北区の帰宅部の意訳

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『サイボーグ009完結編』(30話)の感想

『サイボーグ009完結編』(29話)の感想 - 北区の帰宅部

 小説『2012 009 conclusion GOD'S WAR-サイボーグ009完結編』の1巻が発売されたのが2006年。昔すぎてこの作品を知った経緯、買った時の気持ちは全然覚えてないです。そのくらい昔。その小説の続刊が一切音沙汰がないまま数年が経ち、「舞台の2012年がリアルに来ちゃいましたけど?」なんて思っていたらその2012年に文庫版にて全巻発売され、その小説のコミカライズがクラブサンデーにて発表されることになったんですよね。んで、クラブサンデー連載の感想がコレ。それもいよいよ最終回です。小説として発表した後にコミックで、というのは当初からの計画ですので、それがいよいよ完結したことになります。な、長かった‥‥。
 それだけに感慨深いもんがありますね。小説として話の内容そのものは発表済みとはいえ、『サイボーグ009』の完結編を巡る巡る大きなプロジェクトが終わるワケですから。

 ということで、クラブサンデーにて連載のマンガ『サイボーグ009完結編 conclusison GOD'S WAR』の最終回です。このタイトル長いよね。最初は覚えるのも大変でしたよ。第30話「最終章〜二つの宇宙〜」。このサブタイも少しややこしくて覚えづらかったですw

 1ページ目。「堂々完結」とデカデカと示され、タイトルとクレジットが黒地にドン。重々しい雰囲気があってイイんじゃないですかね。
 ちなみに、単行本最終巻は4月中旬発売だそうです。ちゃっかり宣伝もありますね。

 前回のラストで登場した神の神。002編でお馴染みですね。彼がキリストと大仏を一層。やっぱ002編の優遇っぷりが目立つ気がします。前回も書いたけど、各メンバーごとの短編の最初の章(001はイレギュラーとして)、そして石ノ森章太郎自ら書き上げた小説をそのまま採用しているのが002編だからこそ、ってことなんでしょうね。
 まぁ、キリストと大仏へのトドメはは005編からの精霊たちが刺したんですけどね。これは、2006年に1巻だけ発売された小説版が004編まで収録だったので、2012年に新たに発表された完結編で初めて目にする章が005編だから‥‥という理屈は強引ですかね? 個人的には002編と005編がそれぞれ「最初」という印象が強いんですよ。

 んで、海が割れるという神々しい演出と共に人面体が登場。主神ですね。そこで助けてくれるのが、001。待ってました。ギリギリまで起きないのが001なのです。そして003の腕の中、という定位置も嬉しいですね。003が目閉じてるの見るとやっぱ暗い雰囲気になりますけど。
 そして、001による怒濤の説明ショーの始まり始まり。ここからナレーションで一気にすべてが説明されます。「マンガなのに言葉で説明しちゃうのはどうなの?」とかの理由で嫌う人はいるかもしれないですね。実際、ワタクシも別のマンガだったらあまりこういうのは好きではないです。けど、本作の場合は別、許せちゃうよ、っていう勝手な立場です。まぁ、元々小説だから、ってのもありますしね。小説とマンガで表裏一体的なノリの作品ですから。何よりも、この説明シーンはいわばミステリーにおける謎解きシーンみたいなものなんじゃないですかね。『サイボーグ009完結編』の中で今まで伏せられてきた秘密が明らかになる、もっと大げさにいっちゃえば『サイボーグ009』というシリーズの完結編というファンが楽しみにしていた謎への1つの回答ですからね。神が出てきてピッカーン→「な‥‥なんなんだあれは‥‥」みたいな抽象的な描き方よりも待ち望んでいたのがハッキリとした描写なんじゃないですかね。少なくともワタクシはそう。

 そんな完結編の肝中の肝である説明なんですが、説明なだけに感想が書きづらいというか。ここでワタクシが再び説明しても意味ないし、ただのネタバレにしか過ぎないんですよね。なんて感想書いたらいいのやら。

