北区の帰宅部の意訳

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マンガ『サイコメトラー』(4巻)の感想

サイコメトラー(4) (ヤンマガKCスペシャル)

サイコメトラー(4) (ヤンマガKCスペシャル)

 1〜3巻の感想を書いてるので、書かないといけないんじゃないかという軽い強迫観念にとらわれてるので書きます。べっ 別にそこまで好きなワケじゃないんだからねっ!(ツンツン)

マンガ『サイコメトラー』(1&2巻)の感想 - 北区の帰宅部
マンガ『サイコメトラー』(3巻)の感想 - 北区の帰宅部

 そんな低い意識の現れなんですが、完全に発売日忘れてた・・・・。たまたま本屋で見つけて驚愕、っていうね。発売から1週間以上経ってるようですね。ブログに上げるくらいなら早く買っとけよー、って我ながら思います。まさか2ヶ月ぽっちで新刊が出るなんて思いもしなかったですよ。週刊誌連載は早いっすね。

 そんなこんなで手に入れた4巻。Case.3「殺人名探偵」が丸々収録。イントロにあたるヒカル初登場回は3巻のラストに収録とはいえ、1つの事件が1冊に完全収録されてるのは非常に読みやすいです。あざーっす。
 「殺人名探偵」が終わると間髪入れずにCase.4「痢遺愚狩り」が始まります(1話しか入ってないけど)。ブレイクを挟まないのはめずらしいですね。

 読み始める。「殺人名探偵」ってタイトルだから「殺人シェフ」みたいな話だろうな〜、またリメイクっぽくてイヤだな〜、なんて1ページ目を開くと、そこにはホームズの格好した犯人(顔が黒塗り)。そして、「ぬっ?」。
 な、なんだ・・・・・このインパクト・・・・・超おもしろそうじゃねぇかよ・・・・・。
 読み終わってみたら、「殺人名探偵」、傑作回でしたよ。間違いなく新シリーズでベストだと思います(デレデレ)。

 たしかに、過去の「殺人シェフ」や「ジャスティス」とよく似た作りの作品ではあるんですが、新シリーズでこの手の変態殺人鬼が出るのは初めてでして、やっぱ本作の魅力って殺人鬼の変態性なんだなと痛感した次第。
 モブだった人が実は犯人、ってのは「殺人シェフ」と同じなので、本作の雛形は間違いなく「殺人シェフ」でしょうね。
 本作の世界観と完全に食い違ってる「殺人名探偵」の出で立ち、そして論理的っぽく見えてよく聞くと頭のおかしい一人語り、極めつけがその変態性の象徴とも言える「ぬっ?」。もう、おもしろいじゃないですかー、ずるいわー。エイジも志摩さんも出てない段階からおもしろいもん。
 しかも、決めゼリフが「名探偵 明智川耕助の名にかけて」とか。名前がおもしろすぎる上に、『金田一少年の事件簿』のセルフパロディー入ってじゃん。ずりー、今までのシリーズになかったメタ的構造をブチ込んできやがったわー。うまいなー、「やられた」としか言えない。
 ちなみに、「明智川耕助」の元ネタってなに? 明智小五郎金田一耕助はわかるんだけど、「川」がわからん。江戸川乱歩は探偵じゃないし。まさか、江戸川コナン? 急にランク落ちるよね。決めゼリフの『金田一少年の事件簿』は作者同じだから本章のメタ視点と相性抜群だから違和感ないけど。

 セルフパロディーというと、ヒカルがトオルの手に触れるトコで唐突な「セルフパロディ」という文字入りのギャグがありましたね。おそらく『金田一少年の事件簿』を扱うことを示唆する目的なのでしょう。
 明智川の本棚に『金田一少年の事件簿』がしっかり並んでますしね。なにより、明智川がミステリーにハマったキッカケは小学生時代に『金田一少年』であることが語られますし。最後の殺人(未遂)のトコでも『金田一少年』の中の「銀幕の殺人鬼」のネタ使おうとしてましたし。明智川がいじめられてる時に「怪盗 給食費の魔術師」なんて単語も出てくるし。「怪盗紳士」と「放課後の魔術師」パロディーですかね。
 現在、少年マガジンの方で『金田一少年』も連載してるんで、そちらも目が離せない!!・・・・・・っとステマステマ

