北区の帰宅部

映画の感想を書きます(嘘&希望)

映画『孫文の義士団』の感想


孫文はほとんど出ません


 『孫文の義士団』観ました。『イップマン』のドニー イェン主演。今年は、ドニー イェン祭と称して主演作を軒並み日本公開されてるようです。来月は『処刑剣』が公開されますし。

 まぁ、個人的にも『イップマン』は大当たりだったんでね、当然観ますよ。
 とはいえ、本作はドニー イェンが単独主演って感じではないんですけどね。スターが複数いるアンサンブル状態。ワタクシ、そこらへんが暗いので、ドニー イェンしかわからないんですが。

 『孫文の義士団』なんてタイトルだと、なんだか偏差値の高そうな響きですけど、英題は『ボディーガード アンド アサシン』ですからね。急にB級っぽくなった。
 原題は『十月圍城』。「圍」ってのは「囲」のことらしいんで、十月に城を囲むことですね。多分、辛亥革命のことだと思います。
 ワタクシ、孫文と言われても、「あぁ、なんとか革命の・・・・・」程度の知識しかないです。観るにあたって、ウィキペディアで検索したものの、なんだか長くて読む気がなくなってしまいました。なので、歴史的なこと、孫文のことについてはわかりません。

 結果、特に問題はなかったです。英題がノリとしては一番しっくりくるかもしれないです。


オールスターキャストなのが窺い知れるポスター



   あらすじ
どうやら街に孫文が来るらしい
革命に向けて大事な集会が行われるらしい
朝廷が暗殺者を放ったらしい
集会が行われる1時間、孫文を守るために革命を目指す義士団が捨て身でがんばる



 まぁ、物語としては単純ですね。別に革命が行われるトコを描くワケじゃないんで。革命の準備のためにやってくる孫文を暗殺者から守る、それだけ。
 やっぱ『ボディーガード アンド アサシン』なノリでした。

 わかりやすいのは大歓迎なんですが。『孫文の義士団』という名前に誘われて、歴史ドラマや歴史の裏側、みたいなのを期待すると肩透かしです。
 本作を観ても勉強になりません。孫文についても、辛亥革命についても、なにもわかりません。革命前の生活がいかに苦しいのか、なんても描かれない。
 これは個人的な予想なんだけど。本国である中国においては、そんなこと当たり前すぎるから描かれなかったんじゃないかな? 「はいっ、みんな御存知の孫文さんが出てきましたよっ!」ってノリなんだと思う。本作でも、孫文は人物として登場するんだけど、ラストのラストまで顔が隠されてるんだよね。後ろ向きとか、帽子で隠れたり、見えないようにしてる。ここらへんに「孫文自体の素晴らしさは御存知でしょ? 描かないよ」ってノリが滲み出てるのではないかと思った。まぁ、そこまで開き直られると、人ならざる神々しい存在として観れるんで、単純化されてわかりやすい。

 ワタクシは、『イップマン』みたくアクション三昧な映画を予想して行ったんですが。意外と違った。
 驚くことに、本作は孫文が到着して暗殺者とのバトルが始まるまでの前半部分ではほとんどアクションがない。
 孫文が到着して、作戦が始まるまでは、義士団の面子紹介に力が置かれる。元々革命を目指してるような人から、「孫文? なにそれおいしいの?」みたいな人までが義士団として作戦に参加するまでを丁寧に描く。
 なので、中には「前半にアクションがなくて退屈」って人がいてもおかしくない。映画全体としても、アクション映画で2時間超えてるのはちょっと長い。

 なんだけど。
 ワタクシとしては、まったく退屈しなかった。義士団のそれぞれのドラマが熱いんだよね。親子の確執やら、社会の底辺みたいな存在の人たちが、それぞれ1つの目的の元集まる。
 しかも、ほとんどがダメ人間で。アヘン中毒の浮浪者とか。
 ギャンブルのために朝廷のスパイとして働いてたり。コイツがドニー イェンですからね。イップマンとの格差がスゴイよ! ギャンブルが原因で嫁さんに逃げられたりしてて。そのくせ、嫁と娘に未練タラタラで。しかもコイツのスパイ行為のせいで、革命に協力する劇場の親父が殺されるんですよ。
 その劇場の娘がそれまでは親父と仲悪かったんだけど、義士団に協力するように、父の仇を討とうとするようになる。

 あと、義士団の特徴で驚きだったのが、義士団のそれぞれは孫文のために戦うのではない、って点。
 これは、孫文の偉大さについて描いてないってのと通ずる話かもしれないけど。義士団の中で孫文のことを知っていて、オールフォー孫文、オールフォーチャイナ、な人って極一部なんですよね。義士団の中心の人だけ。
 他の人は、孫文のことなんて知りやしない。国の未来も考えてない。それぞれが特別な人のために身を挺して戦う。父の仇討ちのためだったり、ある男への忠義だったり、恩を返すためだったり、極めてプライベートな動機。ドニー イェンに関しては、娘に誇れる男になるため、というギャンブルまみれだった負け組男が最後の最後に一念発起するっていう。熱いよ。燃えないワケがない。

 義士団の中の人力車引いてる男は、恋人に「誰を守るか知ってるの?」って言われて、「知らない。その人の本なら持ってるが字が読めない」と。孫文なんて知らないし、革命の必要性も考えてない。
 ここらへんの、各々が各々のプライベートな動機で命を懸けてるってとこがイイんですよ。観てるワタクシも孫文なんて知らないからね。「お国のために」なんて言われてもあんまりピンとこないしね。

 ちなみに、この人力車引いてる男ってのは恋人に、「この任務が終わったら結婚しよう」なんて言っちゃったりして。
 し、死亡フラグ・・・・・!!!

