北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

2021年の週刊少年ジャンプに掲載された読切作品の総括

 読切の話しかしないので例年からタイトル変えた。面白かった読切の話します。
 2021年のジャンプ、最大のトピックといえば、『呪術』の大ヒットとか計画休載ではなく、

 ジャンプショートフロンティアの創設。これによってジャンプ読者が目にする読切作品の数が爆発的に増えました。まぁ、普通の読切というよりは、明確に「ショートフロンティアっぽいもの」の傾向はあるので、それに乗れなかったらイマイチかもしれませんが、私は大いにハマった。めちゃくちゃ面白かった。
 何度も書いてるけど、目指してるのは『世にも奇妙な物語』だと思う。どんでん返し系が非常に多い。もしくは奇抜な仕掛け。通常の読切と違って後味悪い系とかあるのも特徴ですね。もしくは、宙ぶらりんで終わったり。『ブラックミラー』のそこまで意地悪じゃない版、と言い換えることもできる。「ショートフロンティア⇔SF⇔すこしふしぎ」ということだと思う。

 読切ベストの前に、去年の振り返り。
gohomeclub.hatenablog.com
 3位『アオのハコ』、7位『レッドフード』はそのままのタイトルで連載化されましたね。最近はタイトルを変えない方針だと思われる……んだけど、4位『ダダダダーン』は現在『PPPPPPP』となって連載中。まぁ、別の話だから変えたってだけかもしれませんが。ジャンププラスの作品と紛らわしい。
 1位の『ポポ』の人は、今年ショートフロンティアで掲載されたんだけど、正直そこまで……という感じだった。
 ミウラ、臼井&出水、そして藤巻が入ってますが、どちらも今年新作読切が発表されました。ミウラ師匠だけギガだけど。喜ばしいことです。

 では、今年の読切ベスト。決めるのに悩んだというよりは、タイトルのリストアップ作業が大変。とにかく今年は数が多い。


 81本もあった。上記のツイートは代原の数をミスったかもしれない。通常読切に1本間違えて入れちゃったかも。まぁ、81本は合ってるはず。
 今年は、ショートフロンティアの存在が巨大すぎるので、「ショートフロンティア」と「通常読切」でそれぞれベストテン(大体)作りました。
 勝手な自分ルールとして、アニメ化経験のある作家の作品は除外。藤巻先生とか面白かったけど、もう振り返らなくていいだろ、という感じなので。
 それと、ショートフロンティアはページ数が少なく読みやすいので、何か引っかかったら過去のジャンプ掘り起こして読み返していただきたい。紙のジャンプ捨ててなければ。電子版が本棚にあるならば。

ジャンプショートフロンティア部門

1.『無智との遭遇』八宜智宏

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週刊少年ジャンプ」2021年16号425ページ

 宇宙で主人公が未知との遭遇を果たす。
 詳細にあらすじ説明したい気持ちもあるけど、話が短いからどこからネタバレなのか悩む……。主人公(と読者)が抱いてた印象が反転するような結論がマジ面白かったし、これぞショートフロンティア、という貫禄を感じた。かなり初期に掲載されたのもあってその印象が強い。
 結局八宜先生なんだよなぁ、という安易な結果ではあるが、本当に面白かったからしゃーない。

2.『夢操縦』阪東那生

 2021年28号。他人の夢を操る能力を持つ主人公の話。
 話の内容や見せ方がかなり映画『インセプション』に近くて、おそらくアイディアの元なのだとは思う。ただ、似てるだけだったらここまでの評価にはならなくてですね、とにかく情報量が多い。そして、その精密さがすごい。「背景の○○が実は!」みたいな描写が異様な数あるので、読み込むと本当にこってりしてる。ただ、話のあらすじとしてはどんでん返しなので、そこだけなぞっても十分面白い。さらには絵的な魅力もハンパない。初めましての作家の中だったら今年のトップです。通常の読切と比べても本作がベスト。

