北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』の感想

 去年、アメリカでスマッシュヒットをかましたコメディー映画。この手の映画が日本公開されるのはめずらしいですね。『ハングオーバー』の影響かしら。
 観たのは有楽町のヒューマントラストシネマ。水曜日(男女共に千円)だったこともあり、朝10時の回から満席。ワタクシが席を取ったら、受付が「『ブライズメイズ』10時の回 残り1席となりまーす!」って言ってビックリした。ワタクシの直後に並んでいた夫婦が「えっ じゃあ観れないってこと!?」って言ってたからマジでギリギリ。並ぶのが1つ遅かったら追い出されてました。
 有楽町だからなのかは知りませんが、女性客が多く、下ネタに関してはウケがいまいちでした。

 さて、邦題。原題は『BRIDESMAIDS』なので、邦題はカタカナにして副題をつけただけ。まぁ、カタカナで複数系なのは少し気になりますが。
 副題は『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』及び続編『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』』からの流れだと思うんですが、本作と『ハングオーバー』は製作陣的には関係ないんですよね。本作はジャド アパトー製作だから。まぁ、内容や舞台は似てるけど。

 こんな過疎ブログで説明的なこと書いても意味ないとは思うんですが、一応。
 アメリカの結婚式では、新婦が同性の友達を集めて付き添い人を選ぶ。式で花嫁の隣に立ってる数人のグループ。これがブライズメイズ。その中から仕切り役であるメイド オブ オナーを決める。大体一番仲がいい人が選ばれる。いろいろと結婚式に関して準備を手伝ったりとめんどくさいけど、選ばれるのは光栄とされてます。
 この慣習は花婿にもあって、グルームズ マンを複数選んで、その中からとしてベストマンを1人決める。
 ついでに、結婚式を控えた人が独身の羽目外しパーティーを行うことがあって、これがバチェラーパーティー。ストリッパーとかを呼んで、夫(妻)には見せれないようなことをするんですね。『ハングオーバー』の設定でもあって、『ブライズメイズ』でもちょこっと出てきます。
 んで、この結婚前のあーだこーだっていうのは恋愛モノやらコメディー映画でよく題材にされるんですよね。日本人には馴染みがないから大抵ビデオスルーになるんだけど、『ハングオーバー』のヒットで風向きが少し変わったかな。

 あらすじ
主人公(女)の親友が結婚
メイド オブ オナーに選ばれる
その他ブライズメイズに選ばれたのは親友の友達で、主人公は初対面

 ワタクシは人見知りなんですが、人見知りやってて一番ツライ人間関係だと思うのが「友達の友達」。初対面の人に対して、人見知りの発作を起こしちゃうんだけど、通常ならキャラ作ってそれを隠す。ただ、友達がその場にいるせいでキャラを作って隠すことが出来ず、ただただ口ごもる・・・・。
 そんなワケで、本作の設定を知った時点で戦慄。地獄じゃん・・・。まぁ、本作は人見知りを扱った物語ではないんですけどね。ただ、「友達の友達」っていう微妙な距離感から生じるいざこざってのは他人事とは思えないです。

 本作のプロデューサーであるジャド アパトーは「ブロマンス映画」というジャンルを確立して人気になった人。説明がめんどくさいですね。「ブロマンス」ってのは「ブラザー+ロマンス」の造語。男同士の友情をロマンス映画風に描くっていうね。ゲイじゃないですよ。友情描写ってホモっぽく見えちゃうことあるじゃないですか。
 んで、本作『ブライズメイズ』は「女のブロマンス映画」なんて言われてるんですよね。「ブラザーじゃないじゃん」とは思うんですが、まぁ言わんとすることはわかる。
 そして、ブロマンス映画っていうのは結婚というテーマと相性がいいんですよ。「同性との友情vs異性との結婚」という対立構造にすることで自分の中の「男の子vs大人」となって成長物語にしやすいんですよね。だから、ブロマンス映画では一方が既婚者だったり明確な恋人がいることが多いです。要するに「結婚なんかしないで俺と遊んでいようぜー」っていう状態。世間はそれをダメ人間と呼びます。
 ジャド アパトー映画の大ヒットや『ハングオーバー』の大ヒットでブロマンス映画が増えてるんですよね。コメディー映画だけでなく、大予算かけた作品にもブロマンス的要素がよく見かけるようになりました。そんな中、ジャド アパトーが新たに仕掛けた映画というのが、「女のブロマンス」。

 説明が長くなりましたが、本作の魅力はずばり「女のブロマンス」でして。女のホモソーシャル映画なんですよ。「女でも同じような話作れるのか!」と驚きました。それと同時に「男のブロマンスとなんにも変わんねぇじゃん・・・」っていう。驚くほどに男女の差がないんですね。『ブライズメイズ』の性別逆転したら通常のブロマンス映画が出来ると思います。
 まぁ、女ならではの要素としては、出産適齢期や家事についてなんでしょうね。本作ではそれほどフィーチャーされてなかったと思うんですが、それは男だから感じなかっただけですかね?

