北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』の感想

 ついに観たぞい。1年以上待ちました。「ハンが復活!?」と明かされた予告にブチ上がったと思ったらコロナで延期。コロナによって延期された大作は数え切れないほどあるけど、その中でも一番楽しみにしてた作品と言って間違いない。『ゴジラvsコング』も観ちゃったし、何ならちょっとした燃えつき感。

 ネタバレあります。そりゃもうネタバレで大変。

 ハン復活が大きなトピックなのは間違いないが、作品のクオリティ的により大きいのはジャスティンリン監督の復帰でしょう。『EURO MISSION』でハンと共にシリーズを離脱。その後の2作において、シリーズは大きく変わり、問題の『ICE BREAK』バーベキューが原因となってジャスティンリン復活!!……と単純化するのはちょっと問題あるかもしれないけど、そのくらい復帰が嬉しいのです。
 実際は脚本のクリスモーガンの存在も大きくて、こちらは #JusticeForHan へリアクションしたり大事な存在なんだけど、本作の脚本には不参加。残念極まりない。今後の2作にはディーゼル、リン、モーガンの3人が揃うことを期待します。
 んで、代わりにジャスティンリンが脚本としてもクレジット(単独ではない)。要するに「リンイズバック!」要素が非常に高い1作。それは同時に「ハンへの愛が深い……!」でもある。

 最初にハン復活及び、JusticeForHan、そしてJUSTICE IS COMINGについて。一時は双子とか予想されてたけど(ネタ含む)、しっかり本人です。良かったね。そして、本作のミッドクレジットシーンが完全にJUSTICE IS COMINGなので笑った。そのまんまである。デッカードの元へハンが現れる。あのあとどうなるのかは不明。次作で描くのだろうか。そもそも殺すのかどうなのかも分からない。そもそもハンは死んでなかったという話なので、デッカードに対する恨みも発生してないのでは? とか頭が混乱してくる。となると、デッカードよりもジゼルを殺したオーウェン(部下だが)の方が問題な気がしてくる。まぁ、いざとなったらジゼルも復活……はハン以上に理屈が難しそうだw
 ハン復活の理屈。ノーバディが暗躍してました。例の炎上した車にはハンはいませんでした。おまえはプリンセス天功かっ! ノーバディの便利設定ぶりがすごい……!
 ただ、ジャスティンリン的にノーバディはあまり好きじゃないのかな? と邪推してしまうのが、ノーバディ、本筋には不在なんですよね。新規撮影はしてるので完全に不在ではないか。ただし、スコットイーストウッドは完全に不在。消滅したようにも見えるレベル。まぁ、「ポールの穴埋め」感がハンパない登場だったら反発する気持ちも分かるよ……(妄想です)。

 『ICE BREAK』問題のバーベキューの件。本作『ジェットブレイク』の何が良いってラストのバーベキューが良い。シリーズ屈指の名バーベキューシークエンスだったと思う。『MEGA MAX』か『ジェットブレイク』の2択になるのでは。
 そんなバーベキュー。ジャスティンリンが山岡士郎よろしく「4年後にもう一度来てください。本物のバーベキューをご馳走しますよ」と決めてきたような衝撃。それくらい前作へのアンサーとして素晴らしい。まず場所。「デッカード云々の前に何知らんとこでバーベキューしてるんじゃい」と言わんばかりのご実家復活。再建というそのまんますぎる豪腕にはちょっと笑った。そもそもジャスティンリン的には「何家爆破してくれとんのじゃ」って話でもあるのですね。過去2作どんだけ嫌いなの……(妄想です)。
 バーベキューの参加メンツ。これは本編の感想にもなるが、レオ&サントスの復活が嬉しい。これは『ICE BREAK』の功績でもありますね。2人とドムの出会いが描かれたので感動しました。何なら本シリーズにおいて不遇の扱いを受けてきたとも言える2人なのでこのフックアップは嬉しい。ただ、レオがバーベキューには不参加だったのは気になるところ。何か大人の事情を感じる。まぁ、回想には出たから不仲とかそういう話ではなさそう。
 そしてもう1組。バーベキューシーンのサプライズだったのが『TOKYO DRIFT』組の参加。ハン復活に付随してこちらも復活したのが本当に嬉しい。トゥインキーは面影なさすぎて正直言われなきゃ分からなかった……。贅沢を言えば運転してドリフトしてほしかったが、それはさておき、ハンが復活して誰が一番嬉しいのかって話ですよ。観客でもドムでもなくショーンでしょ!! という至極当然の結論。ハンを見つけた際のショーンのあの顔、本作で一番涙腺刺激された場面でした。「わざわざドムが東京に行ったのにショーンの出番あんだけかよ!」というジャスティンリン監督の叫びが聞こえてくるような名シーンでした。どんだけ過去2作嫌いなの……(妄想です)。
 バーベキューに忘れちゃいけないもう1人。本作では子守を担当していたブライアン。リトルじゃない方ブライアン。本作は血縁家族の話なのでミアが「私に行かせて!」とブライアンを説得したのが目に浮かびますね。ここらへんも見事だったと思います。思えば、ジャスティンリン監督作としては初めてとなる、ポール亡き後のブライアン描写。『SKY MISSION』のアレはほとんど反則技なので多用はできないものの、「ワイスピは車の映画だぜ」という描写が非常に良かった。FOR PAUL.
 とにもかくにも『ICE BREAK』からのアップデートがすごい『ジェットブレイク』。これがジャスティンリン本気のバーベキュー……!!

