北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』の感想

 初日に観てきました。2011年アメリカの興行収入的に一番のサプライズだったと言える本作。アカデミー賞などでもキャスト陣が大活躍でしたね。

 賞レースに関係のないキャストの部分で言うと、主役がエマ ストーン、悪役がブライス ダラス ハワード。前者は『アメイジング スパイダーマン』でメインヒロインであるグウェン ステイシーを、後者は『スパイダーマン3』でヒロイン2号であるグウェン ステイシーを演じていた人ですね。新旧グウェン ステイシー対決。胸が熱くなるな
 エマ ストーンはブレイクのキッカケとなった赤毛を封印しております。まぁ、エマ ストーンは語るほど詳しくないんですが・・・・『スーパーバッド』しか観たことない。
 ブライス ダラス ハワードのイヤな女役と言えば、『50/50』あたりが思いつきますが、本作の「イヤな女」度はあんなもんじゃないです。


↑新と旧

 あらすじ
公民権運動が行われていた時代のミシシッピ
黒人メイド(ほぼ奴隷)の暴露本を書いてベストセラー

 予告の段階で本が発売されることは明かされていたので、「果たして無事出版出来るのか!?」みたいなハラハラはあまり味わえませんでした。

 いろんな賞でキャスト陣が大活躍していた通り、登場するキャラクターがみんな魅力的なんですよ。とにかくキャラが濃い。黒人メイドの2人や悪役をはじめ、隅々までみんな魅力的。そんな作品の主人公で黒人の声をまとめ、本を執筆するのがエマ ストーンなんだけど、1人だけキャラが弱かったかなぁ〜なんて。てか、そもそも本作の主人公は彼女でなく黒人メイドの1人な気もします。ナレーション、イントロ、アウトロ、すべてを果たしているので。賞レースで主演女優賞になるのはヴィオラ デイヴィスでしたし。
 エマ ストーンは役損だと思います。世間のエマ ストーン人気に置いてかれていたので、本作を観てファンの仲間入りしようと思ってたんですが失敗しました。いや、本作でも魅力的ではあるんですよ。見た目も超好みですし。猫目がすげぇ。ただ、それよりも好きな人がいっぱいいたなぁ、と。新旧グウェン ステイシー対決も役の性質上勝ち目はないのかなぁ、なんて。

 本作は過去の黒人差別をテーマにしているので重くて固い話かと思ったんですが、全然そんなことはなくて良くも悪くもエンターテイメントだったと感じました。
 良くも悪くもキャラが初登場の印象通り。良さそうな人はとことん良くて、悪そうなヤツはとことん悪い。前半に虐げられた思いが後半悪役に跳ね返ることでスカッとなります。エンタメ要素に特化するために極端で、わかりやすくしたんだと思います。

 キャラが第一印象のまんまってのは魅力に感じたんですが、暴力や血を極端に避けた作りになってるのは少し引っかかりました。劇中にはいろいろと見たくない出来事が起こるんですよ。そういった出来事が起こると必ずカメラはそれを見ている人の顔のアップになり、悲しみにくれる表情で説明されてしまう。いや、それでもいいんだけど・・・・直接的な暴力というのは本作の中で1ヶ所あるんですが、ほぼ唯一だったので衝撃を感じていたら、映らない。ちょっと拍子抜けでした。
 それと、劇中黒人メイドに育児を完全に任せ、自分では育児しない白人女というのがいて、子供が自分に都合の悪いことをした時に激怒してお尻ペンペンするんですね。「こーゆー時だけ母親面してじゃねぇよ!」っていうシーンなんですけど、ペンペンの時にまたカメラが移動して、それを見て「ひどいわぁ・・・・」って顔をしてる黒人メイドのアップになったのでちょっと引きました。もちろん、子供が不条理な暴力にさらされる姿なんて見たくないですけども、不自然に映さないのはちょっと違うんじゃないかなぁ、とモヤモヤしました。無菌室的な作りというか消毒液臭さが前面に出てる気がして少し嫌い。

