファミリー集結で行こう」の案がすべてを狂わせたのではないか……。事件の真相は櫻井脚本らしい警察組織の矛盾に迫るようなハードな内容なんですが、映画としてはキャラクター先行のものになっててチグハグな印象。そっち方面にいつまでもフィットしない櫻井脚本が悪い、という見方はできる。
 来年(『100万ドル』の翌年)の監督が予想しづらいんですが、『緋色』のコンビになるのが一番有力ではないかと思ってます。ので、来年はもっとうまくやってくれよ、と期待。まったく新しい監督を引っ張ってくる可能性も少し疑ってますが。

D

 ここは「どちらかと言うと失敗作なんじゃないかな……」。1本だけですが。

『業火の向日葵』

 19作目。監督:静野孔文、脚本:櫻井武晴
 キッドが絡むアートミステリー。しかも実在の絵画が絡んでくる。めちゃくちゃ面白そうじゃん!! と序盤中盤と引き込まれるんですが、終盤何かうやむやにされたように終わる。『絶海』で櫻井脚本に一目惚れしてた状態なんですが、「あれぇ違ったか……」と激しく疑いの念が湧きましたw
 どうやら書いてた脚本のままでは映画にできない、と途中で注文が入り、その修正にてんてこ舞いになり、ゴニョゴニョしたまま完成した、という感じらしいです。おそらくですが、実在の絵画を扱う点で問題が生じたのではないか。めちゃくちゃ面白いコンセプトだったと思うので非常に惜しい。リベンジしてほしい気持ちもありますが、『100万ドル』がそれに当てはまる作品だったような気もしますね。題材となるアートはフィクションですが、実在の歴史を絡めたネタだったので。ただし脚本は大倉。どんまいやで……。

E

 最後。これまでは「好きなとこがほとんどだよ!」とか「惜しかった!」ですが、ここだけは、この2本だけは、マジで失敗作だったと思う……。

『探偵たちの鎮魂歌』

 10作目。監督:山本泰一郎、脚本:柏原寛司
 映画シリーズ10周年記念ということで、主要キャラ総出演というコンセプトなんですが、絶望的にまとまりがない。支離滅裂なまま事件が進行し、終わっていった印象。これまで公開順で観てきて「どれも最低限のオモシロは保証されてるから良いよね」とか思ってたんですが、本作で一気に底が抜けた。この絶望が分かりますか。いや、リアルタイムで観てた人こそ大変だっただろうな……。
 ただ、オールスター興行ということもあってか、ファンの中には本作をベストに挙げるくらい好きな人も決して少なくはない様子。外野のファンとしては「本当に同じものを観たのか!?」と疑ってしまうんですが、まぁたしかにキャラクター興行の面があるのは間違いないので仕方ないのかもしれませんね。特に白馬探は本作にしか出てこないので「キッドと白馬が映画で!!」となるファン心理は分かります。分かるというか、想像できる。

『紺碧の棺』

 11作目。監督:山本泰一郎、脚本:柏原寛司
 『鎮魂歌』で味わった初めての絶望が次作で再び襲いかかるとは思わなかったんだぜ。公開順で一気観した私の気持ちが分かりますか……リアルタイムのファンにはマジで同情します。「絶望の継続」という『ハイキュー』用語が頭をよぎる、そんな作品。
 ただ、個人的にシリーズのワースト作品は迷うまでもなく『鎮魂歌』だと思います。『紺碧』も同じくらいつまらないけど、つまらなさの種類はかなり違う。『鎮魂歌』は「破綻」という印象ですが、『紺碧』は「地味」。とにかくすべてが地味。『鎮魂歌』がつまらないなりにとりあえず派手だったのと対照的。マジで『紺碧』は地味。事件も、真相も、キャラクター的な魅力も、アクションも。
 強いて言えば、蘭と園子の女同士の友情をテーマにした、この一点はかなり良かった。主題歌がコナンシリーズの歌姫2人(愛内里菜&三枝夕夏)によるデュエットというのもコンセプト的にバッチリ。ここをもっとうまくやれば全然好きな作品になったはずなんですが、この点もクライマックスが地味なんですよね。その一点の魅力を失うと、とてもつらい。いろんなところで言われがちだと思いますが、「テレビスペシャルでええやろ」感。
 蘭と園子のテーマは良かったからいつかリベンジしてほしいと個人的には思ってるんですが、おそらく『紺青』における園子フィーチャーがその位置にあり、「『紺碧』ではごめんね!」という本懐は文句ないレベルで果たされたと思います。タイトルが似てるのはそのせい……と陰謀論レベルの説得力。できれば蘭との友情をやってほしかったので、そういう意味では「ちょっと違うんだけど」な気分ですが、『紺青』は面白かったので文句も言いづらい。


 終わり。書いといてなんですけど、「じゃあSだけ観てみるか!」というのはオススメしないというか、下手すると面白くない恐れ。いやそこそこ面白いとは思うけど、「こんなもんか」的な反応になってもおかしくない。シリーズとしての歴史が長すぎてお約束とか前提が多いので、ある程度慣れが必要だと思うんですよね。
 何が言いたいかというと、やはり「公開順で一気見」が至高。サブスクの醍醐味だと思います。基本子供向け(全年齢向け)なので観てて集中力を搾り取られるようなことはありませんし、1日1本気軽に楽しむのがよろしいのではないか。10本目、11本目で絶望するのまでがワンセットというか、シリーズとしての変遷が一番のオモシロだと思います。そうすると、今が如何に恵まれた時代か痛感できます。マジで一気見オススメ。
 歴史のテストに出てきそうなビッグイベントとしては、1作目『時計じかけ』の爆破テロ、10作目『鎮魂歌』の失敗、17作目『絶海』櫻井脚本デビュー、18作目『異次元』静野監督の覚醒、21作目『から紅』大倉脚本デビュー、25作目『ハロウィン』26作目『魚影』確変突入、という感じです。

 番外編ですが、『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』は大好きでしてSでいいと思ってます。ただ、テレビスペシャルとの二部作なので評価が難しい。そして観づらい。 当記事の公式マスコットキャラクターのディディーです。