 個人的に『ICE BREAK』でJusticeForHanより気になった、引っかかったのがエレナの存在。「実は子供がいた」という驚きの情報からそのまま死んでしまって、子供だけ引き取る。何かすげぇ雑な扱いの代理母みたいで嫌な感じ……と思ってたんですが、今回、リトルBの場面で度々エレナの話が出てきて少し安心しました。誠意は感じた。あの世界、ブライアンは死んでないけど、エレナは死んだ。死んだ人には死んだ人なりの誠意ある描き方をする。そんな風に思えた。まぁ、死なすなよって話なんですが。
 ちなみに、本作はシリーズでも超珍しい、主要キャラが死なない『ワイスピ』となっております。ジャスティンリンが参加した『TOKYO DRIFT』以降では初。順にハン、レティ、ヴィンス、ジゼル&ハン、ハン、エレナとそれぞれの作品で死んでます。ハンの死、繰り返しすぎじゃない……? ってなりますが、『SKY MISSION』はハンとは別にFOR PAUL案件でもありましたね。ともかく、物語を動かすために仲間を殺す傾向にあったんだけど、本作はファミリーが死なない久々の『ワイスピ』。まぁ、回想で父親は死にます。

 ここまで語った時点で既にその傾向が現れてるんですが、シリーズの歴史が積み重なりすぎて、ちょっとした「ワイスピカルトクイズ」みたいな内容になってるのは否めない。全作復習してきた身としては大好物なんですが、痛快アクションを最も期待してるファンにとってはやたら難しい内容だったんじゃないかな……と少し老婆心。最近のMCU作品でもそうですけどね。特に『ワンダヴィジョン』『ロキ』とか必要とされる知識がエグいというか、シリーズ外のことも知らないといけないみたいな部分あってハイコンテクストすぎた気はする。まぁ楽しいです。『ワイスピ』もMCUも最高よ。
 本作のオープニング。まさかの1989年で、舞台はレース場。復習してきた私としては「これは1作目で語られたあの日!!」とブチ上がるわけです。ドムがなぜ犯罪に手を染めたのか、ブライアンに語る感動的なシーンで語られたアレ。もちろん知らなきゃ知らないでいいんだけど、知ってりゃ楽しいし、当然主としては知ってる人向けに作られてるわけで、めちゃくちゃ面白いと同時に、ワイスピカルトクイズ始まった……!(ここはまだイージー
 ワイスピカルトクイズを難しくしてるのは、シリーズでは昔からやってることなんだけど、「お馴染みのキャラが再登場!」という雰囲気で登場する新キャラの存在。無限とも思える交友関係がドムの魅力であり最大の強さなんだけど、旧キャラと新キャラの扱いが割とフラットで難しいのよね。本作でもマイケルルーカーが『GotG』に続いて子守おじさん(メリーポピンズ!)として出てくるんだけど、昔の重要キャラが復活した風だけど、新キャラだし、新情報ですよね。
 それと顕著だったのはカーディB。インターポールのフリしてドムを救ってたあの人。「やあドム久しぶり!」みたいな感じで出てきたけど、こちらも完全新キャラ。ややこしい……と理解が止まってた人はいませんか?(私です) この場面で語られたのが「カーラの妹」。カーラというのは『MAX』冒頭、ドムのドミニカ時代の一味の1人。だそうです。知らなかった。ちなみに『SKY MISSION』でレティが戦ったロンダラウジーが演じた役もカーラ(スペルは違う)。ややこしい……!
 このカーラも分からなかったんだけど、恥ずかしながら誰だか分からなかったキャラがもう1人。正確には、分からなかったと気づいたのがもう1人。モンテキントのアクションが終わり、飛行機で移動中、日本の薬を飲んでたあの人。『MAX』で登場した、FBI時代のブライアンの同僚です。『EURO MISSION』でも再登場。ブライアンによる暴力にさらされてた人。これがワイスピカルトクイズ……!

