北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

素晴らしき哉、『シュレック フォーエバー』!

 映画『シュレック フォーエバー』を鑑賞。3D字幕版。「3Dで字幕を観るヤツの気が知れない」という意見はよく聞くのだがそれでもやはり字幕が好きである。まぁ、『シュレック』シリーズの吹き替えはタレント全開ではあるものの割と好きな方ではあるけどね。

 『トロン レガシー』は全世界同時公開の初日に観に行ったので、世間の評判はほぼゼロの状態で観た。観て感動したのだが、世間的にはイマイチという評判が主流のようである。あっれぇ、おかしいな〜超おもしろかったのに・・・
 今回観た『シュレック フォーエバー』は海外では日本よりも数ヶ月早く公開してるし、初日に観たワケでもないのだが、まったくの評判を聞かない。映画雑誌でも特集を組まれるワケでもない。ツイッターで、ワタクシのTL上に「シュレック」という単語が出てくることはない。
 不遇よのぉ。人気ねぇのぉ。一応シリーズ最終作なんすけど。

 そんな『シュレック』シリーズがワタクシは大好きなのである。シリーズ単位でいえば、『スターウォーズ』シリーズの次くらいに好きである。
 特に1作目。『シュレック』は文句なく生涯ベストアニメ。恋愛映画としてもベスト級である。「美と醜」をテーマにした映画として最高傑作だと信じてる。
 2作目は、ギャグを増量し、エンタメに徹しつつもテーマ性を保った傑作である。
 が、3作目でちょっと失速した。キャラが増え、マンネリに突入したのではないかと少し不安に思わせる感じだった。まぁ、それでも全然おもしろいですけどね。『シュレック』シリーズにしては、である。

 そんなこんなで4作目。『3』があるので少し不安視はしていた。
 が、おもしろい。傑作。シリーズ最終作として、『シュレック』シリーズを締めるという意味では理想的な出来。パロディーネタも少なかったり、脇のキャラよりもシュレック個人に焦点を当てたのも最終作としての意識なんでしょうね。正解だと思います。

 『シュレック』シリーズの話をし出すとありえなく長くなるので、なるべくヒートアップしないよう気をつける。なるべく過去作の思い出とかは話さないようにね。小ネタとかも言い出したらキリないし。



   あらすじ
子供もできて、幸せな生活が続くシュレック
が、毎日が単調で、昔の気楽な生活を夢想する日々
ある日、インチキ魔法使いに騙され「シュレックの生まれてこなかった世界」に落ちる
魔法を解くにはやっぱりキスが必要なワケで・・・・・



 「自分のいなかった世界」に行き、人生の素晴らしさに気づくというのは、クリスマス映画の古典『素晴らしき哉、人生!』とほぼ同じ。その設定をシリーズの最終作に使うというアイディアがナイスですね。
 『シュレック』シリーズが始まらなかった世界を見ることで、『シュレック』シリーズの素晴らしさを観客に伝えるという形。

 ちなみに、本編冒頭にシュレックが陥る苦悩は、まさにミッドライフ クライシスでして。「俺の人生もう後戻りはできない」「このままの人生が続くだけ」「俺だって昔は悪かったんだぜ」って世のオッサンたちが悩むことですからね。そして、「1日でいいから若い頃に戻りてぇなぁ」ってなる。
 そんなオッサンの悩みをアニメでやるなよ!って話なんですが。そこが、シュレックらしさであり、ドリームワークスアニメらしさなんですよね。
 よく考えてみたら、『1』で結ばれたシュレックは、
『2』で、「親に挨拶に行く? え〜イヤだよ〜」 となり、
『3』で、「子供ができた? パパになる? え〜イヤだよ〜」 と、最低な男の変遷を繰り返してきたので、『4』でミッドライフ クライシスに陥るのは当然とも言える。しかし、こうしてみると、やはりこんなのアニメでやるテーマじゃねぇな。こんなオッサン向けなテーマでアニメ作ってるから、日本で人気が出ねぇんだよ。

 『シュレック』シリーズといえば、選曲の妙。本作でも、シュレックのいない世界に行き、独身時代の気楽な生活を満喫するシーンで流れるのがカーペンターズの『トップ オブ ザワールド』。「君のいるこの世界こそトップ オブ ザ ワールドだ」と歌う超ラブソング。それを独身生活を満喫してるシーンで流すのである。超ハッピーな曲が流れているのに、映画が不穏な雰囲気に包まれるという名シーン。