 本作は、トイレが重要なポイントでして。黒人と同じトイレ使うと感染するから(なにがだ)、黒人メイド用にトイレを作ろうっていうのが差別の象徴として描かれている。
 このトイレの扱いで悪役の差別意識を強調されるし、トイレが原因でとある黒人メイドが職を失う。そして、悪役への復讐の方法もことごとくトイレってのがおもしろい。
 ここで、本作で度肝を抜かれるシーンが出てきて、これまたトイレ関連の究極のリベンジ。クビになったメイドが謝罪のためにチョコパイを持ってくる。ロッテのチョコパイじゃなくて、パイ生地がちゃんとある手作りのチョコパイ。そんで、悪役が「料理だけはうまいのよね なに入れたらこんなにおいしくなるのかしら」などと嫌みをノンストップ。ここで黒人メイドが、「クソ食らえ(eat my shit)」って言うんですよ。
 観ながら、「えっ・・・えっ・・・・・・・エエエェェ―――ッッ!!!!!」ってなりましたよ。まさかのクソパイ!! 痛快すぎて盛大に笑ってしまいました。

 どうでもいいことなんだけど、育児を任されてる黒人メイドが黒人用のトイレに入っていると、子供がそのトイレに入ろうとする。すると母親が「汚いから絶対に入っちゃダメ!」って叱り、それを聞いていた黒人メイドが不服そうな顔でトイレから出てきて子供を抱きかかえるというシーンがあるんだけど、ここでの黒人メイド、手洗ってないんですよ! うへぇーばっちぃ!!
 母親はそのこと怒れよ!!とか思ってました。

 個人的なベストキャラ。ジェシカ チャステイン演じる白人のバカ女。空気の読めないバカ故に差別なんて発想がないという人なんだけど、ものすごい魅力的なキャラでしたね。
 壮絶な差別が根付く街で1人ぼんやりしてる存在で和むし、例の口の悪い黒人メイドと仲良くなっていく様とか本当に楽しい。料理が上達して恩返しって感動せざるを得ないですよ。
 また、第一印象から印象がガラッと変わる彼女の影が見えるのも超よかったです。キャラクターに深みがありますな。また、この事実が発覚するのもトイレ。黒人メイドはトイレのドアを壊すことによって、彼女の真実を知り、2人の関係はネクストレベルに到達する。トイレのポジティブ描写までやってくるとはひたすらうまいですね。
 また、このバカと悪役との組み合わせの悪さがサイコーなんですよね。バカには理論が通用しないから最強の悪役もタジタジっていうのが伝わってくる。バカ×ブライス ダラス ハワードっていうと『50/50』があるけど、やっぱり空気の読めないバカこそ最強と言わざるを得ないですな。
 子供のことをバカ呼ばわりすると怒られるかもしれないけど、劇中に出てくる白人の子供もバカ故に平等なんですよね。黒人による愛情を感じて、愛情を抱いてる存在。黒人の愛情に包まれて成長した子供というのは主人公のことでもあって、つくづく良く出来てますね。


 ということで、とにかく「クソ食らえ!」「eat my shit!」という一言に尽きます。ひたすらハマってしまいました。去年の『猿の惑星』『ピラニア3D』における「No」「濡れTシャツ・・・・」と同じレベルのパンチラインでした。今年の流行語。
 それと、バカですね。愛すべきバカは最強にして最高です。勝手にオスカー助演女優賞ジェシカ チャステインに送ります。
 75点。

ヘルプ―心がつなぐストーリー〈上〉 (集英社文庫)

ヘルプ―心がつなぐストーリー〈上〉 (集英社文庫)

ヘルプ―心がつなぐストーリー〈下〉 (集英社文庫)

ヘルプ―心がつなぐストーリー〈下〉 (集英社文庫)