北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『ザ・マペッツ』の感想

寝取られ男のブロマンス

 公開2週目にして公開状況が不遇。ワタクシが行動範囲内だと、TOHOシネマズ六本木ヒルズ一択でした。しかも、朝の9:30のみ。がんばって行きましたよ。
 まぁ、取っ付きにくいルックの作品だとは思うんですよ。マペットを知らない大人は「はいはいディズニーの子供向けね・・・」って敬遠しちゃいそうですし。子供はマペットを知らないからキッカケがないですし。そもそも吹替版が存在しないのが痛いですかね。

 そんなワタクシですが、マペットについてはまったく知りません。セサミストリートとの違いがわかりません。カーミットでさえ、「あぁ 見たことあるかも・・・・」レベル。完全な一見さんです。
 観ようと思った理由はいくつかありまして。評判がすこぶるイイとか、オスカー歌曲賞だとかあるんですが、一番の理由はジェイソン シーゲル。主演、脚本、製作総指揮を担当してます。ジャド アパトーのコメディー映画の常連ですね。
 ワタクシはジェイソン シーゲルの出てる『寝取られ男のラブバカンス』という映画が大好きなんですね。これもジェイソン シーゲルが脚本も担当しているんですが。そんな『寝取られ男のラブバカンス』の中で、ジェイソン シーゲル演じる主人公には人形のミュージカルをやる夢を持ってるんですよね。この作品はジェイソン シーゲルが自身の経験を元に脚本を書いているので、主人公はジェイソン シーゲルの分身と考えていいでしょう。
 そんなジェイソン シーゲルが人形と共演するミュージカルに出てるんですよ。そりゃ観るっしょ。

 あらすじ
マペットと人間が共存する世界
ゲイリー(人間)とウォルター(マペット)は兄弟
子供の頃から好きだったテレビ番組「マペットショー」は今ではすっかり人気も廃れ、スタジオは悪い金持ちに潰されそうに

 マペットに対して教養というかリテラシーがまったくありませんから、人間とマペットが兄弟と聞いて頭の中がはてなでいっぱいになりました。
 ものすごく違和感ですが、ものすごく当たり前の設定なので慣れるしかないです。幸いすぐ慣れました。

 既存のマペットのキャラクターがたくさん出てくるのでこれまた混乱しますが、特別複雑な物語ではないですからね。各キャラクターもわかりやすい上、見た目は各々で全然違うので区別が付かなくなることもないです。

 本作はミュージカル映画でして。ミュージカルの中でも結構ハードコアな方で、突然登場人物が歌いだして、通りすがりの人たちが踊り出したりします。
 それぞれのミュージカルシーンのクオリティーは非常に高くて、見せ方もそれぞれ違って素晴らしかったと思います。ミュージカルは生理的に無理、って人以外は満足するレベルだと思いますよ。
 個人的にはカーミットが、かつての仲間の写真に囲まれながらのミュージカルにすっかりやられてしまいました。それと、ヒロイン2人がおひとりさまについて歌う曲もたまらなかったです。悪役のラップもよかったですね。「悪いヤツはラップ歌うんだぜ」っていう安直さが本作の世界観だとアリになってました。オスカー受賞の「マンオアマペット」は言わずもがなの超名曲&名シーンでした。泣いちゃうよバカヤロー!

 いろいろと特殊なんですが、一番ヘンテコなのは劇中いくつも放り込まれるメタ視点のギャグ。悪役が「マペットスタジオを返してほしかったら1千万ドル用意するんだな」って言ったら、もう1人が「今のはこの映画で大事なセリフだよ」とか言ってくる。他にも、主人公たちが通りすがりの人たちとミュージカルシーンをこなした後に場所を移動すると通りすがりの人たちが「やっと移動したか 疲れた〜」って言ってその場に倒れ込んじゃう。他にも、「これが成功しないとこの映画すぐに終わってしまうわ」とか、「もうすぐこの映画は終わるけど」とか次々に出てくる。
 メタギャグが過剰だし、その手数が異常。これはどういう意図なんですかね。マペットファンの中では「待ってました」的なノリなんでしょうか。個人的にはあんまり好きじゃないです・・・。映画の中のキャラが「これは映画だからね」って達観してるのがどうも苦手。
 まぁ、これは子供向けの要素なんですかね。現にワタクシが子供の頃はこの手のメタギャグって大好きでしたし。「今観てるのがフィクションだと理解できてるオレかっけー!」的な優越感だったと思います。自己嫌悪とか同族嫌悪のせいで今は安易にメタ視点ぶっこむ作品が嫌いになりましたけどね。「なに本気になってんの?ww」って言われてるようで腹が立ちます。
 ただ、劇中出てきた聖歌隊のギャグは爆笑してしまいました。隣の席にに外人の幼女がいたんですけど、同じトコで爆笑してました。笑いのツボがガキレベルってことですか・・・・。

