北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『007 スカイフォール』の感想

Qきゅんにキュンキュン

 事前の評判が天井知らず、という期待作だったのですが、大変おもしろかったです。観る前までは「『カジノロワイヤル』と関係のないクレイグ版007なんて観たくないやい!」的なテンションだったんですけどね。

 ワタクシの007映画に対するスタンスについてですが、基本となる007像はピアース ブロスナン。世代です。ブロスナン版はテレビで擦られまくってたので一応全部観たと思います。
 ただ、本格的に007シリーズにハマったのは『カジノロワイヤル』で。個人的には、シリーズ作品として、エンタメ作品として、キャラ萌えとして、究極系の映画なんじゃないかなぁ、と思うほどに大好きです。ヴェスパーちゃんぺろぺろ(主に指)。
 ですので、『カジノロワイヤル』の直系の続編として作られた『慰めの報酬』も全然アリ、っていうか『カジノロワイヤル』ファンとしてすげぇうれしい作りだと思ってます。
 そんな中、「今までとは関係ないから!」という形で作られたのが、『スカイフォール』。悔しいかな、超おもしろかったです。

 あらすじ
悪役「大嫌い大嫌い大嫌い、大好き」

 『カジノロワイヤル』の時もそうだったんですが、シリーズのお決まりというものの押さえ方が秀逸でしたね。定番の数で言ったら『スターウォーズ』シリーズ級に多いんじゃないでしょうか。それも監督、製作陣が何度も入れ替わりながら、ですので、かなり異質なシリーズだと思います。主人公が名乗らない、というだけでバッシングを浴びるって異常なことですよ(『慰めの報酬』のことっす)。
 そんな中の『スカイフォール』。かなりのオールドファンでも大満足だったんじゃないでしょうかね。定番のポイントというものがそこかしこに散りばめられてたと思います。その上で、オールドファンをくすぐるようなファンサービスも充実してますからね。作品の出来は置いといて、ファンサービス的な小ネタの多い作品は個人的に大好きです。
 ただ、ガンバレルシークエンスが物語の最後に付けたのはどうなんですかね。ボンドの落下→スカイフォール という流れにしたかったというのはわかるんですが。『慰めの報酬』への目配せ?

 『カジノロワイヤル』は、今までの007シリーズの方向性を無視した作品で、「『ボーン アイデンティティー』以降の007」なんて言われたりもしますね。今までの荒唐無稽路線ではなく、あくまでリアル路線、ということで。
 そして、『スカイフォール』は再び原点に回帰するような作品だったと思います。「今時スパイ1人が解決できる事件ってどうなのよww」っていう物言いが劇中に出てきますからね。劇中のMI6は、「時代遅れ」と追求されてしまう。
 そこで、劇中のMI6が、本作が出した結論というのが、「でも、やるんだよ!」というワケで。「謎の組織なんていない? いるわバカ!」ということで、戦います。クラシックスタイルへバッカゲン!ということですね。
 クライマックス直前、車を乗り換えると、『ゴールドフィンガー』のボンドカーが登場!(デンデケデンデンデンデンデン)というシーンがありましたが、あれは「クレイグ版007にもハイテクなボンドカーって出るよ? 秘密のメカもあるんだよ?」という今後のシリーズへの舵取りなのと思います。Q、マネーペニー、ボンドカー(特殊機能付きの)、秘密道具、というのは『カジノロワイヤル』『慰めの報酬』にはなかった要素ですからね。本作のラスト、Mの交代を経て新体制が誕生したのは、スクラップ&ビルドって感じですかねぇ。

 007というのは「男の願望」の象徴だと思うんですよ。仕事が出来て、世界中を行き来し、行く先々で美女と出会いセックス、命も狙われるけど返り討ち、誰も持ってないスーパーカーもハイテク道具も持ってるぜ、という男(男子)のアコガレそのものだと思います。
 そんな中で、世界中を旅する、というのがシリーズの味噌で。観光映画のようなものなんですよね。ボンドを追体験することで、世界旅行を体験することが出来る。
 本作の旅行先は、上海、マカオ。エキゾチックで謎めいたアジアの不思議の国、なんてもんじゃないですよね。超洗練されたクッソオサレな都会。上海とマカオでの映像があまりに美しかったので終始ウットリしまくりでした。他にも、ゴーストタウンな軍艦島(設定は違うけど)、帰省先のド田舎スコットランド、とオシャレ一辺倒じゃないのがまた素晴らしい。
 特に上海での戦闘シーン。明かりの消えたビルの中、外の電子広告の裏側での敵とのバトル。もうカッコよすぎてビンビンでしたよ! 隣のビルにいるミステリアスな美女を覗き見する、という展開もエロいっすなー!! たまんねー!!

 前作『慰めの報酬』でよく言われる批判が、「悪役がしょぼくね?」って点でして。まぁ、知能犯タイプで、戦闘に関しては完全な非力、見た目的なフックもない、地味な悪役でした。あの役を演じたマチュー アマルリックは、『カジノロワイヤル』の悪役の「血の涙」みたいな見た目的なフックを作る役作りにノリノリだったそうですが、監督が止めたらしいです。
 そんな中、『スカイフォール』の悪役がハビエル バルデム。『ノーカントリー』のアントン シガー来たー!! 悪役でオスカー取った人ですから、悪役の配置としては鉄板中の鉄板。そんなシガーが本作では金髪に染め、身体的な化け物感を備えてきたんですが、大満足ですよ。あの入れ歯を外し、骨格が変わり、頬が垂れ下がるクリーチャー感。見た目のギミック以外に特別な意味のない変身なんですが、見た瞬間は「こえー!!!」ってテンション上がりまくりでした。正直、ラストシーンでも変身してほしかったくらいです。
 『慰めの報酬』の批判ポイントである「こいつ弱くね?」の部分は大して変わらないんですよ。悪役の戦闘能力が描かれるシーンは全然ありませんから。その代わり、饒舌な語り、ちょっとした仕草、表情、なんの抵抗もなく人を殺す残酷さ、そして変身、というスーパーヴィランっぷりなんですよ。「こいつには勝てない」感が満載です。悪役描写としては、秘密基地として島(軍艦島)を丸々所有してるっていうのもイイですなぁ。ぶっちゃけ、もっと栄えた都市に住んでる方が何かと便利だと思うんですが、変身と同じでハッタリですよね。ここらへんも今までのリアル路線との違いなんじゃないでしょうか。


 シリーズに対する小ネタが多いと言いましたが、本作の肝は映像の美しさなんじゃないでしょうかね。上海、マカオ、軍艦島、ラストのスコットランド、どこもどれとも違ったロケーションの魅力に溢れていてひたすら眼福です。「シリーズ知らないから‥‥」って理由で敬遠するのはもったいないんじゃないですかね。
 まぁ、ネタバレ感想の最後にこんなこと書いてもナンセンス極まりないんですがー。
 90点。

007/スカイフォール オリジナル・サウンドトラック

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