 とにかく本章の魅力は明智川という人物に尽きますよ。ひたすら魅力的。第二の殺人の時に被害者に犯人呼ばわりされてブチギレ。泣きながら絞め殺すトコとか爆笑してしまいました。後から気づくことになるんですが、ここで泣くのには明智川のトラウマが関係していて・・・・ってのも実にうまいですよね。
 そんなトラウマ過去シーン。本シリーズの中ではかなり丁寧に過去が描かれたんじゃないでしょうか。完全主観目線で描くというのも新鮮でよかったです。
 小学校の時のイジメがキッカケっていうのは本作的に別段めずらしくもないし、イジメの時に首絞められたりするのもそこまでエグいエピソードでもないです。もっとハードでえげつない過去とかもありますからね。ただ、ミステリーにハマるキッカケ、イジメ、引きこもり、という明智川の負の連鎖がすごく自然なんですよね。『金田一少年の事件簿』、好きな女子、イジメっ子、給食費盗難事件、「本を読めば学校なんて行かなくても大丈夫だから」、と殺人名探偵 明智川耕助を構成する要因すべてを違和感なく語りきったというのが本章の勝因だと思います。

 明智川のすべてを描き、読者に提示することで、読者が明智川に感情移入してしますというウルトラC。本来、本作の変態殺人鬼に感情移入なんて無理な話だと思うんですけどね。さらに、ラスト、エイジが明智川が引きこもってた閉鎖空間(実家)をサイコメトリーすることで、明智川のすべてを知る→明智川に感情移入→読者もエイジに感情移入 という流れですよね。
 だからこそ、エイジは最後、明智川のことを救おうとしたのではないでしょうか。明智川のことを知りすぎてしまったから。エイジは過去に何度かいじめられてる人を救ってますからね。この選択に違和感ないです。
 逆に明智川の救済に興味はなく呆れ顔なのは志摩さんの方。心理学に精通してるのは志摩さんなのにエイジと立場が逆転してるからおかしい。そんなじれる志摩さんをエイジが止める時に出すのが、「手」。エイジの武器であり、普段は犯人逮捕に使っていた武器を犯人の救済のために差し出す。もう感動的じゃないですか。たしかにね、本作であのラストってのは異色で生ぬるいって言われる余地はあると思うんですよ。今までになかったアプローチなので。けど、ワタクシは泣きそうでしたね。本作の全シリーズの中で唯一の味わいを持つ出色の出来だと思いました。

 ただ、1つあまり好きじゃないトコがありまして。刑事仲間のナベちゃんの存在。ミスリードなのはわかるんですよ。わかるんだけど、ナベちゃん初登場時に明智川が警察の現場検証を盗聴してるシーンが描かれるので、「明智川≠ナベちゃん」ってド頭で提示されちゃうんですよね。あんまりうまくない。決定的に別人と提示された後で「ナベちゃん怪しくね?」って演出を重ねられてもいまいちノレない。
 それと、明智川の実家の表札が「渡辺一夫」って見せるのもなんかあざといし。「ナベちゃん」と一致するっていうのも偶然以外の根拠ないでしょ。
 いや、ナベちゃん自体はかなり好きなキャラなんですよ。ミステリーマニアっていうのはミステリーマンガの作中でメタ視点なので、それが警察側にもいるっていうのは今後にも期待してしまいます。ただ、使い捨てっぽい感じもしますね。
 てかさ、明智川とナベちゃんって絶対意気投合するよね。友達になれるよね。2人が顔合わせるトコ見たかったなぁ。明智川が車で連行される時に、車中にナベちゃんがいてほしかったです。じゃないと、ナベちゃんってハッタリのためだけの使い捨てじゃないですか。なんかずるいな。