 今までに比べると、新キャラの物量作戦にはならない本作ではあるものの、一応新キャラはいまして。主なのは悪役の2人。
 メインの悪役ランプルスティルスキンは、シュレックをハメて王国を乗っ取ろうとする。知らなかったけど、ランプルは童話のキャラとして有名らしいですね。コイツは声優がおもしろくて、有名人じゃないんだよね。ウォルト ドーンって人なんだけど。まったくのアマチュア。やはり大作アニメといえば、スターを声優として起用するのが日米問わず定石じゃないですか。だけど、このランプル役をやってるのは、制作スタッフの人。声優が決まってない時にとりあえず声当てをしたら、予想以上にハマっちゃって「もう、お前でいいんじゃね?」ってノリで決まっちゃった。数少ない新キャラですよ。スターをキャスティングして話題を作るチャンスだってのに。
 ちなみに、『3』では新キャラにキャメロン ディアズ(フィオナ役)の当時の恋人ジャスティン ティンバーレイクをキャスティングしてたのに。その映画の続編とは思えない。

 もう1人の新キャラ。シュレックの命を狙う賞金稼ぎとして登場するのが、ご存じハーメルンの笛吹き男。しゃべる代わりに笛を吹いてコミュニケーションするというキャラ。ある意味でシリーズ最強の男。コイツも声優がおもしろくて。声優といっても一言もしゃべらないから、笛吹いてる人なんだど。この笛を吹いてるのが、映画の原作『みにくいシュレック』の原作者の息子さんなんだよね。なにこれ、ステキやん。

 『シュレック』シリーズ、というかドリームワークスアニメといえば、アンチディズニーの精神でお馴染みですが。『3』以降少し毒っ気が弱まったシリーズとはいえ、本作にもやはり毒はある。劇中、シュレックが町でお尋ね者になった時の文句っていうのが「ネズミを喰う怪物シュレック」。
 ネズミってま、まさか・・・・・・あの夢と魔法の国の王様ですね。さすがですね。やっぱり『シュレック』シリーズはネズミを食べてナンボですよね。

 アンチディズニーは関係なく爆笑だったのが、子供の認知問題で裁判沙汰になってるエディー マーフィーに「俺が父親!?」というセリフを言わせたことである。相変わらずでうれしい。てか、これを文句言わずOKしてくれたエディー マーフィーもナイスだね。気づかなかっただけならバカだけど。

 本作でシリーズ初の展開となったのは、シュレックとフィオナ以外のオーガ(怪物)が出てくること。オーガ以外を相手にしては怪力で自慢のシュレックもオーガの中では非力でもやしっ子、という展開がかなり新鮮だった。動物が主人公となるアニメでは当たり前となっている、その動物の個性がキャラの個性と直結する、という問題。つまり、そのキャラと同じ種族の他の動物が出てきたらそのキャラはアイデンティティーを失う、という問題ですね。ちなみに、この問題は同じドリームワークスアニメの『マダガスカル2』で扱ってて、見事すぎる解答を出しているんで、興味があったら是非。動物が出てくるアニメとして金字塔であると信じています。

 こっからはラストについてでネタバレなんですが。


 シュレックがいない世界を体験する本作のラストで、シュレックはキスして魔法を解くんですよね。自分のいない世界を通じて自分の人生の素晴らしさに気づく。そこで、シュレックの言うセリフがあまりに感動的。嫁さんであるフィオナに対して、「今日は人生最良の1日だ。なぜなら君にまた恋に落ちることができた」って言うんだよね。クソ! ブスのくせに超キレイなこと言いやがって!
 もうね、涙腺がヤバイ。ダメなんだよ。ブスキャラのキレイなセリフには弱いんだよ! 泣けるじゃねぇか!!



 というワケで不意にもマジで泣きそうになった本作。
 シリーズのおさらいをするオープニングや、シュレックのいない世界として過去の思い出の地を巡るシーン、過去キャラが出てくるエンドクレジットを見ても泣きそうになるのであった。やっぱ終わってほしくねぇよぉ〜!!
 90点。