3.『リコリスの毒』西水隆弘

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週刊少年ジャンプ」2021年30号399ページ

 幽霊の姉とコンビを組む悪霊ハンターの話。
 ただしバトルものではなく、普通の生活を諦めていた主人公に初めて友人ができるかもしれない……という話。話のツイストも素晴らしかったが、個人的にはやはりメガネ。『呪術廻戦』の真希先輩と同様に「幽霊が見えるようになる」メガネなんですが、これの扱いが本当に秀逸。かけると見えるようになるメガネ、それは同時に外すと見えなくなるメガネでもある。2021年のベストメガネ。

4.『品出しのゆうれい』仲畑りんたろう

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週刊少年ジャンプ」2021年17号369ページ

 コンビニでバイトする主人公には品出しの場所を教えてくれる幽霊が見える。
 この幽霊、腕しか見えなくて、そのビジュアルが印象的なんですが、この「腕だけ」という部分に大きな仕掛けがある。どんでん返しの気持ちよさ、騙される快感としては本作がトップかもしれない。

5.『きょうせいキノコ』百田陵助

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週刊少年ジャンプ」2021年18号402ページ

 とある街に巨大なキノコが出現したものの、街はそれを観光資源として利用していた。
 タイトルからして「共生」という点を意識させられる。そう意識しながら読むとじわじわとキノコの正体について察しが付いていく。その経過が主人公とシンクロする楽しさ。ホラー的な展開を見せるんですが、ただ怖いことが起きて終わるのではなく、本作はさらにその先を見せて終わるのが素晴らしかった。イヤな予感を誘う細かい描写も秀逸でした。短いからこそ「意味のないコマが存在しない」と言いたくなるような完成度はショートフロンティア特有の魅力だと思います。

6.『機械仕掛けのアイオライト』瀬川竜

 2021年29号。人類がほぼ滅亡した世界、人間に殺意を抱くアンドロイドがとある子供と出会う。
 これまた良いツイストが待ってるんですが、その本作における一番衝撃的な出来事を直接見せることなく、場面転換。一瞬動揺するものの、「これはつまり……」と意味に気づかされて感動する。本作もうまいこと伏線が仕込まれてるんだよなぁ。ホントみんなすごい。

7.『二人の殺し屋』谷本達哉

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週刊少年ジャンプ」2021年43号361ページ

 殺し屋の凸凹バディもの……と思ったら。
 殺し屋って設定、めちゃくちゃ多いんですよ。そんな中でも本作は抜きん出た完成度だったと思う。短いページ数ならではの情報量の少なさがオチの面白さの土台になってる。バトル漫画ではありがちな人物像……という先入観を逆手に取るような反転が見事でした。

8.『やんけん』渡部開

 2021年41号。古風なヤンキーの前にヤンキー研究部が現れる。
 ギャグです。7位に来てようやくギャグ。設定、キャラクター、掛け合いがどれも面白く、コンパクトにまとまってたと思う。本作に限らず「実はヒロインめっちゃ強い」という作品が結構多かったんですが、本作はその中でも面白かったし、なぜ強いのかの説得力もあって好き。

9.『夏が来て僕ら』大森かなた

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週刊少年ジャンプ」2021年26号438ページ

 田舎でヤンキーとロマンス。
 どんでん返し系じゃない作品も入れておきたかった。短い読切ながら物語として必要なものがすべて詰まってるんじゃないかというくらい満足感のある作品になっててすごい。物語って15ページで充分なんじゃない? みたいな錯覚を起こす。

10.『見エナイ娘』片岡誉晴

 2021年47号。田舎で姿の見えない少女と出会う。
 これまた田舎ロマンス的ではあるけど、ロマンスと括っちゃうと支障がある気もする。ジュブナイルって感じでしょうか。ちなみに片岡先生は通常読切部門でもすごい作品を残していて……。

