北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『ラン・オールナイト』の感想

 リーアム ニーソンは『96時間』ヒットによってすっかりアクション俳優となり、みんなに愛される「お父さん」になったワケですが、本作もまたパパアクション。ただし、『96時間』とは無関係のオリジナル作品。
 監督は『96時間』のヒット以降、『アンノウン』『フライトゲーム』とリーアム ニーソンのアクション映画を撮ってきたジャウマ コレット セラ。そんな監督がリーアム ニーソン主演で、アクション映画で、お父さん映画を撮るんですから『96時間』連想不可避。「俺版96時間やで!!」という監督の叫びが聞こえてくるようです(幻聴)。
 『ランオールナイト』の中の小悪党としてアルバニア人が出てくるんですけど、アルバニアマフィアといえば『96時間』の悪役ですよね。目配せかなー?とか妄想。

  • あらすじ
    • 「息子を殺されたらお前を殺すしかない」
    • 「息子を殺すならお前を殺すしかない」

 本作が『96時間』に勝ってる点は悪役もお父さんな点ですね。まぁ、『96時間 リベンジ』だと同じなんですけど、2人の間には確固たる絆が存在する、というのが『96時間』シリーズにはない深みになってたと思います。主人公も悪役も息子との関係は良好とはいえないんですね。リーアム ニーソンは息子から憎まれてるし、エド ハリスは息子がバカすぎるので頭を抱えてる状況。息子とよりも親父同士の方が全然仲良いんですよ。
 なんだけど、エド ハリスの息子がリーアム ニーソンに殺されたことで、親父同士の関係性は一瞬にして崩壊。この切り替えの具合がたまらないんですよね。ここらへんはエド ハリスの魅力がヤバイです。自分の息子にある程度非があったことはわかってたと思うんですけど、「理屈じゃねぇんだよ」という感じで殺意に燃える。
 そんなエド ハリスが息子の死を知らされるシーン。電話なんですよ。電話といえば『96時間』の名シーンがあるじゃないですか。娘が誘拐された瞬間を電話越しにリアルタイムで目の当たりにし、誘拐犯と言葉を交わす。それが本作『ランオールナイト』ではリーアム ニーソンの方が「お前の息子を殺した」なんですよねw
 親父2人の間には友情が存在していただけに、その電話シーンがつらい。『96時間』の電話シーンはとてつもない名シーンですけど、それとはまた別の魅力を持つ名シーンになってたと思います。

 エド ハリスに比べると印象が弱いんですけど、それでも強烈なインパクトを放ってたコモン演じる殺し屋。リーアム ニーソンがかつてやっていた仕事の当代最高峰、という感じですね。単身現場に乗り込んでいく様がカッコよかったですよ。そのまんまですけど、仕事人感ハンパなかった。
 暗闇で暗視ゴーグルを使ったり、顔の右半分ウェルダンされたり、飛び道具的なビジュアルがカッコイイんですよ。おそらく、殺人道に足を踏み入れすぎたために殺人マシーンになり、最終的に異形の化け物に成り果ててしまった、みたいな意味があるんじゃないですかね。
 コモンは過去に殺し屋とか兵士とかの役が多いイメージですけど、本作が一番のハマリ役だったんじゃないでしょうか。‥‥全部観たワケではないですごめんなさい。

 映画が始まると、いきなりリーアム ニーソンが死にかけてるんですよ。そっから「○○時間前」となって物語が始まる。
 それがあるおかげで、エド ハリスを殺した後、劇中ではハッピーエンド風の雰囲気になっても、観客はハラハラしちゃうんですよ。「まだ冒頭の森のシーンがまだですけど!? そーいや殺し屋まだ生きてるじゃん!」って。なので、正直あまり興味がない湖のコテージでの幸せな家族シーンも退屈しないんですよね。ああいうオチから見せる構成ってイマイチに感じることも多いんですけど、本作のはバッチリ手の上で踊った感あります。


 ということで、終わり。『アンノウン』の大ファンなんですが、期待に応えてくれる傑作でした。実は未見の『フライトゲーム』も観ないとな‥‥。
 80点。

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 キング牧師を描いた映画『グローリー 明日への行進』の主題歌。今年のオスカー歌曲賞ですな。
 超いい曲だけど、スーツを着た殺し屋プライスさんがラップしてます。