 その中で光の子が闇の子に対抗する最後の切り札として「精神特攻」なるものが説明されてますけど、この特攻行為というのは奇しくも今回の完結編最終章で004や008が行った行為と重なりますよね。「天使編」で勝てない相手だとわかっていても意思表示のためのレジスタンスと009が称した行為も特攻のようなものでしょう。さらに言えば、「地下帝国ヨミ編」のラストで009がブラックゴーストの魔神像に対して行った行為も特攻。初期テレビシリーズで009が行ったのも特攻。映画『009 RE:CYBORG』でも特攻。『サイボーグ009』という物語を終わらせる作品において特攻行為はもはや不可欠なものなのですよ!!‥‥とやや強引な結論を出してみます。まぁ、控えめに言うならば、今までに作られた完結編、最終回神との戦いのエピソードで共通する要素を今回の完結編にも取り入れる、というのは極々自然なことだと思いますよ。
 さらに過去作品との比較の話ですと、やっぱり「地下帝国ヨミ編」を思い出します。『サイボーグ009完結編』を読む上で最も参考になる(完結した)エピソードは「ヨミ編」ですよね。「ヨミ編」のラストといえば、ブラックゴーストは人間の持つ悪の象徴、すなわち人間がいる限りブラックゴーストは滅びない、という絶望。それに対する009の結論が、ならば自分は人間の持つ正義の細胞の1つとして死のう、僕が死んでも代わりはいる、という。人間の中にある悪の心と正義の心、って話は今回の光の子と闇の子の話にも重なるんじゃないですかね。『サイボーグ009完結編』的に「地下帝国ヨミ編」を解釈するならば、人間の中にある闇の子の意志が結集したのがブラックゴーストであり、魔神像。人間の中にある光の子の意志が結集したのがサイボーグ戦士であり、009なのではないかと。そして、009が魔神像に対して行った特攻行為は光の子が持つ最後の手段である、的な。‥‥本作とは直接的には何にも関係のない映画『009 RE:CYBORG』でも偶然似た結論が出てるんですよね。神というのは人間の脳の中にそれぞれ存在していて云々。まぁ、『RE:CYBORG』は「地下帝国ヨミ編」を下敷きにして作られた、とかそういうことなんでしょうね。

 今回009たちが戦ってきた神というのは闇の子のことであり、善たる光の子とは別、「善な神もいるのか‥‥」と思ったら光の子たちも結構ひどいことしてた、ってツイストも楽しいです。光の子に非は一切ありません、的な話だと神の悪い面を闇の子に押しつけてるような印象になっちゃいますからね。009たちは神と戦わなきゃいけないワケで、「神の中にも良い人はいるんだよ」的なことを言われても飲み込みづらいですよ。
 ということで、天災などで人類が攻撃されていたのは光の子のせい。「収穫の時」というのは人類を殺してその中から光の子だけを取り出す、という行為だったのですね。改めて『サイボーグ009完結編』を読み返したら新たな発見があるかも‥‥!と思っちゃうこの感じが謎解き展開の醍醐味ですよ。

 んで、出ました。009の「誰がために闘っていたのか」発言。これぞ『サイボーグ009』!というようなセリフですからね。ぶっちゃけ「ちょっと強引にこのセリフ持ってきたよね」という気持ちはありますが、それでもグッとくるものがあります。ファンサービス的な要素もあるんでしょうね。

 最後の選択。光の子の選択に従うか、対抗するか。まぁ、前述した通り答えは特攻の他になくて。神に対してNOと言わなきゃ009じゃないです。神との戦いですから。善悪ひっくるめて人間だ、と。「ヨミ編」での結論、「天使編」での結論と同じですね。
 ついでにギルモアが敵側に付く、そして死ぬ、というのは「神々との闘い編」と通じますが、今回の『サイボーグ009完結編』ではギルモアにも善たる見せ場があるのがすげぇよかったと思います。やっぱ最後の作品での扱いが「神々との闘い編」みたいなのだったら少しかわいそうですよ。009たちサイボーグが主役の作品とはいえ、ギルモアにも愛着ありますからね。ファン心理として。
 この特攻行為に003もついて行く、というのも今までの作品を考えるとなかなか感慨深いもんがあります。003はいつも待ってるだけの存在でしたからね。そして009と003を引き裂くのはいつも001。その立場、役割が今までとちょっと変更されてる、というのが心憎いトコです。「ヨミ編」では001が勝手に009のことを送り込み、それを知った003は地上で泣く。それが今回は違うよ、っていう。‥‥ちなみに『009 RE:CYBORG』では009が自ら決断して001の力を借りて特攻しますね。003に別れを告げて。「ヨミ編」と今回の『完結編』における結論がそれぞれ対になっていて、『RE:CYBORG』はその折衷案、的な感じになってるんじゃないでしょうか。改めて言っときますけど、本来『RE:CYBORG』は本シリーズとは直接関係のない作品です。たまたま似通ってる、というのをワタクシがおもしろがってるだけです。

