北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

実写版『ONE PIECE』の感想

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 私は実写版『カウボーイビバップ』を楽しめたから世間の評判が多少悪くても余裕、とか思ってたんですが、実際に観たら予想よりも遙かに良かった。もちろん期待してましたが、それを越えるほどに良かった。良かった……。

脚本

 とにかく脚本が良い。これに尽きる。変えるとこは大胆に変えるが、作品の核は一度も見失わないのでどれも「言われてみればそうかも」とまんまと納得してしまう。何よりドラマシリーズとして、シーズン1として再構成したのがうますぎる。『ONE PIECE』という漫画はひたすら長いので「○○編」で区切られがちだけど、今回のは「シーズン1」でキレイにパッケージングされる。ここが本当に良くてね……。
 途中から(3話あたり)からは大胆な改変シーンが出てくる度に反射的にブチアガってました。誰からも信じてもらえないウソップの前に誰のことも信じるコビーが現れたときのあの感動ったらなかったですね。本作はとにかくコビーなのよ……。

第1話

 そんな脚本(脚色)の妙が第1話から味わえるというか、やはりこの初回の完全試合ぶりが本作の大成功の鍵だったようにも思う。
 ルフィの物語を子供ルフィではなく、ルフィとコビーの出会いから始め、そのままモーガンの海軍基地へ行き、ゾロとナミと出会って、3人で船出(コビーとの別れ)。ルフィがコビーを救うところから始まるので、本作における「海賊とは」「自由とは」というテーマが明確になるんですよね。そして、ルフィが誰かのことを気に入ると必ず聞く「夢」。海賊に自由を搾取されるコビーから始まり、最終的には同じ海賊の被害者(よりハード)であるナミの物語へと続く、というシーズン1全体の構成がキレイ。原作通りなので知ってる話の切り貼りになるのは当然なんですが、切り貼りしただけでまったく新しい美しさが浮かび上がってくる。

バギー

 予告の段階でピエロ恐怖症ホイホイすぎるビジュアルに笑ったんですが、最後まで観たらしっかりコメディリリーフとして魅力的なポジションに落ち着くので嬉しい。しかもそのギャグ要員としての活躍が漫画やアニメの再現ではなく、かなりオリジナル。それでいてバギーらしいギャグに溢れてる。ルフィの帽子に仕込んだ耳を戻した際の「ステレオ!」はマジで笑ってしまった。あれはすぐにでも逆輸入すべき……。
 ちなみにバギーの「鼻」ネタ。英語だと「誰もが知ってる(knows)」で「nose」。字幕だと「バギーの話で持ちきり」で「鼻」になってて感心しちゃった。
 思えば悪魔の実の能力者、ルフィ以外だとバギーが唯一なんですが、実写化しやすいというか、実写映えする感じで良かったですね。特に非戦闘時のバラバラの使い方が本当に良かった。何ならルフィのゴムゴムアクションよりも良かったと言えるレベル。
 漫画やアニメを楽しんでた当時には違和感がなかった点なんですが、今回のイニャキルフィ、バギーの鼻を笑わないのね。今回のアップデートを観て初めて「たしかに笑うのは良くないな」と今更すぎることに気づきました。

ウソップ編

 まさかの洋館ホラーになってて驚くんですが、長年仕えていた執事が殺人鬼(海賊)という話なので、「たしかにそういう話だ……」と納得しちゃう。館に閉じこめる、というのは制作難易度を下げる効果もあるんだろうけど、物語にもハマってたし、特にゾロ対ニャーバンブラザーズ戦はバトルフィールドとしての面白さが明らかに加わってて最高でした。個人的に真剣ゾロのベストバトルはここだったな。
 カヤとナミの友情も良かった。ナミが可哀想な人として扱われるのを嫌うのとか最高だったし、だからこそカヤに対して肩入れをする。原作読者としては海賊被害者の会としての見方もできて、「今後への布石入れてくるやん……」としんみり。
 そして、もう1人、新たな女性としてぶっ込まれたのがまさかのくいな。井戸を上ろうとしてる際に回想するのにはちょっと唐突さも感じたけど、ここで描かれたくいなのドラマも良かったし、微妙にチューニングし直したゾロとのドラマの決着も良かった。
 おまけにもう1人、まさかすぎる女性として参戦したのが、シャム。「おいおい実写シャム可愛すぎかぁ?」と興奮したんですが、漫画版の記憶を消せるはずもなく、猫背オジサンlove……と脳味噌がバグる。ちょっと意味の分からない変更だったんですが(猫背バトルが却下なのは当然として)、おそらくくいなのドラマを踏まえて、ゾロの前に戦闘員として元気にやってる成人女性を出したかったんじゃないかと思います。死んでなかったらくいなも強く成長してた可能性はあるよ、みたいな。

