北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の感想

 やっぱMCUが新作公開となるとテンション上がりますね。配信のテレビシリーズとかだと毎週のように観てたりするんだけど、やっぱ映画だわ。

 予告の段階から感じてたことなんですが、トニーレオンの魅力がすごい。魅力というか、色気。とにかくエロい。画面に映る度にフェロモンがファサァァァと散布されてる感。知ってたけどさぁ、ここまでだったっけ? と驚くばかり。
 MCUの中でもここまでストレートな父殺しみたいな話って珍しいですよね。「珍しい」という感想を書くためにMCU過去作を記憶の中で検索すると……ってもう25作あるからやる気失せる。ほとんどないと思います。1、2コあったらごめん。とにかく、そんな重要な役であり、悪役をトニーレオンがやってることでこの映画は勝ち。

 トニーレオンもそうだけど、ある意味それ以上に「これだけで本作は勝ち」と感じたのがテンリングス。腕輪の方ね。腕輪を使ったバトルがめちゃくちゃ良かった。中国フィーチャーなので武術という側面が強いんだけど、それとスーパーパワーの良いとこ取り。ちゃんと武術の延長線上にスーパーパワーがあるように見えるんですよね。もう面白い。腕輪をどう使うのかでアイディア的な面白さもあるし、腕輪を5コずつ分けて親子対決というエモい絵面も作れる。最高。
 いきなり最後の最後の話になるけど、今回の「will return」。シャンチーかと思ったらテンリングスだったじゃないですか。要するに兄の腕輪と、妹の組織というダブルミーニングなのでしょうね。このお約束のフレーズに仕掛けがあるのは意外でした。
 そんな妹。闇堕ちというわけではなく、最初から闇の組織を持ってた人ではあるんだけど、とりあえずテンリングス(組織)の継承。腕輪は兄が、組織は妹が、と考えるとフェアな気もするんですが、ちょっとこの悪役もオリジン、ドヤって終了、みたいな部分は少し唐突に思えた。あと、『ファルコン&ウィンターソルジャー』のラストにおけるシャロンと、いくらなんでも展開が同じすぎる。ちょっとMCUフェイズ4の都合みたいなものを強く感じたかな。ここは少し萎えた。フェイズ4作品のラストには新たな悪役の誕生や、悪役の組織が匂わされる展開で終わるのが多くて、まぁそういうことがやりたいんだろうなぁとは理解できるけど、展開が同じすぎるし、共に戦ってた女性キャラがあっさり悪の側に移るような話になるので普通に寂しい。『ブラックウィドウ』のフローレンスピューはそこまで単純じゃないだろうから期待が膨らむけど。

 もう一つ、個人的にイマイチ要素だった件。クライマックスにおけるバトル。化け物が出てきちゃってーという感じなんだけど、肉体をベースにしたアクションがとにかく魅力的な作品だったので最後の最後に関係ないバトルが始まって少し乗り切れなかった。中国文化大フィーチャー、アジアオマージュ爆発、という意味で熱さを感じるけど、正直お父ちゃんとケンカしてるときの方が面白かった。「腕輪の継承! そして真のラスボス戦!!」という感情の盛り上がりと、実際のバトルの見応え的な盛り上がりに少しだけズレがあった。

 逆に超良かった点。「パーはグーに勝つ!」という至極明快な展開。あそこマジで良かった。主人公の精神的成長を、あのグーをパーにするワンアクションだけで示す。グーは暴力の象徴であり、パーはそれと対になる……みたいな話がすごく分かりやすいじゃないですか。そんで、トニーレオンが最後に改心した際、グーをやめて腕輪を息子に渡す。言葉には頼らない感動がありました。ああいうのさらっとやってくるのマジで油断ならないんだよなぁ。
 グーではなくパーによって出す技の最強格が「カメハメ波」と言われてしまうのには爆笑しました。ある程度の世代の人って手からビーム的な攻撃出したら「かめはめ波じゃん」みたいな表現をしがちだと思うんですよ。テレビゲームを全部ファミコンって呼ぶみたいなノリで。それがMCUで出てくる。一応中国文化オマージュの範疇なのでしょうか。『レディプレイヤー1』だと波動拳、『フリーガイ』だとロックバスターに続く快挙。まぁ、それに比べると本作は言葉が出てきただけか。