 んで、いきなりのカラーページ!! 出たー! web連載ならではの試みですね。web連載のコミックの何が楽しいって巻頭でも巻末でもないトコに突然現れるカラーページですよ。電子媒体ならではの手法ですよね。今回の『サイボーグ009』ではそれが何度も効果的に使われてきたと思います。仮に少年サンデーとかに連載されてたら出来ない演出ですよね。スーツの色による演出なんてのは完結編を描く上で超重要な部分ですのでweb連載様々だなぁ、と感じてます。
 今回も光の世界をカラーによって表現するってのは何ともわかりやすくて素晴らしい表現だと思いますよ。お見事としか言えない。さらには、光溢れる世界の中でメインキャラ(石ノ森章太郎含む)がシルエットで描かれる、ってのも超気が利いてると思います。光と闇ってのは今回のテーマそのものですからね。
 そして、満を持して009と003が登場。カラーの003がかわいいです。目開けてるせいですかね、今までと雰囲気が違って見えます。やっぱり003は笑顔がサイコーです。笑ってる003が最強です。超絶かわいいです。「誰がために闘う」‥‥って003のために決まってんだろバカタレがっ!! 「きみはどこに落ちたい?」‥‥って003のトコだよバカヤロー!!!
 ということで『サイボーグ009完結編』これにて終幕です(強引)。


 頭にも書きましたが、長かったですね。ようやくすべてが終わった、という感じです。いや、『サイボーグ009』という作品が今度何らかの形で発表される可能性は全然残ってると勝手ながら思ってるんですけど。『RE:CYBORG』の続編とかもあるかもしれませんし。とりあえず、オフィシャルな本シリーズとしてはおしまい、ということです。
 いざ終わってしまうと、なんとも言えない気持ちになりますね。完結した嬉しさもあるけど、当然寂しさもあるワケで‥‥ってこういう話はどうでもいいか。当ブログで連載追っかけてるマンガが最終回迎えるのって初めてなんで何か特別なこと書かなきゃ、とか思ったけど余計ですね。はい、終わり!! おもしろかったです!! お腹いっぱい!! お疲れ様でしたー!!!

 いずれ『サイボーグ009完結編』関連の記事のまとめ記事書くと思うので、そっちも読んでね!(CM)

『サイボーグ009完結編』の感想まとめと単行本最終巻 - 北区の帰宅部

 小説版の最終巻。

サイボーグ009 (9) (秋田文庫)

サイボーグ009 (9) (秋田文庫)

サイボーグ009 (10) (秋田文庫)

サイボーグ009 (10) (秋田文庫)

サイボーグ009 (21) (秋田文庫)

サイボーグ009 (21) (秋田文庫)

サイボーグ009 (23) (秋田文庫)

サイボーグ009 (23) (秋田文庫)

 萬画サイボーグ009』の完結編といったらコレ。上から「地下帝国ヨミ編」上下、「神々との闘い編」、「天使編」(発表順はヨミ→天使→神々)。
 自分が持ってるのが秋田文庫版、といことでね。順序が滅茶苦茶だったりするけど、(ワタクシがハマった当時は)安価で入手しやすかったんですよ。

 平成版アニメの最終エピソード「地下帝国ヨミ編」、そして当時わかっていた範囲で作られた完結編「Conclusion God's War」(序章だけ作られた)。
 基本的に平成版アニメは原作に忠実です。ただ、平成版の「ヨミ編」は002が003に恋心を抱いているのが強調されていて、原作にはない描写が入っているのが特徴です。それがラストの「どこ落ち」展開への布石になっていて感動的なんですよ。
 アニメ版「Conclusion God's War」は今回のシリーズでいう009編とよく似ています。翡翠だか卑弥呼も出てきますし、モアイ、そして青コス。さらには00ナンバー覚醒後の能力もここで描かれてます。‥‥セックスはないよ。

サイボーグ009 1968 DVD-COLLECTION

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  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • 発売日: 2009/07/21
  • メディア: DVD
 最初に作られた『サイボーグ009』のテレビアニメ。その最終回「平和の戦士は死なず」はオリジナルの内容なんですが、「地下帝国ヨミ編」を下敷きにしているのは明らかで、「人間がいる限り悪は滅びない」云々から009の特攻、「初めて祈ります」、「どこ落ち」まで完備してます。ちなみに、この展開は『009 RE:CYBORG』でも。

009 RE:CYBORG 豪華版 Blu-ray BOX

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  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2013/05/22
  • メディア: Blu-ray
映画『009 RE:CYBORG』の感想 - 北区の帰宅部
『009 RE:CYBORG』豪華版 Blu-ray BOX買ったよ - 北区の帰宅部
 そんな『RE:CYBORG』。
 本来関係ない作品なんだけど、偶然似てたよねー、という作品。本作の連載が始まり、小説版が発売されたのと同じ2012年の作品ってことで。
 ちなみに、この感想を書く時にはまだ小説完結編を読めてなかったので、小説完結編との比較はなしです。‥‥その余波が今回の記事に現れてしまった、という次第です。関係ないとわかっていながら言及しちゃった。
 ブルーレイの豪華版ボックスにはシュガー佐藤描き下ろしの『RE:CYBORG』前日譚が付属しているのでそちらもオススメです。だが、高い。