観てきたぞよ。2023年公開の実写版。幸いにも字幕版が都合のいいとこでやってたので観れた。ミュージカルは字幕がいいなぁ。少なくとも初見は。
元のアニメ版
こないだ配信で観たんですよ。そしたらどうやら初見っぽくて。もちろん面白いんですが、短く、おとぎ話らしい象徴性とデフォルメによる単純化が雑にも思えたり、「16歳が出会って3日で結婚ですと!?」とか引っかかるところも多かった。これのカウンターが『アナ雪』なのですね。ハンスは一生クソコラされてろ。
そういう「全体としては面白いけど今このままコレは無理だわ」と感じたいくつもの点、おそらくすべてが改修されてた。これがディズニーの本気……!!
『リトルマーメイド』(89)観たぞい。たぶん初見。あらすじくらいは知ってたが、想像以上に恋に恋した世界観で面食らう。即日結婚王子と16歳が結婚するのとかも含め、かなり驚く。16歳設定はアイコニックだから実写版でも変えず、「数年後」とか足すのかなぁ。
— 北区の帰宅部 (@gohomeclub) 2023年5月1日
16歳設定、少なくとも劇中にはありません。ラストシーンは明示されないが、結構な時間が経過した後の可能性もあるのか?
アリエルが徹底してエリックの顔の美に執着し、エリックは逆に声に執着してるのが極端すぎて清々しい。てか、この2年後に『美女と野獣』ってのは逆にすごいな。メッセージが手のひら返しすぎる。
— 北区の帰宅部 (@gohomeclub) 2023年5月1日
顔ファン&声ファン、廃止。声ファンは声を失う話とも関わるので残るかとも思ったんですが、他人を美のみで評価するのいろいろと危ない(将来気持ちが冷めそうで不安w)のでこれも良かった。顔と声の代わりに「手」がやたら強調され、象徴的に描かれてたように思います。
2人が惹かれ合うドラマとして、「他文化への好奇心」が強調されてる超良かった。アリエルは元からあるが、エリックの方が超ブースト。ホラ貝のくだりとか最高でした。何なら終盤でホラ貝のネタ引っ張ってくれなかったのが残念なくらい。別ジャンルだけど、オタク同士が「めっちゃ気ぃ合うじゃん」と意気投合する感じが非常に好ましかった。
料理人の魚殺しギャグは面白かったっちゃ面白かったが、思いの外本気で悪趣味ですごい。「人間は魚を食べる」という基本的な問題から目をそらしたまま結婚エンドになったのは良くも悪くも無邪気という感じ。
— 北区の帰宅部 (@gohomeclub) 2023年5月1日
料理人の残虐ギャグ、廃止。これに関しては「出来るわけねぇだろ!」という感じではあるな。代わりにスカットルが当たり前のようにアリエルの前で魚食べてて「友達なんだよな……?」と困惑してしまったぜ。
正直「アリエルに姉妹なんているんですか?」だったのだが、劇中の姉たちがめちゃくちゃモブ顔なので笑ってしまった。ただ、モブなりに多国籍感があるので、今回の実写版は割と穏当と言えそう。
— 北区の帰宅部 (@gohomeclub) 2023年5月1日
ほぼモブだった姉たち。結局ほぼモブのままだった。めちゃくちゃ設定というか、ビジュアルが凝ってるからここも出番増えるかと思ったけど、そんなことはなかったぜ。ただ、それぞれが7つの海を担当してるという多国籍感はより強調されてて、それ自体は良かったと思う。
主演
圧倒的なまでの歌唱。歌唱シーンの魅力に打ちのめされてしまった。最高でした。「アンダー・ザ・シー」にもアリエルが合いの手入れてくれるのとか感謝の極みだったぜ。
良すぎたことの弊害でもあるけど、終盤に歌がないんですよね。尺が約50分増えてるのとも関わるけど、ドラマ的に盛り上がったところで歌がないので少し肩透かしのような印象もある。ハッピーエンドとなった場面で「今の喜びの気持ちを新曲でどうぞ!」と待ちかまえてしまった。
脇役陣