11.『ヤシャツバキ』小野玄暉

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週刊少年ジャンプ」2021年23号413ページ

 忍者と姫がだべる。
 『フルドライブ』の小野先生カムバック。「この作家は好きに決まってる!」と上位に並べたらトップスリーが知ってる人になっちゃいそうだったので、『無智との遭遇』以外は下の方にずらした。めちゃくちゃ勝手な都合ではある。
 バトルものっぽい設定ながら一切バトルはなく、住む世界の違う2人のやりとりのみで完結する。キャラ特化な作品なんだけど、所々2人の暗い背景が垣間見える瞬間があって、そのおかげで15ページとは思えない深みを感じる。

12.『バックトゥ・アタック勇者』雲母坂盾

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週刊少年ジャンプ」2021年31号407ページ

 魔王が勇者を殺すためにバックトゥする。
 『ボーンコレクション』は同名の読切版が2019年に掲載され、私的には年間ベストでした。そんな雲母坂先生の新作、相変わらず『ドラえもん』臭がすごいんですが、物語としてはほとんど『ボーンコレクション』と同じ。勇者魔王設定とか、『ターミネーター』設定とかあるけど、結局は『ボーンコレクション』と同じ結論に至る。見たいものが見れた、と満足するしかない内容。

通常読切部門

1.『No one knows』片岡誉晴

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週刊少年ジャンプ」2021年24号217ページ

 宇宙へと旅立った同級生の話。
 ショートフロンティアで『見エナイ娘』を掲載した片岡先生の長尺の読切。マジ圧巻の内容で、今年のベストを考えた際、「まぁ1位はこれでしょ」と即決。浦島効果によって時間の流れが違う2人の話を平行して描くのが見事すぎて、それが漫画的な語り口とも合致し、話はややこしいけど読んでて分かりやすい。何なら読んでて気持ちいい。からのラストの素晴らしさよ。ゆったりじっくりとした物語だからこその感動がありました。ショートフロンティア開設の年のベストとしてふさわしい作品だったと思います(というか私が自然とそういう作品を好むようになった)。
 ちなみに作者紹介ページの「好きな漫画」に『アイアンナイト』を挙げていたので信頼感が爆上がりである。

2.『六とゆき』緑水刀

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週刊少年ジャンプ」2021年26号236ページ

 戦闘力の高い少女が小悪党の男に拾われ鼠小僧行為を始める。
 2作連続になるけど、ちょっとジャンプっぽくない終わり方をする。バッドエンドとは言いたくないけど、ビターな要素を多分に含む。「ジャンプといえばこういうの」みたいなイメージに囚われない作品が多かったのは最近の特徴だと思うので、おそらく2022年もこの流れは続くのではないか。それはきっと連載作にも言える。

3.『VROOM!!!』町田麗弥

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週刊少年ジャンプ」2021年45号232ページ

 車両に搭載されたAIが人類に反乱した近未来、敵対するはずのバイクとバディ。
 こちらは逆にいかにもジャンプっぽい話。バトルもの。ただ、今時バイクをここまで大々的に取り扱った作品は珍しいですね。本作は金未来杯出品なので、優勝したらこれに近い形の作品が連載になると思うんだけど(慣例的に)、作画コスト的に大丈夫なのか!? という変な所での心配もしてしまう。いわゆる「王道」系の作品の中では2021年の読切で一番好きでした。

4.『フレンチ・オブ・ザ・デッド』乾修太朗

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週刊少年ジャンプ」2021年38号196ページ

 ゾンビがはびこる世界で、人肉よりもおいしい料理を提供する。
 ゾンビものというジャンプでは珍しい題材ながら、ゾンビらしさもありつつ、少年漫画的な成長&勝利の物語になってて非常に好きだった。ぶっちゃけ2-4位の細かい順序はかなり怪しいです。相当悩んだ。「強いて言えば~?」みたいなゆるゆるの判断。