 「男のブロマンスでかまわないじゃん」とは言いましたが、男のブロマンス映画は大好物なので、本作もハマりました。
 仕事も恋愛もうまくいかない主人公だけど、唯一それらのことを愚痴ったり下ネタを気楽に言える親友がいた。しかし、その親友は結婚することで手の届かないところに行ってしまう、祝福してあげたいけど・・・・っていう。まぁ、ブロマンス映画の鉄板。さらに、ブライズメイズとして親友の友人が複数登場することで、事態がこじれる。ブライズメイズの中に金持ちのヘレンってのがいて、この人との対決になるんですよね。金持ちで上品で既婚、っていう主人公とは真逆な人間。その2人で「新婦と真の親友なのはどっちなのか」っていう醜い争いを繰り広げることに。ここが非常に笑えました。祝福のスピーチ合戦のとことか、本当に笑いが止まらなかったです。

 個人的に、この金持ちのヘレンってキャラに感情移入しまくってしまいました。このヘレンは新婦と最近仲良くなった人で、主人公から新婦のことを奪おうとするんですよね。
 主人公が会話の中で「新婦はフランスが好きだから・・・」と言ったら、その後ヘレンがフランス旅行のチケットをプレゼントするんですが、これが最大の火種になってしまう。主人公視点からしたら、自分のアイディアを盗まれ、金にものを言わせてる、というサイテーなヤツ。
 ・・・なんですが、ヘレンは金持ち故に今までに友達が出来なかったという過去が明らかになる。ヘレンにとって新婦は人生唯一の友達であり、そのブライズメイズとして幼なじみ(=友人歴だけは一生勝てない)が現れてしまって・・・ってワケなんですよ。ヘレンからしたら、アイディアを盗んだのは苦渋の選択でして、主人公のアイディアを盗むのは、新婦を一番喜ばせることが出来るのは主人公だと認めているからなんですよね。自分では主人公に敵わないのがわかっているからこそアイディアを盗んでしまう。もう、ここだけで号泣してしまいそうで・・・・。しかも、その後、新婦が謎の失踪を遂げた際には真っ先に主人公に助けを求めるんですよ。超仲悪いのに。「自分には失踪先がわからないけど主人公だったらわかるかも・・・」という決断なんですよ。ヘレン、イイヤツすぎるよおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 本作は主人公が一度すべてを失い、ドン底から立ち上がる、いわゆるワンサゲン映画でして。ドン底への転落のキッカケになるのが、先ほどの「フランス好き」というアイディアを盗まれるくだり。お祝いのパーティーの席で主人公はブチギレてしまう。今まで溜に溜めていた負の感情が吹き出してしまう。・・・・ってコレ、『ヤング アダルト』じゃないですか。ついこないだ観たばかりですよ。超そっくりなシーンでしたねぇ。観てて驚きました。
 まぁ、よりコメディーでよりフィクション性の高い本作の方が「観てらんないわぁ・・・」っていう居たたまれなさは弱かったんですけどね。しかし、その場で行われている惨劇は本作の方が酷いです。しかも、その他に、恋人(になれそうだった人)、セフレ、仕事、親友、すべてを失うワケですからワンサゲン映画としてのドン底描写は本作の方が丁寧です。それ故に、ドン底で見つけた小さな光、というのが大変感動的になるワケですよねぇ。

 まぁ、ブロマンスだワンサゲンだ感動的だ、とか言ってますが、本作全体に通じるのは下ネタですからね。特に前半部分の下ネタの数、そしてその重さは結構えげつない。つまりはサイコーでした。女の下ネタということでギョッとしてしまいました。
 個人的には、映画始まってすぐに主役のクリステン ウィグが披露したチンコの顔マネが超好きですね。静かな劇場の中、ゲラゲラ笑ってしまいました。黙ってりゃ美人なのにねー。


 ということで、よかったです。楽しいし、感動的な映画でした。
 まぁ、好きじゃない部分もあったことはあったんですけどね。新婦とヘレン以外のブライズメイズが主人公とほとんど絡まないのとか。あと、デブが実はスーパーウーマンっていうのもちょっとね、「バカやってるけど頭のイイ人なんだ・・・・」って引いちゃったり。『ハングオーバー』のアランみたいな人だと思ってたのでギャップがすごかったです。
 とはいえ、この手の全米大ヒットコメディーってのはなかなか映画館で観れないですからねぇ。観ることが出来て本当によかったです。
 80点。

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映画『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』の感想 - 北区の帰宅部
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おそらく、本作の邦題の元ネタ。ジャド アパトー無関係作。ブロマンス、結婚式、無茶苦茶なデブ、というのが共通してますね。個人的には続編の方が好きです。

ジャド アパトー製作のブロマンスと言えば。

『I love you,man』という原題の通りブロマンス映画。だけど非アパトー。結婚を扱ったブロマンス映画の中では最高傑作だと思います。主人公は結婚するもベストマンに選ぶための男友達がいなくて・・・・っていう話。

映画『ヤング≒アダルト』の感想 - 北区の帰宅部
とあるシーンが本作と酷似してました。