 そんな細かいキャラに注目しなくても、メインのファミリーがめちゃくちゃ増えたじゃないですか。今回はそこに東京組がゴソッと参加。さらにハンは娘(疑似家族)まで連れてくるから大変。てか、東京の比重すごいことになってきましたね。さすがジャスティンリンにおける初『ワイスピ』。
 とにかくメインのキャラが多くなってきた。どうするか。本作が出した回答が、「そうだ別行動しよう」。シリーズを揺るがす大発明だったのではないでしょうか……!(大げさ)
 厳密に言えば、過去作にも別行動はあったんだけど、3組以上が、同時並行的に、というのはシリーズ初なんじゃないかしら。ここまでの規模だと。とにかく、おかげで非常に話が分かりやすくなったというか、大ボリュームなんだけど、サッパリしてて意外と食べやすい! そんなカロリー詐欺みたいな作品だったと思います。要するに、実際の情報量はめちゃくちゃ多いので、振り返るときに「思い出すことが多い……!」ってなる。

 アクション。本作は何と言っても「磁石」という新しいオモチャを得たのが特徴でしょう。マイケルベイの『6アンダーグラウンド』でも磁石を使った荒唐無稽アクションは描かれてたけど、正直あの映画は「もっと磁石をくれ……!」って感じだったと思います(当社比)。本作はその渇望にも答えてくれた。『ワイスピ』はベイヘムも兼ねる!!
 そんな磁石を使ったあれこれ。遠距離から一気に引っ張るオモシロもあるんですが、くっつけたままブラブラするのも楽しかった。あれはちょっと『MEGA MAX』の金庫引きずりへのセルフオマージュのようにも感じた。さすがジャスティンリン! ちなみに、個人的にシリーズ最高傑作だと思ってるのが『MEGA MAX』。シリーズの歴史的にも、内容的にも最重要作だと思う。
 『ダークナイト』以降ハリウッドで流行ってると思われるトレーラーの縦回転。あれの最新アップグレード版が『ジェットブレイク』でした。『ワイスピ』はノーランも兼ねる!!
 そんな縦回転。トレット兄弟2台で前輪を挟み、それを磁石で固定。「持ち上がるかな? どうかな?」というフリを挟んでから、トレーラーの前方に回り込んで前方からも押す。そして縦回転したらジェイコブが自身の車からドムの車へと飛び移る。縦回転だけじゃ終わらないんかい!! という欲張りセット。ド迫力と同時に兄弟の協力というエモーショナルな要素も含むのが最高でした。これにはノーランもご満悦(妄想です)。
 そう、トレーラーへの襲撃なんですよ。実際はトレーラーじゃないけど。『ワイスピ』シリーズはスケールのインフレ具合が特徴的で、話のネタとして面白いからそういう切り口ばかりが取り沙汰されがちだけど、ジャスティンリンが復帰して、案外そのインフレにブレーキがかけられたとも思うんですよ。もちろん宇宙には行ったのでインフレではあるんだけど、地上でのアクションのクライマックスはトレーラー襲撃。『ワイスピ』の原点である強盗と同じ。ここに戻ってきてる。このバランス感覚がリン印。「『SKY MISSION』も『ICE BREAK』も正直やりすぎだよね!」というジャスティンリンの声が聞こえる……(幻聴)。


 終わり。久々にめっちゃ長い映画感想書いた。すごい長い。ジャンプ記事の半分くらいある。大盛り上がりした映画の感想はホント取り留めもなくなっちゃうから書くのが逆に億劫……みたいになりがちなのでした。つまんなかったり、そこそこ面白かったくらいの作品の方が気軽にブログ書きやすかったりします。まぁ、久々に書けて良かった。たぶん今年のベスト本作で決まりだし。