北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

映画『シュガー・ラッシュ』の感想

ディズニー王国の終焉

 久々に映画の感想だー、うおおおぉぉぉぉぉっ。1ヶ月以上映画の感想書いてないという体たらく。映画を観てなかったというワケではなくて、ただひたすらに筆無精だったワケです。

 そんで『シュガー ラッシュ』。ディズニーアニメの新作ですね。先日のアカデミー賞では長編アニメ部門において『メリダとおそろしの森』に敗北してしまいましたが、アニー賞などでは圧勝してます。個人的な期待もこちらの方が高かったです。そもそもメリダ』は特別好きな作品ではないんですよねー。

 今回は、ムビチケを使って3D版を観たんですが、ちと高いですね。前売り券なのに1800円とは。手数料はまだしも、3Dメガネ代100円が痛い。メガネ代が含まれているということは、メガネをもらわないといけないんですよ(断れるだろうけど)。こうして我が家に不要な3Dメガネが増えました。捨てなきゃなー。
 あと、本作、ディズニーアニメのくせに公開規模が微妙に小さいんですよね。えっ、期待されてないの? 3D字幕を観る環境がないとかビックリしましたよ。
 ただ、本作の3Dはしょぼかったです。ゲーム世界にカメラが入っていくトコで「んほおおおお!」となりましたが、それだけだったかなぁ。

 それと、同時上映の『紙ひこうき』。アカデミー賞で短編アニメ部門の勝者で、前評判も超よかったんですが、個人的にはピンとこなかったかな。セルアニメとCGアニメの融合がスゴイ、っていうことらしいんですが、技術的なことはよくわからないし、「わーキレー」程度の感じでした(バカ)。紙飛行機が集団で飛ぶ様は『アラジン』の魔法の絨毯チックでよかったんですけどね。
 ディズニーやピクサー作品で同時上映される短編アニメはクオリティーが異常ですので、今回のが特別すごかった、とは思いませんでした。良くも悪くも期待値が高すぎました。

 あらすじ
悪玉「早く善玉になりたーい」

 予告とかでわかる通り、既存のゲームキャラが多数出てくるんですよ。閉店後のゲームセンターではそれぞれのゲームキャラたちが交流していて、という『トイストーリー』×『トロン』みたいな設定。
 日本の、それもゲームに詳しくない人でもビックリするような小ネタが詰まっていて、特に序盤は小ネタ探しが楽しすぎます。「一時停止したい!」と映画館で思ってしまいました。
 パックマンは作品世界においてセレブ、ソニックはスーパースター、マリオは雲の上の存在(名前だけ出てくる)、という扱いがすごかったですね。思ってたよりもすごいゲームだったのか‥‥と思い知りました。
 鑑賞時には気づかなくてウィキペで知ったんですが、『キングダムハーツ』のソラも出てたらしいですね。うわ、これは見つけたかったなぁ‥‥。ディズニーキャラ総出演ってのが売りの『キングダムハーツ』からディズニーアニメに逆輸入って胸が熱くなります。
 逆に出てないのが意外だったのが『ゼルダの伝説』勢。個人的な認識ですが、アメリカ人はとにかく『ゼルダの伝説』が好き、って思ってたの出ないのは意外でした。

 そんなゲームネタがとにかく楽しいんですよ。各作品の世界観の違い、ゲーム機のスペックの違いとかまで丁寧に描いていて、別世界の住人が同時に存在しているだけで大感動でした。
 逆にいうと、本編のほとんどは「シュガーラッシュ」というレースゲーム内で行われるんですよ。スイーツで溢れた世界観の中、スイーツで作られた車でレースするというゲームなんですが、うーん、あんまり興味ないなぁ。女の子向けな世界観なのであまり燃えませんし(劇中は男の子も熱中してましたが)。「シュガーラッシュ」の中だと既存のゲームキャラは全然出ませんしね。
 ということで、中盤は少し退屈でした。話はおもしろいんだけどさ、やっぱゲームネタが観たかったので。しかし、終盤、肝心のレースが始まるとビックリ。「シュガーラッシュ」はなんと『マリオカート』だったんですね。特に64以降の。アイテムボックスのデザインがそっくりだし、虹色の道路はレインボーロードですね。レインボーロードといえば、劇中出てきたものすごい下り坂というのは『マリオカート64』版のレインボーロードを連想しましたよ。その直後に行われるショートカットもそっくりでした。
 ゲーム関係ないですが、荒野でレースしてる絵面は『スターウォーズEP1』にしかおもえなかったですね。どちらもワタクシの中学時代の思いでの作品ですので、話と関係ないところで泣きそうでした。

