北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜』の感想

行きて帰りて戻りし物語

 矢口シノブ(字わからん)監督最新作。『ウォーターボーイズ』以降は全部観てる、というよくあるパターンです。全部好きだけど、『ハッピーフライト』と『ロボジー』が特に好きです。

  • あらすじ
    • チンコでマンコを一突き

 おもしろ職業紹介、という要素を考えると『ハッピーフライト』っぽくもあるんだけど、カルチャーギャップコメディーが入ってるので微妙に違いますわな。
 そんなギャップを味わうのが主人公なんですが、染谷将太のナヨナヨ&ヘラヘラっぷりがスゴイ。まぁー不快w あの湿っぽいニヤニヤがとてつもない威力です。
 話としては、当たり前なんですが、ダメダメな主人公が成長していくんですよ。カルチャーギャップしかない村での生活を経て。そして、男として、大人として成長した主人公の姿がラストにはあるんですが‥‥やっぱりニヤニヤしてる。これは結構衝撃的でした。そこは不変なのかw
 まぁ、よく考えたら、別にニヤニヤは彼の精神的成長と何の関係もありませんからね。ナヨナヨは結構軽減されたし、それで充分なのかもしれません。彼の本質的な部分ってことなんでしょう、ヘラヘラやニヤニヤは。映画観てて、絶対「ラストわかりやすい変貌を遂げるんでしょ?」とか思ってただけに、最後までニヤニヤしてるのには驚きました。
 とはいえ、彼の成長はかなり丁寧に描かれていて、フツーに感動はできた次第。成長を示す演出が端的で、説明的でなく、それでいてギャグ混じりなので全然飽きないんですよね。
 個人的に印象的だったトコが、朝、主人公の寝顔にヤモリ(イモリ?)がくっついて、主人公が飛び起きる場面。虫とか爬虫類が苦手な身としては笑いと同時に悲鳴があがるシーンだったんですが、その後の主人公のリアクションがおもしろくて。股間を見るんですよね。そして、安堵する。というのも、その前に彼はヒルに下半身を襲われて、股間も散々吸われてトラウマになってるんですよね。なので、股間には来なくてよかった、と。当然、股間を確認してホッとしてる姿は笑えるんですが、笑いながら悲鳴あげた身としては、「顔はいいのかよ!」という気持ちが強くてですね。「もう股間じゃなきゃ大丈夫なのかコイツ‥‥」と、彼のレベルアップぶりに驚いたワケです。

 主人公の精神的成長って話と重なるんですが、価値観の転換するシーンも丁寧でした。
 個人的に好きだったのは、うまいコーヒーと、すごい仕事。
 前者は、村の文化水準をバカにしてた主人公が東京で飲んだことのないようなコーヒーを飲んで感動するシーン。ヘンなもん喰ったり飲んだりしてただけに衝撃的、という感じですね。
 後者は、伊藤英明が大木を切り倒すシーン。奇人変人だと思ってた伊藤英明の惚れ惚れするような仕事ぶり、所作に感動し、見直してしまう場面。素人が見てもスゴイと思える演技や見せ方もよかったってのもありますね。
 んで、この前者も後者も特によかったのは、主人公が感動した時に「うめー!」とか「すげー!」って言わない点。呟いたりもしない。それまでの過程を見せて、主人公の顔を映せば、彼が何を思い、感じたかというのは嫌でもわかる、というバランス。言葉になったら陳腐だけど、顔から伝わってくると心に沁みました。てか、この感動するトコでも主人公はちょっとニヤニヤしてるんですよねw なんだけど、いつもの小馬鹿にするようなニヤニヤではなく、「なにこれすげぇw」という風に違って見えるから不思議。

 カルチャーギャップコメディーということで、村の異常性がおもしろいんですけど、この村には死と血が露骨に存在しているんですよね。主人公がまず最初に驚くのはマムシだし(殺す)、途中でシカも殺すし、ヒルに血吸われる。
 んで、そのすべてを司るのが伊藤英明でして。死と血の他に、性をも司ってるから生命力ハンパない。エロ狂いで、浮気するんだけど、怒られたらセックスして仲直り。ケンカ中出し。ビッグダディかよw
 この村では結婚しないこと、子供が出来ないことというのが罪のような認識になってまして。ここらへんも性が露骨。なんだけど、林業というテーマを考えたら、この風習にも納得が出来て。林業というのは、自分が植えた木が自分の生きてるうちに伐採することがないんですよね。何代にも渡って行われる特殊な職業で、だからこそ子作り、セックスが重要視されるんじゃないでしょうか。映画のラストで行われる例の奇祭もそういうことなんじゃないですかね。
 まぁ、てなワケで、とにかく伊藤英明が素晴らしいんですよ。『悪の教典』以来のハマリ役(最近だけど)。「えっ どこまで演技なの?」というリアルな雰囲気があって、迫力がスゴかったです。
 劇中、主人公が乗ってる軽トラの荷台に伊藤英明が走りながら乗り込む(車も走ってる)シーンありますけど、あそこで伊藤英明、走りが早すぎて車追い越してNG出したらしいですからね。カメラ回ってなくてもヨキさんなんじゃあ‥‥と、笑いつつも少し引きましたw


 ギャグが多く、その質も高くて飽きないし、それでいて表現がスマートで嫌みがない、という非常にレベルの高い作品だったと思います。すげぇおもしろかった。おまけにマンコギャグも見れるんだからサイコーですよ。
 90点。

映画『ロボジー』の感想 - 北区の帰宅部
 監督の前作。クライマックスがほとんど『アイアンマン』です。

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 本作は、主人公が行って帰って最後に戻る、という話なんだけど、『ハートロッカー』思い出しました。