バラティエ

 まず外観が良い。口の中にバーがあるのとか本当に好き。
 それはさておきこのバラティエ編とも言える2話、本シリーズで最も改変が多く、それ故に私は一番楽しめた。クリーク即死は笑ったけど、まぁ原作でもそういう話だからね……。
 バラティエの受付に魚人がいるとしたのもうまかったし、クリークではなくアーロンがカチコミに来る意外性も良い。ナミが逃げようとするがゾロの苦戦を見て逃げれなくなっちゃうのも良い。実写のゾロとナミはちょっと特別な何かを思わせてしまうほどに魅力的でしたね(絶対に恋愛関係にはならないという前提で)。そんなナミをアーロンが連れ去る形にになるのも漫画版とは違った絶望感があって良い。
 瀕死のゾロに対してうまく話しかけることのできないルフィ(苦悩するルフィ珍しい!)だが、ゾロと同じようにアーロンに一度負けることで腹の底から話しかけることが出来るようになる、というのもルフィ(とゾロ)の成長エピソードとして見事だった。一度敗北することでラスボス戦への溜めになるのもうまかったですね。
 ちなみに、ゼフは脚を食べる。アニメ版を越えてしまった……。

サンジの「クソ」とタバコ

 英語だと「shit」で統一されていたと思う。聞き取れた限りだと。ファッキンじゃないのはレーティングの関係ですかね。あと原作SBSで「クソ=うんこ」というネタがあっったのでそれを踏まえた可能性……(は考えすぎ)。
 クソ以外にも問題を抱えてるのがタバコ。『ストレンジャーシングス』に喫煙シーンがあるだけで問題視されるような時代にどうするのかと思いましたが、本作の回答は「少ない(がある)」。まぁ、さすがに喫煙しながらの料理は無理でしたね。時代とか関係なく。あと、戦闘中の喫煙も「さすがに無理!」という一線だったと思う。無理矢理実現したとしても嘘臭い映像になってしまうというか。ただ、大事なシーンではしっかり吸うので「決して禁止ではない」という感じ。特に「原作のこのシーン完全に再現したいんです!」という情熱が溢れてる場面ではしっかり吸っててめっちゃかっこよかった。アーロン編での「当たり前だ(of course i will)」後の一味集合のくだり、しっかり喫煙しての完全再現。急に「そこまで再現しようとしなくても……」という気合いを見せてくるのが本作の面白いところ。
 サンジの女好きってキャラクターもそこそこ難しいバランスだと思うんですが、実写のサンジは言動よりも微笑みがスケベ。あの口角。女好き設定もしっかり残ってはいるがが、ちょうどいいところにチューニングされた感。それよりもバラティエのエピソードが大幅に短縮されたことにより、サンジとルフィの絆が若干描写不足で、実写サンジは急にルフィのこと好き好きになったイケメン、という感じになっちゃってたと思う。めっちゃ良いじゃん!(良いのかよ)

アーロン編

 こっちは前振りたっぷりあった分、かなり丁寧になぞってる。それでも省く部分はあるが。ハチが省かれたのは映像面もあるけど、それ以上に「ゾロ治るの早すぎじゃね?」という点が実写だとより目立ちやすい、事情もあると思う。ただ、シーズン1の時点でゾロとサンジの喧嘩しながらも仲良し、という関係性をしっかり見せてくれたのは嬉しい。「ルフィのお気に入り」争いになってるのも可愛い。イニャキルフィは麦サーの姫。その争いがバトルシーンで行われるのが最高でしたね。そして、必殺技コールのくだりでゾロが「お前もそっち側の人間か」となるのには笑った。実写化における不自然さをギャグにしてて見事だ。まぁ、こうなると真剣ゾロの必殺技堕ちが楽しみになっちゃいますね。一番ありそうなのはアラバスタでの「shishisonson」だろうか。
 アーロンパーク以前から明らかにゾロとサンジのアクションだけ実写版に愛されてる感あったんですが、それがアーロンパークでの乱戦でより際立ったような印象。まぁバトルが一応現実的な範囲なので実写化しやすいという都合もあるのでしょう。それでもサンジの方は特に漫画の荒唐無稽さを頑張って再現しようとしてて好き。逆にゾロは普通にかっこいいソードアクションとして解釈し直したって感じですかね。ゾロだけ必殺技のケレン味が足りないというか、そこだけギクシャクしてて、それも踏まえた必殺技コールの件のギャグになってたと思う。