 「かっこいい中国を見て!!」という情熱が全編から伝わってくるのも良かったんですが、その方法が割と直球で「あの映画のこのシーンかっこいいよね!!」という内容なのも特徴的だったと思う。突然『グリーンデスティニー』(以降に流行った一連のアレ)が出てきてビビるんですが、あの動きはターロー村の武術に由来する、というロジックがあるので他の普通のアクションパートと矛盾しなかったのは見事ですね。
 あと、そのまんま感として笑ったのは『007 スカイフォール』。予告の段階から「上海のあの裏のアレじゃん」とか思ってたんですが、まぁあれは「かっこいい中国を見て!」ということで意図は理解できる。かと思ったら、『スカイフォール』のエクストリームカフス直しも出てくるので笑った。それは中国関係ないよw たしかに最高の場面だけど。
 まぁ、よく考えたら『ブラックパンサー』でも『007』シリーズ風のことはやってたし、こういうマイノリティ文化フィーチャーみたいなコンセプトの際、「白人以外もかっこいいぜ!」と示す際に便利な記号なのかもしれませんね。かっこよさの象徴というか。

 MCUなので、他作との繋がり、今後への期待を煽るパートも当然ある。完全新キャラのオリジンなので単独色が強いかと思ったけど、普通にあった。普通にめちゃくちゃテンション上がりました。やっぱシリーズ展開あると楽しいよ。DCも頑張ってほしい。『ザスーサイドスクワッド』とか諦めてる感あるけど。
 そんなMCUの世界を強く感じさせたのが、ウォン。ビヨンセことウォン。ベネディクトウォン演じるウォン。ベネディクトカンバーバッチの相方であるウォンを演じるベネディクトウォン。思いの外出番多かったし、何なら『スパイダーマン ノーウェイホーム』にも出てたし、MCUフェイズ4の超重要キャラになってる感ある。おそらくだけど、ベネカンみたいなスターを出すのは大変だけど、同じ魔術師なら……というジェネリック的な扱いなんでしょうね。『エンドゲーム』後、現役のヒーローで、地球在住で、世界平和のために働く志が強めで、そして何より能力がめちゃくちゃ便利。今後もどこでもドア要員として重宝されそうな気がする。ドラえウォン。
 ウォンと一緒に出てきたアボミネーション。まさかの『インクレディブルハルク』ネタなので嬉しかったです。こないだの『ホワットイフ』もそうだったけど、『インクレディブルハルク』再評価の波が来てるかもしれない。MCUで最も不遇な扱いを受けてる作品という印象だったんですが。そこが繰り上がると次に不遇なのは『マイティソー ダークワールド』かな……。
 ポストクレジット。ミッドクレジットだったかも。現在のアベンジャーズはこんな感じ、という会議が出てきましたね。数少ないけど、普通に最強格の2人が揃ってるので頼もしい。テンリングスパワーでシャンチーくんも頼もしいけど、雑にビーム出すだけでそれを上回れそうな某キャプテンのぶっ壊れ具合を改めて感じる。雑なゲームバランスみたいな感じで強いんだよなぁ、あの人。『エンドゲーム』はうまいことバランス取れてたので驚きだわ。単独映画の2本目がどうなるのか楽しみです。

 最後にトニーレオン関連でもう一つ。父の闇堕ち、悪魔の誘惑ってかなり定番の話だと思うんだけど、今のご時世、父が陰謀論にハマってしまって一家崩壊、みたいな風にも見えた。テレビでyoutube観るようになった父がエコーチェンバーで陰謀論にずぶずぶハマっていって……とか結構ある話っていうじゃないですか。怖いよねぇ。
 まぁ、これは勘ぐりすぎだと思うんですが、昨今、陰謀論の有害性を強く感じることでハリウッド映画におけるお気楽な陰謀論描写がやけに引っかかる、みたいなことは多いです。こないだの『ゴジラvsコング』も「陰謀論が正しかったってそんな話で大丈夫?」とか思ったし。


 終わり。はぁぁ、面白かったでごわす。やっぱMCU最強よ。『エターナルズ』も楽しみです。濃厚すぎるクロエジャオ節がどうなるのか、コミック映画とのバランスは取れるのか少し心配ではあるけど、本作の成功ぶりを見ると「まぁどうせ面白いんだろうなぁ」という感じではある。『スパイダーマン ノーウェイホーム』に関しては言わずもがなです。あの予告を観たら歴代スパイダーマン映画マラソン始めちゃいましたよ。今『アメイジングスパイダーマン2』が終わったとこ。歴代最高でもおかしくないくらい面白かったです。やっぱエレクトロよ。あと単純にスパイダーマンが最高。ガーフィールドも『ノーウェイホーム』に出てきてくれぇぇ。デハーンも頼むで。