 他にも、話の粗は結構多かった気がしますね。「サイコメトリーは法的根拠にならない」っていうのが本作の味噌なのに、サイコメトリーを根拠にマスコミに手配映像を流したのはガッカリですね。
 まぁ、明智川に重点を置いたが故の欠点なのはわかるんですが。

 あと、ヒカル。3巻のラストのイントロ部分で初登場したトオルラブな男装女子a.k.a.男な娘。イントロにいたいけな少女が出てくるから絶対に陰惨な死を迎えると思ってたら、無事生還しましたね。いやぁ、よかったよかった。絶対にレイプくらいはされると思ってましたよ。まぁ、今後の不安はまだありますけどね。
 ヒカルと言えば、本作初のおっぱい。まさかのタイミングでおっぱい出てきたんで驚きましたよ。「ヤング誌ならではの」ってヤツですね。ありがたいです。しかも、クソ丁寧に明智川のイメージ映像として巨乳バージョンも描くとか、ただ単におっぱい描きたかっただけじゃねぇの、とか邪推してしまいます。
 とはいえ、引きこもりの変態デブにハァハァされるとか、ヒカルもかわいそうですね。意識なくて本当によかった。おっぱい、パンツ、キス、と粗方すべてやられる寸前でしたね。
 まぁ、このキスしようとするトコで、明智川が「トラップだぁ〜っ!」ってなるのがイイ。やっぱ明智川のことは嫌いになれません。イイキャラしてるわ。

 そんなヒカルは救出された時にトオルに抱きつき&号泣。男だと偽ってることを忘れて。そんなヒカルにトオルが思わず「キュン」って、 お 前 そ れ ホ モ や な い か ! !
 思わず「アッー!」とか言いたくなったんですが、ここで冷静になってトオルの本来の設定を思い出してみましょう。『サイコメトラーEIJI』の初期の頃のトオル、それはただのエロい悪友でしかなく、髪の毛が触覚になって美女を感知してたじゃないですか。これは、つまり第六感で(美)女を認知できるということ。つまり、ヒカルに対して「キュン」となったのはホモではなく、トオルのレーダーが潜在的に反応したから、と解釈することが出来ますね。
 まぁ、個人的にはホモの方が希望ですが。しかし、トオルがヒカルに友情以外の好意を抱くと、それはヒカルの死亡フラグになり、「ジャスティス」みたいな話になる可能性が激増しますね。ホモを取ったらヒカルが死に、死を取ったらホモがなくなる。難しい二択ですね。

 まぁ、そんなこんなで「殺人名探偵」は終了。傑作回だったと思います。「殺人シェフ」の焼き直しと揶揄されることもあるでしょうが、「殺人シェフ」よりは全然おもしろいでしょ。
 あとは、ヒカルの余命に注目ですね。

 そして、間髪入れずにCase.4「痢遺愚狩り」へ。「りーぐがり」と読みます。
 まぁ、1話しか読めないんでアレですが、「屍の街」臭がプンプン。犯人探しというミステリー要素は薄めの話になってしまうんでしょうか。ちょっと期待値が下がりました。「四天王」とか中二臭いし。
 よかったのはオバマ先生が無事復職してたのと、ジュンペーが出てきたこと。ジュンペーとか懐かしいですね。これでジュンペーが犯人だったら泣いちゃうぜ。

 1話だけだと、今後の予想もしづらいんですが、「屍の街」っぽいということで、やはり幾島の登場に期待せざるを得ない。タイトルが『サイコメトラー』とエイジの人名が抜けたくせにサイコメトラーはエイジ1人しかいねぇじゃねぇか、という問題の解決にもなるので是非とも生島さんに出てきてほしいものです。まぁ、どーせ、生島さんがマザーグース歌って終わるんじゃないですか。


 てなワケで、4巻でしたー。
 5巻は7月発売だそうですよ。そろそろ表紙がエイジor志摩以外になってほしいです。

追記
 続きです。

マンガ『サイコメトラー』(5巻)の感想 - 北区の帰宅部