エピローグ

 ガープ御一行がココヤシ村にやってきて……のくだりは改変したしわ寄せがちょっと目立つというか、不自然さも少しあったと思う。別にルフィたちが戦わなくてもしばらくしたらガープが来てアーロン退治してくれたんじゃ……みたいな。シーズン1における劇中最強キャラはミホークとガープの二強ですので。アーロンとか正直話にならない。
 ただ、シーズン1を締めくくるイベントとして機能してたのも事実。シーズン1の総括として「ルフィが賞金首になる」というイベントを持ってきたのも素晴らしかったし、それをコビーが知らせることになるので実写コビーファンとしてはもう泣いて喜びました。賞金首になることで、コビーが「ルフィさんは悪いことしてない」と押し切ることができなくなるんですよね。ある意味で、ルフィとコビーの友情は一旦ここで終わる(区切りがつく)。それをシーズン1の最後に描いたのが最高。シーズン1は明確にルフィとコビーの物語として、コビーが裏主人公のように扱われてたけど、今後シーズン2が作られてもおそらくそういう扱いはもうないんだろうな。寂しいけど。
 シーズン1最大の白眉は間違いなくコビーで異論の余地はないと思うんですが(マジで)、それと同じくらいヘルメッポも良かったですね。超好き。オリジナル要素としてルフィのゲロを浴びるくだりが漫画っぽいギャグで好きだったし、ヘルメッポの境遇の悲惨さがコビーと対比される形で描かれるのも最高で、バラティエのバーで2人が酒を飲むくだりでは「これが……尊い……?」と何かに目覚めそうになりました。ガープの下で真面目やってるコビーも良かったし、悩めるコビーも好きだけど、ヘルメッポ相手に意地を張って失態をさらす姿が「心許しまくりじゃん……」と輝いて見えた。世間知らずなコビーと大人の世界の汚さをよく知ってる(知りすぎてる悲劇)ヘルメッポという関係性が良かったし、ここでヘルメッポが普通に頼もしい存在として描かれるのが良い。だからこそコビーは心を許してしまったんですね……とニヤニヤしてしまう。そのまま泥酔したコビーをヘルメッポが介抱するが、何も起きないはずがなく……とか妄想が止まらないんですが、そんなことはなかった(直後普通にガープに報告に行く)。
 ということで、今回の実写版で一番好きなのはコビーです。コビメッポ含む。次点がバギーで、特別賞がシャム、という感じ。ガープとゼフのイケジジ対談もも眼福でしたね。ゼフに諭される形でガープが成長するというドラマがあって熱い。シーズン2はスモやんがイケオジ代表として全世界のファンを殺しに来てくれると思う。頼むで。

進水式

 ココヤシ村から船出でシーズン1が終わると思ったんですが、ローグタウンに寄らずに進水式。シーズン2が作られた場合、改めてローグタウンに行くことになるのかしら。「シーズン2もお楽しみに!」要員としてスモーカーが出てきたけど、現状何の因縁もないルフィに対して執着する変な人、という感じになってしまっているw
 ローグタウン寄らないとゾロの刀が1本のままだから寄る気もするんですが、アクション班は「このまま1本でいてくれ……!」って思ってそう。しばらくは乱戦時に敵の刀を奪って一時的に二刀流(三刀流)って形になるのかもしれない。
 進水式。「まぁこれは様式美みたいなもんだから再現するだけで特に驚きはないかな」とかちょっとナメた態度でいたんですが、それぞれが夢を語る瞬間、子供時代の各キャラがフラッシュバックしてリップシンクするので、もうちょっと良すぎるなこれ……。一応漫画やアニメでもこれと同じ演出はできるけど、あの滑らかすぎるリップシンクと、子供キャストの魅力も上乗せされる快感は実写版にしかないと思う。最後の最後に「実写版最高……」と改めてなる名場面。

吹替

 アニメ版と同じキャストが再集結ということもあり、私も最初は吹替で観てたんですが、最初の15分くらいで「ちょっとキツいっす」とリタイヤしてしまった。英語版も良かったですよ。知らない声で知らない言語で喋ってるのに「めっちゃルフィ(誰でも可)じゃん……」となるので。あと英語アーロンが「シャハハハ」言うてて笑った。
 実写版『カウボーイビバップ』は吹替で完走したので今回もいけると思ったんだよなぁ。『カウボーイビバップ』は元のアニメがハードボイルド調なのでそのまま実写に当てても違和感が生じにくい、ということだったのかもしれない。
 ただ、本作の吹替、アニメ声優の演技が実写吹替用にチューニングされてる、みたいな絶賛評もよく聞くので「本当にぃ?」という気持ち。ひょっとしたら一味が増えてくと印象は良くなってたのかもしれません。