元のだと短いこともあり、割と「そういう人」と割り切った存在になってたと思うけど(その良さもある)、今回はそれぞれが血の通ったキャラクターになってて良かった。トリトン、エリック、エリックママ、グリムズビーあたり。子離れする親(それも片親)のドラマとか不覚にもグッときたし、エリックの設定からの大改修ぶりにも唸らされた。アイデンティティに不安があるから他文化へと執着するのも良かった。
ただ、王子の歌唱シーンは完全にMVって感じであまり好みではない。MVをやるなら『アナ雪2』のクリストフくらい突き抜けてほしい。そしたら笑うから。
動物リアルすぎ問題
『ライオンキング』はモフモフだからリアルでも可愛かったけどさぁ!! と不安だらけだったけど、ボイスキャストの好演でかなりカバーされてたと思う。あいつらだけノリがアニメのままってのも良いよね。
オークワフィナ
性別変更されててなかなか驚くんだけど、「いつものオークワフィナ」って感じで超良かったですね。てか、いつものオークワフィナがハマるから不思議だ。
ただ、いつものオークワフィナで終わらないのが、新曲。やったぜ。ラップ披露だ。しかもセバスチャンとバチバチの掛け合い。嬉しかった。ありがとう、リン=マニュエル・ミランダ……。セバスチャン役はまたしても『ハミルトン』組だぜ。
スカットルの変更で一番ギョッとしたのは登場シーン、例のフォークシーン。まさか水中であんな長々と会話するので驚きました。無理だろ。息続かないよ!! まぁたしかにね、元のだと「結構気軽に海上に行ってんじゃん」と思えちゃうので、スカットルの方を海中に持ってくるという意図は分からんでもない。けど、リアル路線とチグハグでしたな。
記憶喪失
アースラとの契約のくだり。急に記憶がどうの言ってきて「無駄にややこしい!」とか、「呪術海戦かよ!」とか思った。ただ、これもやりたいことは分かるし、ちゃんと機能してたとも思う。アリエル自身が虎視眈々とキスを狙い続けてたらアレってことなんでしょう。それはそれで微笑ましいけど。
何より今回良かったのは、何も知らないアリエルを大人たちがヤキモキしながら見守る視点が生まれたこと。その見守りを本人たちが知らない。さらにはグリムズビーの掘り下げも関わってきて、両陣営に「はよくっつけ」という大人が控えてるのがめちゃくちゃ良い。カニが囁き歌唱でキス誘導するくだりとか完全にギャグだし、実写(及びリアルカニ)だとそのおかしみが増すんだけど、この「はよくっつけ」のヤキモキする感じはマジで魅力的だった。グリムズビーが指輪蹴り飛ばすくだりでも「ナイッシュー!!」ってなったよね。仮にも女王が大事にしてた指輪なんだから隠すくらいにした方が穏当とは思いますがw
地上村のユートピア感
正直嘘臭くも感じたが、2つの世界の融和がテーマと言える本作のことを考えるとまぁ妥当な気もせんではない。たぶん。好意的に考えると。どこをイメージしてるのかは分からんが、たぶん黒人の土地に白人が侵略してきて、驚異の融和大成功って国なんだと思うけど、「どこだよそれ!」とはなるわな。『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』的な惨状(現実)も連想してしまったな。
ただ、エリックの母親が黒人で、エリックは橋の下(違)で拾った子って設定はエリックのキャラクターに厚みを持たせてたので、そこはめちゃくちゃ良かったと思う。どうせだったら勝手に息子に外出させたグリムズビーに対して女王がブチギレる場面も見たかったな(それはワカンダ)。
終わり。ディズニーの一連の実写リメイク作品の中では一番出来が良かったと思うし、リメイクする意義も感じられる作品で素晴らしかったと思います。惜しいのはやはりオリジナルの決め曲がない点ですね。『アラジン』における「Speechless」みたいな、これで新規の客を殺す、みたいな殺意に溢れた曲が欲しかったところ。思えば、あれもMVっぽいシーンでしたね(完全にイメージの世界だからむしろ合ってたけど)。
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