北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『最後まで行く』の感想

 日本版だよ。元の韓国版と、フランス版は最近観ました。やはり韓国版が一番面白いかな。あの無駄のない脚本をそのままやりながら、さらに切り詰めたフランス版も好き。日本版は独自アレンジというか、いろんな要素が足されてとにかく味が濃い。他2作のがスマートだが、コテコテの魅力も間違いなくある。

木更津まで行く

 岡田准一が目当てで、それキッカケで元の韓国版も観た形なんですが、岡田准一、韓国の暴力汚職警官がハマってて好き。ただ、予想外にコメディ要素が多く、あたふたする岡田准一を愛でながら笑う形。『木更津キャッツアイ』は当時観てて、ちょっと合わなくて最後まで行かなかったんですが、おそらく演技の引き出しとしてはあれに近いよね。
 など思いながら鑑賞していたら、途中でまさかの「裏」展開になるのでたまげた。まさかの綾野剛サイド。ここまでガッツリ掘り下げるんかい。ダブル主人公という側面が強くなって、これはこれで良かったと思う。というか、個人的にはもう本作の綾野剛が好きすぎてですね……。

HARD DAYSからのDIE HARD

 通気孔のくだり、「あそこはオモチャ使わなきゃダメだろ~?」とか、思ったんですが、ド直球の『ダイハード』ネタになってたのは好き。
 ただ、雨で濡れた死体が通気孔で一晩寝かせたら臭くない? 大丈夫?

結婚式

 葬式との対比として綾野剛の結婚式。主人公についてもそうだけど、とにかく2人の背景、動機について盛りに盛ってくる。原作は背景とかなく、「汚職警官がんばります!」というだけで突き進む。あのソリッドな魅力は明らかに軽減してしまったが、悪役の方も巻き込まれ型の受け身主人公であった、という話にはとても惹かれた。
 結婚式の手形は「これはまさか……」とイヤな予感がしたんだけど、騙されたことに気づくのが式の真っ最中というのが爆笑でしたね。キレるにキレられないw 劇場でも笑いが起きててホント楽しい体験だったな。綾野剛の顔面ピキピキ芸も最高。

汚職警官にハッピーエンドは与えない

 たしかに原作を観て驚いたのは、「コイツここまでハッピーエンドでいいの!?」だったんですが、本作はまさにその感覚を踏まえた改変でしたね。「汚職警官にも事情があるのよ……」的な話は正直余計だと思ったし、日本映画の限界とか勝手に感じてしまったが、ラストの改変自体は良かった。ほとんどゾンビ状態の2人がひたすらドツキ合って、決着がつかないまま劇終。原作と違って、最後まで行き着かないエンディングなんですが、「行く」という強い意志を感じさせる終わり方になってて、これはこれで『最後まで行く』にふさわしい内容だったと思います。わざわざ改変してまで宙ぶらりんエンドにしなくてもいいとは思うんですが、最後のタイトルが出た瞬間に「たしかにそうだな」と納得してしまったので負けたわ……。砂漠でエンドレスひょこひょこ。

漁夫の利

 2人とも事情を抱えた主人公であり、決着がつかないんですが、物語として腑には落ちる。それが砂漠のトカゲおじさんこと柄本明。例の砂漠のトカゲスピーチが相手をそそのかすときの常套句だった、と明らかになるミッドクレジットは痛快でしたね。漁夫の利だと思ってたら、実は3人目も操っていた。事の発端からすべてコントロールされていた、という初めから詰んでた感。
 砂漠のトカゲは面白かったけど、岡田准一広末涼子に同じ話を始めたときは「この状況でその長い話する……?」と広末涼子とともに困惑しました。

説明過多

 柄本明オチ。この腑に落ちる快感は、ソリッドで贅肉のない原作では味わえない魅力だったと思います。まぁ、全体的に説明が多くて、原作で終始味わえた知的な快感は減少してるんですが、いちいち説明されることのクドさによるグルーヴも間違いなくあった。やばい状況で「やばい」と口に出すのが日本版主人公(岡田准一の方)の魅力ですね。機転を利かせるくだりでも必ず「閃いた!」な瞬間を描いてるので動物的で可愛らしい印象が増す。原作だと異様に頭が回る主人公にこちらがついて行く楽しさなんですが、日本版は主人公を見守るような印象。

How many 良い顔~♪

 細かい違い、良さはいろいろあったんですが、最終的な印象としては綾野剛にまとまっていく。ひたすら顔が良い。顔芸のバリエーションが豊富すぎて画面に出てくる度に魅了される。終盤とか、「どうせ後ろから綾野剛が来るんでしょう~?」とワクワクしながら観てたんですが、実際に出てきた綾野剛が予想以上にすごい顔をしてるので、怖いと同時に笑ってしまう。最高だったのはやはり最後の最後、金はないけどハッピーエンドと思わせてからのゾンビ的に復活する綾野剛……の顔。あれマジですごいな! メイクもそうだけど、綾野剛の顔芸が圧倒的なんだろうな。いやはや、綾野剛のこと好きになってしまったよ。とりあえず、藤井監督、過去に綾野剛主演に使ってるのでとりあえずはそこからかな。


 終わり。海外映画のリメイクでこんなエンターテイメントが生まれるとはなぁ、と妙に感心、感動してしまった。別に原作を上回る大傑作とは思わないけど、とにかく好きになってしまう作品なんだよなぁ。