実写版被害者の会

 これは間違いなくクリーク。あとはメリー(死ぬ)も入りますかね。あとは省略のために存在がまるっとカットされた人たち。
 メリーが死んだ件は、『ONE PIECE』という作品でネタにされがちな「死ななすぎ」問題に対する実写版からの回答という見方も出来る。「さすがにあれで死なないのはおかしい」ということで。こうなるとシーズン2か3で登場するはずのペルが楽しみですね。絶対死ぬぞw(生存するにしても爆弾を手放して逃げるシーンが追加されるとかの言い訳描写は必須)
 逆に即死だけどおいしい登場となったのはMr.7。「たしかに原作でもそんな話が後に語られたけども~!」と大興奮でした。「スカウトならMr.1を連れてこい」と真剣ゾロが言いながら後ろ向きで中指立てるのもかっこよすぎ……。登場シーンとしても最高だし、知らず知らずにMr.1との因縁が発生するのとか最高かよ。

シーズン2の妄想

 ここまで面白くて、評判もかなり良いとなるとやはりシーズン2に期待しちゃう。というか作ってもらわないと困る。早めに頼むよ。
 ということでシーズン2の妄想。同じく全8話として、グランドライン突入から、やはりアラバスタまでやるのが区切りとして良いのではないか。
 まずは第1話。スモーカーを出さなくちゃいけない。が、ローグタウンは省きましょう。スモやんはイーストブルー最後の関所的なところでルフィたちと出会い、因縁、そのままグランドラインに入って一味を追う。シーズン1でいうガープ的なポジション。たしぎにも期待したいんですが、実写だと「顔が同じ」という表現ができないので、ここは思い切ってカット、代わりにコビメッポの2人をガープに預けられるということで一つ(コビー見たいだけw)。山登ってグランドラインに突入。
 次はウイスキーピーク。ここで1話でしょう。ビビとも出会う、バロックワークスの陰謀も知る。シーズン2全体の方向性が決まる。
 リトルガーデン。ここは2話やりたいところだけど、映像に金がかかりそうなので1話に短縮。バロックワークスの幹部と戦い、巨人と出会い、ナミが罹患。
 ドラム王国。チョニキ登場。ずぶ濡れになって落ち込むピカチュウオマージュがあると私が喜びます(私以外は誰も喜ばない)。ここはさすがに2話下さい。ぶっちゃけ漫画版は各エピソードの長大化が目立つんですが、頑張って2話にまとめていただく。幹部戦とかを省くか、乱戦としてまとめて描く。てか、ほんと幹部戦がネックですね……。あれは連載漫画ならではのサイズ感が前提になるから。
 アラバスタ。ここで残りの3話。実写『ONE PIECE』初の3話跨ぎの長編ということで収まりがいいのではないでしょうか。クロコダイルのスナスナの実はハリウッド映画とかでも割と頻出する表現になるので、ここにはマジで期待。巨大カルガモは十中八九気持ち悪くなるので最悪カットでもいいよ……。あと、Mr.2はほぼ間違いなくカット。もしくはドラァグクイーン的なキャラクターとして再解釈されるのが妥当ではないか。字幕が余計な気を使って「オカマ」とか入れてきそうで怖い。何なら最後まで素顔の分からない人とするのが無難かもしれない(Mr.2だけ相方がいない件もクリアできる)。今後のカマバッカ王国もそうだけど、サンジの周りには常に「海外進出しても大丈夫?」というネタが多いw(普通に国内でも心配です) ロビンちゃんは一味に入るから100%採用なんですが、ヒトヒトの実はこれまた気持ち悪くなりそう……。何なら漫画版でもちょっと気持ち悪い。そこはうまいこと頑張ってくれ。大胆にヒトヒトの実省略の線もあるかもしれないけど、さすがにそこまで大胆なことはしないだろうなぁ。
 ということで、シーズン2完。おそらくシーズン2が公開される以前にシーズン3の制作も決まってるので、私の大好きな空島編に乞うご期待!! サンジが無事喫煙者になったので、タバコの火を欲しがるサンジの実写化間違いないですよ。やったね。


 終わり。とにかく面白いので原作ファンは観てほしいですね。ネトフリらしく一挙配信なので、ネトフリ未加入者は1月だけ加入してすぐ解約すればいいし。ドラマ8本観たらもう1月分の料金は元取れるでしょ。プリペイドで登録したら解約し忘れもないのでオススメですよ(日割り計算もしてくれる)。……とネタバレ感想の最後にこんな未見者に向けた話をしても無意味ですね。

 7話のサブタイが「THE GIRL WITH THE SAWFISH TATTOO」なので笑ってしまった。アーロン、お前サメじゃなかったのか……。