 こういうわかりやすい死亡フラグが幾重にも描かれるんですよね。
 死亡フラグが立てられた男たちが、文字通り身を挺して孫文を守る任務に挑む。

 また、ここでうまいのが、孫文の影武者を準備するとこ。
 まぁさ、史実として、辛亥革命は成功することくらい知ってるじゃないですか。辛亥革命が起こる前に孫文は死なないんですよ。この作戦は成功して当たり前、って観客は知ってる。
 なんだけど。ここで影武者作戦に出ることによって、「死ぬかもしれない・・・・」って緊張が生まれる。身を挺して、命を懸けて孫文の人柱になるという作戦の綱渡り感が増す。既に立てられてる死亡フラグがより効果的になる。

 前半のドラマ部分を描くにあたって、1つの工夫がある。
 映画のオープニング、どこぞの革命家だか知識人が演説してる。孫文について民衆に説いてる。映画を観てると、「あぁ、こういう政治的なのも描くんだぁ・・・・」と思う。
 ・・・・と、思ってると、バンとその人が狙撃される。脳天をブチ抜かれる。いきなりですよ。音もスゴイし、その後の民衆のパニックも描かれ、観てるこちらもパニック。不意打ちですね、サッカーパンチを喰らうワケです。
 この不意打ちが映画のド頭にあるから、孫文が到着して作戦が始まるまでの長いドラマパートも一定の緊張感が付きまとうワケで。「いつ死んでもおかしくない」という緊張が持続する。

 そんで、肝心のアクションなんですが。
 まー文句ないワケですよね。予想はしてましたが。
 また、アクションってのが、ステージ分けされていて、ステージごとに義士団の1人ずつの見せ場になってる。ステージごとに「ここは俺に任せて先に行け」があるんですよね。こんなん好きに決まっとるやんけ。

 また、そのアクションってのがそれぞれ違った魅力があってイイんですよね。
 義士団の中にバスケ選手が演じてるキャラがいまして。コイツの戦い方が完全にバスケなんですよ。市場にあったヤシの実みたいなのを投げて遠距離攻撃。窓から狙撃してくる敵は、ヤシの実を相手の脳天にダンクシュート。
 バカらしいといったらそれまでだけど、それぞれが違った戦闘スタイルなのは飽きなくてイイですよ。
 ちなみにこのバスケ選手はスリムクラブのボケに激似です。

 んで、ドニー イェン。これがまたスゴイんですよね。『イップマン』の時とはまるで別人のようなアクションでして。改めて『イップマン』の時の役作りはスゴかったんだな、と驚かされました。
 そして、本作のドニー イェンの見せ場としては、パルクールがありまして。フリーランニングね。町中を我が身一つで走り回るアレ。ヤマカシとか有名ですね。
 それやってんですよ。

 今回、ドニー イェンが戦う相手ってのは、登場時から強烈で。人混みの中を人を吹き飛ばしながら走ってくるんですよね。孫文を追いかけて。そいつの足止めをドニー イェンがするんだけど。
 この時にパルクールがあるんだけど。圧巻なんですよ。人混みの中を誰にもぶつからず、障害物を壊すことなくスマートに町中を走る。敵との対比にもなっていて大変アガる名シーン。

 また、ドニー イェン以外にも見せ場は山ほどありまして。
 アヘン中毒の浮浪者が義士団に誘われるんですね。その人には以前から恩があって、そしたらその人が家宝の巨大鉄扇を買い戻してくれる。そしてその人に「手伝ってくれるか?」って聞かれると、「・・・・一番の難所を引き受けよう」っつって。
 んで、義士団が敵に追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥ると、道の先に1人の男が鉄扇を持って仁王立ちしてる。
 ・・・・もう、このシーンで全身鳥肌ピンコ立ちですよ。

 他にも、戦闘はてんで強くない男が最強の敵に向かって無謀にも立ち向かうシーンがあったりね。
 そこで、また「さようならドラえもん」ののび太ばりの戦法に出まして。相手の足に必死にしがみつく。いくら踏まれようが、離さない。勝つことはできないが、負けない、時間を稼ぐために自らの命を捨てるんですね。
 また、ここでの踏みつけ描写が結構エグいんだ。音とか強烈で。痛めつけ描写がエグいあるから、義士団の死に様が軽くならないんですよね。


 と、まー大満足でしたよ。
 『イップマン』がハマったんで、その感じを期待してたんだけど。『イップマン』とは全然違うベクトルの泣かせ演出でして。こっちのが割と露骨。「そんな死に方はずるいわぁ〜」みたいな泣かせ演出。ただ、それまでのアクション、テンション、義士団の熱ってのがちゃんと伝わってるから露骨な泣かせ演出に素直に乗ることができる。
 まっ、傑作でした、ということで。
 90点。


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