5.『タタラシドー』末永裕樹 馬上鷹将

 2021年27号。学校の日陰者がコントに挑戦する。
 高校生の青春の題材としてお笑い、しかも漫才ではなくコントだったのが本当に驚きであった。時代がまた1つ変わったのだな……と痛感したというか。
 苦い実体験をコントの素材にすることで社会に対するカウンターパンチとする、みたいな話なんですが、これはお笑いに限らず何かを作る人、創作、芸術系すべてに当てはまる話でもあったと思います。本作の一番の良さはそういうところ。

 ガワ的な話をすると、主人公コンビのキャラデザがどう見ても空気階段……という部分も話題になったと思います。てか、空気階段のラジオでもそういう話題になった。キングオブコント優勝後だったらクソださい話だけど、優勝前なのでセーフ!!(そういう話ではない)

6.『プロモブ』馬上鷹将

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週刊少年ジャンプ」2021年41号252ページ

 プロのモブ役者が主役になることを夢見る。
 馬上先生再び。モブ役者の仕事ぶりの描写として、とにかくいろんな作品の画風を模倣していき、その描写、手数が異様なことになってて圧巻。個人的には『名探偵コナン』のところが好きです。
 本作は代原として掲載されたんだけど、15ページで、これだけ気をてらった内容ということを考えるとショートフロンティア用に作られた作品なのではないかと個人的には睨んでる。ただ、代原として突如掲載される、という事実が本作のストーリーと妙にリンクしているようで不思議なオモシロが発生していたのも事実だと思います。

7.『愛と力』轍平

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週刊少年ジャンプ」2021年24号362ページ

 めっちゃ強いヒロインが次々に戦いを挑まれる。
 こちらも代原。ただ、17ページなのでショートフロンティアではないと思われる。何用にこんなの描いてたの? と不思議ではある。普通にネームバリューある作者だと思うので。
 「ヒロインめっちゃ強い」という作品がかなり多かったんですが、本作はその中でも頭一つ抜けた面白さでした。ショートフロンティアの『やんけん』もそうだけど、あっちはギャグで、こっちはラブコメ。非力の男主人公がどうするのか、と最後にシンプルな答えが出るのが印象的でした。てか、ラブコメ作品少なかったかな……。

8.『Bad Tripper』踊場ゆう

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週刊少年ジャンプ」2021年25号257ページ

 自殺志願者が集まるという噂のある旅館に潜入捜査。
 分かりやすいミッションが設定されるので読んでて気にならなかったけど、実は主人公が……となるツイストが印象的。それ抜きにしても旅館の不気味な雰囲気の描写、そしてその中で悠々とたち振る舞う主人公のギャップも魅力的な作品でした。

9.『DELETE』福田健太郎

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週刊少年ジャンプ」2021年13号194ページ

 隙間を埋めるとモノが消える。
 めちゃくちゃ『世にも奇妙な物語』っぽい作品。奇抜なアイディア、ビジュアル、そしてホラー的な着地をするのも含めて本当にそう。
 本作は代原で、これが掲載された13号からショートフロンティアが始まったんですが、本作は15ページでこの奇抜な内容でしょ。絶対これショートフロンティア用の作品だったと思う。

10.『地獄のカンダタ』吉田B6

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週刊少年ジャンプ」2022年2号237ページ

 大人げない僧侶が戦う。
 ついこないだの作品だから説明が雑になる。設定だけ見たら今回選んだ22本の中で最も定番の内容、定番のバトルものっぽいんだけど、主人公とその依頼者となる少年のキャラクターがとにかく良い。ギャグ的な掛け合いが本当に楽しく、それでいてバトルものとして王道、さらには物語も感動的。個人的にかなり好きなバランスの作品でしたね。こういうギャグの入ったバトル漫画には弱い。


 終わり。2021年は本当に面白い読切が多かった。てか、母数がでかいので当然なのかもしれないが。繰り返しになるが、読み返してみてほしいし、読んでなかった人でジャンプが手元(電子本棚)にある人はマジで読んでみてほしい。マジで。それぞれのトップ4くらいは掛け値なしの傑作だと思いますので。