 本作の主人公ラルフは作中ゲーム「フィックス イット フェリックス」の悪役キャラクターなんですが、このゲームが『ドンキーコング』にしか見えないんですよ。マリオが初登場したゲームね。「フィックス イット フェリックス」におけるヒーローは修理屋のフェリックスは、丸い鼻で、自分の名前のイニシャルが入った帽子を被っていて、ハンマーを操る男‥‥マリオじゃん。ジャンプが得意なんですが、そのジャンプ時の姿勢、ジャンプ音が完全にマリオでした。
 劇中でマリオという名前は出てくるので、存在するのは確かな上に、本作の続編ではマリオの出演も濃厚という噂も聞くんですが、フェリックスとマリオが共演するのってアウトじゃね?
 まぁ、そんなフェリックス。これが超イイヤツなんですよ。ここらへんが本作のうまいバランスだな、と思うところで。本来なら主人公(悪役であるラルフ)と敵対するキャラなので、嫌なヤツにしてもおかしくないんですよ。そこを互いに理解がなかっただけで話せばわかるヤツ、という扱いにしたのが素晴らしかったですね。まぁ、マリオを彷彿とさせるクソヤローを出してきたら怒りますが。

 ディズニーアニメにおける悪役。いわゆるディズニーヴィラン。名物キャラが多いものの、その決着の付け方、殺し方が個人的には非常に嫌いでした。基本的に事故死を遂げるんですが(落下とか)、これが都合よくねぇ、観る度にムカムカします。
 が、今回、そんなディズニーヴィランの殺し方がなかなか気が利いていたと思います。順番としては、悪役のゴキブリ化→主人公が世界を救うためコーラの火山を噴火させることを思いつく→悪役と退治(ゴキブリ化を知る)→自分を犠牲にして噴火させる→世界が救われると同時に悪役は死亡、という感じ。火山を噴火させるというアイディアはゲーム世界を渡り歩いてきて、火山でヒロインと交流してきた主人公にしか思いつかないものでして、その方法が破壊というのがまた泣けます。また、うまいのが、主人公が噴火のアイディアを思いついた時点では悪役のゴギブリ化を知らない、というところ。すなわち火山の噴火が悪役を殺すということを主人公は知らなかったワケで。殺してるけど、殺してない、そんな絶妙なバランスだったと思います。
 ただ、悪役に魅力があったかというと全然そんなことはなくて。「アイツの正体は○○だったのだ!(ナ、ナンダッテー)」的な展開なんですが、これが去年のピクサーアニメ『メリダとおそろしの森』と同じなんですよ。いや、ディズニーとピクサーは一応別物だけどさぁ、見覚えがあってねぇ。そもそも悪役としての個性も特になかったので、印象の薄い悪役でしたね。残念。

 ディズニーアニメの伝統、ディズニープリンセス。プリンセスモノは『ラプンツェル』で一旦打ち切り、という悲しいニュースも聞きましたが、本作にも出てきましたね。最後の最後に。
 ゲームにおけるバグを抱えたヒロインが実は王国の継承者、王女であった、というオチ。ドレスを着た姿には驚きましたが、それ以上に驚いたのがその後の展開。ヒロインはバグ技(瞬間移動)を使ってドレスを捨ていつものフード姿になる。バグというのが破壊を象徴する主人公ラルフとも通じていて感動的。そして、ヒロインは王女の座を捨て、大統領制を始めるんですよ。
 ディズニープリンセス民主化しやがった、ということで映画館で口あんぐりです。なにこのとんでもない展開!!
 ディズニープリンセスにおいて、「アメリカに王族いないじゃん」という問題はあったんですよ。ディズニープリンセスは憧れを描いていたんですが、現実的でなくて。その非現実性をセルフパロディーしたのが『魔法にかけられて』で、「王女になんてなりたくないわよ!」というツッコミを入れたのが『プリンセスと魔法のキス』なんですが、本作ではついにディズニープリンセス大統領制(アメリカのことでしょう)を始めちゃうという超ウルトラC。もうね、ゲームネタとか関係なくディズニーアニメ史における歴史的大事件ですよ。


 ということでした。「ゲームネタ楽しいぜー」なんて浮かれていたら、ディズニープリンセス史における革命が起こってしまったんですから、もう気持ちの整理がつきません。ゲームネタに喜んでる場合じゃねぇ!!
 90点。

シュガー・ラッシュ オリジナル・サウンドトラック

シュガー・ラッシュ オリジナル・サウンドトラック

ドンキーコング

ドンキーコング

マリオカート64

マリオカート64