 本作を観始めて最初に驚いたのが、ゲイリーとウォルター(マペット)とメアリーの三角関係。ゲイリーとウォルターは兄弟で大の仲良し。ゲイリーとメアリーは長年付き合ってる超仲良しカップル。アダムスの方はそろそろ結婚を意識してる。交際10周年を記念してLA旅行が決まっているので、なにかと期待してる。

ゲ「今度の旅行のことなんだけど・・・・」

メ「うん なにかしら」ソワソワ

ゲ「・・・・ウォルターも連れてっていいかな??」

メ「えっ」

 って具合。メアリーの「いや・・・ウォルターのことを嫌ってるワケではないからNOとは言えないけど・・・・」って態度がマジサイコー。
 てか、これってブロマンス映画ですよね。いつまでも子供のように同性間でキャッキャやっていたい男と、そんな男に同性間の付き合いを控えて結婚してほしい女。ブロマンス映画の鉄板コース入りましたー。ありがとうございます大好物です。
 さすがはジャド アパトー御用達俳優のジェイソン シーゲルが脚本やってるだけありますね。『寝取られ男のラブバカンス』では薄かったブロマンス要素が盛り沢山、っていうかブロマンス映画そのもの。

 オスカーで歌曲賞を受賞した「マンオアマペット」。この曲が見事でした。なんの曲かと思えば、ブロマンスのことを歌った曲なんですね。
 ウォルターと共にマペットショー再建に尽力するゲイリー。恋人同士2人きりの旅行のはずがシカトされ続け機嫌が悪いメアリー。ある日

メ「今日の晩御飯はどうしよっか?」

ゲ「なんでもいいよ」

メ「・・・・実家に帰らせてもらいます」

ゲ「えっ」

ウォ「マペットショーで俺なにやったらいいのかわかんないんだ ゲイリーも一緒に考えてくれ」

ゲ「おう任せろ・・・・・・って、今日が10周年の日だったああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 という板挟みのシーンで始まるのが「マンオアマペット」。その名の通り「人or人形」の板挟みについての曲なんですね。これは「異性or同性」でも「大人or子供」と言い換えられますね。
 最終的にゲイリーは「マン」を選び、ウォルターやマペットたちと決別する。この瞬間、ゲイリーは子供から大人へと成長するワケです。
 ゲイリーとウォルターという2人の成長というのは対照的で、ゲイリー(ジェイソン シーゲル)はやたらと体がでかい。一方ウォルターはマペットなので肉体的成長がない。家の柱に身長を刻むシーンが泣けます。このシーンで、ウォルターが子供の象徴だとわかると同時に2人の別れを予期させるワケですね。そして、いよいよゲイリーが精神的にも大人になり、ウォルターに別れを告げる。その後、ウォルターは自分の力でマペットショーで見せ場を作る。それを見ていたゲイリーが、「大人になったな」って言うんですね。自分が大人になったからこそ言えるセリフであり、自分抜きで成長したウォルターを見て別れを再認識するんですよ。号泣を禁じ得ないですな!!

 そんな、ブロマンス&成長物語の脇で楽しいのがカメオ出演陣。カメオ出演がちょっと考えられない量なんですね。映画を観終わってからIMDBで調べてみたら「えっ この人も出てたの!?」って人が何人もいました。
 そんな多彩なカメオ出演陣を見ながらどういう経緯で出演するようになったのか考えると小ネタ的に楽しめます。「ディズニー映画だからね」(セレナ ゴメス)とか、「『40男のバージンロード』で共演してた!」(ラシダ ジョーンズ)とか、「『ガリバー旅行記から2人も!」(ジャック ブラックとエミリー ブラント)」とかとか。ジェイソン シーゲルとエミリー ブラントは『ガリバー旅行記』でカップルを演じてたのに、次作『The Five-Year Engagement』でもカップルを演じてますね。実際に仲いいんですかね。うらやましいなコノヤロー。


 ということで、ブロマンス&成長物語ということで、大好物な映画でございましたよ。ミュージカル映画ということでサントラが欲しくなってしまいましたね。とりあえずiTunesストアで「マンオアマペット」だけ購入するか、CDごと買うか悩んでる最中です。
 85点。

The Muppets

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